信託法 第216条(限定責任信託の要件)
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- 限定責任信託は、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、第二百三十二条の定めるところにより登記をすることによって、限定責任信託としての効力を生ずる。
- 2.前項の信託行為においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
- 一限定責任信託の目的
- 二限定責任信託の名称
- 三委託者及び受託者の氏名又は名称及び住所
- 四限定責任信託の主たる信託事務の処理を行うべき場所(第三節において「事務処理地」という。)
- 五信託財産に属する財産の管理又は処分の方法
- 六その他法務省令で定める事項
この条文の基本情報
限定責任信託の要件とは何ですか?
定義限定責任信託の要件とは、信託法第216条に定められた規定で、「限定責任信託は、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、第二百三十二条…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第216条(限定責任信託の要件)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第216条の条文原文は「限定責任信託は、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、第二百三十二条…」で始まります。
- 信託法第216条は第一節 総則に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第216条の前の条は信託法第215条です。
- 信託法第216条の次の条は信託法第217条です。
- 信託法第216条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第216条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第216条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/216
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法216条は、全債務を信託財産のみで弁済する旨を信託行為に定め、232条の登記をすることで限定責任信託の効力が生じると規定する。目的や名称等の記載も必須。
Q · 限定責任信託にすれば、受託者は信託の借金を自分の財産で払わなくて済むの?
定めて登記すれば原則そうだが、不法行為等は例外
信託法216条により、信託行為に「すべての信託財産責任負担債務は信託財産のみで履行する」旨を定め、232条に従って登記すれば限定責任信託の効力が生じ、受託者の固有財産は原則として責任を負いません。ただし登記前は通常の信託と同じく無限責任です。また受託者自身が信託事務でした不法行為による債務(217条・21条1項8号)や、悪意・重過失による第三者への損害(224条)は保護の外に残ります。
解説
信託の受託者は、原則として「預かった財産のために負った借金」を自分の財布でも払う立場にある(信託法21条)。親のアパートを家族信託で引き受けた子も、ファンドの器を担う会社も変わらない。この無限の責任を、信託のすべての債務について一括で断ち切る仕組みが限定責任信託であり、216条はその入場条件を定める。条件は二つある。信託行為(信託契約や遺言など、信託を立ち上げる行為)に「すべての信託財産責任負担債務は信託財産だけで払う」と書くこと。そして232条に従って登記すること。契約書に書いただけでは一円も守られず、登記した時点で初めて効力が生じる。さらに、信託の目的、名称、委託者・受託者の氏名と住所、事務処理地、財産の管理または処分の方法などを信託行為に必ず書き込まなければならない。ただし、この壁には穴が残る。受託者自身が信託事務で不法行為をした場合の債務は固有財産にも及び(217条)、悪意または重大な過失があれば第三者に直接賠償責任を負う(224条)。
法的な位置づけ
限定責任信託とは、信託行為においてすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもって履行責任を負う旨を定め、信託法232条に基づく登記をすることで効力を生ずる信託である。受託者の固有財産への責任追及を原則として遮断する一方、名称表示・取引時の明示・計算規律などの債権者保護規定が課される。
手順
- 1.信託行為に必要事項と限定責任の定めを入れる 信託契約または遺言に、すべての信託財産責任負担債務を信託財産のみで履行する旨と、216条2項の記載事項(目的・名称・委託者及び受託者・事務処理地・管理処分方法・法務省令事項)を漏れなく書き込む
- 2.名称に「限定責任信託」を入れる 信託の名称に「限定責任信託」の文字を含めて確定する(218条)。登記申請の段階で名称を差し替えないよう、起案時点で決めておく
- 3.事務処理地の法務局で登記する 信託法232条に従い、事務処理地を管轄する法務局へ限定責任信託の登記を申請する。効力は登記によって生じるため、物件取得や工事発注はこの後に回す
- 4.取引のたびに限定責任信託であることを示す 契約書・見積書・請求書で、限定責任信託の受託者として取引している旨を相手方に明示する(219条)。示さなければその相手には有限責任を主張できない
よくある質問 AI による整理
Q1限定責任信託とは何ですか?
