信託法 第158条
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- 第百五十六条第一項の規定により異議を述べることができる債権者(同条第二項の規定により各別の催告をしなければならないものに限る。)は、同条第二項の催告を受けなかった場合には、吸収信託分割前から有する次の各号に掲げる債権に基づき、受託者に対し、当該各号に定める財産をもって当該債権に係る債務を履行することを請求することもできる。ただし、第一号に定める財産に対しては吸収信託分割がその効力を生ずる日における承継信託の移転を受ける財産の価額を、第二号に定める財産に対しては当該日における分割信託の信託財産の価額を限度とする。
- 一分割信託の信託財産責任負担債務に係る債権(第百五十五条第一項第六号の債務に係る債権を除く。)吸収信託分割後の承継信託の信託財産に属する財産
- 二承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権(第百五十五条第一項第六号の債務に係る債権に限る。)吸収信託分割後の分割信託の信託財産に属する財産
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第158条は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第158条の条文原文は「第百五十六条第一項の規定により異議を述べることができる債権者(同条第二項の規定により各別の催告をしなければならないものに限る。」で始まります。
- 信託法第158条は第一款 吸収信託分割に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第158条の前の条は信託法第157条です。
- 信託法第158条の次の条は信託法第159条です。
- 信託法第158条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第158条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第158条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/158
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法158条は、吸収信託分割で各別の催告を受けなかった債権者に、もう一方の信託財産からの回収を認める規定。上限は効力発生日時点の財産価額である。
Q · 信託が分割されて催告が来なかったら、もう回収はあきらめるしかないの?
催告漏れなら、もう一方の信託財産にも請求できる
信託法158条により、吸収信託分割で各別の催告(同法156条2項)を受けるべきだった債権者が催告を受けなかった場合、分割信託に残った債務の債権者は承継信託の財産から、承継信託へ付け替えられた債務の債権者は分割信託の財産から、受託者に履行を請求できます。上限は効力発生日時点の価額です。法人受託者が官報に加えて日刊新聞紙または電子公告で公告し、各別の催告が不要になった場合の債権者は対象外です。
解説
信託の財布は、ある日突然二つに分けられることがある。吸収信託分割とは、同じ受託者が管理する信託Aの財産の一部を、その受託者が管理する別の信託Bへ移す手続だ。債権者を守るため、受託者は官報で公告するだけでなく、把握している債権者一人ひとりに個別の通知(各別の催告)を送る義務を負う(信託法156条)。では、その催告があなたに届かなかったらどうなるか。本条の救済は、分割をなかったことにするものではない。代わりに、もう一つの財布にも請求できる権利をあなたに渡す。分割信託に残った債務の債権者は、財産の移った先である承継信託の財産から回収できる。承継信託へ付け替えられた債務の債権者は、元の分割信託の財産から回収できる。上限はそれぞれ、効力発生日時点の「承継信託へ移転した財産の価額」と「分割信託の信託財産の価額」である。逃げた財産をどこまで追えるかは、催告状が届いたかどうかという一点で決まる。
法的な位置づけ
信託法第158条は、吸収信託分割における未催告債権者の保護規定である。同法156条2項により各別の催告を受けるべき債権者が催告を受けなかった場合、分割信託側の債権者は承継信託の財産から、承継信託へ付け替えられた債務の債権者は分割信託の財産から、効力発生日時点の価額を限度に履行を請求できる。
よくある質問 AI による整理
Q1吸収信託分割とは?
ある信託の財産の一部を、同じ受託者が管理する別の既存信託へ移す手続です。信託法155条以下が定め、債権者保護のため異議手続が置かれています。
Q2各別の催告とは何ですか?
受託者が把握している債権者一人ひとりに、分割に異議を述べられる旨を個別に知らせる通知です。信託法156条2項が受託者に義務付けています。
Q3信託分割に異議を述べられる期間は?
受託者が公告・催告で定める一定の期間内で、その期間は1か月を下ることができません(信託法156条2項)。期間内に異議を述べないと承認したものとみなされます。
Q4信託法158条の請求に期限はある?
本条に固有の請求期間はなく、元の債権の消滅時効(民法166条)に従います。ただし信託財産が処分されると回収が難しくなるため、早期の対応が重要です。
Q5信託分割は債権者の同意なしでできる?
分割は委託者・受託者・受益者の合意などで行われ、債権者の同意は要件ではありません。その代わり債権者には異議手続(信託法156条)が用意されています。
Q6催告漏れで信託分割を無効にできる?
本条の救済は分割を巻き戻すものではありません。分割の効力は維持したまま、もう一方の信託財産への請求を価額の範囲で認める仕組みです。
Q7家族信託を分けるとき債権者への通知は必要?
吸収信託分割として行うなら、知れている債権者への各別の催告が原則必要です。怠ると、分けたはずの別の信託財産まで請求される余地が生じます。
Q8信託財産責任負担債務とは?
受託者が信託財産に属する財産で履行する責任を負う債務のことです。範囲は信託法21条1項が列挙しており、本条の請求の基礎となる債権もこれに当たります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1官報に公告が出てたら、催告がなくても文句は言えないんですか?
個人の受託者であれば、官報公告だけでは足りず、把握している債権者への各別の催告も必要になる(信託法156条)。ただし法人の受託者が官報に加えて日刊新聞や電子公告でも公告した場合は、各別の催告が不要となり、本条の請求はできない。実務のポイント:まず受託者が法人かどうか、公告が二重になっているかを確認すること。ここで勝負の半分が決まる
Q2上限の「価額」って、誰がどうやって決めるんですか?
