信託法 第150条(特別の事情による信託の変更を命ずる裁判)
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- 信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合しなくなるに至ったときは、裁判所は、委託者、受託者又は受益者の申立てにより、信託の変更を命ずることができる。
- 2.前項の申立ては、当該申立てに係る変更後の信託行為の定めを明らかにしてしなければならない。
- 3.裁判所は、第一項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。
- 4.第一項の申立てについての裁判には、理由の要旨を付さなければならない。
- 5.第一項の申立てについての裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。
- 6.前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
この条文の基本情報
特別の事情による信託の変更を命ずる裁判とは何ですか?
定義特別の事情による信託の変更を命ずる裁判とは、信託法第150条に定められた規定で、「信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第150条(特別の事情による信託の変更を命ずる裁判)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第150条の条文原文は「信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利…」で始まります。
- 信託法第150条は第一節 信託の変更に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第150条の前の条は信託法第149条です。
- 信託法第150条の次の条は信託法第151条です。
- 信託法第150条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第150条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第150条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/150
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法150条は、予見できなかった特別の事情で信託事務の処理方法の定めが受益者の利益に合わなくなったとき、委託者・受託者・受益者の申立てにより裁判所が信託の変更を命ずる制度。
Q · 家族信託の契約書、親が認知症で合意できないとき裁判所で変えてもらえる?
管理方法の定めなら、裁判所が変更を命じられる
信託法150条により、信託行為の当時予見できなかった特別の事情で、信託事務の処理の方法に係る定めが受益者の利益に適合しなくなったときは、委託者・受託者・受益者の申立てにより裁判所が信託の変更を命じられます。申立人は変更後の条項案を示す必要があり、受益者や信託目的の変更は対象外です。申立先は受託者の住所地を管轄する地方裁判所です(262条)。
解説
家族信託の契約書は、作った日の世界を前提に書かれている。親の自宅をアパートとして貸し続ける前提、特定の銀行の定期預金で守る前提などである。ところが十年たてば前提は崩れる。それでも契約書の文言は、受託者(財産を預かって管理する人)を縛り続ける。通常は委託者・受託者・受益者の合意で書き換える(149条)。しかし親が認知症になった、兄弟の一人がどうしても首を縦に振らない、という局面では合意が成立しない。150条は、そのときに使える裁判所ルートである。条件は三つある。信託を作った当時に予見できなかった特別の事情があること。変えたいのが「信託事務の処理の方法」(財産の管理・運用・処分のやり方)に関する定めであること。そのままでは受益者の利益に合わなくなったこと。そのうえで申立人は、変更後の条項案を自分で書いて提出しなければならない。裁判所が白紙から新しい条項を考えてくれるわけではない。
法的な位置づけ
信託法150条は、信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが受益者の利益に適合しなくなった場合に、委託者、受託者又は受益者の申立てを受けて、裁判所が信託の変更を命ずる非訟手続を定める規定である。変更の対象は処理の方法に限られる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.変更条項と合意ルートを先に確認 信託契約書の「信託の変更」条項を読み、別段の定め(149条4項)や関係当事者の合意(149条)で変更できないかを先に検討する。合意ルートが使えるなら150条の申立ては不要
- 2.変えたい定めが「処理の方法」かを判定 変更したいのが財産の管理・運用・処分のやり方に関する定めかを確認する。受益者や信託目的の変更であれば150条の対象外なので、165条など別の手段を検討する
- 3.予見不能な事情と受益者の不利益を証拠化 信託設定後に生じた特別の事情を時系列で整理し、被災証明書や金融機関の通知書などを集める。現行方法を続けた場合の受益者の損失見込みを数字で示す
- 4.変更後条項案を作成して地方裁判所に申し立てる 現行条項と変更後条項の対照表を作成し、変更後の定めを明示した申立書を受託者の住所地を管轄する地方裁判所に提出する(150条2項・262条)
- 5.受託者の陳述と裁判告知後の期限を管理 裁判所による受託者の陳述聴取(3項)を見越して反論への備えをする。裁判の告知を受けたら、不服がある場合は2週間以内に即時抗告を検討する(5項・6項)
よくある質問 AI による整理
Q1信託の変更とは何ですか?
信託行為で定めた内容を事後に改めることです。原則は関係当事者の合意(信託法149条)で行い、合意できない場合に処理方法に限って裁判所の変更命令(150条)が使えます。
Q2信託法150条の申立てができるのは誰?
