信託法 第95条の2(共同相続における受益権の承継の対抗要件)
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相続により受益権が承継された場合において、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該受益権を承継した共同相続人が当該受益権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該受益権を承継した場合にあっては、当該受益権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして受託者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が受託者に通知をしたものとみなして、同法第八百九十九条の二第一項の規定を適用する。
この条文の基本情報
共同相続における受益権の承継の対抗要件とは何ですか?
定義共同相続における受益権の承継の対抗要件とは、信託法第95条の2に定められた規定で、「相続により受益権が承継された場合において、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該受益権を承継した共同相続人が当該受益権に係る遺言の内容…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第95条の2(共同相続における受益権の承継の対抗要件)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第95条の2の条文原文は「相続により受益権が承継された場合において、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該受益権を承継した共同相続人が当該受益権に係る遺言の内容…」で始まります。
- 信託法第95条の2は第一款 受益権の譲渡等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第95条の2の前の条は信託法第95条です。
- 信託法第95条の2の次の条は信託法第96条です。
- 信託法第95条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第95条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第95条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/95_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法95条の2は、法定相続分を超えて受益権を相続した人が遺言等の内容を示して受託者に単独で通知すれば、相続人全員の通知とみなす規定。第三者への対抗には確定日付が要る。
Q · 受益権を相続したとき、受託者への通知に相続人全員の協力は必要?
不要。多く承継した相続人が単独で通知できる
信託法95条の2により、民法900条・901条で計算した法定相続分を超えて受益権を承継した相続人は、遺言または遺産分割の内容を明らかにして受託者に通知すれば、相続人全員が通知したものとみなされます。ただし、超過部分を他の相続人の債権者などの第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知が必要と解されています(信託法94条2項)。差押えなどとの優劣は、対抗要件を備えた時期の先後で決まります。
解説
「遺言に『長男に受益権を全部相続させる』と書いてあるから、長男のものだ」。2019年7月1日以降に開始した相続では、この理屈は半分しか通らない。平成30年の相続法改正で、法定相続分(民法900条・901条で計算される取り分)を超えて受け取った部分は、対抗要件(第三者に「これは自分のものだ」と主張するための手続)を備えなければ第三者に主張できなくなった(民法899条の2)。信託の受益権の場合、その手続は受託者への通知である。本来なら共同相続人全員で通知するところを、本条は、多く受け取ったあなたが遺言や遺産分割の内容を明らかにして単独で通知すれば、全員が通知したものとみなす。協力しないきょうだいのハンコは要らない。ただし、受託者以外の第三者(たとえば他の相続人の債権者)に対抗するには、確定日付のある証書による通知が必要と解されている(信託法94条2項)。普通郵便で済ませた人と内容証明郵便で送った人では、差押えが入った瞬間に結果が分かれる。
法的な位置づけ
信託法95条の2は、相続による受益権承継の対抗要件に関する特則である。民法900条・901条により算定した相続分を超えて受益権を承継した共同相続人が、遺言または遺産分割の内容を明らかにして受託者に承継を通知した場合、共同相続人全員による通知があったものとみなして民法899条の2第1項を適用する。
手順
- 1.受益権が相続の対象か確認する 信託契約書を取り寄せ、受益者死亡時の後継受益者や残余財産の帰属先の定めがないか確認する。定めがあれば受益権は契約に従って移り、本条の手続の場面ではない
- 2.承継の根拠書類をそろえる 法定相続分を超えて受益権を承継したことを示す遺言書または遺産分割協議書の写しと、相続関係を示す戸籍謄本等を用意する
- 3.確定日付のある方法で受託者に通知する 承継した受益権と遺言・遺産分割の内容を明示した通知書を、配達証明付き内容証明郵便で受託者に送る。第三者への対抗に備え確定日付を確保する
- 4.以後の配当の支払先を書面で確認する 通知の到達後、受託者に対し今後の配当や交付の支払先が自分に変更されたことを書面で確認してもらう。到達前に配当が行われていないかも確認する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法95条の2とは?
法定相続分を超えて受益権を相続した人が、遺言や遺産分割の内容を示して受託者に単独で通知すれば、相続人全員の通知とみなす規定です。
Q2信託の受益権は相続できる?
信託契約に受益者死亡時の定めがなければ、受益権は原則として相続財産となり相続されます。後継受益者の定めがあれば契約に従って移ります。
Q3民法899条の2とは?
