信託法 第152条(債権者の異議)
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- 信託の併合をする場合には、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、信託の併合について異議を述べることができる。ただし、信託の併合をしても当該債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、この限りでない。
- 2.前項の規定により同項の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、受託者は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、同項の債権者で知れているものには、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第二号の期間は、一箇月を下ることができない。
- 一信託の併合をする旨
- 二前項の債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
- 三その他法務省令で定める事項
- 3.前項の規定にかかわらず、法人である受託者は、公告(次に掲げる方法によるものに限る。)をもって同項の規定による各別の催告に代えることができる。
- 一時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 二電子公告(公告の方法のうち、電磁的方法(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第三十四号に規定する電磁的方法をいう。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって同号に規定するものをとる方法をいう。次節において同じ。)
- 4.第一項の債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該信託の併合について承認をしたものとみなす。
- 5.第一項の債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。次節において同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該信託の併合をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
この条文の基本情報
債権者の異議とは何ですか?
定義債権者の異議とは、信託法第152条に定められた規定で、「信託の併合をする場合には、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、信託の併合について異議を述べることができる。ただし、信託の併…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第152条(債権者の異議)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第152条の条文原文は「信託の併合をする場合には、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、信託の併合について異議を述べることができる。ただし、信託の併…」で始まります。
- 信託法第152条は第二節 信託の併合に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第152条の前の条は信託法第151条です。
- 信託法第152条の次の条は信託法第153条です。
- 信託法第152条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第152条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第152条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/152
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法152条は、信託の併合の際、従前の信託の債権者が受託者に異議を述べられると定める。異議期間は一か月以上で、期間内に異議がなければ承認したものとみなされる。
Q · 信託の併合の催告書が届いたら、債権者は何ができるの?
期間内に異議を出せば弁済や担保提供を求められる
信託法152条により、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権者は、信託の併合について受託者に異議を述べることができます。異議期間は一か月以上で、期間内に異議を述べれば、受託者は弁済、相当の担保の提供、または信託会社等への相当の財産の信託をしなければなりません。期間内に異議を述べなければ、併合を承認したものとみなされます(同条4項)。ただし、債権者を害するおそれがない場合は例外です。
解説
信託を二つ一つにまとめる手続には、債権者が待ったをかけられる仕組みが用意されている。信託の受託者(財産を預かって管理する人)が、複数の信託を一本にまとめる「信託の併合」をしようとすると、従前の信託の財産から弁済を受けるはずだった債権者は、受託者に対して異議を述べることができる。理由は単純である。健全な信託と借金まみれの信託が合体すれば、あなたの回収原資は他の債権者と奪い合いになる。そのため受託者は、官報公告と知れている債権者への個別催告を義務付けられ、異議期間は一か月を下回れない。異議が出れば、弁済するか、相当の担保を提供するか、信託会社等に財産を信託しなければならない。ただし、併合しても債権者を害するおそれがないことが明らかなら、そもそも異議の対象外となる。ここで見落とされやすいのが沈黙のコストである。期間内に黙っていれば「承認したもの」とみなされ(4項)、後から文句を言う足場は消える。届いた催告書を開封せずに放置した一か月が、あなたの担保を静かに薄めていく
法的な位置づけ
信託法152条は、信託の併合における債権者異議手続を定める規定であり、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権者に異議権を与え、受託者に官報公告と各別の催告を義務付ける。異議期間は一か月以上とされ、期間内に異議がなければ承認が擬制され、異議があれば弁済・担保提供・信託会社等への信託による保全が求められる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.併合対象の信託の債権者を洗い出す 受託者は、従前の各信託の信託財産責任負担債務(信託法21条)を確認し、知れている債権者の一覧を作成する。信託内融資の金融機関、工事業者、管理会社などを漏れなく拾う
- 2.官報公告と各別の催告を行う 信託の併合をする旨、一定期間内に異議を述べられる旨、法務省令で定める事項を官報に公告し、知れている債権者へ各別に催告する。法人受託者は日刊新聞紙または電子公告で催告に代えられるが、個人受託者は不可
- 3.一か月以上の異議期間を確保する 異議期間は一か月を下ることができない。期間の起算と末日を明記し、期間内に到達した異議を記録する。期間内に異議がなかった債権者は承認したものとみなされる
- 4.異議を述べた債権者に対応する 異議があった場合、弁済、相当の担保の提供、または信託会社等への相当の財産の信託のいずれかで対応する。害するおそれがないと判断する場合は、財務資料で根拠を残す
よくある質問 AI による整理
Q1信託の併合とは何ですか?
