信託法 第219条(取引の相手方に対する明示義務)
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受託者は、限定責任信託の受託者として取引をするに当たっては、その旨を取引の相手方に示さなければ、これを当該取引の相手方に対し主張することができない。
この条文の基本情報
取引の相手方に対する明示義務とは何ですか?
定義取引の相手方に対する明示義務とは、信託法第219条に定められた規定で、「受託者は、限定責任信託の受託者として取引をするに当たっては、その旨を取引の相手方に示さなければ、これを当該取引の相手方に対し主張することができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第219条(取引の相手方に対する明示義務)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第219条の条文原文は「受託者は、限定責任信託の受託者として取引をするに当たっては、その旨を取引の相手方に示さなければ、これを当該取引の相手方に対し主張することができない。」で始まります。
- 信託法第219条は第一節 総則に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第219条の前の条は信託法第218条です。
- 信託法第219条の次の条は信託法第220条です。
- 信託法第219条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第219条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第219条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/219
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法219条は、限定責任信託の受託者が取引時にその旨を相手方に示さなければ、責任を信託財産に限ることを当該相手方に主張できないと定める。
Q · 限定責任信託の登記をしていれば、取引相手に「責任は信託財産の範囲まで」と言えるの?
取引ごとにその旨を示さなければ主張できない
信託法219条により、限定責任信託の受託者は、取引をするに当たって限定責任信託の受託者として取引する旨を相手方に示さなければ、その相手方に限定責任を主張できません。登記(216条)は制度の効力要件であり、個々の取引相手への主張には別途この明示が必要です。表示を欠いた取引では、その債務について受託者の固有財産まで請求対象となりえます。
解説
限定責任信託は、信託財産だけで債務を払えばよく、受託者個人の財産(自宅や預金。法律上は「固有財産」)は守られる仕組みである。ただしその盾は、登記をしただけでは取引相手に向けて使えない。信託法219条は、取引のたびに「限定責任信託の受託者として取引する」と相手に示すことを求めている。示さなかった取引では、受託者はその相手に対して「責任は信託財産の範囲までだ」と言えない。結果として、その債務について受託者個人の財産まで請求の対象になりうる。相手側から見ると話は逆で、契約書や請求書に限定責任信託の表示が見当たらなければ、受託者本人に請求する道が残る。盾を使えるかどうかは、登記簿ではなく取引の現場で決まる。
法的な位置づけ
信託法219条は、限定責任信託の受託者が取引をするに当たり、限定責任信託の受託者として取引する旨を取引の相手方に示すことを求める規定である。表示を欠いた取引では、受託者は当該相手方に対し、責任が信託財産の範囲に限られることを主張できない。登記(216条)とは別個に、取引単位で機能する主張要件である。
手順
- 1.取引書類のテンプレートに表示を固定する 契約書、発注書、見積書、請求書、メール署名のテンプレートに「限定責任信託〇〇 受託者△△」の表示を組み込み、担当者が毎回入力しなくても表示される状態にする
- 2.契約書の三か所に明示する 新規取引の契約書では、当事者欄・署名欄・本文条項の三か所に、限定責任信託の受託者として取引する旨を記載し、後日の立証に備える
- 3.相手方の受領を記録に残す 表示入りの契約書やメールを相手方に送付し、受領・合意の記録(署名済み契約書、返信メール等)を保管する
- 4.既存取引の表示漏れを点検する 限定責任信託の成立後に行った取引を一覧化し、表示のない取引を洗い出す。継続取引の相手には書面で改めて表示し、今後の取引の扱いを明確にする
よくある質問 AI による整理
Q1信託法219条とは何ですか?
限定責任信託の受託者が、取引のたびに「限定責任信託の受託者として取引する」旨を相手方に示すことを求める規定です。示さなければ限定責任を主張できません。
Q2限定責任信託とは何ですか?
信託財産責任負担債務について、受託者が信託財産のみで責任を負う信託です。信託行為での定めと登記により成立し、受託者の固有財産は原則として責任対象外になります。
Q3限定責任信託の表示を忘れたらどうなる?
その取引の相手方には限定責任を主張できず、当該債務について受託者の固有財産(自宅や預金など)まで請求の対象となるおそれがあります。
Q4限定責任信託の表示は口頭でも有効?
条文は方法を限定していませんが、紛争時に「示した」ことを立証する必要があります。口頭のみでは証明が難しいため、契約書等の書面への記載が実務上重要です。
Q5家族信託で受託者が個人責任を負うことはある?
通常の信託では受託者は固有財産でも責任を負いえます。限定責任信託にしても、219条の明示を欠いた取引では固有財産が請求対象となる可能性があります。
Q6限定責任信託の登記だけで第三者に主張できる?
できません。登記は限定責任信託の効力要件(216条)であり、個々の取引相手に主張するには別途、取引時の明示(219条)が必要です。
Q7限定責任信託の契約書はどう書けばいい?
当事者欄・署名欄に「限定責任信託〇〇 受託者△△」と記載し、本文にも限定責任信託の受託者として締結する旨の条項を入れるのが慎重な実務です。
Q8限定責任信託の受託者に個人で請求できる?
取引時に限定責任信託である旨の表示がなかった場合、相手方は219条を根拠に受託者個人の財産にも請求できる余地があります。証拠の確認が出発点です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1信託の名前に「限定責任信託」って入っていれば、それで示したことになりますか?