受託者が信託の債務を信託財産の範囲だけで弁済すればよい信託です。信託法216条が根拠で、信託行為への定めと登記が効力要件です。
Q2限定責任信託の信託行為に書かなければならない事項は?
目的、名称、委託者・受託者の氏名または名称と住所、事務処理地、信託財産の管理または処分の方法、法務省令で定める事項です(216条2項)。
Q3限定責任信託の登記 いつまでに必要?
信託法232条により、所定の日から2週間以内に事務処理地を管轄する法務局で登記します。効力は登記によって生じます。
Q4家族信託で限定責任信託は使える?
制度上は使えます。ただし登記、名称表示、帳簿作成など会社並みの規律が加わるため、責任財産限定特約で足りるかも比較検討が必要です。
Q5一部の債務だけ限定責任にできる?
216条の限定責任信託はできません。条文は「すべての信託財産責任負担債務」を対象とします。個別の債務だけなら債権者との責任財産限定特約で対応します。
Q6限定責任信託の名称にルールはある?
あります。名称中に「限定責任信託」という文字を用いる義務があります(218条)。信託行為に定める名称もこれを満たす必要があります。
Q7限定責任信託の受託者が負う義務は?
取引時の明示(219条)、帳簿等の作成(222条)、給付可能額を超える受益者への給付の制限(225条)などが課されます。
Q8限定責任信託 違法な給付をしたらどうなる?
給付可能額を超えて受益者に給付した場合、受託者は填補責任を負いうるとされています(226条)。分配前に給付可能額の算定が欠かせません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で親のアパートを預かったら、そのローンって自分の借金になるの?
受託者として借りた債務は信託財産責任負担債務であり、原則として受託者の固有財産も責任を負う(信託法21条)。避けるには、債権者と責任財産限定の特約を結ぶか、216条の限定責任信託にするしかない。実務のポイント:家族信託の組成で限定責任信託まで検討されることは稀である。融資の前に「この債務の責任財産はどこまでか」と銀行に一言聞くだけで、契約書の中身が変わることがある
Q2限定責任信託にしておけば、受託者は何が起きても個人の財産は安全なんでしょ?
安全ではない。信託事務で受託者自身がした不法行為による債務は、固有財産への強制執行制限の対象外である(217条、21条1項8号)。悪意・重過失があれば第三者に直接賠償責任を負う(224条)。実務のポイント:見落とされやすいのは、給付可能額を超えて受益者に配った場合の填補責任(226条)である。家族への分配を気前よくした受託者ほど、ここで足をすくわれる
Q3登記ってどこに出すの?自分でやれる?
限定責任信託の事務処理地を管轄する法務局に申請する(232条)。本人申請も制度上は可能だが、登記の専門家は司法書士である。実務のポイント:登記より先に確認すべきなのは名称である。名称には「限定責任信託」の文字を入れる義務があり(218条)、ここを落とすと申請段階でつまずく。信託契約の起案時点で名称を確定させておく
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託財産は受託者の財産から独立しているのだから、受託者は信託の借金を個人で払わなくてよい」と思われがちだが、逆である。独立しているのは受託者個人の債権者からの差押えに対してであって(信託法23条)、信託のために負った債務は原則として受託者の固有財産にも及ぶ。限定責任信託は、この原則をひっくり返すための例外的な手続にすぎない
- 限定責任の定めを信託契約に書けば効力が出ると考えている人は多いが、それは片足しか踏み出していない。216条は登記を効力発生要件にしている。さらに219条は、取引のたびに相手方へ限定責任信託であることを示すよう求めており、示さなければその取引相手には主張できない。登記、名称、明示の三段がそろって初めて盾として機能する
- 受託者を引き受ける側から見れば「信託財産だけで払えば済む」安全な制度に見える。しかし法律から見れば、責任を限定する代わりに受託者には帳簿作成(222条)、受益者への給付制限(225条)、第三者への直接責任(224条)といった会社の役員並みの規律が課される。身軽になったと思った瞬間から、別の重りを背負っている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 216条:限定責任信託の成立要件(定め+登記) | 217条:固有財産への強制執行の制限と不法行為債務の例外 219条:取引相手への明示義務 |
| 受託者にとっての意味 | 信託行為と登記で全債務の責任を信託財産に限定 | 信託事務での自らの不法行為による債務は固有財産も責任を負う 明示を怠った取引相手には有限責任を主張できない |
