信託法 第157条(吸収信託分割後の分割信託及び承継信託の信託財産責任負担債務の範囲等)
クイックジャンプ
吸収信託分割がされた場合において、第百五十五条第一項第六号の債務は、吸収信託分割後の分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、吸収信託分割後の承継信託の信託財産責任負担債務となる。この場合において、分割信託の信託財産限定責任負担債務であった債務は、承継信託の信託財産限定責任負担債務となる。
この条文の基本情報
吸収信託分割後の分割信託及び承継信託の信託財産責任負担債務の範囲等とは何ですか?
定義吸収信託分割後の分割信託及び承継信託の信託財産責任負担債務の範囲等とは、信託法第157条に定められた規定で、「吸収信託分割がされた場合において、第百五十五条第一項第六号の債務は、吸収信託分割後の分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、吸収信託分割後の承継信託の信託財産…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第157条(吸収信託分割後の分割信託及び承継信託の信託財産責任負担債務の範囲等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第157条の条文原文は「吸収信託分割がされた場合において、第百五十五条第一項第六号の債務は、吸収信託分割後の分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、吸収信託分割後の承継信託の信託財産…」で始まります。
- 信託法第157条は第一款 吸収信託分割に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第157条の前の条は信託法第156条です。
- 信託法第157条の次の条は信託法第158条です。
- 信託法第157条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第157条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第157条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/157
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法157条は、吸収信託分割の効力発生後、分割契約に定めた債務を分割信託から承継信託の信託財産責任負担債務へ移すと定める。限定責任の性質もそのまま承継される。
Q · 信託が分割されたら、貸したお金の返済はどちらの信託から受けるの?
分割契約に載った債務は、承継信託の財産から支払われる
信託法157条により、吸収信託分割の分割契約(155条1項6号)で承継させると定めた債務は、効力発生時に分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、承継信託の信託財産責任負担債務になります。信託財産だけが引き当てとされていた限定責任の債務は、承継後も限定責任のままです。債権者が回収見込みを守る機会は、効力発生前の156条の異議手続にあります。
解説
二つの信託を同じ受託者が預かっていて、片方の財産の一部をもう片方へ移す。それが吸収信託分割(同じ受託者が管理する別の信託へ、財産の一部を引っ越しさせる手続)である。財産だけが移るのではない点を、ほとんどの人は見落とす。分割契約の書面(155条1項6号)に載った債務は、効力発生日に元の信託(分割信託)の責任から外れ、移転先の信託(承継信託)の財産から支払われる債務へ切り替わる。債権者のあなたから見れば、これまで回収の当てにしていた財産が、ある日を境に別の財布へ変わるということだ。さらに後段がある。元の信託で「信託財産だけが引き当て、受託者個人の財産には手を出せない」とされていた債務(信託財産限定責任負担債務)は、移転後もその性質のまま承継される。財布が変わったからといって、受託者個人へ請求できるようにはならない。だからこそ、移転先の財布に十分な中身があるかを、効力発生日の前に確かめておく必要がある。その確認の機会が、156条の異議申述期間である。
法的な位置づけ
信託法157条は、吸収信託分割における債務承継の効果を定める規定である。分割契約の書面に記載された債務は、分割信託の信託財産責任負担債務から外れ、承継信託の信託財産責任負担債務となる。分割信託で信託財産限定責任負担債務であった債務は、承継信託でも同じ性質の債務として扱われ、責任の範囲は拡大も縮小もしない。
手順
- 1.公告・催告の日付と期限を特定する 官報公告または個別催告を受け取ったら、異議申述期間の末日と吸収信託分割の効力発生日をすぐに書き出す。異議申述期間は一か月を下ることができない(信託法156条)
- 2.自分の債権が承継対象か受託者に照会する 分割契約の155条1項6号事項(承継させる債務)に自分の債権が含まれるかを、受託者に書面で照会する。あわせて、その債務が信託財産限定責任負担債務かどうかを、自分の契約書で確認する
- 3.承継信託の財産と債務を開示させて回収見込みを試算する 承継信託の財産目録と既存債務の開示を求め、移ってくる債務に対して引き当て財産が十分かを試算する。担保物件がある場合は評価額も確認する
- 4.期間内に書面で異議を述べ、弁済か担保提供を求める 回収に不安があれば、異議申述期間内に書面で異議を述べ、弁済・相当の担保提供・財産の信託のいずれかを求める。期間を過ぎると、この交渉材料を失う
よくある質問 AI による整理
Q1吸収信託分割とは何ですか?