218条は、限定責任信託の名称に「限定責任信託」という文字を用いることを求めています。ただ、名称を記載しただけで219条の「その旨を示した」と言えるかは、取引ごとの具体的事情によって判断され、実務上も明確な線引きは定まっていません。実務のポイント:慎重な専門家は名称の記載だけに頼りません。契約書の本文に「受託者は限定責任信託の受託者として本契約を締結する」という一文を独立して入れておくことを勧めています
Q2相手が限定責任信託だと知っていたのに、表示がなかったことを理由に個人へ請求できるんですか?
219条の文言は、受託者がその旨を「示さなければ」主張できないというものです。そのため、相手が知っていたかどうかではなく、受託者が示したかどうかが基準になります。ただ、相手が明らかに知っていた場合に信義則でこの主張を制限できるかについては、解釈が分かれうる論点です。実務のポイント:受託者側は、相手が限定責任信託と知っていたことを示すメールなどがあれば、それを「示した」ことの証拠として使えないか検討します。一通の過去メールが防御の決め手になることがあります
間違えやすい点 AI による整理
- 「登記したのだから、誰に対しても限定責任を主張できる」と思われがちだが、それは違う。登記は限定責任信託の効力を生じさせる要件(216条)であり、個々の取引相手に主張するには、それとは別に219条の明示が必要になる。登記と明示は役割の異なる二つの関門である
- 表示を忘れても、損をするのはその一件だけで小さな話だと受け止める人が多い。しかし実際には、その一件の債務全額について受託者個人の財産まで責任範囲が広がりうる。大型の工事契約や借入れで表示を落とせば、家族の資産を守るために設計した信託が、受託者個人を直撃する結果になる
- 取引相手の立場では「限定責任信託と知っていたかどうか」が問題に見える。だが条文が問うのは、受託者がその旨を相手に「示した」かどうかである。表示の有無と立証の準備が中心になる。なお、相手がたまたま知っていた場合の扱いや、名称表示(218条)だけで足りるかについては、明確な判例の蓄積が乏しく、解釈の余地が残る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 役割 | 信託法219条:取引ごとに相手方へ限定責任信託である旨を示す義務 | 信託法216条:信託行為の定めと登記による限定責任信託の成立 信託法218条:名称に「限定責任信託」の文字を用いる義務 |
| 効力の及ぶ範囲 | 個々の取引相手との関係(取引単位) | 信託全体(制度としての効力発生) 信託の名称(外観上の識別) |
| 欠いた場合の結果 | 当該相手方に限定責任を主張できない | 限定責任信託としての効力が生じない 名称使用義務違反となる(219条の明示と同視できるかは解釈の余地) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾信託法は受託者の受益者に対する責任を信託財産の限度とするが、第三者との取引で限定責任を主張する限定責任信託制度や取引時の明示義務は設けていない
韓国は2011年の信託法全面改正で有限責任信託を導入しており、日本の限定責任信託と同種の制度を持つ
フランスのフィデュシーでは、受託者が信託のために行為するときはその旨を明示しなければならず、取引時の表示を重視する点で本条と発想が近い
米国の統一信託法典は、受託者資格を契約上開示して適切に締結した契約について受託者の個人責任を否定しており、開示を責任限定の鍵とする点で本条と共通する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 資産管理のために家族で限定責任信託をつくり、長男が受託者になった。賃貸物件の修繕を工務店に頼んだとき、「信託の件で」と口頭で伝えただけで、発注書には個人名しか書かなかった。修繕費が払えなくなると、工務店から長男個人の口座に差押えが来るおそれがある
- 取引先の会社が、どこかの時点で限定責任信託の受託者として契約していたと後から言い出したらどうなるか? 契約書、見積書、メールのどこにもその表示がなければ、相手はこの言い分を主張できない。あなたは受託者個人の財産にも請求できる
- 受託者として新規の仕入先と契約する。署名欄の肩書きをどう書くか、契約日まであと2日しかない。
- 知り合いの不動産オーナーから「限定責任信託にしたから個人の責任はもうない」と聞かされた。だが、取引のたびに表示しているかを尋ねると、答えに詰まった。あなたが指摘しなければ、その人は穴の空いた傘をさしたまま歩き続けることになる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 未払いの相手が限定責任信託の受託者だと後から言い出したら、契約書、見積書、請求書、メール、LINEをすべて集め、限定責任信託の表示があるかを確認する2. 表示がなければ、219条を根拠に受託者個人も請求先として内容証明郵便を送る3. 受託者個人の財産状況を調べ、仮差押えが必要かを弁護士と検討する4. 受託者に悪意または重大な過失による任務懈怠があれば、224条に基づく責任追及も並行して検討する
訴えられた側:1. 問題の取引で何をもって表示したかを洗い出す。契約書の当事者欄、署名欄、メール署名、事前の説明資料などである2. 書面で示した証拠が出てくれば、それを中心に反論を組み立てる3. 口頭でしか伝えていない場合は、立証が難しいことを前提に早期和解を検討する4. 再発防止として、契約書、請求書、メール署名のテンプレートに表示を固定し、新しく担当になった者にも徹底する
時効(請求できる期限):219条には特定の時効がないが、一般消滅時効(民法166条、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年)が適用される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 限定責任信託制度の創設に伴い新設された条文である。旧信託法には対応する規定がなかった
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全部改正(平成18年法律第108号)により限定責任信託制度が創設され、本条が新設された。旧信託法に対応する規定はない。
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