信託法 第36条(信託事務の処理の状況についての報告義務)
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委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。
この条文の基本情報
信託事務の処理の状況についての報告義務とは何ですか?
定義信託事務の処理の状況についての報告義務とは、信託法第36条に定められた規定で、「委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第36条(信託事務の処理の状況についての報告義務)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第36条の条文原文は「委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。」で始まります。
- 信託法第36条は第二節 受託者の義務等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第36条の前の条は信託法第35条です。
- 信託法第36条の次の条は信託法第37条です。
- 信託法第36条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第36条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第36条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/36
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法36条は、委託者または受益者が受託者に対し、信託事務の処理状況と信託財産・信託財産責任負担債務の状況の報告を求められると定める。受益者の権利は信託行為で制限できない。
Q · 家族信託で受託者の兄に「親のお金がどうなっているか」を説明させることはできる?
受益者か委託者なら、受託者に報告を求められる
信託法36条により、委託者または受益者は受託者に対し、信託事務の処理状況、信託財産の状況、信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができます。受益者の報告請求権は信託契約で制限できません(92条)。一方、委託者の権利は信託行為で排除できます(145条1項)。帳簿そのものを確認したい場合は、38条の閲覧・謄写請求を併用します。
解説
家族信託を組むと、親の預金や実家の名義は受託者である長男に移る。法律上の持ち主は長男になる。それでも、財産を託した委託者と、そこから利益を受け取る受益者は、受託者に「今どうなっているのか」を説明させる権利を持つ。それが信託法36条の報告請求権である。説明させられる対象は三つある。信託事務をどう処理しているか、信託財産に何が残っているか、信託財産責任負担債務(信託財産から支払うべき借金や費用)がどれだけあるか。最も重要なのは、受益者のこの権利は信託契約で奪えないという点だ(92条7号)。契約書に「受託者は報告を要しない」と書いてあっても、受益者に対してその定めは通用しない。一方、委託者の権利は信託行為で外すことができる(145条1項)。通帳を見せてもらえない理由が「契約でそうなっている」なら、まず自分が委託者なのか受益者なのかを確かめることだ。立場一つで、扉が開くかどうかが決まる。
法的な位置づけ
信託法36条は、委託者および受益者が受託者に対して持つ報告請求権を定める規定である。請求の対象は、信託事務の処理の状況、信託財産に属する財産の状況、信託財産責任負担債務の状況の三点である。受益者の本請求権は信託行為によって制限することができない(同法92条)。
手順
- 1.信託契約書で自分の立場を確認する 信託契約書を取り寄せ、自分が委託者か受益者かを確認する。どちらでもなければ36条は使えない。あわせて委託者の権利を排除する条項(145条1項)や、信託監督人・受益者代理人の定めの有無も確認する
- 2.報告を求める項目と期間を特定する 対象期間、信託口口座の入出金、残高、不動産収支、借入れ・未払費用(信託財産責任負担債務)など、報告を求める項目を具体的に列挙する。曖昧な請求は曖昧な回答を招く
- 3.書面で報告を請求する 日付の残る書面(内容証明郵便など)で、根拠条文(信託法36条)、請求項目、回答期限を明記して受託者に送付する。帳簿そのものが必要なら38条の閲覧・謄写請求も併記する
- 4.拒否・虚偽があれば法的手続を検討する 期限までに回答がない、または説明に不審点がある場合は、弁護士と相談のうえ損失てん補請求(40条)や裁判所への受託者解任申立て(58条4項)を検討する。請求書面と回答の記録はすべて保管する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法36条の報告請求権とは?
委託者または受益者が受託者に対し、信託事務の処理状況、信託財産、信託財産責任負担債務の状況を報告するよう求められる権利です。
Q2受託者 報告義務 いつまでに応じる必要がある?
36条に回答期限の定めはありません。実務では書面で合理的な期限を設定して請求し、応じない場合は解任申立て(58条4項)などを検討します。
Q3家族信託 受託者 報告しない 違法?
受益者や委託者からの報告請求を拒み続けるのは義務違反です。重要な事由にあたれば、裁判所に受託者の解任を申し立てられます(58条4項)。
Q4信託契約で報告不要と定めることはできる?
