要点刑法 38 条は、故意のない行為を原則として罰しないと定める。ただし過失犯の特別規定がある場合は例外的に処罰され、法律を知らなかったことは故意を否定する理由にならない。
Q · わざとじゃなければ罪にならないって本当?
故意がなければ原則無罪だが、過失犯の規定があれば処罰される
刑法 38 条 1 項により、罪を犯す意思(故意)がない行為は原則として罰せられません。ただし同項ただし書が「法律に特別の規定がある場合」を例外とし、過失致死罪(210 条)や業務上過失致死傷罪(211 条)など過失処罰規定がある分野では、わざとでなくても刑事責任を負います。さらに 3 項は、法律を知らなかったことを理由に故意を否定することはできないと明言し、情状による減軽の余地だけを残します。「事実を誤解していた」は救いになりうるが、「法律を知らなかった」はまず通りません。
「わざとじゃなかった」と「法律を知らなかった」。日常会話ではどちらも同じ言い訳に聞こえるが、刑法 38 条はこの二つを正反対に扱う。1 項は、罪を犯す意思(故意)がない行為は罰しないと宣言する。これがあなたを守る盾だ。ただし「法律に特別の規定がある場合」、つまり過失運転致死傷や業務上過失のような過失犯の条文があれば、わざとでなくても処罰される。盾には穴が空いている。さらに 3 項は「法律を知らなかった」という言い訳をきっぱり封じ、情状による減軽の余地だけを残す。つまりあなたの運命は、頭の中で何を認識していたか(故意)と、法がその行為に過失処罰を用意しているか、この組み合わせで決まる。「法律を知らなかった」は救いにならないが、「事実を誤解していた」は救いになりうる。この差が、取調室での一言を変える。
刑法 38 条は責任主義を体現する規定であり、罪を犯す意思(故意)のない行為を原則として処罰しない旨を定める。1 項ただし書は過失犯を処罰する特別規定を例外として留保し、2 項は抽象的事実の錯誤、3 項は法律の不知が故意を阻却しないことを規律する。
故意とは、罪となる事実を認識し、その結果を認容して行為する心理状態です。刑法 38 条 1 項により、原則として故意のある行為だけが処罰されます。
結果が起きるかもしれないと認識しつつ、起きても構わないと認容する心理状態です。確定的な認識がなくても故意が認められ、運び屋事件などで問題になります。
事実を誤解する事実の錯誤は故意を阻却する余地がありますが、法律を知らなかった法律の錯誤は刑法 38 条 3 項により原則として故意を否定できません。
判例は違法性の意識を故意の要件としません。ただし違法でないと信じた相当の理由があれば、例外的に責任が否定される余地があります。
刑法 38 条 1 項ただし書により、過失致死罪や業務上過失致死傷罪など特別の規定がある場合に限り、故意がなくても処罰されます。
軽い罪の故意で重い結果を生じた場合、行為時に重い罪に当たる事実を知らなければ、重い罪では処断できないという抽象的事実の錯誤の規定です。
本人の自白だけでなく、言動・履歴・報酬の不自然さなど客観的事情から推認されます。主観を否定しても客観証拠で故意が認定されることがあります。
法律を知らなかったことに無理からぬ事情がある場合、情状として刑が減軽される余地があります。公的機関への照会記録などが有利に働きます。
原則はあなたの感覚どおりで、刑法 38 条 1 項は故意のない行為を罰しないと定めます。ただし同項ただし書が「法律に特別の規定がある場合」を除外し、過失致死罪(210 条)や業務上過失致死傷罪(211 条)など過失を処罰する条文があれば、わざとでなくても罰せられます。業界裏話ヒント:日本の刑法は過失犯を「例外」として個別に規定する建前なので、ある行為が過失でも罪になるかは、その分野に過失処罰条文があるかを一本ずつ確認するしかない。弁護人はまずそこを調べる
刑法 38 条 3 項は、法律を知らなかったことを理由に故意がなかったとは言えない、と明言します。ただし同項ただし書で、情状により刑を減軽できる余地を残しています。業界裏話ヒント:判例は、行政取締法規のような法定犯で、信頼できる公的機関の見解を確認した上で違法でないと信じた等の「相当の理由」がある場合に限り、例外的に責任を否定する余地を認めています。つまり「ただ知らなかった」では無理でも、「役所に確認して問題ないと言われた」なら戦える。確認の記録を残すかどうかが分水嶺です
中身が違法物だと全く認識していなければ、その犯罪の故意がなく 38 条 1 項で罰せられません。問題は、裁判所が客観的事情から故意を推認する点です。報酬が不自然に高い、受け渡しが密行的、などの間接事実が積み重なると「未必の故意(違法物かもしれないと認識し認容した)」が認定されます。業界裏話ヒント:運び屋事件で「知らなかった」が通るのは極めて稀。検察は状況証拠で固めてくる。だからこそ取調べで安易に「うすうす怪しいとは思った」と言うと、その一言で未必の故意が成立する。供述の一語が決定的です
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 心理状態 | 刑法 38 条 1 項:故意(事実の認識・認容)が原則の処罰要件 | — |
| 処罰の原則 | 故意ある行為のみ処罰、過失は例外 | — |
| 免責・阻却の手段 | 事実の錯誤(故意阻却の余地)、法律の不知は原則阻却せず減軽のみ | — |
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