信託法 第93条(受益権の譲渡性)
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- 受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2.前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
この条文の基本情報
受益権の譲渡性とは何ですか?
定義受益権の譲渡性とは、信託法第93条に定められた規定で、「受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第93条(受益権の譲渡性)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第93条の条文原文は「受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。」で始まります。
- 信託法第93条は第一款 受益権の譲渡等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第93条の前の条は信託法第92条です。
- 信託法第93条の次の条は信託法第94条です。
- 信託法第93条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第93条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第93条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/93
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法93条は、受益者が受益権を原則として自由に譲渡できると定める。信託行為で譲渡を制限した場合、その定めを知り又は重大な過失で知らなかった第三者に対抗できる。
Q · 信託の受益権って、他人に売ったり譲ったりできるの?
原則できるが、譲渡制限の定めと性質上の制限に注意
信託法93条1項により、受益者は受益権を原則として自由に譲渡できます。ただし、特定の人の生活支援を目的とするものなど、性質上譲渡を許さない受益権は例外です。また信託行為に譲渡禁止・制限の定めがあれば、その定めを知っていた譲受人や、知らなかったことに重大な過失がある譲受人には制限を主張されます(2項)。さらに受託者に対抗するには、通知または承諾が必要です(94条)。
解説
信託に財産を入れた瞬間、その財産の名義は受託者に移る。あなたの手元に残るのは「受益権」(信託財産から利益や給付を受け取る権利)という目に見えない権利だけだ。93条は、この受益権を原則として自由に売ったり譲ったりできると定めている。不動産そのものを動かさずに、そこから生まれる利益の受け取り手だけを入れ替えられる、ということだ。ただし関門が二つある。一つ目に、性質上譲渡に向かない受益権は譲渡できない(特定の人の生活を支えることを目的とするものなど)。どこまでがこれに当たるかは、実務上、解釈が分かれている。二つ目に、信託契約に「譲渡禁止」や「受託者の承諾が必要」と書かれていれば、その定めを知っていた譲受人、または少し調べれば分かったのに怠った(重大な過失がある)譲受人には、その制限を主張できる。家族信託を組む側なら、この一行を入れるかどうかで、受益権が見知らぬ第三者に流れるリスクが変わる。買う側にとっては、信託契約書を読まずに代金を払うことが致命傷になりうる。
法的な位置づけ
信託法第93条は、受益権の譲渡性を定める規定である。受益者は受益権を譲り渡すことができるのが原則であり、例外として、性質上譲渡を許さない受益権と、信託行為による譲渡制限の定めがある受益権が挙げられる。譲渡制限の定めは、悪意または重大な過失のある譲受人その他の第三者に対抗できる。
手順
- 1.信託契約書の譲渡条項を確認する 受益権を買う・譲り受ける前に、信託契約書(信託行為)の写しを入手し、受益権の譲渡禁止・承諾要件・譲渡先の限定などの定めがないかを確認する。確認した記録も残す
- 2.性質上の制限がないかを検討する 信託目的が特定の受益者の生活支援などである場合、受益権が性質上譲渡に適さないと判断される余地がある。信託目的条項と受益者の定めを読み、専門家に意見を求める
- 3.受託者の承諾を書面で取得する 譲渡制限の定めがある場合、または対抗要件を確保したい場合、受託者から書面で承諾を得る。第三者対抗のため確定日付を付す
- 4.決済後、受託者へ通知し給付先を切り替える 承諾がない場合は、譲渡人から受託者へ確定日付のある証書(内容証明郵便など)で通知する。あわせて信託配当の振込先変更を依頼し、旧受益者への給付継続を防ぐ
よくある質問 AI による整理
Q1信託の受益権とは何ですか?
信託財産から利益や給付を受け取る権利です。財産の名義は受託者に移りますが、受益者はこの受益権を通じて信託の利益を受けます。
Q2受益権の譲渡に受託者の承諾は必要ですか?
法律上の原則では不要です(93条1項)。ただし信託契約に承諾を要する定めがあれば必要で、受託者に対抗するには通知か承諾が要ります(94条)。
Q3性質上譲渡できない受益権とはどんなものですか?
特定の人の生活支援や療養のためなど、受益者が誰であるかが信託目的と結びついた受益権が典型です。範囲は解釈が分かれます。
Q4受益権の譲渡を受託者や第三者に対抗するには?
