信託法 第92条(信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止)
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- 受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。
- 一この法律の規定による裁判所に対する申立権
- 二第五条第一項の規定による催告権
- 三第二十三条第五項又は第六項の規定による異議を主張する権利
- 四第二十四条第一項の規定による支払の請求権
- 五第二十七条第一項又は第二項(これらの規定を第七十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定による取消権
- 六第三十一条第六項又は第七項の規定による取消権
- 七第三十六条の規定による報告を求める権利
- 八第三十八条第一項又は第六項の規定による閲覧又は謄写の請求権
- 九第四十条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
- 十第四十一条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
- 十一第四十四条の規定による差止めの請求権
- 十二第四十五条第一項の規定による支払の請求権
- 十三第五十九条第五項の規定による差止めの請求権
- 十四第六十条第三項又は第五項の規定による差止めの請求権
- 十五第六十一条第一項の規定による支払の請求権
- 十六第六十二条第二項の規定による催告権
- 十七第九十九条第一項の規定による受益権を放棄する権利
- 十八第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権
- 十九第百三十一条第二項の規定による催告権
- 二十第百三十八条第二項の規定による催告権
- 二十一第百八十七条第一項の規定による交付又は提供の請求権
- 二十二第百九十条第二項の規定による閲覧又は謄写の請求権
- 二十三第百九十八条第一項の規定による記載又は記録の請求権
- 二十四第二百二十六条第一項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
- 二十五第二百二十八条第一項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
- 二十六第二百五十四条第一項の規定による損失のてん補の請求権
この条文の基本情報
信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止とは何ですか?
定義信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止とは、信託法第92条に定められた規定で、「受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第92条(信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第92条の条文原文は「受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。」で始まります。
- 信託法第92条は第一節 受益者の権利の取得及び行使に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第92条の前の条は信託法第91条です。
- 信託法第92条の次の条は信託法第93条です。
- 信託法第92条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第92条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第92条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/92
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法92条は、報告請求・帳簿閲覧・損失てん補請求・差止請求など受益者の26の権利を、信託契約などの定めで制限できないと定める。
Q · 家族信託の契約書に「受益者は受託者に口出ししない」と書いてあったら、もう何も請求できないの?
いいえ。92条の権利は信託契約でも制限できません
信託法92条は、報告請求(36条)、帳簿の閲覧・謄写請求(38条)、損失てん補・原状回復請求(40条)、差止請求(44条)、裁判所への申立権など26項目の受益者の権利について、信託行為の定めによる制限を禁じています。契約書に「口出ししない」「責任を追及しない」とあっても、これらの権利の行使は妨げられません。ただし、受託者の注意義務の水準自体は信託行為で軽減できる(29条2項ただし書)ため、請求が認められるかは義務の設計によって変わります。
解説
家族信託の契約書は、受託者になる側が依頼した専門家が起案することが多い。そこに「受益者は受託者に異議を述べない」「受託者の責任は追及しない」と書かれていても、その一文は効かない。信託法92条は、受益者が持つ26種類の権利について、信託行為(信託契約や遺言など、信託をつくる行為)の定めで制限することを禁じている。対象は、報告の請求(36条)、帳簿の閲覧・謄写(38条)、損失のてん補・原状回復の請求(40条)、違法行為の差止め(44条)、裁判所への申立てなどである。受託者に財産を自由に動かせる設計を与えても、監視と是正のための回路だけは残る仕組みだ。ただし盲点がある。受益者本人が認知症などで権利を使えなければ、回路はあっても電流が流れない。契約書を読むときは、この26の権利を実際に誰が使うのかまで確かめる必要がある。
法的な位置づけ
信託法第92条は、受益者の権利のうち監督・是正の機能を担う26項目を列挙し、その行使を信託契約や遺言などの信託行為によって制限することを禁じる規定である。受託者の義務や権限の内容は信託行為で柔軟に設計できる一方、義務違反を発見し、差し止め、損失を回復させるための権利は強行的に保障される。
手順
- 1.信託の当事者と契約内容を確認する 信託契約書と不動産登記の信託目録を取り寄せ、受益者・受託者・信託監督人・受益者代理人の有無と、受託者の義務を軽減する条項(29条・31条関連)を確認する
- 2.報告請求と帳簿閲覧請求を書面で出す 36条の報告請求と38条の帳簿閲覧・謄写請求を、対象期間と回答期限を明記して内容証明郵便で送る。感情論ではなく条文番号で求める
- 3.回答を検証し不審な支出を特定する 届いた帳簿・通帳・領収書を信託目的と照らし合わせ、目的外の支出や権限外の処分がないかを洗い出す。回答拒否や虚偽回答もその事実を記録しておく
- 4.差止め・てん補請求・解任申立てを検討する 違法な処分のおそれがあれば44条の差止め、損失が出ていれば40条の損失てん補・原状回復請求、悪質なら58条4項の解任申立てを弁護士と検討する。権限外行為の取消し(27条)は3か月の期間制限に注意
よくある質問 AI による整理
Q1信託法92条とは何ですか?
