信託法 第217条(固有財産に属する財産に対する強制執行等の制限)
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- 限定責任信託においては、信託財産責任負担債務(第二十一条第一項第八号に掲げる権利に係る債務を除く。)に係る債権に基づいて固有財産に属する財産に対し強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることはできない。
- 2.前項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法第三十八条及び民事保全法第四十五条の規定を準用する。
- 3.第一項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。
この条文の基本情報
固有財産に属する財産に対する強制執行等の制限とは何ですか?
定義固有財産に属する財産に対する強制執行等の制限とは、信託法第217条に定められた規定で、「限定責任信託においては、信託財産責任負担債務(第二十一条第一項第八号に掲げる権利に係る債務を除く。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第217条(固有財産に属する財産に対する強制執行等の制限)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第217条の条文原文は「限定責任信託においては、信託財産責任負担債務(第二十一条第一項第八号に掲げる権利に係る債務を除く。」で始まります。
- 信託法第217条は第一節 総則に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第217条の前の条は信託法第216条です。
- 信託法第217条の次の条は信託法第218条です。
- 信託法第217条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第217条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第217条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/217
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法217条は、限定責任信託の取引債権者が受託者の固有財産に強制執行や滞納処分をすることを禁じる。ただし不法行為債権は除かれ、違法な執行には受託者自ら異議を出す必要がある。
Q · 限定責任信託の借金で、受託者の自宅や預金は差し押さえられるの?
原則できない。ただし不法行為債権は例外で、異議は自分で出す
信託法217条1項により、限定責任信託の取引から生じた債権に基づいて受託者の固有財産に強制執行や国税滞納処分をすることはできません。ただし、信託事務の処理中に受託者がした不法行為による損害賠償債権(21条1項8号)は除外されます。また債務名義は受託者個人名義のため、執行機関は自動では止めません。受託者は民事執行法38条を準用する第三者異議の訴え、または国税滞納処分への不服申立てで自ら異議を主張する必要があります。
解説
信託には法人格がない。そのため、信託事務に関する取引で生じた借金は、法律上は受託者個人の名義の債務になる。普通の信託であれば、取引先は受託者の自宅や預金にまで手を伸ばせる。ここを切り離すのが限定責任信託であり、217条はその切り離しを差押えの場面で保証する条文である。信託の取引から生じた債権者は、受託者の固有財産(受託者がもともと自分のものとして持っている財産)に強制執行、仮差押え(判決前に相手の財産を凍結する手続)、競売、国税滞納処分をかけることができない。ただし落とし穴が二つある。一つ目は、信託事務の処理中に受託者が不法行為をして生じた損害賠償債権(21条1項8号)は除外されている点である。二つ目は、保護が自動では働かない点である。判決には受託者個人の名前しか書かれていないため、執行裁判所は差押えの対象が信託財産か固有財産かを見分けない。違法な差押えを止めるには、受託者が自分から異議を出さなければならない。盾は渡されるが、構えるのは受託者自身である
法的な位置づけ
信託法217条は、限定責任信託における受託者の固有財産に対する執行制限を定める規定である。信託財産責任負担債務に係る債権者は、21条1項8号の不法行為債権を除き、受託者の固有財産に強制執行、保全執行、担保権の実行・競売、国税滞納処分をすることができず、違反した執行には受託者が第三者異議の訴えの準用または不服申立てにより異議を主張する。
手順
- 1.差押命令の債権を切り分ける 差押命令に記載された債務名義と請求債権を確認し、信託事務の取引から生じた信託財産責任負担債務か、21条1項8号の不法行為債権か、受託者個人の債務(個人保証など)かを区別する
- 2.限定責任信託であることの証拠をそろえる 限定責任信託の登記事項証明書を取得し、当該取引で受託者が限定責任信託であることを相手方に示していた証拠(契約書の表示・名称)を集める。219条の明示がないと限定責任を主張できない
- 3.第三者異議の訴えと執行停止を同時に申し立てる 217条2項に基づき民事執行法38条を準用して執行裁判所に第三者異議の訴えを提起し、同時に執行停止の申立てをする。訴えだけでは競売や配当は止まらないため、停止の申立てを必ずセットにする
- 4.国税滞納処分なら不服申立てで争う 信託事業の滞納税を原因として固有財産に滞納処分がされた場合は、217条3項により、処分を知った日の翌日から3か月以内に再調査の請求または審査請求として異議を主張する
よくある質問 AI による整理
Q1限定責任信託とは何ですか?
信託事務の取引で生じた債務について、受託者が信託財産の範囲でのみ責任を負う信託です。信託行為で定めたうえで登記することで効力が生じます(信託法216条)。
Q2限定責任信託は登記しないとどうなりますか?