受益者に対しては無効です。92条は受益者の36条の権利を信託行為で制限できないと定めています。委託者の権利は145条1項により排除できます。
Q5受益者が複数いる場合、一人だけで報告を求められる?
できます。報告請求権は受益者一人ひとりが単独で行使できる権利です。他の受益者の同意や代表者を通すことは要件ではありません。
Q6信託財産責任負担債務とは何ですか?
受託者が信託財産から弁済する責任を負う債務です(21条)。信託不動産の借入金や入居者に返還する敷金などが含まれ、36条の報告対象になります。
Q7相続人は家族信託の中身を見られる?
相続人というだけでは36条の請求権者になれません。請求できるのは委託者と受益者です。信託財産は原則として遺産分割の対象から外れます。
Q8受託者への報告請求は口頭でもいい?
36条に方式の定めはなく口頭でも可能です。ただし後の解任申立てや損失てん補請求の証拠を残すため、内容証明郵便など書面での請求が推奨されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄が受託者の家族信託なんですけど、通帳を見せろって言えますか?
あなたが受益者なら言えます。36条で処理状況や財産・債務の状況の報告を求められ、帳簿を見たい場合は38条の閲覧・謄写請求も使えます。受益者の報告請求権は信託契約でも制限できません(92条7号)。実務のポイント:「全部見せて」という曖昧な請求は曖昧な回答を招きます。期間と項目を特定して書面で出すと、回答の質が一段上がります
Q2私は受益者じゃなくて、将来の相続人なだけです。何もできないんですか?
36条の請求権者は委託者と受益者だけなので、直接の権利はありません。ただ、親(委託者)の判断能力があるうちなら、信託監督人(131条)や受益者代理人(138条)の選任、定期報告の条項を契約に入れるよう提案できます。実務のポイント:家族信託の紛争の多くは、組成時に監督の仕組みを入れなかったことが原因です。契約書を作り直せるのは、親が元気なうちだけです
Q3受託者が何度頼んでも報告してくれません。どうすればいいですか?
報告拒否が続くこと自体が、任務違反を疑わせる事情になります。重要な事由があれば、委託者または受益者は裁判所に受託者の解任を申し立てられ(58条4項)、財産が減っていれば損失てん補(40条)も請求できます。実務のポイント:いきなり裁判ではなく、内容証明で「期限までに回答がなければ法的手続を検討する」と書くだけで動く受託者は多い。請求した記録が、後の手続の証拠にもなります
間違えやすい点 AI による整理
- 「兄は信用できるか」と悩む人は多いが、問いの立て方が間違っている。信託法が見ているのは信頼ではなく、誰が請求権者かという資格である。受益者なら、信用していてもいなくても36条で報告を求めてよい。それは疑いの表明ではなく、制度が予定した確認作業にすぎない
- 36条を使えば通帳のコピーまで出させられると思われがちだが、36条が定めるのは「状況の報告」を求める権利である。帳簿や書類そのものを見たい、写しが欲しいという場合は、受益者による閲覧・謄写請求(38条)が別に用意されており、そちらには一定の拒絶事由もある。どちらを使うかで、手に入るものの粒度が変わる
- 委託者兼受益者が親一人という家族信託は多い。この形は便利だが、深刻さに気づかれていない。親が認知症になった瞬間、36条の権利を自分で使える人が誰もいなくなる。成年後見人を付ければ代わりに行使しうるが、それを避けたくて信託を組んだはずだ。監督の仕組みは、親が元気なうちに契約書に入れておくしかない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 請求できる人 | 信託法36条:委託者または受益者 | 信託法38条:受益者(利害関係人にも一部閲覧権あり) 信託法37条:受託者の作成義務(請求不要) |
| 得られるもの | 処理状況・財産・債務の状況の「報告」 | 帳簿・書類そのものの閲覧・謄写 毎年1回作成される貸借対照表等の書類と、その内容の報告 |
| 受託者が拒める余地 | 受益者からの請求は信託行為でも制限不可(92条) | 一定の拒絶事由がある(38条2項) 作成義務自体を免れることはできない |
| 信託行為での排除 | 委託者の権利は排除可(145条1項)、受益者の権利は不可 | 受益者の閲覧・謄写請求権は制限不可(92条) 法定の義務として存続 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も委託者・受益者に書類の閲覧・謄写と受託者への説明請求を認める。日本の36条と38条の機能を一条にまとめた構造
