信託法 第90条(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
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- 次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 一委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
- 二委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
- 2.前項第二号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
この条文の基本情報
委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例とは何ですか?
定義委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例とは、信託法第90条に定められた規定で、「次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第90条(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第90条の条文原文は「次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」で始まります。
- 信託法第90条は第一節 受益者の権利の取得及び行使に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第90条の前の条は信託法第89条です。
- 信託法第90条の次の条は信託法第91条です。
- 信託法第90条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第90条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第90条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/90
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法90条は、遺言代用信託の委託者に受益者変更権を認め、死後に給付を受ける受益者は委託者の死亡まで権利を持たないと定める。いずれも契約の別段の定めが優先する。
Q · 親が結んだ遺言代用信託の受取人は、あとから変えられるの?
原則、委託者は生前いつでも変更できる。契約で封じることも可能
信託法90条1項により、遺言代用信託の委託者は受益者を変更する権利を持ちます。行使は受託者への意思表示で行い、遺言によることもできます(89条1項・2項)。ただし信託行為に「変更できない」旨の別段の定めがあれば変更できません。また、死後に給付を受ける受益者は、委託者の生存中は受益者としての権利を持ちません(90条2項)。
解説
銀行は口座名義人の死亡を知った時点で預金を凍結する。葬儀費用も入院費の精算も、遺産分割がまとまるまで原則として自由には動かせない。ところが、生前に「自分が死んだら妻に給付する」という信託契約を結んでおけば、その財産は受託者(財産を預かって管理する人)の名義になっている。相続財産ではないので、凍結の対象にもならない。信託法90条は、この「遺言代用信託」に二つの特則を置いている。第一に、委託者(財産を託した本人)は、生きている限り受益者(利益を受け取る人)を差し替えられる。遺言を書き直すのと同じ感覚である。第二に、死後に給付を受ける型の受益者は、委託者が亡くなるまで受益者としての権利を持たない。子が「いずれ自分のものになる」と生前から口を出す法的な足場はない。ただし、どちらの特則も信託契約に別段の定めがあれば覆る。契約書の一行が、最後の意思を守る仕組みにもなれば、意思を縛る枷にもなる。
法的な位置づけ
信託法90条は遺言代用信託の特則を定める規定であり、委託者の死亡時に受益者となるべき者が受益権を取得する信託、または委託者の死亡時以後に受益者が給付を受ける信託について、委託者に受益者変更権を認める。後者の受益者は委託者の死亡まで受益者としての権利を有しない。いずれの規律も信託行為の別段の定めが優先する任意規定である。
手順
- 1.信託契約書の変更権条項を確認する 信託契約書(信託行為)に「受益者変更権を有しない」等の別段の定めがないか、死後受益者に生前から権利を与える定めがないかを確認する
- 2.委託者の意思能力を記録に残す 変更時点で委託者に判断能力があることを示すため、医師の診断書や公証役場での手続などを活用し、後日の紛争に備えて証拠を残す
- 3.受託者へ書面で変更の意思表示をする 受益者変更権は受託者に対する意思表示で行使する(信託法89条1項)。商品型では所定の変更届と本人確認が求められることが多いため、受託者の書式に従い提出する
- 4.遺言で変更する場合は受託者への伝達を手配する 遺言による変更は可能だが、受託者が知らずに旧受益者へ給付すると新受益者は対抗できない(89条3項)。遺言執行者を指定し、死亡後速やかに受託者へ通知する段取りを決めておく
よくある質問 AI による整理
Q1遺言代用信託とは何ですか?
生前に信託契約を結び、委託者の死亡時に指定した人へ財産や給付を渡す仕組みです。遺言の代わりとして使われ、信託法90条が特則を定めています。
Q2遺言代用信託の財産は死亡後に口座凍結されますか?
信託財産は受託者名義で管理され、委託者の相続財産ではないため、委託者名義口座の凍結の対象外です。契約どおり受益者への給付を続けられます。
Q3遺言代用信託に相続税はかかりますか?
かかります。委託者の死亡により受益者が受益権を取得した場合、相続税法9条の2により遺贈とみなされ、相続税の課税対象になります。
Q4認知症になった後でも受益者を変更できますか?
変更には委託者本人の意思表示が必要なため、意思能力を失った後は事実上できません。診断後の変更は有効性を争われやすく、早めの判断が重要です。
Q5遺言で信託の受益者を変更できますか?
