信託法 第156条(債権者の異議)
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- 吸収信託分割をする場合には、分割信託又は承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、吸収信託分割について異議を述べることができる。ただし、吸収信託分割をしても当該債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、この限りでない。
- 2.前項の規定により同項の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、受託者は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、同項の債権者で知れているものには、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第二号の期間は、一箇月を下ることができない。
- 一吸収信託分割をする旨
- 二前項の債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
- 三その他法務省令で定める事項
- 3.前項の規定にかかわらず、法人である受託者は、公告(次に掲げる方法によるものに限る。)をもって同項の規定による各別の催告に代えることができる。
- 一時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 二電子公告
- 4.第一項の債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収信託分割について承認をしたものとみなす。
- 5.第一項の債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収信託分割をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
この条文の基本情報
債権者の異議とは何ですか?
定義債権者の異議とは、信託法第156条に定められた規定で、「吸収信託分割をする場合には、分割信託又は承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、吸収信託分割について異議を述べることができる。た…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第156条(債権者の異議)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第156条の条文原文は「吸収信託分割をする場合には、分割信託又は承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、吸収信託分割について異議を述べることができる。た…」で始まります。
- 信託法第156条は第一款 吸収信託分割に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第156条の前の条は信託法第155条です。
- 信託法第156条の次の条は信託法第157条です。
- 信託法第156条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第156条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第156条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/156
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法156条は、吸収信託分割の際、信託財産責任負担債務の債権者に異議権を認める規定。異議期間は一か月以上で、期間内に異議がなければ承認とみなされる。
Q · 信託の分割の催告書が届いたけど、何もしないとどうなるの?
期限内に異議を出さないと分割を承認したとみなされる
信託法156条により、吸収信託分割では分割信託・承継信託の債権者が受託者に異議を述べられます。異議期間は公告・催告で定められ、一か月を下ることはできません。期間内に異議を述べなければ分割を承認したものとみなされます(4項)。異議を述べれば、受託者は弁済、相当の担保の提供、または信託会社等への財産の信託をしなければなりません(5項)。ただし債権者を害するおそれがないときは、この義務は生じません。
解説
受託者は同じまま、信託財産の一部だけが隣の信託へ移される。これが吸収信託分割(同じ受託者が管理する別の信託に、財産の一部を引っ越させる手続)である。帳簿の上では名義も管理人も変わらない。それでも債権者から見ると、事情はまるで違う。信託財産責任負担債務(信託の財産から支払われることになっている借金や未払い金)の債権者にとって、信託財産は回収のあてにしてきた金庫そのものだ。その金庫の中身が、知らないうちに半分になるかもしれない。だから本条は、分割する側の信託の債権者にも、受け入れる側の信託の債権者にも、異議を述べる権利を与えている。受託者は官報で公告し、把握している債権者には一人ずつ知らせなければならない。異議の期間は最短でも一か月である。期間内に異議を出せば、受託者は弁済するか、担保を出すか、信託会社等に財産を信託するかのどれかを迫られる。黙っていれば承認したものとみなされる。官報を読まない人ほど、この一か月を失う。
法的な位置づけ
信託法第156条は、吸収信託分割における債権者保護手続を定める規定である。分割信託または承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権者に異議権を認め、受託者に官報公告と知れている債権者への各別の催告を義務づける。異議が述べられた場合、受託者は弁済、相当の担保の提供または信託会社等への財産の信託を要する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.異議の締切日を確認する 催告書または官報公告を見つけたら、本文より先に異議を述べられる期間の末日を確認し、手帳やカレンダーに記録する。期間は一か月を下らないが、気づいた時点で残り日数は短くなっていることが多い
- 2.自分の債権がどの信託に属するか特定する 契約書・請求書・発注書を照合し、自分の債権が分割信託と承継信託のどちらの信託財産責任負担債務に当たるかを特定する。受託者名が同じでも、信託ごとに責任財産は別である
- 3.回収可能性への影響を見積もる 分割後の信託財産で自分の債権が十分に回収できるかを検討する。必要に応じて受託者に分割後の財産状況の説明を求める。回収に不安が残るなら異議を出す方向で準備する
- 4.期間内に書面で異議を述べる 受託者あてに、対象となる吸収信託分割、自分の債権の内容・金額、異議を述べる旨を記載した書面を、内容証明郵便など到達を証明できる方法で期間内に送付する
- 5.受託者の対応を確認し詰める 受託者が弁済、相当の担保の提供、信託会社等への財産の信託のいずれで応じるかを確認する。担保の場合は評価額が債権額に見合うかを検証し、不十分なら弁護士に相談する
よくある質問 AI による整理
Q1吸収信託分割とは何ですか?