委託者、受託者、受益者の三者です(150条1項)。受益者の親族というだけでは申立人になれないため、誰の立場で申し立てるかを最初に確認する必要があります。
Q3信託変更の申立てはどこの裁判所?
受託者の住所地を管轄する地方裁判所です(信託法262条)。家族の財産の問題でも家庭裁判所ではない点に注意が必要です。
Q4「予見できなかった特別の事情」とは?
信託設定時に通常想定できなかった事態を指します。災害による建物の損壊、金融商品の取扱い終了などが典型で、設定時から想定されていた判断能力の低下は認められにくい傾向があります。
Q5信託変更命令に不服があるときは?
委託者・受託者・受益者に限り即時抗告できます(150条5項)。期間は告知から2週間で、抗告には執行停止の効力があるため確定まで変更は効力を生じません(6項)。
Q6家族信託の受益者は裁判所で変更できる?
150条では変更できません。対象は信託事務の処理の方法に限られるため、受益者の変更は合意による変更(149条)や信託の終了(165条)などを検討することになります。
Q7信託変更の申立書には何を書く?
変更後の信託行為の定めを具体的に明らかにする必要があります(150条2項)。現行条項と変更案、予見不能な事情、受益者の利益に適合しない理由を整理して記載します。
Q8信託変更の裁判で受託者は意見を言える?
言えます。裁判所は原則として受託者の陳述を聴かなければなりません(150条3項)。ただし申立てが不適法または理由がないことが明らかで却下する場合は例外です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で親が認知症になったら、もう契約の中身は変えられないんですか?
変えられないわけではない。契約書に別段の定めがあればそれに従い(149条4項)、なければ合意による変更(149条)を検討し、それも無理なら150条で裁判所に変更を命じてもらう道がある。ただし対象は管理・運用の方法に限られる。実務のポイント:契約書作成時に変更条項をどう書いたかで、後の苦労は桁違いになる。作る側の専門家に「判断能力が落ちた後、誰の同意で変えられるか」と必ず聞くべきである
Q2裁判所に頼むとき、どこに何を出せばいいんですか?
受託者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる(262条)。申立書には変更後の信託行為の定めを明示しなければならない(150条2項)。裁判所は原則として受託者の陳述を聴き(3項)、理由の要旨を付けて判断する(4項)。実務のポイント:審理の質を左右するのは条項案の精度である。現行条項と変更案を並べた対照表に、変更しなかった場合の受益者の損失見込みを数字で添えると、裁判所が判断しやすくなる
間違えやすい点 AI による整理
- 「受益者を差し替えたい」「信託の目的を変えたい」と150条を調べる人がいるが、問いの立て方がずれている。150条で裁判所が変更を命じられるのは、信託事務の処理の方法に関する定めに限られる。受益者の変更や目的の変更は対象外で、合意による変更(149条)、どうにもならなければ特別の事情による終了の裁判(165条)を検討する領域になる
- 裁判所に頼めば何とかなる、とまでは知っていても、申立人の負担の重さは知られていない。変更後の条項案を具体的に示す義務があり(2項)、さらに「信託設定時に予見できなかった事情」であることを示さなければならない。親の判断能力の低下のように、そもそも家族信託を組む動機になった事情は、設定時から予見できたと評価されやすく、この要件で苦戦しうる
- 家族から見れば「家族の財産のやり方を家族で決め直すだけ」の話である。法律から見れば、受託者は信託の本旨に従い善良な管理者の注意(プロとして当然払うべき注意のレベル)をもって事務を処理する義務を負う存在である(29条)。契約書の方法から勝手に外れれば、善意であっても義務違反を問われうる。この落差を知らずに「とりあえず売ってしまおう」と動くと、後で別の家族から責任追及される
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の性質 | 信託法150条:裁判所による変更命令 | 信託法149条:関係当事者の合意等による変更 信託法165条:特別の事情による信託の終了を命ずる裁判 |
| 変更・終了できる範囲 | 信託事務の処理の方法に係る定めに限る | 合意の範囲で信託行為の定めを広く変更可能 信託そのものを終了させる |
| 主な要件 | 予見不能な特別の事情+受益者の利益に不適合+変更後条項案の明示 | 委託者・受託者・受益者の合意または別段の定め 予見不能な特別の事情により終了が受益者の利益に適合するに至ったこと |
| 判断能力が低下した当事者がいる場合 | 合意不要のため利用可能 | 合意が成立せず使えないことが多い 合意不要だが信託自体が消滅する |
他国ではどう定めているか 5 か国
