要点刑法37条は、現在の危難を避けるためやむを得ずした行為について、生じた害が避けようとした害を超えない限り罰しないと定める。超えれば過剰避難となる。
Q · 緊急避難なら、無関係な他人を巻き込んで損害を与えても罪にならないの?
守った利益が壊した利益以上なら罰されないが、超えれば過剰避難になる
刑法37条により、現在の危難を避けるため「やむを得ず」した行為で、生じた害が避けようとした害の程度を超えない場合は罰せられません。たとえば崖崩れから逃げて他人の畑を踏み荒らしても、命を守るためやむを得なければ犯罪は成立しません。ただし三要件(現在の危難・補充性・法益均衡)をすべて満たす必要があり、守った利益が犠牲にした利益を下回れば過剰避難(37条但書)として刑が残ります。また刑事で無罪でも、民事の損害賠償責任は別問題として残りうる点に注意が必要です。
正当防衛は、襲ってきた相手を殴り返す話だ。だが緊急避難は違う。何の落ち度もない無実の第三者を巻き込み、その人に損害を与えても罰されない。刑法が公認する唯一の『他人への危険の押し付け』である。子どもが飛び出してきて、避けようとハンドルを切り、路肩の他人の塀を壊した。崖崩れから逃げて他人の畑を踏み荒らした。これらは器物損壊だが、37条が成立すれば犯罪にならない。ただし条件は厳しい。第一に『現在の危難』が今まさに迫っていること。第二に『やむを得ず』、つまり他に逃げ道がなかったこと。第三に、あなたが守った利益が、犠牲にした利益以上であること(法益均衡)。この三つ目があなたを縛る。命を守るために他人の財産を壊すのは通るが、自分の財産を守るために他人を殺せば通らない。守ったものと壊したものを天秤にかけた瞬間、罪の有無が決まる。
刑法37条は緊急避難を定める規定であり、自己または他人の生命・身体・自由・財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為について、生じた害が避けようとした害の程度を超えない場合に限り処罰しない旨を規定する。程度を超えた過剰避難は刑の減軽または免除の対象となり、業務上特別の義務がある者には本条は適用されない。
現在の危難を避けるため、やむを得ず無関係な第三者に損害を与えても、生じた害が避けた害以下なら罰されない制度です。刑法37条が根拠で、刑法が認めた唯一の他人への危険転嫁です。
緊急避難の程度を超えた行為のこと。守った利益より大きな害を与えた場合に当たり、犯罪は成立しますが、情状により刑が減軽・免除されます(刑法37条但書)。
第一に現在の危難が迫っていること、第二にやむを得ず他に手段がないこと(補充性)、第三に守った利益が犠牲にした利益以上であること(法益均衡)。三つすべて必要です。
刑事で無罪でも民事賠償は別軌道で残りうる。被害を受けた第三者は民法720条2項の場面で賠償を求められる余地があり、刑事不処罰イコール賠償免除ではありません。
いいえ。消防士・警察官・船長など業務上特別の義務がある者には刑法37条2項により緊急避難が適用されません。危険から逃げない義務を職業上負うためです。
守った利益と犠牲にした利益を天秤にかけ、守った側が同等以上である必要があるという原則。命を守るため財産を壊すのは通るが、財産を守るため人を殺せば通りません。
津波警報で他人の敷地に避難する、土砂崩れから逃げて他人の畑を踏むなど、現在の危難をやむを得ず避ける行為なら成立余地があります。時系列の記録が認定を左右します。
緊急避難は今まさに迫る危難を避ける行為。自救行為は過去に侵害された権利を自力で回復する行為で、原則違法とされます。時間軸が現在か過去かで区別されます。
刑事上は『罰しない』(37 条 1 項)ので犯罪になりません。ただし条件は厳しく、現在の危難・やむを得ず・法益均衡の三つをすべて満たす必要があります。さらに刑事で無罪でも、民事の損害賠償責任は別問題として残りうる。業界裏話ヒント:検察官は緊急避難の主張を崩すとき、まず『他に逃げ道があったのでは』と補充性を攻めてきます。だから弁護側が、回避手段が他になかったことを最初に固められるかどうかで、結論が分かれる。
向ける相手が決定的に違います。正当防衛(36 条)は『襲ってきた相手』に反撃する話、緊急避難(37 条)は『無関係な第三者』に損害を与える話です。だから緊急避難の方が成立条件が厳しく、法益均衡(守った利益が壊した利益以上)が必須になります。業界裏話ヒント:緊急避難の法的性質(違法性が消えるのか、責任が消えるのか)は実務上、解釈が分かれています。ここが分かれると、緊急避難をしている人に正当防衛できるのかという結論まで変わる。深い争点を知る弁護士は、この点から主張を組み立てます。
原則は窃盗ですが、生命の危難が現に迫り、他に入手手段がなく、守った命が物の価値を上回る場合、緊急避難(37 条)で犯罪が成立しない余地があります。ただし『本当にやむを得なかったか』が厳しく問われます。業界裏話ヒント:平常時に戻った後、店側に代金を申し出る、連絡先を残すといった行動の有無が、後の『やむを得ず』の認定に影響することがあります。逃げるように立ち去ると、緊急避難ではなく単なる窃盗と見られやすい。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 損害を向ける相手 | 緊急避難(37条):無関係な第三者に損害を与える | — |
| 中核となる成立要件 | 現在の危難+補充性(やむを得ず)+法益均衡 | — |
| 行き過ぎた場合の扱い | 過剰避難(37条但書):情状により刑の減軽・免除 | — |
| 適用が制限される者 | 業務上特別の義務がある者には適用なし(37条2項) | — |
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