ある信託の財産の一部を、同じ受託者が管理する別の既存の信託へ移す手続です。移す側を分割信託、受け入れる側を承継信託と呼びます。
Q2信託分割の異議期間はいつまでですか?
受託者が官報公告と催告で定めた期間内です。信託法156条2項ただし書により、その期間は一か月を下ることができません。
Q3信託分割に異議を述べなかったらどうなりますか?
期間内に異議を述べなかった債権者は、その吸収信託分割を承認したものとみなされます(信託法156条4項)。後から異議の効果を主張するのは困難です。
Q4信託分割の異議は誰に出せばいいですか?
受託者に対して述べます(信託法156条1項)。期限内に到達したことを証明できるよう、内容証明郵便など記録の残る方法が実務上は安全です。
Q5個人の受託者は電子公告で催告を省略できますか?
できません。日刊新聞紙や電子公告で各別の催告に代えられるのは法人である受託者に限られます(信託法156条3項)。家族信託の個人受託者は一人ずつ催告が必要です。
Q6「債権者を害するおそれのないことが明らか」とはどんな場合ですか?
分割後も債権の回収に十分な信託財産が残ることが明白な場合などが想定されます。この場合、そもそも異議権が生じません(1項ただし書)。判断は個別事情によります。
Q7信託財産責任負担債務とは何ですか?
受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務です。範囲は信託法21条が定めます。本条の異議権はこの債務の債権者に認められます。
Q8信託の受益者も信託分割に異議を述べられますか?
本条の異議権は信託財産責任負担債務の債権者のための制度です。受益者の関与は、主に吸収信託分割の要件を定める信託法155条の側で扱われます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1信託の分割って、受託者が変わらないなら債権者に何か影響あるんですか?
影響はある。受託者が同じでも、信託財産責任負担債務は原則として信託財産から支払われる債務である(信託法21条)。分割で財産が別の信託に移れば、回収のあてになる財産の中身が変わる。だから本条は、分割する側と受け入れる側の両方の信託の債権者に異議を認めている。実務のポイント:受託者の名前だけ見て「相手は同じだから大丈夫」と考える業者は多い。確認すべきなのは、自分の債権がどちらの信託に結びついているかという一点である
Q2催告が来なかったのに、知らないうちに分割されていたらどうなりますか?