譲渡人から受託者への通知か受託者の承諾が必要です。受託者以外の第三者には、確定日付のある証書による通知・承諾が必要です(94条)。
Q5家族信託の受益権は相続できますか?
原則として相続の対象になります。ただし信託行為で受益者の死亡により受益権が消滅する、次の受益者に移るなどの定めがあればそれに従います。
Q6受益権を担保にお金を借りられますか?
受益権には質権を設定できます(96条)。ただし性質上許されない場合や信託行為で質入れが制限されている場合は、担保としての価値が下がります。
Q7譲渡制限の重大な過失とはどの程度ですか?
少し注意すれば制限を知り得たのに確認を怠った状態です。信託契約書を容易に確認できたプロの投資家などは認められやすいとされます。
Q8信託契約に譲渡制限を後から入れられますか?
信託の変更(149条)により可能です。原則として委託者・受託者・受益者の合意などの手続が必要で、設計時に入れるより手間がかかります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で、父の受益権を僕にそのまま譲ってもらうことってできるんですか?
信託契約に譲渡制限の定めがなく、性質上も譲渡に向かないものでなければ、原則として可能である(93条1項)。ただし譲渡は法律行為なので、父に意思能力(民法3条の2)があることが前提になる。実務のポイント:無償で譲り受けると相続税法9条の2により贈与とみなされ、贈与税の申告が必要になりうる。手続より先に税理士へ試算を頼むのが筋である(最新の税制をご確認ください)
Q2不動産をそのまま買わずに「信託受益権」で買うと、何か得なんですか?
受益権を売買しても、不動産の所有者は受託者のまま変わらない。そのため一般に不動産取得税がかからず、登録免許税も現物の所有権移転より大幅に軽くなるとされ、大型物件の取引でよく使われる(最新の税制をご確認ください)。実務のポイント:信託受益権の売買仲介は宅建業の免許だけでは足りず、金融商品取引法上の第二種金融商品取引業の登録が必要である。仲介業者が登録業者かどうかは、最初に確認すべき点である
Q3譲渡禁止なんて知らずに受益権を買っちゃった場合、取り消されるんですか?
定めを知らず、知らなかったことに重大な過失もなければ、譲渡制限を主張されることはない(93条2項)。逆に、知っていたか、少し確認すれば分かったのに怠った場合は主張されうる。実務のポイント:重大な過失かどうかは買主の属性で大きく変わる。不動産ファンドやプロの投資家が信託契約を確認しなかった場合は、ほぼ言い訳にならないと考えるべきである。個人の買主でも、契約書の写しを受け取った記録は必ず残しておくこと
間違えやすい点 AI による整理
- 「家族信託の受益権は家族の中だけで回るもの」と思われがちだが、法律の原則は逆である。信託契約に何も書かなければ、受益権は原則として自由に譲渡できる(93条1項本文)。家族の外に出さない仕組みは、自動ではつかない。設計した人が書き込んで初めて生まれる
- 「受益権は売れるのか」という問いは、実は半分しか正しくない。当事者間では譲渡が成立しても、受託者への通知か受託者の承諾がなければ、受託者は元の受益者に給付を続けてよい(94条)。本当に問うべきは「誰に対して主張できる状態になっているか」である
- 譲渡制限の定めがあれば悪意の相手(定めを知っていた者)にしか主張できないことは知られている。しかし平成29年(2017年)の改正で、知らなかったことに重大な過失がある相手にも主張できるようになった点は見落とされやすい。プロの投資家が信託契約を確認せずに買えば、「知らなかった」はほぼ通らないと考えておくべきだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法93条:受益権を譲渡できるか(譲渡性と譲渡制限) | 信託法94条:譲渡を受託者・第三者に主張する要件(対抗要件) 信託法96条:受益権に質権を設定できるか |
| 制限・要件の中身 | 性質上の制限+信託行為による譲渡制限の定め | 受託者への通知または承諾、第三者には確定日付 性質上の制限+信託行為による質入れ制限の定め |
| 見落とした場合のリスク | 悪意・重過失の譲受人は譲渡制限を主張される | 受託者が旧受益者に給付を続けても文句を言えない 担保として取得した質権を主張できない場合がある |
他国ではどう定めているか 4 か国
受益権の譲渡に民法の債権譲渡規定(第294条〜第299条)を準用する。譲渡禁止特約は善意の第三者に対抗できない構造で、日本の重過失基準とは異なる。
受益権の譲渡性を原則とし、性質上の制限と信託行為による制限を認める点で日本と構造が近い。
受益権は法に従い譲渡・相続できるが、信託文件に制限規定がある場合を除くとする。第三者保護の基準は明文上詳細でない。