受益者が持つ報告請求、帳簿閲覧、損失てん補請求、差止請求など26の権利を、信託契約や遺言の定めで制限できないとする規定です。
Q2家族信託で受託者が帳簿を見せないのは違法?
受益者は38条で帳簿の閲覧・謄写を請求でき、92条により契約でこの権利を奪えません。正当な理由なく拒めば解任申立ての材料にもなります。
Q3受益者が受託者に報告を求める方法は?
36条に基づき、信託事務の処理状況や信託財産の状況について報告を求めます。回答期限を明記した内容証明郵便で送ると記録が残ります。
Q4受託者の使い込みはいつまで請求できる?
40条の損失てん補等の請求権は、43条により原則として権利行使できると知った時から5年、行使できる時から10年で時効にかかります。
Q5受益権を放棄することはできる?
できます。99条1項の受益権放棄の権利も92条のリストに含まれ、信託行為で放棄を禁じることはできません。ただし放棄の効果は個別に確認が必要です。
Q6受託者が権限外で不動産を売ったら取り消せる?
27条の要件を満たせば受益者が取り消せます。ただし取消しの原因を知った時から3か月、行為の時から1年で消滅するため急ぐ必要があります。
Q7家族信託の受託者を解任するには?
受託者が任務に違反して信託財産に著しい損害を与えた場合などには、受益者が裁判所に解任を申し立てられます(58条4項)。この申立権も92条で保障されます。
Q8受益者代理人がいても受益者本人が請求できる?
できます。受益者代理人の選任後は原則として本人の権利行使が制限されますが、139条4項により92条の権利は本人も行使できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託の契約書に、受託者の責任を免除する条項って入れられないんですか?
請求権そのものを事前に奪う条項は、92条が40条の請求権を制限禁止の対象にしているため効かない。一方、注意義務の水準を下げる定め(29条2項ただし書)や、損失が生じた後に受益者が責任を免除すること(42条)は認められている。実務のポイント:受託者側の専門家は「免責」と書かず、「注意義務の軽減」や「利益相反の事前許容」という形で同じ効果を狙う。受益者側は免責条項の有無より、29条・31条に関わる文言を探して読むべきである
Q2親が認知症になったら、受託者のチェックは誰がするの?
92条の権利は受益者本人のものなので、本人が判断能力を失えば成年後見人が行使する。後見を避けたいなら、信託行為で信託監督人(131条)や受益者代理人(138条)を指定しておけば、その人が受益者のために権利を行使できる(132条、139条)。実務のポイント:受託者の配偶者など身内を監督人にすると、監視が家族内で閉じてしまう。第三者の専門職を置くかどうかで、紛争になったときに残る記録の質がまるで違ってくる
Q3受益者が何人もいる信託で、自分だけ反対しても意味ありますか?
意味はある。105条は、複数の受益者がいる場合の意思決定を原則として全員一致とし、信託行為で多数決にもできるとするが、92条の権利の行使はその枠から外されている。報告請求や差止めは一人でできる。一定の重要な信託変更に反対する場合は、103条の受益権取得請求で公正な価格での取得を求める道もある。実務のポイント:多数派は「多数決で決まった」と押し切ろうとするが、92条の権利は多数決では消えない。少数派の交渉力はここから生まれる
間違えやすい点 AI による整理
- 「92条があるから、受託者の手抜きは必ず責任追及できる」という考えは、問いの立て方がずれている。92条が守るのは請求する権利であり、受託者の義務の中身までは守らない。善管注意義務(プロとして当然払うべき注意のレベル)は信託行為で変更でき(29条2項ただし書)、利益相反取引も信託行為で許容できる(31条2項1号)。義務そのものが薄く設計されていれば、40条の請求権が残っていても請求の根拠が細る。どこまで軽減できるかは、実務上、解釈が分かれている
- 受益者代理人を選任すると受益者本人は権利を行使できなくなる(139条4項)、という点は知られている。知られていないのは、その例外に92条の権利が含まれていることだ。代理人がいても、受益者本人は報告請求や差止めを単独で行える。受託者側から見れば、代理人を立てても本人からの直接の追及は封じられない
- 家族から見れば「親子で信頼しているのだから監視の仕組みはいらない」。法律から見れば、受託者は他人のための財産を自分の名義で持つ者であり、監視の回路が働くことを前提とした制度である。親の死後に第二受益者となった弟が38条で帳簿の閲覧を求めてきたとき、記録をつけていない受託者は、悪意がなくても説明できない立場に追い込まれる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 92条:受益者の監督・是正の権利(26項目) | 29条:受託者の善管注意義務の水準 105条:複数受益者の意思決定方法 |
| 信託行為による変更 | 制限不可(強行規定) | 信託行為で軽減可能(2項ただし書) 信託行為で多数決などに変更可能 |