知れている債権者には一人ずつ催告する義務があり(本条2項)、法人の受託者がこれを省けるのは官報に加えて日刊新聞紙か電子公告で公告した場合に限られる(本条3項)。義務を欠いていれば、受託者の手続違反を主張する根拠になる。分割後の責任財産の範囲は157条以下の規定も合わせて確認すること(最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:取引の記録や請求書のやり取りがあれば「知れている債権者」に当たりやすい。日頃の記録の有無が効いてくる
間違えやすい点 AI による整理
- 「官報なんて誰も読まないのだから、公告さえ出せば手続は済む」と受託者は考えがちだが、実際は違う。官報公告に加えて、知れている債権者には一人ずつ催告しなければならない。新聞や電子公告で個別の催告を省けるのは法人の受託者だけである(本条3項)。家族信託の受託者を務める個人がこの特例を使うことはできない
- 「異議を出せば分割を止められるのか」と考える債権者は多いが、問いの立て方がずれている。本条5項が受託者に課すのは、弁済、相当の担保の提供、または信託会社等への財産の信託である。分割そのものを拒否する権利までは書かれていない。異議の本当の価値は、分割の前に自分の債権を確実に回収できる状態にさせることにある
- 債権者の側から見れば、通知を読まずに放っておくことは「何もしていない」だけかもしれない。法律の側から見れば、期間内に異議を出さなかった債権者は分割を承認したものとみなされる(本条4項)。何もしないことが、法的には意思表示として扱われる。この認識の差が、後からの交渉材料をまとめて奪う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる手続 | 信託法156条:吸収信託分割(既存の別信託へ財産の一部を移す) | 信託法152条:信託の併合 信託法160条:新規信託分割(新たな信託へ財産の一部を移す) |
| 異議を述べられる債権者 | 分割信託・承継信託双方の信託財産責任負担債務の債権者 | 併合に関わる信託の信託財産責任負担債務の債権者 分割をする従前の信託の信託財産責任負担債務の債権者 |
| 通知方法 | 官報公告+知れている債権者への各別の催告(法人受託者は新聞・電子公告で代替可) | 同型の公告・催告の仕組み 同型の公告・催告の仕組み |
| 異議の効果 | 弁済・相当の担保提供・信託会社等への信託(害するおそれがなければ不要) | 同型の債権者保護措置 同型の債権者保護措置 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾の信託法には信託分割の規定がない。会社分割では合併の債権者通知・公告・異議期間の規定が準用され、構造的に本条と近い
韓国は2011年の信託法全部改正で信託の合併・分割制度を導入しており、債権者保護手続を伴う点で日本法と近い設計とされる
受託者は受益者への通知を条件に信託を分割できるが、債権者の異議手続を正面から置く日本法とは保護の対象が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 賃貸マンションの大規模修繕を請け負い、工事代金800万円が未払いのまま。発注者は信託銀行が受託者を務める不動産管理信託だった。ある日、「吸収信託分割に関する催告書」という封書が届く。異議の締切まで残り三週間。放っておけば、マンションの一部が別の信託へ移ることを承認したとみなされる
- 家族信託で父の財産を預かる長男のあなたが、賃貸アパートを妹のための別の信託へ移そうと考えたら、どうなる? アパートの管理会社への未払い管理費も、修繕業者への代金も、本条の異議の対象になる。あなたは個人の受託者なので、新聞公告や電子公告で個別の催告を省くことはできない。知れている債権者全員に一通ずつ催告する義務を負う
- 信託に融資している銀行の担当者が、官報で分割の公告を見つけた。担保の価値が下がるなら、異議を出して追加担保を求めることになる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 催告書や官報公告を見つけたら、まず異議の期間がいつまでかを確認する2. 自分の債権が分割する側と受け入れる側のどちらの信託財産責任負担債務なのかを、契約書と請求書で特定する3. 分割後に回収が危うくなるなら、期間内に受託者あてに内容証明郵便で異議を出す4. 受託者からの回答で、弁済、担保の提供、信託会社等への信託のどれになるかを詰め、担保の評価額が妥当かを確認する
訴えられた側:1. 受託者として分割を計画するなら、信託財産責任負担債務の債権者をすべて洗い出す2. 官報公告を出し、知れている債権者には一人ずつ催告する。個人の受託者は新聞公告や電子公告で個別の催告を省けない3. 異議の期間は一か月以上とる4. 異議が出たら、害するおそれがないことを財産の状況で示すか、弁済、担保、信託で応じる。手続を省けば、分割の効力そのものを争われるおそれがある
時効(請求できる期限):異議の期間は公告や催告で定められ、一か月を下ることはできない(本条2項ただし書)。期間内に異議を述べなかった債権者は、吸収信託分割を承認したものとみなされる(本条4項)。債権自体の消滅時効は一般原則による(民法166条:知った時から5年、権利を行使できる時から10年)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 信託の分割制度の創設にあわせて新設された(平成19年9月30日施行)。その後の文言改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正により、信託の分割制度の創設とあわせて新設。平成19年(2007年)9月30日施行。その後の文言改正の有無は要確認
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