信託法 第181条(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)
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清算受託者は、第百七十七条第二号及び第三号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第二項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
この条文の基本情報
債務の弁済前における残余財産の給付の制限とは何ですか?
定義債務の弁済前における残余財産の給付の制限とは、信託法第181条に定められた規定で、「清算受託者は、第百七十七条第二号及び第三号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第二項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただ…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第181条(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第181条の条文原文は「清算受託者は、第百七十七条第二号及び第三号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第二項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただ…」で始まります。
- 信託法第181条は第二節 信託の清算に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第181条の前の条は信託法第180条です。
- 信託法第181条の次の条は信託法第182条です。
- 信託法第181条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第181条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第181条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/181
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法181条は、清算受託者が信託財産の債務(177条2号・3号)を弁済した後でなければ残余財産を給付できないと定める。弁済に必要な財産を留保すれば先に給付できる。
Q · 家族信託が終わったら、残った財産はすぐ受け取れるの?
原則不可。債務を払うか必要額を留保した後なら渡せる
信託法181条により、清算受託者は、信託財産から払うべき債務(177条2号)と、残余財産の給付以外で受益者に払うべき債務(同条3号)を弁済した後でなければ、残余財産受益者や帰属権利者に財産を給付できません。ただし、その弁済に必要と認められる財産を別に留保すれば、残りは先に給付できます。順番を守らずに財産を配ると、受託者が信託債権者から固有財産への請求を受けたり、損失てん補責任(40条)を問われたりするおそれがあります。
解説
信託が終わった瞬間に、財産がそのまま次の人へ渡ると思われがちだ。だが法律は、その出口に関所を一つ置いている。清算受託者(信託が終わった後の後始末を担当する受託者)は、次の二つを済ませるまで、残った財産を残余財産受益者や帰属権利者(最後に財産を受け取ると決められた人)へ渡せない。一つは、信託財産から払うべき借金や経費の弁済(177条2号)。もう一つは、残余財産の給付以外で受益者に払うべきものの弁済(同3号)である。順番は「債権者が先、受け取る家族は後」。例外は一つだけある。払い切るのに必要な財産を別に確保(留保)しておけば、残りは先に分けてよい。家族信託で親が亡くなり、実家やアパートを兄弟へ移す場面を考えてみてほしい。あなたが受託者でも受取人でも、この順番を飛ばせば「払うべきものが残っていた」という請求が後から自分に向かってくる。
法的な位置づけ
信託法181条は、信託の清算における残余財産の給付制限を定める規定である。清算受託者は、信託債権に係る債務(177条2号)および残余財産の給付以外の受益債権に係る債務(同条3号)を弁済した後でなければ、残余財産受益者等に信託財産を給付できない。弁済に必要と認められる財産を留保した場合は例外とされる。
手順
- 1.信託の終了と清算受託者を確認する 信託契約書で終了事由(委託者の死亡など)と清算受託者が誰になるかを確認する。終了日を記録し、帰属権利者・残余財産受益者の範囲(182条)も契約書で特定する
- 2.信託の債務と未払い受益債権を一覧にする 信託口座の通帳、ローン契約、固定資産税の納税通知、管理委託契約、賃貸借契約(敷金)を洗い出し、177条2号の信託債務と同条3号の未払い受益債権を一覧表にまとめる
- 3.留保額を算定し留保用口座を分ける 額が確定していない債務(修繕費、敷金返還、税金など)は見積書を取って多めに見積もり、弁済に必要な財産として留保する。留保分は別口座に分け、根拠資料を保存する
- 4.帰属権利者全員から書面で同意を取る 債務一覧、留保額、給付計画を帰属権利者・残余財産受益者全員に示し、書面で同意を得る。後の家族間の紛争と説明責任のリスクを下げる
- 5.弁済・留保の後に給付し最終計算の承認を求める 債務を弁済するか留保を確保した後で、不動産の名義移転などの給付を行う。清算事務が終わったら最終計算を作成し、帰属権利者等の承認を求める(184条)。記録は承認後も保存する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法181条とは?
信託が終わった後、清算受託者が信託の債務と未払いの受益債権を弁済してからでなければ、残余財産を帰属権利者等に渡せないと定める規定です。
Q2清算受託者とは何をする人?