相続で法定相続分を超えて取得した部分は、登記や通知などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとする規定です。2019年7月1日施行です。
Q4受益権承継の通知には何を書けばいい?
被相続人、承継した受益権の特定、承継の根拠となる遺言または遺産分割の内容を記載し、遺言書や遺産分割協議書の写しを添付するのが一般的です。
Q5受益権の相続通知が遅れるとどうなる?
先に他の相続人の債権者が差押えをしたり、譲受人が対抗要件を備えたりすると、法定相続分を超える部分をその第三者に主張できないおそれがあります。
Q6遺言執行者が受託者に通知できる?
できます。遺言執行者は対抗要件を備えるために必要な行為ができるとされています(民法1014条2項)。相続人と執行者のどちらが送るか調整が必要です。
Q72019年以前の相続にも95条の2は適用される?
本条は相続法改正で新設され、原則として施行日(2019年7月1日)以後に開始した相続に適用されます。それ以前の相続は経過措置を確認する必要があります。
Q8法定相続分の範囲内なら通知は不要?
民法899条の2の対抗要件が求められるのは法定相続分を超える部分です。ただし受託者に配当先を把握してもらうため、承継の連絡は実務上必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1弟が全然協力してくれないんですけど、受託者への通知って相続人全員の署名がいるんですか?
要らない。法定相続分を超えて受益権を承継した人が、遺言または遺産分割の内容を明らかにして単独で通知すれば、全員が通知したものとみなされる(信託法95条の2)。実務のポイント:受託者が社内の書式どおりに全員の署名を求めてくることがある。だが書式の都合と法律上の要件は別物である。本条を示して単独通知で受け付けるよう求める余地がある(実際の取扱いは受託者ごとに異なる)
Q2通知って普通の手紙やメールでもいいんですか?
受託者との関係では、通常の通知でも効力が認められうる。しかし、他の相続人の債権者や受益権の譲受人など、受託者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知が必要と解されている(信託法94条2項、民法899条の2第1項)。実務のポイント:内容証明郵便なら郵便局で確定日付が付き、費用も千数百円程度で済む。争いになりそうな相続ほど、最初の一通を内容証明にしておく
Q3親と家族信託を組んでいます。親が亡くなったら、この条文の手続をするんですか?
信託契約で次の受益者や残余財産の帰属先を指定していれば、受益権や財産は契約に従って移るので、本条の場面ではないことが多い(信託法90条参照)。指定がない場合や、受益権が相続される設計になっている場合に本条が働く。実務のポイント:受益者が亡くなった後の受益権の行き先を書き忘れた契約は少なくない。そうなると受益権は相続財産となり、遺産分割と本条の手続に引き戻される。組成時の一行が、後の手続を左右する
間違えやすい点 AI による整理
- 「『相続させる』遺言があれば、登記や通知がなくても第三者に勝てる」と信じている人は多い。実際、かつての判例(最判平成14.6.10)はそう判断していた。だが平成30年改正で民法899条の2が新設され、2019年7月1日以降に開始した相続では、法定相続分を超える部分には対抗要件が必要になった。古い解説書やネット記事を信じたままだと、守れたはずの財産を失う
- 「家族信託の受益権も、親が亡くなったら相続で揉めるのか」という問いの立て方自体がずれている場合がある。信託契約で次の受益者や残余財産の帰属先を指定していれば、受益権は一般に相続ではなく信託の定めに従って移るので、本条の出番はそもそもない。本条が働くのは、受益権そのものが相続財産として承継される場面に限られる
- 単独で通知できることは知っていても、通知の「形式」の重みまでは知られていない。受託者との関係では通常の通知で足りるとしても、他の相続人の債権者や、受益権を譲り受けた第三者と争う場面では、確定日付があるかどうかで勝敗が決まる。千数百円の郵便料金を惜しんだ結果、数千万円の受益権の一部を失うこともある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 信託法95条の2:相続による受益権の承継(法定相続分超過部分) | 信託法94条:受益権の譲渡(売買・贈与など) 民法899条の2第2項:相続による債権の承継 |
| 通知する者 | 超過部分を承継した共同相続人が単独で通知でき、全員の通知とみなされる | 譲渡人による通知または受託者の承諾 超過部分を承継した相続人が単独で債務者に通知できる |