受託者を同一とする二以上の信託の信託財産の全部を、一の新たな信託の信託財産とすることです。信託法2条10項が定義し、151条が手続を定めています。
Q2信託の併合の異議期間はいつまで?
受託者が公告・催告で定める期間で、一か月を下ることはできません(信託法152条2項ただし書)。末日は催告書や官報公告の記載で確認します。
Q3信託の併合に異議を述べられるのは誰?
従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を持つ債権者です。受託者の固有財産だけを引当てとする債権者は本条の対象ではありません。
Q4信託の併合で債権者への催告をしないと違法?
知れている債権者への各別の催告は受託者の義務です(2項)。法人受託者を除き公告での代替はできず、欠けば手続の瑕疵となり受託者の責任が問われえます。
Q5個人の受託者でも電子公告で催告に代えられる?
できません。日刊新聞紙や電子公告による各別の催告の代替は、信託法152条3項により法人である受託者に限って認められています。
Q6異議を出せば信託の併合は止められる?
本条は併合を止める拒否権ではありません。異議の効果は、受託者に弁済・相当の担保提供・信託会社等への財産の信託を求めることにあります。
Q7信託の併合の官報公告には何を書く?
信託の併合をする旨、債権者が一定期間内に異議を述べられる旨、その他法務省令で定める事項です(信託法152条2項各号)。
Q8債権者を害するおそれがないとはどんな場合?
併合後も債権の回収可能性が実質的に変わらないことが明らかな場合です。判断の根拠は受託者側が示す必要があり、債権者は資料開示を求めることができます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1催告書を受け取った時点で、併合はもう決まってるんじゃないの?
併合の合意(信託法151条)自体は進んでいても、債権者には本条に基づく異議権が残っている。期間内に異議を述べれば、受託者は弁済、相当の担保提供、信託会社等への財産の信託のいずれかを求められる。実務のポイント:受託者側は併合スケジュールが止まることを最も嫌う。異議を出すこと自体が、担保条件を引き上げる交渉の切り札になる
Q2うちの家族信託、受託者は息子なんだけど、新聞に載せるだけじゃダメなの?
ダメである。本条3項で日刊新聞紙や電子公告による各別の催告の代替が認められているのは法人である受託者に限られる。個人の受託者は、官報公告に加えて、知れている債権者一人ひとりに催告しなければならない。実務のポイント:家族信託の組成時に信託内融資を受けていると、銀行は当然知れている債権者になる。併合を考えるなら、まず融資契約の条項と銀行の意向を確認するのが実務の順番である
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託の財産は受託者個人の財産と分けて守られているのだから、信託を何本まとめても債権者に影響はない」と思われがちだが、倒産隔離が守るのは受託者の固有財産との境界であって、信託同士の境界ではない。併合されれば別の信託の債権者も同じ信託財産に手を伸ばせるようになる。だからこそ本条の異議手続がある
- 異議を述べられることは知っていても、「黙っていた」ことの重さを軽く見る人が多い。4項は期間内に異議を述べなかった債権者を「承認したものとみなす」と定める。不満がなかったのではなく、確認する時間がなかっただけでも、法律上は同意として扱われる
- 公告を見落とした債権者から見れば「知らなかった」の一言で済む話に思える。しかし法律から見れば、受託者が官報公告と個別催告(法人受託者は新聞・電子公告による代替も可)を済ませていれば、手続は適法に完了している。債権者側の「知らなかった」と法律上の「通知済み」、この落差が回収不能につながる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法152条:信託の併合における債権者異議手続 | 信託法156条:吸収信託分割における債権者異議手続 信託法151条:信託の併合の合意要件と手続 |
| 保護される者 | 従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権者 | 吸収信託分割に関わる信託の信託財産責任負担債務に係る債権者 主に受益者(委託者・受託者・受益者の合意が原則) |
