要点刑法 39 条は、心神喪失者の行為を罰せず、心神耗弱者の行為はその刑を減軽すると定める。責任能力の有無を最終的に判断するのは医師ではなく裁判所である。
Q · 精神鑑定で心神喪失とされて無罪になったら、その人はすぐ自由に街へ戻るの?
罰せられないが自由ではなく、医療観察法で強制入院しうる
刑法 39 条により、心神喪失者の行為は罰せられず、心神耗弱者の行為はその刑が減軽されます。ただし無罪や不起訴は自由を意味しません。重大な他害行為があった場合、心神喪失者等医療観察法の審判に付され、入院または通院の決定が出ます。この入院には法律上の上限期間がなく、症状が改善しないと判断されれば、結果として通常の刑期より長く拘束されることもあります。なお責任能力の有無を最終的に判断するのは医師ではなく裁判所です。
ニュースで「精神鑑定の結果、不起訴」と流れるたび、なぜ人を傷つけた者が罰を免れるのかと胸の奥が騒いだことはないだろうか。その答えがこの 39 条に書いてある。日本の刑法は、行為が悪いというだけでは人を罰しない。罰してよいのは「やってはいけないと分かっていて、それでもやらない選択ができたのに、やった者」だけだ。心神喪失とは、精神の障害により善悪を判断する力(是非弁別能力)か、その判断に従って行動を制御する力(行動制御能力)を完全に失った状態をいう。この場合は罰しない。耗弱はそれが著しく低下した状態で、刑が必ず減軽される。ここであなたが握っておくべき核心は二つ。第一に、心神喪失か否かを最終的に決めるのは医師ではなく裁判所だ(最判平成 20.4.25)。鑑定は判断材料の一つにすぎない。第二に、無罪や不起訴は「自由」を意味しない。心神喪失者等医療観察法によって、強制入院という別の道へ送られる。
刑法 39 条は責任能力に関する規定であり、精神の障害により事物の理非善悪を弁別する能力(是非弁別能力)またはこれに従って行動を制御する能力(行動制御能力)を欠く者を心神喪失として不可罰とし、これらの能力が著しく減退した者を心神耗弱として必要的減軽の対象とする。
心神喪失は是非弁別能力か行動制御能力を完全に欠く状態で不可罰、心神耗弱はこれらが著しく減退した状態で刑が必ず減軽されます。喪失か耗弱かで結論が大きく変わります。
行為の善悪を弁別し、その判断に従って行動を制御する能力をいいます。これを欠く者は刑法 39 条により処罰されず、刑罰の前提となる非難可能性が認められません。
刑罰は非難できる者にのみ科すという責任主義に基づきます。善悪を判断し自らを制御できなかった者を罰しても抑止にも応報にもならないため、処罰の対象から外しています。
重大な他害行為では心神喪失者等医療観察法の審判に付され、入院や通院の決定が出ます。上限期間がなく、刑期より長く拘束されることもあり、自由放免ではありません。
自ら飲酒や薬物で心神喪失・耗弱状態を招いて犯行に及んだ場合、犯行時に責任能力がなくても完全な責任を問える法理です。ただし理論構成には争いがあります。
法律上の上限はありません。症状が改善しないと判断されれば長期化し、結果的に通常の刑期より長くなる例もあります。退院は裁判所の決定によります。
最終的に決めるのは裁判所です(最決平成 21.12.8)。精神鑑定は重要な判断材料ですが、裁判所は犯行の動機や態様等も総合して法的に責任能力を認定します。
適用されうります。認知症で是非弁別能力等を欠けば心神喪失、著しく減退なら心神耗弱と評価される可能性があります。高齢化に伴い問題となる場面が増えています。
なりません。鑑定が示すのは精神障害の有無や程度という医学的事実までで、それを前提に責任能力の有無を法的に判断するのは裁判所です(最判平成 20.4.25)。是非弁別能力と行動制御能力の喪失を総合的に評価します。業界裏話ヒント:鑑定が「心神喪失相当」でも、裁判所が犯行の計画性や合目的的な行動を理由に責任能力ありと認定し、有罪にする例は現にある。鑑定書は決定打ではなく、あくまで一枚の証拠
原則として軽くなりません。自分の意思で飲酒し、その結果として心神喪失や耗弱の状態を招いた場合、原因において自由な行為の法理により、犯行時の状態にかかわらず完全な責任を問われうるからです。業界裏話ヒント:常習的な飲酒者や、もともと精神疾患を抱える人の責任能力は、実務上きわめて判断が分かれる領域。この法理の理論構成自体に争いがあるため、同種事案でも結論がぶれることがある
重大な他害行為があった場合、多くは心神喪失者等医療観察法の審判に付され、入院または通院の決定が出ます(同法 42 条)。無罪や不起訴は自由を意味しません。業界裏話ヒント:この医療観察法の入院決定には法律上の上限期間が定められておらず、症状が改善しないと判断されれば、結果的に通常の刑期より長く拘束されることがある。『無罪のほうが軽い』とは限らないのが実情
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 対象となる状態 | 39 条 1 項:心神喪失(是非弁別能力か行動制御能力を完全に欠く) | — |
| 法律効果 | 罰しない(不可罰) | — |
| 判断方法 | 個別の精神鑑定を踏まえ裁判所が法的に認定 | — |
| その後の処遇 | 重大他害行為なら医療観察法の審判(入院・通院) | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。