信託法 第176条(信託の存続の擬制)
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信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
この条文の基本情報
信託の存続の擬制とは何ですか?
定義信託の存続の擬制とは、信託法第176条に定められた規定で、「信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第176条(信託の存続の擬制)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第176条の条文原文は「信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。」で始まります。
- 信託法第176条は第二節 信託の清算に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第176条の前の条は信託法第175条です。
- 信託法第176条の次の条は信託法第177条です。
- 信託法第176条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第176条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第176条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/176
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法176条は、信託が終了した後も清算が結了するまでは信託がなお存続するものとみなす規定。清算中も信託財産は受託者の固有財産から切り離されたままとなる。
Q · 家族信託で親が亡くなったら、信託はその日に消えるの?
消えない。清算が終わるまで信託は存続するとみなされる
信託法176条により、信託は終了した後も清算が結了するまではなお存続するものとみなされます。親の死亡などの終了事由が発生しても、受託者は清算受託者として現務の結了、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の給付を行わなければなりません(177条)。この間も信託財産は受託者の固有財産とは区別され、受託者個人の債権者は原則として差し押さえられません。最終計算の承認を求められたら、1か月以内に異議を述べるかどうかを判断する必要があります(184条)。
解説
信託契約に書かれた終了事由が起きた日、たとえば家族信託で委託者の父が亡くなった日に、信託が消えると考える人は多い。法律の見方は違う。信託は「終了」した後も、清算が結了するまでは存続するものとみなされる。終了は幕引きの合図にすぎず、そこから清算という第二幕が始まる。この間、受託者は「清算受託者」として現務の結了、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の給付を担う(信託法177条)。忠実義務や分別管理義務も、この期間に一緒に消えるわけではない。信託財産が受託者個人の財産に変わることもない。受託者個人の債権者は、原則として信託財産に手を出せないままである(23条)。父の死後に兄が「信託は終わったから、口座はもう自分が自由に使える」と言い出したとき、この一文を知っていれば、それは誤りだと指摘できる。財産が最終的に誰の手に渡るかは、清算が終わるまで決まっていない。
法的な位置づけ
信託法176条は、清算中の信託の存続擬制を定める規定である。信託が終了した場合であっても、清算が結了するまでは信託がなお存続するものとみなされる。これにより、清算期間中も信託財産の独立性、受託者の義務、信託財産に対する強制執行の制限が維持され、清算受託者による清算事務の法的基盤となる。
よくある質問 AI による整理
Q1信託の清算とは何ですか?
信託の終了後に、現務の結了、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の給付を行って信託関係を締めくくる手続です(信託法175条・177条)。
Q2信託終了後、受託者は信託財産を自由に使えますか?
使えません。清算が結了するまで信託は存続するとみなされるため(176条)、受託者は清算受託者として忠実義務と分別管理義務を負い続けます。
Q3信託終了後、受託者個人の借金で信託財産は差し押さえられる?
原則として差し押さえられません。清算中も信託は存続するとみなされ、信託財産に対する強制執行は信託法23条により制限されます。
Q4家族信託が終了したら何をすればいい?
信託契約書で終了事由と帰属権利者を確認し、清算受託者に財産目録や帳簿の開示を求めます。債務の弁済が終わってから残余財産が給付されます。
Q5帰属権利者は清算中に何ができる?
帰属権利者は信託の清算中は受益者とみなされます(183条6項)。そのため、帳簿の閲覧請求など受益者と同じ権利を行使できます。
Q6清算中に信託財産で借金を払いきれない場合は?
信託財産で債務を完済できないことが明らかになった場合、清算受託者は直ちに信託財産について破産手続開始の申立てをしなければなりません(179条)。
Q7信託終了後、信託不動産の登記はどうなる?
残余財産として不動産を帰属権利者に給付するときは、所有権移転登記とあわせて信託登記の抹消を申請するのが一般的です。手続は司法書士に確認しましょう。
Q8清算受託者が義務に違反したら責任を問える?
問えます。清算中も受託者の義務は続くため、流用や不当な廉価売却があれば損失てん補などを請求できます(信託法40条)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1父が亡くなって信託が終わったなら、信託不動産はもう相続財産扱いですよね?
原則としてそうはならない。信託財産は清算が終わるまで信託財産のままであり、残余財産は契約で定めた残余財産受益者または帰属権利者に渡る(信託法176条、182条)。実務のポイント:遺言で別の人に不動産を渡すと書いていても、信託契約の帰属権利者の定めが優先される場面がある。まずは信託契約書を確認すること
Q2清算って、どのくらいの期間がかかるものなんですか?
法律で決まった期間はない。現務の結了、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の給付が全て終わったときに清算が結了する(177条)。実務のポイント:不動産を現物で給付するのか、売却して現金で分けるのかで期間は大きく変わる。信託契約に給付方法が書かれていない場合、ここが一番もめやすい
Q3兄から届いた最終計算書、よく分からないので放っておいてもいいですか?