登記をしなければ限定責任信託としての効力が生じず、受託者は通常の信託と同様に固有財産でも責任を負います。217条の執行制限も働きません。
Q3信託法217条の「21条1項8号を除く」とはどういう意味?
受託者が信託事務を処理する中で行った不法行為による損害賠償債権は、執行制限の対象外という意味です。被害者は受託者の固有財産にも差押えができます。
Q4受託者の固有財産が違法に差し押さえられたらどうする?
民事執行法38条を準用する第三者異議の訴えを執行裁判所に提起し、あわせて執行停止の申立てをします。配当が終わる前に動くことが重要です。
Q5信託の滞納税で受託者の預金に滞納処分が来たら いつまでに争う?
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に、再調査の請求または審査請求として不服申立てをします(217条3項、国税通則法77条1項)。
Q6限定責任信託のデメリットは?
名称表示や取引相手への明示、計算書類の作成、受益者への給付制限(225条)などの義務が加わります。取引先や金融機関から個人保証を求められることもあります。
Q7限定責任信託の名称に決まりはある?
信託の名称中に「限定責任信託」という文字を用いる必要があります(218条)。取引の安全のため、相手方が一目で分かるようにする趣旨です。
Q8限定責任信託の受託者が個人保証をしたら217条で守られる?
守られません。個人保証は受託者自身が負う別個の保証債務なので、保証債権者は受託者の固有財産に執行できます。217条の遮断は保証の範囲で失われます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で受託者になったんですが、限定責任信託にしておかないと危ないんですか?
普通の信託では、信託事務で生じた債務について受託者は固有財産でも責任を負う(21条)。限定責任信託として登記すれば、217条で固有財産への執行が遮断される。実務のポイント:限定責任信託を選ぶと、帳簿作成や計算書類の義務が加わり、さらに債権者保護のための給付制限(225条)もかかる。融資する銀行が受託者の個人保証を求めてきた場合、遮断の効果は保証の範囲で消える。登記より先に借入条件を確認すること
Q2違法な差押えなら、裁判所が気付いて止めてくれますよね?
止めてくれない。信託には法人格がないため、債務名義には受託者個人の名前しか載らず、執行機関は差押えの対象が固有財産かどうかを審査しない。だから217条2項は、受託者が自分で異議を主張する仕組みにしている。実務のポイント:第三者異議の訴えを提起しただけでは執行は止まらない。執行停止の申立てを同時に出さなければ、裁判の途中で競売が進む
Q3信託の取引先が倒産しそうな相手でも、受託者個人には全然請求できないんですか?
取引上の債権であれば原則として請求できない(217条1項)。例外は三つある。不法行為債権(21条1項8号)、受託者が限定責任信託であることを示さずに取引した場合(219条)、受託者に悪意または重過失がある場合の224条責任である。実務のポイント:給付制限(225条)を超えて受益者に配当されていれば、受託者と受益者に填補を求める道がある(226条)。決算書の配当欄が攻め口になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「限定責任信託にすれば、受託者は何があっても個人資産を失わない」と思われがちだが、それは誤りである。信託事務の処理で生じた不法行為債権(21条1項8号)は217条の対象外で、さらに受託者が悪意または重過失で任務を怠った場合は、224条により第三者に対して個人として責任を負う。外れているのは取引上の債務についての責任であり、すべての責任が外れているわけではない
- 217条を知っていても、執行裁判所が条文を見て差押えを止めてくれると考えているなら、それは条文の重みを読み違えている。判決の名義は受託者個人なので、裁判所は形式審査だけで差押えを許可する。違法な執行であっても、受託者が異議を出さない限り手続は進み、配当まで終わってしまう。違法かどうかと止まるかどうかは、まったく別の問題である
- 取引相手から見ると「相手は信託だから信用できる」と映るかもしれない。しかし法律上は「回収の当ては信託財産だけ」という意味になる。だからこそ219条は、限定責任信託であることを取引の際に相手へ示すよう受託者に義務付けている。示されていたのに読み飛ばした側は、217条を受け入れるしかない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 守る財産と方向 | 217条:受託者の固有財産を、限定責任信託の取引債権者の執行から守る | 23条:信託財産を、受託者個人の債権者など信託と無関係な債権者の執行から守る 219条:限定責任を取引相手に主張するための前提要件(明示)を定める |
| 対象となる債権者 | 信託財産責任負担債務の債権者(21条1項8号の不法行為債権者を除く) | 信託財産責任負担債務以外の債権に基づく債権者 限定責任信託の受託者と取引した相手方 |