信託財産の管理方法が情事変更により受益者の利益に適合しなくなったとき、委託者・受益者・受託者が法院に変更を聲請できる。日本の旧信託法23条と同型で、本条と最も近い対応規定
信託の変更を定める規定で、当事者の合意による変更に加え、予見できなかった特別の事情がある場合の法院への変更請求を認める構造をとる
設立時に予見できなかった特別の事由で管理方法が受益者の利益に適合しない場合、委託者が受託者に管理方法の調整を求める権利を定める。裁判所の命令ではなく受託者への請求である点が異なる
ドイツには英米型信託法がないが、遺言執行者に対する被相続人の管理指示を、遺産を著しく害する場合に遺産裁判所が失効させる制度が機能的に近い
委託者が予見しなかった事情により信託目的の達成が促進される場合などに、裁判所が管理条項を変更できる。管理条項の変更に絞る点は本条と共通する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の家族信託で、受託者の長男に対して「信託不動産の取壊し・建替えは禁止」と定めていた。台風で木造アパートが半壊し、入居者は退去したのに、修繕積立もローン返済も毎月出ていく。委託者兼受益者の父は認知症が進み、契約変更に同意できない。手元資金が尽きるまであと3か月。建替えを可能にする条項案をつけて150条の申立てを出すかどうか、今月中に決めなければならない
- 妹が「兄さんの運用のやり方は母(受益者)に不利だ」として150条の申立てをしたら、受託者のあなたはどうなるのか? 裁判所は原則としてあなたの陳述を聴く(3項)。変更命令が出ても、即時抗告をすれば確定まで効力は止まる(6項)。ただし抗告できるのは告知から2週間以内である
- 信託契約に「金銭は特定の銀行の定期預金でのみ保管する」と書いてあった。その銀行が個人向け定期預金の取扱いを終了した。関係者全員の合意がそろえば149条で足りるが、一人でも欠ければ150条の出番になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず契約書の変更条項を確認し、149条の合意や別段の定めで変更できないかを先に検討する2. 変えたいのが管理・運用・処分の方法であることを確かめる。受益者や目的の変更なら150条では届かない3. 設定当時に予見できなかった事情を時系列で整理し、証拠(被災証明、金融機関の通知書など)を集める4. 現行条項と変更後条項の対照表を作り、受託者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる(262条)
訴えられた側:1. 受託者として申立書が届いたら、変更後の条項案が受益者にとって本当に有利かを数字で検証する2. 裁判所の陳述聴取(3項)で、現行方法でも受益者の利益が守れる根拠、または事情は設定時に予見可能だった根拠を示す3. 申立人の条項案に一部合理性があるなら、149条による合意変更で着地させる交渉も選択肢4. 不服な裁判には告知から2週間以内に即時抗告する。抗告中は効力が停止する(6項)
時効(請求できる期限):申立てそのものに期間制限はない(請求権ではないので消滅時効の問題も生じない)。ただし裁判に対する即時抗告は、裁判の告知を受けた日から2週間の不変期間内に限られる(非訟事件手続法67条1項)。事情が変わってから時間がたつほど、受益者に不利益が積み上がる点に注意(最新の改正状況をご確認ください)
学説
一般的理解:本条の変更命令は信託事務の処理の方法に限られ、受益者の範囲や信託目的など信託の基本的内容には及ばないと解される。委託者の設計意思を尊重しつつ、予見不能な事態での受益者保護を図る補充的な制度と位置づけられる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定(旧信託法の全面見直し) 旧信託法23条の裁判所による信託財産の管理方法変更の制度を継承し、現行150条として置かれた。平成23年(2011年)の非訟事件手続法制定に伴う手続規定の整備の有無と内容は要確認
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法23条において、予見できなかった特別の事情により信託財産の管理方法が受益者の利益に適さなくなったとき、裁判所にその変更を請求できる制度が設けられた
- 2.平成18年(2006年) 新設:信託法の全面改正により現行信託法が制定され、旧法23条の制度を継承して150条として規定。申立人による変更後の定めの明示、受託者の陳述聴取、即時抗告と執行停止効など手続面が整備された
- 信託法 第149条関係当事者の合意等による信託の変更
- 信託法 第165条特別の事情による信託の終了を命ずる裁判
- 信託法 第262条非訟事件の管轄(受託者住所地の地裁)
- 信託法 第29条受託者の善管注意義務
- 非訟事件手続法 第67条即時抗告期間2週間の一般規定
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