放置は避けたほうがよい。承認を求められてから1か月以内に異議を述べなければ、承認したものとみなされる。承認されると、不正行為がない限り清算受託者の責任は免除される(184条)。実務のポイント:異議は細かく書かなくても構わない。まず「承認しない」と書面で伝えて期限を止め、そのあとで中身を精査するのが実務上の安全策である
間違えやすい点 AI による整理
- 信託契約の終了日が、そのまま財産が相続人に渡る日だと思われがちである。実際には終了日から清算が始まり、債務を弁済した後でなければ残余財産は給付できない(信託法181条)。終了日と財産を受け取る日のあいだには、数か月から年単位の空白が生じうる
- 「受託者が清算受託者になるには、家庭裁判所の選任が必要なのか」と心配する人がいるが、問いの立て方が誤っている。信託終了時以後の受託者が、そのまま清算受託者になる(177条)。本当に確認すべきなのは、選任の手続ではなく、清算受託者の権限と義務がどこまで及ぶかである
- 受益者にとって清算はただの事務手続に見える。法律から見れば、清算は受託者の責任がまとめて免除されうる最後の局面である。最終計算の承認一つで責任追及の道が閉じる。最も無防備になりやすい時期に、最も重い決定が待っている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の内容 | 信託法176条:終了後も清算結了まで信託は存続するとみなす | 信託法175条:終了した信託は清算をしなければならない 信託法177条:清算受託者の職務(現務結了・債権取立て・債務弁済・残余財産給付) |
| 機能 | 清算期間中の信託の法的存在を維持する受け皿 | 清算手続を始める義務を発生させる起点 清算期間中に何をするかを定める行動規範 |
| 適用される時間帯 | 信託終了時から清算結了まで | 信託終了時(一定の場合を除く) 清算期間中 |
| 主な名宛人 | 信託という法律関係そのもの | 信託(清算の実施主体としての受託者) 清算受託者 |
他国ではどう定めているか 4 か国
日本の旧信託法63条と同じ構造で、帰属権利人に信託財産を移転するまで信託関係は存続するとみなし、帰属権利人を受益者とみなす。終点は「清算結了」ではなく「財産移転」である
信託財産が帰属権利者に移転されるまで信託は存続するとみなす。日本の旧法の系譜を引く規定である
信託財産の帰属が確定した後、権利帰属人に移転する過程で信託は存続するとみなされ、権利帰属人は受益者とみなされる
米国では存続を擬制する条文を置かず、終了後も受託者に wind up と分配のための権限を認める構成をとる。採用状況は州によって異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父を委託者兼受益者、長男を受託者とする家族信託。父が亡くなり、契約上の終了事由が発生した。翌週、長男は信託口口座の預金を自分の住宅ローン返済に回し始めた。信託は清算中も存続しているから、これは信託財産の流用にあたる。残余財産を受け取る予定だった妹は、清算受託者の責任を追及できる
- 受託者の立場にいるのがあなただとする。信託が終わったと思い込み、信託不動産を知人に相場より安く売ってしまった。清算中も受託者としての義務は続くので、受益者や帰属権利者から損失てん補を請求される可能性がある(信託法40条)。「もう終わった信託だから」という言い訳は通らない
- 信託が終了した直後に受託者個人が多額の借金を抱えていたら、信託不動産は差し押さえられてしまうのか? 清算が結了するまで信託は存続するとみなされるので、信託財産は受託者の固有財産から切り離されたままである。受託者個人の債権者による強制執行は、原則として23条で制限される
- 清算受託者から「最終の計算」の承認を求める書面が届いた。そのまま放置して1か月が過ぎると、計算を承認したものとみなされる。承認によって清算受託者の責任は免除される(184条、不正行為がある場合を除く)。封筒を開けずにいると、それだけで異議を述べる権利を失う
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託契約書を手元に用意し、終了事由、残余財産受益者または帰属権利者が誰か(182条)を確認する2. 清算受託者に対し、信託財産の目録と帳簿の開示を書面で求める3. 不自然な出金や廉価売却を見つけたら、日付と金額を記録し、損失てん補を請求する(40条) 4. 最終計算の承認を求められたら、内容を精査し、1か月以内に異議を書面で出す(184条3項)。信託に詳しい弁護士への相談はこの段階で行う
訴えられた側:1. 信託終了後も、自分は清算受託者として忠実義務と分別管理義務を負っていると認識する2. 177条の順序を守り、債務の弁済を終えてから残余財産を給付する(181条) 3. 全ての出入金を記録し、受益者や帰属権利者に経過を報告する4. 信託財産で債務を完済できないと分かった場合は、直ちに信託財産の破産手続開始を申し立てる(179条) 5. 最終計算は遅滞なく作成し、関係者全員に承認を求める
時効(請求できる期限):清算の期限は条文上定められていない。ただし、最終計算の承認を求められた時から1か月以内に異議を述べなければ、承認したものとみなされる(信託法184条3項)。清算受託者に対する損害賠償などの請求には、一般消滅時効(民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法63条は、信託財産が帰属権利者に移転するまで信託は存続するものとみなすと定めていた。新信託法176条では、存続擬制の終点を「清算が結了するまで」に改め、清算受託者の職務(177条以下)と一体の規定として整理した
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法63条が、信託終了の場合において信託財産が帰属権利者に移転するまでは信託はなお存続するものとみなすと定めた
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正。存続擬制の終点を「帰属権利者への移転」から「清算の結了」に改め、新176条として清算受託者の職務(177条以下)と一体の規定に整理した
- 信託法 第163条信託の終了事由、清算の起点
- 信託法 第175条信託終了時の清算開始義務
- 信託法 第177条清算受託者の職務の範囲
- 信託法 第181条債務弁済前の残余財産給付の制限
- 信託法 第184条最終計算の承認と責任免除
- 相続税法 第9条の2残余財産取得者への課税の特則
- 会社法 第476条清算株式会社の同種の存続擬制
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