本条(158条)は効力発生日時点の価額を上限とするだけで、評価方法は定めていない。不動産の鑑定評価や有価証券の時価が争点になりやすく、実務上も見解が分かれうる。実務のポイント:受託者には信託帳簿などの作成義務がある(信託法37条)。利害関係人として開示を求め、受託者自身が付けた評価額を先に押さえておけば、相手は自分の数字を否定しにくい
Q3受託者ですが、催告漏れの債権者がいました。どう動けばいいですか?
まず、効力発生日時点の移転財産と分割信託財産の評価資料を固める。請求額は本条(158条)の上限内に収まるからだ。支払によって受益者に損失が出れば、受託者自身が損失てん補責任(信託法40条)を問われうる。実務のポイント:漏れに気付いた時点で債権者と支払条件を個別に合意しておけば、差押えで信託財産を換金されるコストも、受益者からの責任追及も小さく抑えられる
間違えやすい点 AI による整理
- 債権者異議の手続があることを知っている人でも、催告漏れが何をもたらすかは知らない。分割が巻き戻るのではない。もう一つの信託財産に手が届くようになる。そして、その手が届く範囲には効力発生日時点の価額という天井がある
- 「誰に請求すればいいのか」と悩む人が多いが、問いの立て方がずれている。吸収信託分割では分割信託と承継信託の受託者は同じであり、請求の相手はどちらにしても同じ受託者だ。本当に問うべきは「どちらの信託財産から払わせるか」である
- 公告を見逃した債権者なら誰でも本条で救われると思われがちだが、そうではない。対象は、各別の催告を受けるべきだった債権者に限られる。受託者が把握していなかった債権者や、法人の受託者が官報に加えて日刊新聞や電子公告でも公告して各別の催告が不要になった場合の債権者は、本条の救済から外れる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 制度上の役割 | 信託法158条:催告漏れがあった場合の事後救済 | 信託法156条:分割前に異議を述べる事前防御 信託法162条:新規信託分割での同型の事後救済 |
| 対象となる債権者 | 各別の催告を受けるべきだったのに受けなかった債権者 | 異議を述べることができる債権者(知れている者には各別の催告) 新規信託分割で各別の催告を受けなかった債権者 |
| 効果 | もう一方の信託財産をもって履行を請求できる(効力発生日時点の価額が上限) | 異議が出れば受託者は弁済・担保提供等の対応を要する 新たに設けられた信託との間で同様の請求が可能 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾信託法には信託分割の制度がない。会社分割では債権者への通知・公告を怠ると分割を債権者に対抗できないとする構造で、日本の『他方財産への請求』型とは救済の形が異なる
韓国は2011年の信託法全面改正で信託の分割制度を導入し、日本と同様に債権者保護手続を設けている
ドイツには信託法典がなく信託分割の制度もない。組織再編法上の分割では関係する権利主体が連帯して責任を負う構造で、価額上限付きの日本法と比較できる
米国の統一信託法典は受託者による信託の分割を認めるが、受益者の権利を害しないことが中心で、債権者の個別催告手続は日本ほど詳細ではない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 不動産信託の受託者に修繕代金300万円を請求していた工務店の場合を考える。何の連絡もないまま信託が分割され、手元に残った分割信託の財産がほぼゼロになっていたら、打つ手はあるのか? 催告を受けていなかったなら、物件が移った先の承継信託の財産から、移転した財産の価額を上限に回収を求められる
- あなたは家族信託の受託者で、父の自宅を、自分が受託者を務める別の信託へ移す吸収信託分割をした。賃貸アパート側に残った外壁工事代金の業者に催告を送り忘れていた。業者は分割後、移した自宅側の信託財産にまで請求してくる余地がある。そのうえ、受益者である兄弟から任務懈怠(受託者としての務めを怠ったこと)を問われる可能性まで抱えることになる
- 官報には公告が載っていた。でも催告状は来ていない。あなたが「知れている債権者」(受託者が把握していた債権者)だったなら、この違いが回収額を左右する
- 取引先の信託が分割されたと聞いて三週間が経った。承継信託側の財産が売りに出されるという噂が届いた。上限額は効力発生日時点の価額で固定されるが、財産そのものが処分されてしまえば差し押さえる対象が消える。請求と仮差押え(判決前に財産を押さえる手続)の準備を今週中に動かさなければならない
- 債務を承継信託へ付け替えられた側の債権者も、救済の対象である。承継信託の財産が乏しくても、催告を受けていなければ、元の分割信託の財産に戻って請求できる。付け替えに納得した覚えのない債権者ほど、このルートを知っておく価値がある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 官報で吸収信託分割の公告日と効力発生日を確認する2. 自分が受託者に把握されていた債権者か、受託者が法人で二重公告をしていないかを確認する3. 自分の債権が分割信託に残った債務か、承継信託へ付け替えられた債務かを確認し、請求先の信託財産を特定する4. 効力発生日時点の財産価額の資料を求め、上限額を試算する5. 財産が処分されそうなら仮差押えを検討する
訴えられた側:1. 効力発生日の前に信託帳簿で債権者名簿を洗い直し、配達証明付きで催告した記録を残す2. 法人受託者であれば、官報に加えて日刊新聞または電子公告で公告し、各別の催告を省略できる方法を検討する3. 請求を受けたら、請求者が本条の対象者か、各号のどちらにあたるかを確認する4. 上限を超える部分は、効力発生日時点の評価資料で反論する
時効(請求できる期限):本条に固有の請求期間の定めはない。基礎となる債権そのものの消滅時効(民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年)に従う。ただし、信託財産が処分されると差し押さえる対象が消えるため、実際のタイムリミットは財産が処分される時点となる(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)新信託法制定 旧信託法(大正11年)には信託分割の制度がなく、新信託法で吸収信託分割の債権者保護規定として新設された。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全面改正(新信託法制定)により、吸収信託分割の制度とともに、催告を受けなかった債権者の保護規定として新設された
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