信託が終了した後に清算を担当する受託者です。現務の結了、債権の取立てと債務の弁済、受益債権の弁済、残余財産の給付を行います(信託法177条)。
Q3家族信託 終了後 財産はいつ受け取れる?
信託の債務と未払いの受益債権が弁済された後、または弁済に必要な財産が留保された後です。それより前の給付は信託法181条で制限されています。
Q4信託法181条の「留保」とはどういう意味?
債務を払うのに必要と認められる財産を、給付せずに手元に残しておくことです。留保すれば、残りの財産は債務の弁済前でも先に給付できます。
Q5信託終了後 ローン残債 誰が払う?
信託財産に属する債務であれば、清算受託者が信託財産から弁済します。弁済前に財産を配ると、受託者個人が責任を負うおそれがあります。
Q6信託財産で債務を払いきれないときはどうする?
信託財産が債務を完済できないことが明らかになった場合、清算受託者は信託財産について破産手続開始の申立てをする必要があります(信託法179条)。
Q7家族信託の清算 期間 どれくらい?
法律上の一律の期限はありません。債務の洗い出しと弁済・留保、給付、最終計算の承認(184条)が済むまでの期間で、債務の確定状況により変わります。
Q8帰属権利者は清算中に何ができる?
清算中の帰属権利者は受益者とみなされ(信託法183条)、受託者に信託事務の処理状況の報告を求めることができます(36条)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で親が亡くなりました。実家の名義、すぐ兄弟に移していいですか?
信託の債務を払うのが先である(181条)。ローン残債、固定資産税、管理費、入居者への敷金返還などを洗い出し、払うか、払うのに必要な財産を留保してから給付する。実務のポイント:司法書士は名義移転登記の書類をそろえてくれても、信託内の未払い債務まで確認してくれるとは限らない。登記の前に債務一覧を作るのは受託者自身の仕事である
Q2借金を全部払い終わるまで、何年も財産を動かせないんですか?
そうとは限らない。弁済に必要と認められる財産を留保すれば、残りは先に給付できる(181条ただし書)。会社清算の同じ種類の規定(会社法502条)は、留保を争いのある債務に限っているが、信託法のただし書にはその限定がない。実務のポイント:留保用に預金口座を分けて「留保口」を作り、根拠となる見積書を残しておく。後で兄弟から説明を求められても揺らがない
Q3受託者の兄が先に財産を分けちゃって、あとから業者の請求が来ました。誰が払うの?
信託債権者は、原則として受託者の固有財産にも請求できる(21条2項の例外にあたる場合を除く)。さらに、順番を守らなかったことは任務違反として、他の受益者から損失てん補(40条)を求められうる。受け取った兄弟から取り戻せるかは、実務上解釈が分かれている。実務のポイント:受託者を引き受けた家族は、この自腹リスクを契約のときに説明されていないことが多い
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託が終わったら、財産は誰のものになるのか」と問う人は多い。だが、問う順番が逆である。先に問うべきは「信託財産から払うべきものが、あと何残っているか」だ。帰属先が契約書で決まっていても、清算の順番を飛ばして受け取ることはできない
- 債務を先に払うべきだということは、何となく知られている。知られていないのは、違反したときの重さである。先に財産を配った受託者は、信託債権者から固有財産を差し押さえられるおそれがある。さらに、他の受益者から任務違反による損失てん補(40条)を求められることもある。「早く分けてあげたい」という善意が、受託者個人の借金に変わる
- 「債務を全部払い終えるまで1円も動かせない」と思われがちだが、ただし書がある。弁済に必要な財産を留保すれば、残りは先に給付できる。何年も全財産を凍結しておく必要はない。ただし留保額の見積もりが甘く不足が出れば、清算受託者の任務違反が問われうる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律内容 | 信託法181条:債務の弁済(または留保)前の残余財産給付を禁止 | 信託法177条:清算受託者の職務(現務結了・債務弁済・残余財産給付)を列挙 信託法179条:信託財産が債務完済に不足する場合の破産申立て |
| 発動場面 | 残余財産を帰属権利者等に渡そうとするとき | 信託終了後の清算全般 信託財産で債務を完済できないことが明らかになったとき |
| 清算受託者の行動 | 177条2号・3号の債務を先に弁済するか、必要額を留保する | 職務を順に遂行する 直ちに破産手続開始の申立てをする |
| 違反時のリスク | 固有財産への請求、任務違反による損失てん補責任(40条) | 任務懈怠として責任追及の対象 申立ての遅れにより債権者に損害が及ぶおそれ |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾信託法は信託関係消滅時の財産帰属と受託者の結算書作成を定めるが、債務弁済を給付に先行させる日本181条のような明文はなく、清算の順序は解釈と実務に委ねられる