| 受益者が複数いる場合 | 各受益者が単独で行使可能 | 受託者は受益者全体に対して義務を負う 原則全員一致、ただし92条の権利は除外 |
| 実務上の注意点 | 権利は残るが、使う人がいなければ機能しない | 義務が薄く設計されると請求の根拠が細る 多数決で決まっても92条の権利は消えない |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾では受益人の損害賠償・回復原状請求や信託文書の閲覧請求を個別に定めるが、日本の92条のように制限禁止の権利を一括列挙する条文は置かれていない
韓国は2011年の信託法全部改正で、日本の92条と同じく信託行為で制限できない受益者の権利を列挙する構造を採用した
米国統一信託法典は、信託条項によっても排除できない強行規定を列挙し、受益者への情報提供義務や裁判所の権限などを含めている
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の賃貸アパートを管理する家族信託で、受託者の兄が賃料収入の内訳を見せない。契約書には「受託者は定期報告を要しない」とある。定期報告を省く定めは置けても、受益者の側から求められた報告を拒む根拠にはならない。父本人またはその成年後見人が36条で報告を求め、38条で帳簿の閲覧を請求すれば、兄は応じなければならない
- あなたは受託者として母の預金を管理し、契約書の免責条項を頼りに、甥の留学費用へ「家族のため」と支出した。半年後、母の後見人から40条に基づく原状回復請求が届く。信託目的の範囲を外れた支出であれば、免責条項があっても請求権そのものは消えない
- もし受益者が三人いて、二人が受託者による信託不動産の売却に賛成したら、残る一人は黙るしかないのか? 105条の多数決ルールは92条の権利には及ばない。法令や信託行為に違反し、信託財産に著しい損害が生じるおそれがあれば、一人でも44条の差止めを請求できる
- 受託者が権限の範囲外で信託不動産を売却していたと分かった。27条の取消権は、取消しの原因を知った時から3か月で時効にかかる。数えている時間はない
- 友人から「親の信託契約に、受益者は受託者に一切口出ししないと書いてある。もう打つ手はないのか」と相談された。見るべきは契約書の文言より、92条に並ぶ26項目のリストである
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託契約書と不動産登記の信託目録を取り寄せ、受益者・受託者・信託監督人を確認する2. 36条の報告請求と38条の帳簿閲覧・謄写請求を、回答期限を明記した内容証明郵便で送る3. 拒否や不審な支出があれば、44条の差止めや40条の原状回復請求を検討し、悪質なら58条4項に基づき解任を申し立てる4. 受益者本人に判断能力がなければ、後見開始の申立てか、131条4項に基づく信託監督人の選任申立てを並行して進める
訴えられた側:1. 免責条項に頼らず、通帳・領収書・賃料台帳を信託財産ごとに分けて保存する(37条の帳簿作成義務) 2. 報告請求には期限内に書面で回答する。拒否すれば解任申立ての材料になる3. 個々の支出が信託目的の範囲内であることを、契約条項と結びつけて説明できるよう整理する4. 損失が出たら早めに補填と説明を行い、受益者から42条に基づく責任免除を書面で得られるか交渉する
時効(請求できる期限):92条自体に期限はない。ただし個々の権利には期限がある。権限外行為の取消権(27条)は、取消しの原因を知った時から3か月、行為の時から1年で消滅する。損失てん補等の請求権(40条)は、信託法43条により債務不履行責任の消滅時効の例に従い、原則として権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年。受益者が受益者に指定されたことを知るまでは時効が進行しない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
立案担当者の見解:92条は、信託行為による柔軟な設計を認めた平成18年改正の歯止めとして、受益者の監督・是正の権利を列挙して強行規定化したものと説明される。
義務軽減の限界をめぐる議論:92条は請求権を守るが義務の中身は守らないため、29条2項ただし書による注意義務の軽減がどこまで許されるかについては、実務上、解釈が分かれている。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年制定の旧信託法を全面的に置き換えた現行信託法(平成19年9月施行)で新設された。信託行為による柔軟な設計を広く認める代わりに、受益者の監督的権利を制限できない権利として列挙した。その後の整備法などによる各号の修正の有無は要検証
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:大正11年制定の旧信託法を全面改正した現行信託法で新設(平成19年9月施行)。信託行為による設計の自由を広げる代わりに、制限できない受益者の権利を列挙した
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