| 違反・不備のときの帰結 | 受託者が異議を主張(民事執行法38条準用、国税は不服申立て) | 受託者または受益者が異議を主張(民事執行法38条準用) 明示がなければ当該相手方に限定責任を主張できず、固有財産も責任財産になる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾には限定責任信託の制度がない。受益者に対する債務は信託財産の限度で責任を負うが、取引債権者に対する受託者固有財産の遮断を登記で選択する仕組みは置かれていない
韓国は2011年の信託法全部改正で有限責任信託を導入し、登記と名称表示を要件とする点で日本と構造が近い
フランスのフィデュシーは信託財産を独立の財産として扱い、契約により債務の負担を信託財産に限定する余地を認める
米国では受託者が受託者としての資格を示して適切に締結した契約について個人責任を負わないとする。日本の219条の明示要件と発想が近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは限定責任信託の受託者として賃貸ビルを運営している。テナント工事の代金をめぐる訴訟で業者が勝訴し、ある朝、あなた個人の銀行口座が差し押さえられた。217条1項で違法な執行なので、2項に基づいて民事執行法38条の第三者異議の訴えを準用して争うことになる。配当が終わる前に動かなければ、取り戻すのは格段に難しくなる
- もし信託財産が底をつき、取引先への支払いが全部止まったら、受託者の自宅は無事でいられるのか? 限定責任信託として登記していて、取引の際に限定責任信託であることを相手に示していれば、原則として自宅に手は届かない。逆に、示していなかった取引の相手には限定責任を主張できない(219条)
- 受託者が管理する信託所有のマンションで、外壁タイルが落ちて通行人がけがをした。信託事務の処理中に起きた不法行為の損害賠償債権は21条1項8号に当たるため、217条の保護の外にある。被害者は受託者の固有財産にも差押えをかけられる
- 税務署から、受託者の固有財産である預金に滞納処分の差押通知が届いた。原因は信託事業の滞納税である。差押えを知った日の翌日から3か月以内に、再調査の請求または審査請求という形で異議を出す必要がある(217条3項、国税通則法77条1項)
- あなたは限定責任信託と取引する側の資材業者だ。売掛金が回収できなくなったとき、受託者個人の資産はあてにできない。取れるのは信託財産だけである。契約前に信託財産の規模を確かめなかったこと自体が、最大の失敗だったことになる
取るべき行動
被害を受けた側:受託者として固有財産を差し押さえられた場合の手順である。1. 差押命令に記載された債務名義と請求債権を確認し、信託財産責任負担債務かどうか、21条1項8号の不法行為債権に当たらないかを切り分ける2. 限定責任信託の登記事項証明書と、219条の明示をした証拠(契約書の表示など)をそろえる3. 第三者異議の訴えと執行停止の申立てを同時に出す4. 国税滞納処分であれば、再調査の請求または審査請求で争う
訴えられた側:信託の債権者として受託者から異議を出された場合の手順である。1. 自分の債権が21条1項8号の不法行為債権に当たらないかを検討する2. 取引の際に受託者が限定責任信託であることを示していたかを確認し、示していなければ219条で限定責任の主張そのものを否定する3. 受託者に悪意または重過失による任務懈怠があれば、224条に基づく個人責任として別の訴えを立てる
時効(請求できる期限):第三者異議の訴えに法定の出訴期間はないが、執行手続が終了(配当完了など)するまでに提起しなければ意味を失う。国税滞納処分への異議は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に再調査の請求または審査請求として行う(国税通則法77条1項)。(最新の改正状況をご確認ください)
学説
立法趣旨:信託には法人格がなく債務名義は受託者個人名義となるため、執行機関は対象財産が信託財産か固有財産かを審査しない。そこで217条2項・3項は、受託者自身の異議によって違法執行を是正する構造を採用したと説明される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 現行信託法(平成18年法律第108号)の制定で、限定責任信託の制度とともに新設された。施行は平成19年(2007年)9月30日。その後の改正の有無は要確認
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により、限定責任信託の制度とともに新設。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第21条信託財産責任負担債務の範囲と8号除外
- 信託法 第216条限定責任信託の要件と登記による効力発生
- 信託法 第219条取引相手への明示がない場合の主張制限
- 信託法 第224条悪意重過失による受託者の第三者責任
- 信託法 第23条信託財産への強制執行制限(逆方向の遮断)
- 民事執行法 第38条準用される第三者異議の訴え
- 民事保全法 第45条保全執行に対する異議の準用規定
- 国税通則法 第75条滞納処分への不服申立ての方法
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