中国信託法は信託終了時の財産帰属先を定める。債務弁済の先行について日本ほど詳細な清算手続規定は置かれていない
ドイツには信託の一般法典がない。会社清算では債権者保護のため1年の待機期間(Sperrjahr)を経ないと出資者に分配できず、日本の会社法502条・信託法181条と同じ発想の規律である
米国統一信託法典は、信託終了時に受託者が債務・費用・税金の支払いに備えて合理的な額を留保したうえで分配することを認め、日本181条ただし書の留保と近い構造をとる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が委託者の家族信託で、受託者の長男は父の死亡で信託が終了したことを知った。信託財産のアパートにはローン残債が1,200万円残っている。それなのに弟からは「早く持分を移して」と急かされる。181条の順番に従うなら、まず残債を処理するか、返済に足りる預金を留保するのが先である
- 受託者が先に兄弟へ不動産の名義を移した。その後で、修繕業者から未払いの請求書が届いたらどうなる? 信託債権者は、原則として受託者の固有財産(受託者個人の財産)にも請求できる(21条2項の例外にあたる場合を除く)。最終的に払うのは、先に財産を配った受託者自身かもしれない
- 管理会社への最終月の管理費、固定資産税の残り、退去する入居者への敷金返還。小さな未払いほど、清算の最後に忘れられる。
- 帰属権利者である妹は、相続税の申告期限まであと2か月しかない。委託者の死亡で信託が終わり、対価を払わずに残余財産を取得すると、相続税法9条の2で遺贈により取得したものとみなされうる。清算が終わらず残余財産の額が決まらなければ、申告額も納税資金の手当ても決められない
- 収益受益者として毎月の家賃収入を受け取っていた母がいる。信託が終わった時点で3か月分が未払いだった。この分は177条3号の受益債権にあたり、残余財産を受け取る子どもたちより先に払われる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 管理業者、金融機関、賃借人などの信託債権者なら、信託の終了を知った時点で、清算受託者へ債権の存在と額を書面で通知する2. 帰属権利者や残余財産受益者なら、給付を受ける前に36条に基づいて債務の状況報告を求め、留保額の根拠を確認する3. 弁済前に財産が配られたと分かったら、受託者の固有財産への請求や損失てん補(40条)を検討する。受け取った側から財産を取り戻せるかは実務上解釈が分かれているため、専門家に相談する
訴えられた側:1. 信託口座の通帳、契約書、納税通知を洗い出し、177条2号・3号の債務を一覧にする2. 額が確定していない債務(修繕費、敷金返還、税金)は多めに留保し、残りだけを先に給付する3. 留保額と給付計画について、帰属権利者全員から書面で同意を取る4. 財産で払いきれないと分かった時点で給付を止め、破産手続開始の申立て(179条)を検討する5. 最終計算の承認(184条)が終わるまで記録を保存する
時効(請求できる期限):本条そのものに期限はない。清算受託者に対する債権や損失てん補請求には、特別な規定がない限り一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される。受託者の責任に関する信託法43条の特則については、最新の改正状況をご確認ください。最終計算の承認を求められてから1か月以内に異議を述べないと、承認したものとみなされ、受託者の責任は免除されたものとみなされうる(184条)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年の旧信託法を全部改正した新信託法(平成18年法律第108号、平成19年(2007年)9月30日施行)で新設された。清算受託者が債務を弁済する前に残余財産を給付することを制限し、留保による例外を明文化した
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年)を全部改正した新信託法(平成18年法律第108号、平成19年9月30日施行)で新設。清算受託者による債務弁済前の残余財産給付を制限し、留保による例外を明文化した
- 信託法 第177条清算受託者の職務と弁済対象債務
- 信託法 第182条残余財産受益者等の範囲を確定
- 信託法 第179条債務超過時の破産手続開始申立て
- 信託法 第40条任務違反時の損失てん補責任
- 信託法 第183条帰属権利者を清算中は受益者とみなす
- 破産法 第244条の2信託財産破産の特則(現行効力を要確認)
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