受益権は原則譲渡可能だが、spendthrift provision により任意・強制の双方の移転を制限できる。採用州ごとに扱いが分かれる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症対策として父と家族信託を組んだ長男。数年後、次男が父から受益権を譲り受けたと言い出した。信託契約に譲渡制限の定めがなく、父に意思能力が残っていたなら、その譲渡は原則有効になりうる。契約を作った日の一行の抜けが、兄弟の争いの火種になる
- もし不動産ファンドの受益権を買った後で、信託契約に「受託者の書面による承諾なく譲渡できない」と書いてあったと分かったらどうなるか? 契約書を確認する機会があったのに見なかったなら、重大な過失ありとされ、受託者から譲渡の効力を否定されうる
- あなたは受益権の売主である。買主との決済は来週金曜日。受託者の承諾書がまだ届いていない。この書類なしで決済を進めれば、後から全額返金を求められかねない
- 受益権を譲り受けたのに、信託配当が前の受益者の口座に振り込まれ続けている。譲渡人から受託者への通知か受託者の承諾がない限り、受託者には譲渡を対抗できない(94条)。通知を出し忘れたのは誰か、から話が始まる
- 友人から「親の信託の受益権を担保に借金できるか」と相談された。受益権には質権を設定できる(96条)。ただし譲渡制限の定めがあると、担保としての価値は大きく下がる。貸す側は真っ先に信託契約の該当条項を求めてくる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益権が無断で譲渡された場合は、まず信託契約に譲渡制限の定めがあるかを確認する2. 定めがあれば、譲受人がそれを知っていたか、知らなかったことに重大な過失があるかを示す証拠を集める(契約書の開示状況、取引経緯、譲受人の属性) 3. 受託者に書面で事情を伝え、譲受人への給付を止めるよう求める4. 家族信託であれば、信託の変更(149条)で今後の譲渡制限を追加することも、関係者と協議する
訴えられた側:1. 譲受人として制限を主張されたら、取得時に信託契約の内容を確認できる状況だったかを整理する2. 定めを知らず、確認しなかったことにも合理的な理由があれば、重大な過失はないと反論する3. 受託者への通知・承諾の有無と日付を確認する(94条) 4. 譲渡人に対しては、制限を告げなかったことを理由とする契約責任の追及(代金返還、損害賠償)を検討する
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。実務上の勝負は時間との競争であり、譲渡後ただちに確定日付のある証書で受託者へ通知するか、その承諾を得ることが重要である(94条2項)。二重譲渡の優劣は民法の債権譲渡と同様に考える見解が有力だが、詳細は専門家に確認すること
学説
通説:受益権は原則として譲渡可能であり、性質上の制限は受益者の個性が信託目的と不可分に結びつく場合に限られる。譲渡制限の定めは悪意・重過失の第三者に対抗でき、その限りで譲渡の効力を否定できると解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年制定の旧信託法に代わる新信託法の制定に伴い、受益権の譲渡性と信託行為による譲渡制限を定める条文として置かれた
- 平成29年(2017年)民法改正に伴う整備(令和2年4月1日施行) 2項が改正され、譲渡制限の定めを主張できる相手が「善意の第三者には対抗できない」という構造から、「知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者」へと書き換えられた
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年)を全面的に改めた新信託法(平成18年法律第108号)の制定により、受益権の譲渡性と信託行為による譲渡制限を定める規定として置かれた。
- 2.平成29年(2017年) 改正:民法(債権関係)改正に伴う整備法により2項が改正され、譲渡制限の定めを対抗できる相手が、定めを知り又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者と整理された(令和2年4月1日施行)。
- 信託法 第94条受益権譲渡の受託者・第三者への対抗要件
- 信託法 第95条譲渡時における受託者の抗弁の承継
- 信託法 第96条受益権への質権設定の可否
- 信託法 第149条信託の変更、譲渡制限の事後追加手続
- 民法 第466条債権の譲渡性と譲渡制限特約の一般原則
- 相続税法 第9条の2受益者変更時のみなし贈与・遺贈課税
- 金融商品取引法 第2条信託受益権を有価証券とみなす規定
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