韓国も委託者・受益者に書類閲覧・謄写と説明要求を認め、日本と同様に受託者の情報提供義務を定める
委託者に信託財産の管理運用状況を知り説明を求める権利を認め、受益者にも同様の権利を準用する
米国は受託者に受益者への情報提供・報告義務を課す。州ごとに採用の有無と内容が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の認知症対策で家族信託を組み、受託者は兄、受益者は父本人。弟のあなたが「父さんの預金、どうなってる?」と聞いても、兄は答える義務を負わない。受益者でも委託者でもないあなたは、36条の請求権者ではないからだ。しかも父の判断能力が落ちれば、報告を求められる人が事実上いなくなる。信託監督人(131条)や受益者代理人(138条)を置いていない信託には、この空白が最初から組み込まれている
- 母から賃貸アパートの受託者を任されたあなたに、受益者である妹から LINE が届いた。「去年の家賃収入と修繕費、全部出して」。面倒だと既読スルーを続けると、妹は報告拒否を任務違反の材料として、裁判所に受託者の解任を申し立てる道を探り始める(58条4項)。帳簿を付けていなかったなら、問題は報告より前の段階にある
- もし信託契約書に「受託者は受益者に対し報告義務を負わない」と書かれていたら、受益者は黙るしかないのか? 答えは否である。92条は36条の報告請求権を、信託行為でも制限できない権利として列挙している。その一文は、受益者との関係では空文にすぎない
- 父の信託口口座から500万円が引き出されていた。兄は「修繕費だ」と言う。領収書や見積書が散逸する前に、今週中に36条の報告請求を書面で出す
- 受益者が三人いる収益不動産の信託。長女だけが受託者から毎月の収支を受け取り、次女と三男には何も届かない。36条の権利は受益者一人ひとりが単独で行使できる。「長女に聞いてくれ」は、受託者が拒む理由にならない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託契約書を取り寄せ、自分が委託者か受益者かを確認する。どちらでもなければ36条は使えない2. 報告を求める項目を特定する(期間、入出金、残高、借入れ・未払費用) 3. 口頭ではなく、日付の残る書面(内容証明郵便など)で請求する4. 帳簿そのものが必要なら38条の閲覧・謄写請求を併用する5. 拒否や虚偽が続けば、損失てん補請求(40条)や裁判所への解任申立て(58条4項)を弁護士と検討する
訴えられた側:1. 受託者に就任した日から、信託口口座と個人口座を混ぜない(34条の分別管理) 2. 帳簿を作り、毎年1回の書類作成(37条)を習慣にする3. 報告を求められたら、感情的に「疑うのか」と返さず、項目ごとに資料を添えて回答する4. 請求者が受益者か委託者かを確認し、権限のない親族からの要求には信託契約上の立場を丁寧に説明する5. 不明な支出があれば、隠すより先に説明する方が責任を小さくできる
時効(請求できる期限):36条の報告請求権そのものには行使期間の定めがなく、受益者・委託者の地位にある限り行使できる。報告で判明した不正に基づく損失てん補請求(40条)は、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効の例による(43条、民法166条:知った時から5年、行使できる時から10年。受益者に関する起算点の特則あり。最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:36条の報告請求権は受益者が受託者を監督するための中核的な権利であり、受益者の権利は92条により信託行為で制限できない。委託者の権利は145条1項により信託行為で排除しうる点で、両者の保護の強さは異なる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定 旧信託法40条の書類閲覧・説明請求の規律を整理し、委託者・受益者の報告請求権として現行信託法に新設。平成19年(2007年)9月30日施行。制定以降、本条の文言改正は確認されていない
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)。旧信託法40条の書類閲覧・説明請求の規律を整理し、委託者・受益者の報告請求権として新設。平成19年(2007年)9月30日施行
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