できます(信託法89条2項)。ただし受託者が遺言による変更を知らずに旧受益者へ給付した場合、新受益者は受託者に対抗できません(同条3項)。
Q6遺言代用信託があれば遺言書は不要ですか?
信託財産以外の財産は通常の相続手続になるため、遺言書は別途必要なことが多いです。信託と遺言の内容が矛盾しないよう両方を設計します。
Q7遺言代用信託の受託者には誰がなれますか?
信託銀行などの商品型のほか、家族信託では子などの家族が受託者になることもあります。業として引き受けるには信託業法上の免許等が必要です。
Q8遺言代用信託は途中で解約できますか?
委託者と受益者の合意でいつでも終了できるのが原則です(信託法164条)。契約で別段の定めを置けるほか、商品型は所定の解約手続に従います。
この条文についての質問 AI による整理
Q1親が信託銀行で契約した信託って、受取人を兄から私に変えてもらうことはできるんですか?
委託者である親本人なら、原則として生前いつでも受益者を変更できる(信託法90条1項)。行使は受託者への意思表示で行う(89条1項)。ただし契約に「変更できない」旨の別段の定めがあれば変更はできない。実務のポイント:商品型の遺言代用信託では、変更に所定の書式と本人確認を求めることが多い。電話一本では済まないので、親が窓口へ行ける体力と判断能力があるうちに動く必要がある
Q2父が生きているうちに、将来の受益者として信託の中身を見せてもらう権利ってありますか?
死後に給付を受ける型の受益者は、委託者が亡くなるまで受益者としての権利を持たない(90条2項)。そのため帳簿等の閲覧請求(38条)も原則として使えない。契約で別段の定めを置けば、生前から権利を持たせることもできる。実務のポイント:家族信託では、受託者の使い込みを防ぐために信託監督人(131条)を置く設計がある。権利を持たない将来の受益者の代わりに、見張り役を立てておく発想である
Q3信託にしておけば、遺留分を請求されずに済むって本当ですか?
断言はできない。信託財産が遺留分侵害額請求(民法1046条)の対象になるのか、どう算定するのかは解釈が分かれている。東京地判平成30.9.12は、遺留分制度を潜脱する目的の信託部分を公序良俗違反(民法90条)で無効とした。実務のポイント:「信託なら遺留分は関係ない」と勧めるセミナーほど、この判決に触れない。実務家の間では、遺留分相当額を最初から受益権で配分しておく設計が、最も紛争を減らすとされている
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託にすれば遺留分は回避できる」と言われることがあるが、そう断言できる根拠はない。信託財産を基準に遺留分を算定するのか、受益権の価値で計るのか、学説も裁判例も割れている。しかも、潜脱目的と認定されて信託の一部が無効とされた裁判例(東京地判平成30.9.12)まである
- 「遺言と信託契約、受益者変更はどちらに書けば優先されるか」という問いは、立て方がずれている。90条の変更権は生前の意思表示でも遺言でも行使できる(89条1項・2項)。本当の争点は先後ではない。受託者に届いたか(89条3項)、そして契約が変更権そのものを封じていないか、である
- 家族から見れば、家族信託は「父の財産を守る契約」にすぎない。だが法律から見ると、契約で設定した信託の委託者の地位は原則として相続されると一般に解されている(遺言信託について相続人の承継を否定する147条とは扱いが違う)。父の死後、相続人全員が委託者として信託の変更などに関与しうる。紛争を防ぐはずの信託が、この落差によって紛争の舞台に変わる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法90条:遺言代用信託における受益者変更権と死後受益者の権利 | 信託法89条:受益者変更権の行使方法(受託者への意思表示・遺言) 信託法91条:後継ぎ遺贈型の受益者連続信託の存続期間 |
| 委託者の権限 | 法律上当然に受益者変更権を持つ(別段の定めで排除可) | 変更権がある場合の行使手続を定める 受益者の死亡で次の受益者が取得する順序を設計できる |
| 受益者の地位 | 死後受益者は委託者死亡まで権利を持たない(2項) | 遺言による変更を受託者が知らないと新受益者は対抗できない 信託から30年経過後に受益権を取得した受益者の死亡等まで効力を有する |
| 主な利用場面 | 生前に契約し、死後の財産承継先を可変的に決める | 受益者を実際に差し替える場面 妻→子→孫のように複数世代へ承継させる場面 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では委託者と受益者が異なる場合、信託行為で留保しない限り受益者を変更できない。日本とは原則と例外が逆で、変更権は契約で明示的に残す必要がある
韓国も2011年の信託法全面改正で遺言代用信託を明文化し、委託者の受益者変更権と死後受益者の権利制限を定める点で日本と近い構造を持つ
