信託法 第164条(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
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- 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
- 2.委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
- 3.前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 4.委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しない。
この条文の基本情報
委託者及び受益者の合意等による信託の終了とは何ですか?
定義委託者及び受益者の合意等による信託の終了とは、信託法第164条に定められた規定で、「委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第164条(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第164条の条文原文は「委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。」で始まります。
- 信託法第164条は第一節 信託の終了に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第164条の前の条は信託法第163条です。
- 信託法第164条の次の条は信託法第165条です。
- 信託法第164条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第164条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第164条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/164
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法164条は、委託者と受益者が合意すればいつでも信託を終了できると定める。受託者に不利な時期の終了は、やむを得ない事由がない限り損害賠償を要する。
Q · 家族信託は途中でやめられる?受託者の同意は必要?
委託者と受益者の合意で終了でき、受託者の同意は不要
信託法164条1項により、委託者と受益者は、いつでも合意により信託を終了できます。受託者の同意は要件ではありません。ただし受託者に不利な時期に終了した場合は、やむを得ない事由がない限り損害賠償義務を負います(同条2項)。また信託契約に別段の定めがあればそれが優先し(3項)、委託者が死亡等により現に存しない場合は、合意終了の規定自体が適用されません(4項)。
解説
信託は、一度組んだら二度と開かない金庫ではない。信託法164条は、財産を託した委託者と利益を受ける受益者が合意すれば、いつでも信託を終了できると定める。受託者(財産を預かって管理する人)は合意の当事者ではなく、拒否権もない。ただし落とし穴が三つある。第一に、受託者に不利な時期に終わらせると、やむを得ない事由がない限り損害賠償を負う。第二に、信託契約に別段の定めがあれば、契約の定めが優先する。家族信託の契約書の「終了」条項が本条を丸ごと書き換えていることは珍しくない。第三に、委託者が現に存しない場合、たとえば委託者が死亡し、その地位を誰も承継していないときは、合意で終了させる道そのものが消える。あなたの信託を誰がいつ閉じられるかは、本条ではなく契約書の一行で決まっていることが多い。
法的な位置づけ
信託法164条は、委託者及び受益者の合意による信託の終了を定める規定である。合意はいつでも可能で受託者の同意を要しないが、受託者に不利な時期の終了には、やむを得ない事由がない限り損害賠償義務が伴う。信託行為に別段の定めがあればその定めが優先し、委託者が現に存しない場合には合意終了及び損害賠償の規定は適用されない。
手順
- 1.信託契約書の三条項を確認 信託契約書の「終了事由」「委託者の地位の承継」「受益者の意思決定方法」を確認する。別段の定めがあれば164条ではなく契約の定めに従うため、終了に誰の同意が要るかをここで特定する
- 2.委託者と受益者全員の合意書を作成 委託者の判断能力が明確なうちに、委託者と受益者全員が署名・日付を入れた終了合意書を作成する。終了日、残余財産の帰属先、清算方法も合わせて記載する
- 3.受託者へ時期を調整して通知 賃貸借の更新時や決算期など管理の区切りに合わせて受託者へ終了を通知し、不利な時期の終了として損害賠償を請求されるリスクを抑える。通知は書面で記録を残す
- 4.清算・登記・税務を専門家と処理 清算受託者による債務弁済と残余財産の引渡しを経て、不動産があれば信託登記の抹消と所有権移転登記を同時申請する。残余財産の帰属先による課税の有無を税理士に確認する
よくある質問 AI による整理
Q1信託の合意終了とは何ですか?
委託者と受益者が合意して信託を終わらせることです。信託法164条1項が根拠で、いつでも可能、受託者の同意は要件ではありません。
Q2家族信託は途中で解約できますか?
契約に別段の定めがなければ、委託者と受益者の合意で終了できます。ただし契約書の終了条項が優先するため、まず契約書を確認する必要があります。
Q3信託を終了したら財産はいつ戻ってきますか?
すぐには戻りません。終了後も清算が結了するまで信託は存続するとみなされ(信託法176条)、債務弁済と残余財産の引渡しを経て戻ります。
Q4信託を終了すると税金はかかりますか?
残余財産を受益者本人以外が取得すると、終了直前の受益者からの贈与または遺贈とみなされ課税されうる(相続税法9条の2第4項)点に注意が必要です。
Q5受益者が複数いる信託はどうやって終了しますか?