| 債権者にとっての意味 | 登記簿で限定責任信託かどうかを確認できる | 不法行為債権なら受託者の固有財産に執行できる余地 明示がなかった取引なら受託者の固有財産へ請求できる余地 |
他国ではどう定めているか 4 か国
受益者に対する債務は信託財産の限度で履行すると定めるが、第三者債権者に対する登記型の限定責任信託制度は設けられていない
2011年の全部改正で유한책임신탁を導入。登記を要件とする点で日本の制度と構造が近い
フィデュシー契約で責任を patrimoine fiduciaire に限定できるが、その条項は明示的に承諾した債権者にしか対抗できない
受託者が受託者としての資格を開示して契約した場合、原則として個人責任を負わない。登記制度ではなく開示を軸とする
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の賃貸アパートを家族信託で引き受けた長男。外壁工事を800万円で発注したが、空室が続いて信託口座が底をついた。工務店が差し押さえに来るのは、アパートの家賃口座だけではない。長男名義の預金も対象になる。限定責任信託の登記がなく、工務店との責任財産限定特約もなければ、法律上それを止める手段はない
- あなたは工務店の経理担当で、取引先の名義に「限定責任信託」の六文字が入っていることに、請求書を出す段になって気付いた。回収の当ては原則として信託財産だけで、受託者の個人資産は狙えない。ただし相手が取引時にその旨を示していなかったなら、219条により有限責任を主張させない道がある
- 信託契約に限定責任の定めを入れたのに、登記を出し忘れていたらどうなる? 216条の効力は登記によって生じるため、その間の受託者は通常の信託と同じく固有財産でも責任を負う。書面上の安心は法的には存在しない
- 信託契約の調印は済んだ。登記期限は232条で2週間、来週には物件の売買決済がある。登記申請の前に決済を迎えれば、そこで生まれる債務に有限責任の効力が及ぶかどうかが争いの種になりうる。順番を入れ替えるのに残された時間は数日しかない
- 限定責任信託の受託者になった不動産管理会社が、家賃滞納者の部屋の鍵を無断で交換し、家財を搬出した。信託事務の処理として受託者自身がした不法行為による債務は、217条の保護の外にある(21条1項8号)。「限定責任だから会社の財産は無関係」という主張は通らない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 取引相手が信託の受託者なら、登記事項証明書を取得して限定責任信託の登記があるか確認する2. 取引時に限定責任信託である旨の明示がなかったなら、219条により受託者の固有財産へ請求できる余地がある。契約書や見積書の名義を保全しておく3. 損害が受託者自身の不法行為によるものなら217条の制限外。悪意・重過失があれば224条で受託者個人に直接請求する4. 受益者への過大な給付があった形跡があれば、225条・226条の観点から弁護士に相談する
訴えられた側:1. 受託者を引き受ける前に、信託行為へ216条2項の必要事項(目的、名称、委託者・受託者、事務処理地、管理処分の方法など)と全債務の限定責任の定めを入れる2. 登記を完了してから取引を始める3. 名称に「限定責任信託」を用い(218条)、すべての契約書・請求書で受託者として取引していることを明示する(219条) 4. 帳簿を整え(222条)、給付可能額を超える給付をしない5. 既に請求を受けたなら、登記日と明示の有無を時系列で整理し、法的な反論の土台を作る
時効(請求できる期限):限定責任信託の定めの登記は、事務処理地を管轄する法務局で2週間以内に行う(信託法232条。起算点を含め、最新の改正状況をご確認ください)。有限責任の効力は登記の時点から生じる。取引上の債権そのものに特定の時効はなく、一般消滅時効(民法166条。権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される
学説
通説:限定責任信託は、受託者の無限責任を原則とする信託法の例外であり、有限責任の便益と引換えに、登記による公示、名称表示、取引時の明示、計算書類、給付制限という株式会社類似の債権者保護規律に服するものと理解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定、平成19年(2007年)9月30日施行 旧信託法(大正11年)に代わる新信託法の制定に伴い、限定責任信託の制度が新設された。その後の文言改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年)に代わる新信託法の制定に伴い、限定責任信託の制度が新設された。平成19年(2007年)9月30日施行
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