| 通知に必要な内容 | 遺言または遺産分割の内容を明らかにすること | 譲渡の事実の通知 遺言または遺産分割の内容を明らかにすること |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は受益権の譲渡に民法の債権譲渡規定を準用し、通知を対抗要件とする。相続で法定相続分を超えて承継した部分について単独通知を認める日本型の特則は見当たらない
韓国は受益権譲渡の対抗要件として受託者への通知または承諾を定める。相続承継に特化した単独通知規定の有無は個別に確認を要する
中国は受益権が法により譲渡・相続できることを定めるが、法定相続分超過部分の対抗要件という構造は持たない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の遺言で、賃貸マンションを管理する信託の受益権を長女がすべて相続することになった。弟は遺産分割に一切協力せず、書類への署名も拒んでいる。本条により、長女は遺言書の写しを添えて受託者に単独で通知できる。弟の態度が変わるのを何か月も待つ必要はない
- 弟に多額の借金があり、債権者が「弟の法定相続分にあたる受益権」を差し押さえてきたらどうなる? 確定日付のある通知が差押命令より先に受託者に届いていれば、長女は超過部分を守れる。届いていなければ、遺言があっても超過部分を債権者に対抗できないおそれがある。勝負は受託者への到達の先後である
- 家族信託の受託者を務める叔父のもとに、甥の一人から「受益権は全部自分が相続した」という手紙が届いた。遺言書の写しも遺産分割協議書も添付されていない。言われるまま配当を全額振り込むと、他の相続人から法定相続分の支払いを求められるリスクがある。受託者として最初にすべきことは、内容が本当に「明らかにされて」いるかを確かめることである
- 兄が自分の法定相続分の受益権を知人に売ろうとしている、と親戚から聞いた。契約は来週だという。あなたが今日中に内容証明郵便を出すべき理由は、それだけで十分である
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託契約書を取り寄せ、受益者が亡くなった後の受益権の行き先が定められていないか確認する(定めがあれば本条の場面ではない) 2. 遺言書または遺産分割協議書の写しを用意する3. 受託者宛てに、承継の内容を明示した通知を配達証明付き内容証明郵便で送り、確定日付を確保する4. 遺言執行者がいる場合は、執行者も対抗要件を備える行為ができる(民法1014条2項)ので、どちらが送るかを決めて連携する5. 受託者に、以後の配当の支払先を書面で確認する
訴えられた側:【受託者の場合】通知に遺言・遺産分割の内容が明らかにされているか、写しで確認する。不明確なら写しの提出を求め、相続人の間で争いがあるあいだは配当を保留するか、債権者不確知を理由とする供託(民法494条)を検討する。【取り分が少なかった相続人の場合】受益権そのものを取り戻すことは難しい。遺留分を侵害されていれば、侵害額に相当する金銭の支払いを請求する(民法1046条)
時効(請求できる期限):本条の通知そのものに期限はない。ただし対抗要件は先に備えた者が優先する早い者勝ちのため、実質的な期限は「他の第三者が差押えや譲受けの対抗要件を備える前」である。取り分の少なかった相続人による遺留分侵害額請求は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年で行使できなくなる(民法1048条)
学説
一般的な理解:本条は通知者の範囲を拡げる規定にとどまり、対抗要件の必要性や第三者との優劣基準は民法899条の2と信託法94条に従う。受託者以外の第三者に対抗するには確定日付のある証書による通知が必要と解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成30年(2018年)新設、令和元年(2019年)7月1日施行 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)による相続法改正で民法899条の2が新設されたことに伴い、債権の承継に関する同条2項と同じ趣旨の受益権版の規定として新設された。法定相続分を超えて受益権を承継した相続人による単独通知を認めた
改正の年表
- 1.平成30年(2018年) 新設:民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)により、民法899条の2の新設に合わせて受益権版の単独通知規定として新設。令和元年(2019年)7月1日施行
- 信託法 第94条受益権譲渡の対抗要件と確定日付
- 信託法 第93条受益権の譲渡性の原則
- 信託法 第90条委託者死亡時の受益権取得の定め
- 信託法 第91条受益者連続型信託の存続期間
- 民法 第899条の2法定相続分超過部分の対抗要件の母体規定
- 民法 第900条法定相続分の算定基準
- 民法 第1014条遺言執行者による対抗要件具備
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