受益者が複数のときの意思決定は、信託行為に別段の定めがない限り原則全員一致です(信託法105条)。一人でも反対すれば合意終了は成立しません。
Q6信託の終了に裁判所の手続は必要ですか?
164条の合意終了に裁判所の関与は不要です。合意できない場合に、特別の事情を理由として裁判所に終了を求める道が165条に別途用意されています。
Q7信託終了後の不動産の登記はどうすればいい?
信託登記の抹消と所有権移転の登記を同時に申請します(不動産登記法104条)。これを済ませないと売却や担保設定ができない状態が続きます。
Q8委託者が認知症になっても信託を終了できますか?
合意には意思能力が必要なため、判断能力が低下すると合意自体が争われえます。成年後見人が代わって合意できるかは解釈が分かれています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1父を委託者兼受益者にした家族信託、受託者の自分が反対しても父は終わらせられるんですか?
別段の定めがなければ、原則として終わらせられる。委託者と受益者が同一人物の自益信託では、164条1項の合意は父一人の意思で足りると解されており、受託者の同意は要件ではない。実務のポイント:これを防ぐため、終了に受託者や信託監督人の同意を要すると定める設計が実務で多用される。後から足すには信託の変更(149条)の手続が要る
Q2父が亡くなったら、子どもたちの合意で信託を終わらせられますか?
委託者の地位の扱い次第である。遺言信託では、委託者の相続人は原則として委託者の地位を承継しない(147条)。契約信託でも、委託者の死亡で地位が消滅すると定めることが多い。その場合「委託者が現に存しない」ため164条1項は使えない。実務のポイント:それでも、信託行為で定めた終了事由(163条9号)や165条の裁判による終了は残る。道は一本ではない
Q3受託者への損害賠償って、具体的にいくら払うことになるんですか?
164条2項は金額の基準を定めていない。受託者に不利な時期に終了したことで実際に生じた損害が対象で、終了直前に受託者が負担した準備費用などが典型である。将来の信託報酬をどこまで含めるかは事案により判断が分かれる。実務のポイント:信託会社との契約では中途解約手数料が別段の定めとして明記されていることが多く、実際にはそちらで決着する。署名前に解約条項の金額を確認しておけばよい
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者を説得しないと信託はやめられない」という問いの立て方自体がずれている。164条の合意の当事者は委託者と受益者であり、受託者ではない。受託者にできるのは、不利な時期の終了について損害賠償を求めることだけだ
- 別段の定めで書き換えられることは知っていても、その深刻度を知らない人が多い。「受益者と信託監督人の合意によってのみ終了する」と定めれば、委託者本人が終了したくてもできない。自分で組んだ信託に自分が閉じ込められる構造が、契約書の一行で生まれる
- 「信託を終了すれば財産はすぐ戻る」と思われがちだが、終了後も清算が結了するまで信託はなお存続するとみなされる(176条)。清算受託者が債務を弁済し、残余財産を帰属先に引き渡して、初めて手元に戻る
- 家族から見れば「元の状態に戻すだけ」。しかし税法から見れば、終了時に残余財産を取得した者は、終了直前の受益者から贈与または遺贈を受けたものとみなされる(相続税法9条の2第4項)。帰属先を受益者本人以外にした瞬間、課税が発生しうる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 終了の根拠 | 信託法164条:委託者と受益者の合意 | 信託法163条:目的達成・信託行為で定めた事由の発生など法定の終了事由 信託法165条:特別の事情による裁判所の終了命令 |
| 誰が動くか | 委託者と受益者(受託者の同意不要) | 当事者の意思表示を要せず、事由の発生で終了 委託者・受託者・受益者の申立てを受けた裁判所 |
| 使えない場面 | 委託者が現に存しない場合、別段の定めで制限された場合 | 定められた事由が発生していない場合 信託行為当時に予見できた事情にとどまる場合 |
| 受託者の保護 | 不利な時期の終了は損害賠償(やむを得ない事由があれば免責) | 事由ごとに定まり、本条のような賠償規定はない 裁判所が受益者の利益への適合性を審査する |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は自益信託の委託者による随時終止(63条)と、他益信託の委託者・受益者共同による終止(64条)を分けて規定し、不利な時期の終止に損害賠償を課す。日本旧法の構造を引き継いでいる。
韓国は2011年の全部改正で、委託者と受益者の合意による随時終了と不利な時期の損害賠償を定め、日本の新信託法と近い構造をとる。