ある信託の財産の一部を、受託者が同じ別の信託へ移す手続です。財産と一緒に、分割契約で定めた債務も移転先の信託に承継されます(信託法157条)。
Q2信託分割で債務はいつ移りますか?
吸収信託分割の効力が生じた時点で、分割契約に記載された債務が承継信託の信託財産責任負担債務に切り替わります。個々の債権者の同意は要りません。
Q3信託財産責任負担債務とは?
受託者が信託財産から履行する責任を負う債務のことです。範囲は信託法21条が定め、信託財産が債権者の引き当て財産になります。
Q4信託財産限定責任負担債務とは?
信託財産だけが引き当てで、受託者の固有財産には請求できない債務です。信託分割で承継されても、この限定責任の性質は変わりません。
Q5信託分割で受託者個人に請求できるようになる?
なりません。157条後段により、限定責任の債務は限定責任のまま承継されます。分割をきっかけに受託者個人の責任が広がることはありません。
Q6分割契約に載っていない債務はどうなる?
155条1項6号の事項として定められていない債務は承継信託へ移らず、引き続き分割信託の信託財産責任負担債務として残ります。
Q7家族信託を分割するとローンはどうなる?
分割契約でローン債務を承継させると定めれば、そのローンは移転先の信託の財産から返済する債務になります。どちらの信託が背負うかは契約の書き方で決まります。
Q8信託分割の公告はどこで確認できる?
吸収信託分割の債権者異議手続では、官報公告や知れている債権者への個別催告が行われます。詳細な方法は信託法156条の規定を確認してください。
この条文についての質問 AI による整理
Q1信託分割って、債権者が反対したら止められないんですか?
分割自体を止める拒否権はない。ただし156条により、異議申述期間内に異議を述べれば、受託者は原則として弁済・相当の担保提供・信託会社等への財産の信託のいずれかをしなければならない。債権者を害するおそれがない場合は除かれる。実務のポイント:受託者側が最も避けたいのは担保提供の負担なので、異議を述べた債権者は金利条件や担保の上乗せを交渉する材料を手にする。黙っている債権者は何も得られない
Q2個別の連絡が来ないまま、自分の債権が別の信託に移されていました。泣き寝入りですか?
必ずしもそうではない。158条は、個別催告を受けるべきだったのに受けなかった債権者について、分割信託の財産からも一定の限度で弁済を求める道を残している(限度額の算定は条文で要確認)。実務のポイント:このとき交渉の主導権は債権者側に移る。受託者は手続違反を指摘されると分割全体の信頼性に傷が付くので、早期に任意弁済で収めようとすることが多い
間違えやすい点 AI による整理
- 「債務者が変わるのだから、債権者の同意がなければ債務は移らない」と考えがちだが、信託分割はそうなっていない。民法の免責的債務引受なら債権者の関与が要るが、信託分割では156条の異議手続を経れば、個々の債権者の同意がなくても効力発生日に債務は承継信託へ移る。黙っていることは、事実上の承認になる
- 受託者が同じなので、どちらの信託から払ってもらっても同じだと思われている。法律の目から見れば、信託財産はそれぞれ別の責任財産である。分割信託の財産が潤沢でも、承継信託の財産が乏しければ、移った債務の回収は乏しいほうの財産に左右される。あなたにとっては同じ相手でも、法律の上では違う財布なのだ
- 「移転を機に受託者個人の責任まで広がるかもしれない」という期待は、後段がはっきり打ち消している。限定責任の債務は、限定責任のまま承継される。逆に、元から受託者個人も責任を負う通常の債務なら、移転後も受託者個人の責任は残る(21条、要確認)。どの性質の債務なのかを先に確かめないまま交渉に入ると、問いの立て方そのものを誤る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 場面 | 信託法157条:吸収信託分割(信託財産の一部を同一受託者の別信託へ移転) | 信託法153条:信託の併合(複数の信託を一つにまとめる) 民法472条:免責的債務引受(債務者自体の交代) |