| 手続の中核 | 官報公告+知れている債権者への各別の催告、異議期間一か月以上 | 併合と同型の公告・催告・異議期間の仕組み 関係当事者の合意と併合内容の決定 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾の信託法には信託の併合規定がない。会社合併では債権者への通知・公告と30日以上の異議期間が定められ、同種の債権者保護の発想として参照できる
韓国は2011年の信託法全面改正で信託の合併制度を導入し、合併計画書の公告と債権者保護手続を設けた
米国統一信託法典は信託の結合・分割を認めるが、主に受益者への通知と受益者の権利を害しないことを要件とし、債権者異議手続の形はとらない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 家族信託でアパートを預かる長男に建築資金を貸した地方銀行の担当者のもとへ、「父名義の別の信託と併合する」という催告書が届いた。もう一方の信託は修繕費の未払いを抱えている。異議期間は残り十日。ここで黙れば承認とみなされ、融資の引当財産は相手の負債と混ざり合う
- 受託者として二つの信託を整理しようとしているあなたは、取引先の工務店への未払い代金の存在を忘れていた。その工務店が「知れている債権者」に当たる以上、個別催告を欠いたまま併合を進めれば、手続の瑕疵としてあなたの責任問題になる。会社でない個人の受託者は、新聞公告や電子公告で個別催告に代えることもできない
- もし異議を出した後、受託者から「併合しても害するおそれはない」と返されたらどうなる? 5項ただし書により、受託者が弁済・担保提供を拒める余地はある。ただしその判断の根拠を示すべきは受託者側である。財務資料の開示を求めることが次の一手になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 催告書または官報公告で異議期間の末日を確認し、記録に残す。2. 併合相手の信託の財産・負債の状況を受託者に照会する。3. 不安が残るなら、期間内に書面(内容証明郵便が望ましい)で異議を述べる。4. 異議後は5項に基づき、弁済、相当の担保提供、信託会社等への財産の信託のいずれかを求めて交渉する。受託者が「害するおそれがない」と主張するなら、その根拠の提示を求める
訴えられた側:1. 受託者は、従前の信託の信託財産責任負担債務の債権者を漏れなく洗い出す。2. 官報公告に加え、知れている債権者へ個別催告を送る(法人受託者は日刊新聞紙または電子公告で代替可、個人受託者は不可)。3. 異議期間は一か月以上を確保する。4. 異議が出たら、弁済・担保提供・信託会社等への信託のいずれかで対応し、「害するおそれがない」と判断するなら財務資料で裏付けを残す。手続を欠くと受託者の任務違反として損失てん補責任(信託法40条)を問われうる
時効(請求できる期限):異議期間は受託者が公告・催告で定める期間で、一か月を下ることができない(本条2項ただし書)。期間内に異議を述べなければ承認したものとみなされる(本条4項)。債権そのものには特定の時効規定はなく、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される
学説
一般的理解:本条は併合そのものを阻止する拒否権ではなく、異議を述べた債権者に弁済・担保・信託による保全を保障する仕組みと理解される。会社法の組織再編における債権者異議手続と同型の構造をとる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年制定の旧信託法には信託の併合の規定がなかった。平成18年法律第108号による新信託法で、信託の併合制度とあわせて債権者異議手続が設けられた(平成19年9月30日施行)。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:平成18年法律第108号による信託法全部改正で、信託の併合制度とともに債権者異議手続を新設。旧信託法には併合の規定がなかった。平成19年9月30日施行
- 信託法 第2条第10項で信託の併合を定義
- 信託法 第151条信託の併合の合意要件と手続
- 信託法 第153条併合後の信託財産責任負担債務の範囲
- 信託法 第156条吸収信託分割における同型の債権者異議
- 信託法 第21条信託財産責任負担債務の範囲を画定
- 会社法 第2条第34号の電磁的方法の定義を借用
- 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律 第1条信託業務を営む金融機関の認可根拠
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