米国は委託者と全受益者の同意による撤回不能信託の終了を認める。受益者のみの同意による終了は信託の重要な目的に反しないことが要件となる(Claflin doctrine の系譜)。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父を委託者兼受益者、長男を受託者とする家族信託。父の気が変わって「やっぱり自分で管理する」と言い出した。委託者と受益者が同一人物の自益信託なら、別段の定めがない限り父一人の意思で終了できる。長男に止める法的手段は原則としてない
- もし父が認知症になり、成年後見人がついて「この信託は不要だ」と言い出したら、どうなる? 後見人が委託者兼受益者の法定代理人として終了の合意をできるかは、実務上、解釈が分かれている。終了要件を契約で絞っておく設計が多いのはこのためだ
- 信託会社として賃貸ビルの管理を受託し、来月の大規模修繕を発注し終えた矢先、委託者と受益者が連名で終了を通知してきた。受託者側から見れば、不利な時期の終了として164条2項の損害賠償を請求できる可能性がある
- 母が余命三か月と告げられた。母が委託者の信託で、契約書には「委託者の地位は相続により承継しない」とある。母が存命のうちに子らと合意しなければ、母の死後は164条1項による終了の道が閉じる。残された時間は短い
- 受益者が三人いる信託で、一人だけが終了に反対。受益者の意思決定は原則全員一致(105条)であり、その一人の反対で合意終了は止まる
取るべき行動
被害を受けた側:信託を終わらせたいのに動けない側の手順。1. 信託契約書で終了条項、委託者の地位の承継、受益者の意思決定方法(105条)を確認2. 別段の定めがなければ、委託者と受益者全員の合意書を日付・署名入りで作成3. 受託者に通知し、不利な時期にならないよう時期を調整4. 合意できないときは、165条による特別の事情に基づく終了の申立てを検討5. 清算、登記、課税まで見越して司法書士・税理士に相談
訴えられた側:突然終了を告げられた受託者の手順。1. 合意が委託者と受益者全員によるものか、委託者が現存するか、別段の定めに反しないかを確認2. 不利な時期の終了なら、発生した損害を項目別に数値化して請求。どこまでが損害に含まれるかは争点になりうる3. 終了後は清算受託者としての職務(177条)が始まる。管理をすぐ放り出すと、今度は自分が責任を問われる
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、受託者の損害賠償請求権(164条2項)には一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される。合意による終了自体は、委託者が現に存する間に限られる(同条4項)
学説
通説:自益信託では、委託者兼受益者一人の意思表示で164条1項の合意終了ができる。受託者は終了を阻止できず、不利な時期の終了について損害賠償を求めうるにとどまる。
成年後見人による終了をめぐる議論:委託者兼受益者に成年後見が開始した場合、後見人が法定代理人として終了の合意をなしうるかは見解が分かれる。実務では終了に受託者や信託監督人の同意を要すると定めて対応することが多い。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法(大正11年法律第62号)57条は、委託者が信託利益の全部を享受する場合に限り、委託者又はその相続人による解除を認めていた。全部改正後の新法(平成18年法律第108号、平成19年9月30日施行)で本条が設けられ、委託者と受益者の合意による終了、受託者への損害賠償、別段の定めの優先、委託者不存在時の不適用が明文化された
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法(大正11年法律第62号)57条が、委託者が信託利益の全部を享受する場合に限り、委託者又はその相続人による随時の解除を認めた。
- 2.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号、平成19年9月30日施行)により本条を新設。委託者と受益者の合意による終了、受託者への損害賠償、別段の定めの優先、委託者不存在時の不適用を明文化した。
- 信託法 第163条信託の一般的な終了事由の列挙
- 信託法 第165条特別の事情による裁判上の終了
- 信託法 第147条遺言信託で委託者の地位が相続されない原則
- 信託法 第176条終了後も清算結了まで信託が存続
- 信託法 第182条終了後の残余財産の帰属先
- 相続税法 第9条の2信託終了時の残余財産取得のみなし贈与・遺贈
- 不動産登記法 第104条信託終了に伴う信託登記の抹消手続
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