ドイツには英米型信託がなく、死亡時に第三者へ給付する第三者のための契約が類似機能を担う。受益者の変更は死因処分によることもできる
米国の撤回可能生前信託(revocable living trust)は遺言検認を回避する手段として普及しており、委託者が生存中に受益者を自由に変更できる点で機能的に近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症と診断される三か月前、父は長男を受益者とする信託契約を結んだ。その後、介護を担ってきた次女に受益者を変えたいと言い出したが、判断能力は日に日に落ちている。変更権は父本人のものであり、意思能力が残っているうちに受託者へ意思表示しなければ、変更の扉は閉じる。残された時間は数か月しかない
- 再婚した父が遺言代用信託を使い、全財産の受益者を後妻にしていたらどうなるのか。前妻の子であるあなたに何ができるのか。信託財産は相続財産ではない。それでも、遺留分侵害額請求がどこまで及ぶかについては実務上解釈が分かれている。東京地判平成30.9.12は、遺留分制度を潜脱する目的の信託部分を公序良俗違反で無効とした
- あなたは受託者として母の信託財産を管理している長男だ。妹が「将来の受益者として帳簿を見せろ」と迫ってきた。母が存命で、契約に別段の定めがなければ、妹にはまだ受益者としての権利がない(90条2項)。とはいえ突き放し方を誤れば、母の死後に不信が一気に噴き出す
- 遺言で受益者を変更しても、受託者がそれを知らないまま旧受益者に給付すれば、新受益者は受託者に対抗できない(89条3項)。遺言書を書いただけで安心するのは、半分しか終わっていない
- 母が亡くなった翌日、母名義の口座は凍結された。一方、受託者である姉が管理する信託口口座からは、受益者である父の生活費が契約どおり翌月も振り込まれた。同じ母のお金でも、流れる川がまったく違う
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益者から外された、あるいは信託で自分の取り分が消えたと気付いたら、まず受託者に信託契約書の写しと受益者変更の時期を確認する2. 変更時点の委託者の意思能力を、介護記録や診断書で検証する3. 配分の偏りが大きければ、遺留分侵害額請求(民法1046条)の意思表示を内容証明郵便で送り、期限内であることを証拠に残す4. 潜脱目的が疑われる場合は、公序良俗違反(民法90条)による無効の主張も弁護士と検討する
訴えられた側:1. 委託者は、変更権を残すか封じるかを契約時に明確に決めておく。変更するときは受託者へ書面で意思表示する2. 遺言で変更する場合は、受託者に確実に伝わる段取りをつけておく(89条3項) 3. 遺留分に配慮した受益権の配分にして、潜脱と評価されない設計にする4. 受託者は、委託者の存命中に死後受益者から請求を受けたら、90条2項と契約条項を確認してから対応する
時効(請求できる期限):受益者変更そのものに特定の期限はない。委託者の生存中(遺言による場合は遺言の効力発生時)まで行使できる。ただし変更の結果を争う遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分侵害を知った時から1年、相続開始から10年で消滅する(民法1048条)
学説
信託財産説:遺留分の算定において、信託財産そのものを委託者から受益者への財産移転とみて、遺留分侵害額請求の基礎に含めるとする見解。
受益権説:遺留分の算定において、受益者が取得する受益権の価値を基準とすべきとする見解。信託財産説との対立が続き、実務上の結論は定まっていない。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)新信託法制定 旧信託法(大正11年)には対応する規定がなく、新信託法の制定時に遺言代用信託の特例として設けられた。平成19年(2007年)9月30日施行
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:新信託法(平成18年法律第108号)の制定に伴い、遺言代用信託の特例として新設。旧信託法には対応規定がなかった。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第89条受益者変更権の行使方法と遺言による行使
- 信託法 第88条指定された受益者の受益権当然取得
- 信託法 第91条後継ぎ遺贈型受益者連続信託の特例
- 信託法 第147条遺言信託の委託者地位不承継(契約信託と対比)
- 信託法 第149条署名後の信託条項変更の手続
- 民法 第1046条遺留分侵害額請求との衝突(解釈対立)
- 民法 第90条遺留分潜脱目的の信託の一部無効根拠
- 相続税法 第9条の2死亡時の受益権取得を遺贈とみなす課税
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