| 移る債務の範囲 | 分割契約の155条1項6号に記載された債務のみ | 従前の各信託の信託財産責任負担債務の全部 引受契約で定めた債務 |
| 債権者の関与 | 個別同意は不要。156条の異議手続で保護 | 個別同意は不要。併合の債権者異議手続で保護 債権者の契約当事者化または承諾が必要 |
| 限定責任の扱い | 限定責任の債務は承継後も限定責任(157条後段) | 併合後の信託でも限定責任の性質を維持する対応規定あり 信託特有の限定責任の概念はない |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾の信託法には信託分割の明文規定がない。責任財産の分離と債務の承継を契約で振り分ける発想は、企業併購法の会社分割の規律に近い
韓国は2011年の全部改正で信託の分割・分割合併を導入しており、日本の2006年改正と同じ方向の制度設計をとる
米国の統一信託法典は受託者による信託の結合・分割を認めるが、受益者の権利を害さないことを要件とし、債権者異議手続の形は日本と異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは賃貸マンションを信託財産とする家族信託へ融資している銀行の担当者だ。ある日、官報に「吸収信託分割」の公告が出て、ローン債務が別の信託へ移ると書いてある。移転先の信託に担保物件と同程度の価値があるのか? 異議申述期間のうちに確かめないと、承継後に回収の当てが薄くなってから気付くことになる
- 父が受託者を務める家族信託を、長男用と長女用の二つに分けることになった。修繕業者への未払金を長女側の信託へ移す、と分割契約に書かれている。長男側の信託の財産からはもう支払われない。業者がそれを知るのは、いつも請求書が戻ってきた後だ
- 信託財産だけを引き当てにする前提でノンリコースの貸付をした。分割後、その債務は承継信託へ移るが、受託者個人へ請求できないという性質もそのまま移る。条件は少しも有利にならない
- あなたが受託者なら、異議を述べた債権者には弁済か担保提供が必要になる。効力発生日まであと一か月を切った。異議を述べる余地のある債権者へ個別の催告をし忘れると、後から分割信託の財産まで追及される(158条)
取るべき行動
被害を受けた側:1. 公告・催告の日付と異議申述期間の末日をすぐ特定する2. 自分の債権が分割契約の6号事項(承継させる債務)に含まれているかを受託者に書面で照会する3. 承継信託の財産内容と既存債務の開示を求め、回収見込みを見積もる4. 不安があれば期間内に書面で異議を述べ、弁済または担保提供を求める(156条) 5. 限定責任の債務かどうかを契約書で確かめ、受託者個人への請求可能性を整理する
訴えられた側:受託者として分割を進める側なら:1. 6号事項は債務を特定できる程度に具体的に書く2. 官報公告に加え、知れている債権者へ個別に催告し、その記録を残す3. 異議が出た場合、債権者を害するおそれがないことを説明できる資料を用意する。説明できなければ弁済・担保提供を行う4. 催告漏れは158条により分割信託の財産まで追及される原因になる。名簿を二重に確かめる
時効(請求できる期限):本条自体に時効はない。債務の移転は吸収信託分割の効力発生日に生じる。債権者の異議申述期間は156条により一か月以上の期間とされる(最新の改正状況をご確認ください)。移った債権そのものには一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年の旧信託法には信託分割の制度がなく、全部改正で信託の併合・分割の規定が整備されたときに本条が設けられた(平成19年(2007年)9月30日施行)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正により信託の併合・分割の制度が整備され、吸収信託分割における債務承継の効果を定める規定として新設。平成19年(2007年)9月30日施行
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める