信託法 第166条(公益の確保のための信託の終了を命ずる裁判)
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- 裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため信託の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより、信託の終了を命ずることができる。
- 一不法な目的に基づいて信託がされたとき。
- 二受託者が、法令若しくは信託行為で定めるその権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。
- 2.裁判所は、前項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。
- 3.第一項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
- 4.第一項の申立てについての裁判に対しては、同項の申立てをした者又は委託者、受託者若しくは受益者に限り、即時抗告をすることができる。
- 5.前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
- 6.委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人が第一項の申立てをしたときは、裁判所は、受託者の申立てにより、同項の申立てをした者に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
- 7.受託者は、前項の規定による申立てをするには、第一項の申立てが悪意によるものであることを疎明しなければならない。
- 8.民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十五条第五項及び第七項並びに第七十六条から第八十条までの規定は、第六項の規定により第一項の申立てについて立てるべき担保について準用する。
この条文の基本情報
公益の確保のための信託の終了を命ずる裁判とは何ですか?
定義公益の確保のための信託の終了を命ずる裁判とは、信託法第166条に定められた規定で、「裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため信託の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第166条(公益の確保のための信託の終了を命ずる裁判)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第166条の条文原文は「裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため信託の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立…」で始まります。
- 信託法第166条は第一節 信託の終了に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第166条の前の条は信託法第165条です。
- 信託法第166条の次の条は信託法第167条です。
- 信託法第166条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第166条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第166条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/166
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法166条は、不法目的の信託や、法務大臣の書面警告後も違法行為を続けた受託者の信託について、公益確保のため裁判所が終了を命じられると定める。
Q · 裁判所が信託を強制的に終わらせることはできるの?
公益を害する二つの場合に限り、裁判所が終了を命じられる
信託法166条により、裁判所は公益を確保するため信託の存立を許せないと認めるとき、信託の終了を命じられます。対象は、不法な目的で設定された信託と、法務大臣の書面警告後も権限の逸脱・濫用や刑罰法令に触れる行為を継続・反覆した受託者の信託の二つです。申立ては法務大臣または委託者・受益者・信託債権者などの利害関係人が行い、裁判所は受託者の陳述を聴く必要があります。即時抗告には執行停止の効力があります。
解説
信託は委託者と受託者のあいだで完結する私的な仕組みで、外からは誰も手を出せない。そう信じて家族信託や事業用の信託を組む人は多いが、信託法166条はその閉じた箱に外から差し込める鍵を用意している。裁判所が「公益を確保するため信託の存立を許すことができない」と認めれば、信託の終了を命じられるのだ。対象は二つに限られる。不法な目的で設定された信託と、法令や信託行為で定められた権限を逸脱・濫用する行為または刑罰法令に触れる行為を、法務大臣から書面で警告されたあとも続けたり繰り返したりした受託者の信託である。申立てができるのは法務大臣だけではない。委託者、受益者、信託債権者(信託財産に対して債権を持つ人)その他の利害関係人も申し立てられる。受託者の側にも守りの手段がある。申立てが悪意によることを疎明(裁判官に「おそらくそうだ」と思わせる程度の証明)すれば、申立人に担保を立てさせることができる。終了命令に対する即時抗告には執行停止の効力があるため、一審で負けても抗告審の判断が出るまで信託は終わらない。攻める側も守る側も、この順番を知っているかどうかで打てる手が変わる。
法的な位置づけ
信託法第166条は、公益を確保するため信託の存立を許すことができない場合に、裁判所が信託の終了を命ずる制度を定める規定である。事由は不法な目的による信託の設定と、法務大臣の書面警告後における受託者の違法行為の継続・反覆の二つに限られ、受託者の陳述聴取、理由付記、執行停止効を持つ即時抗告、悪意の申立てに対する担保提供命令という手続保障を伴う。
手順
- 1.問題の性質を仕分ける 自分の債権回収が目的なら詐害信託の取消し(信託法11条)や強制執行、受託者の使い込みなら損失てん補(40条)や解任(58条4項)を検討する。公益を害する不法目的や、警告後も続く違法行為に当たる場合に限り166条を選ぶ
- 2.受託者の行為を記録に残す 受益者であれば帳簿等の閲覧・謄写請求(信託法38条)を行い、権限逸脱や違法行為の日時・内容・金額を特定して時系列に整理する
- 3.法務省へ情報提供する 2号ルートでは法務大臣の書面警告が前提となるため、整理した資料を添えて法務省へ書面で情報提供する。警告後の継続・反覆行為はすべて証拠として記録を続ける
- 4.地方裁判所へ申し立てる 受託者の住所地を管轄する地方裁判所(信託法262条)に信託終了命令を申し立てる。受託者から悪意の申立てとして担保提供を求められる可能性に備え、資金を準備しておく
- 5.裁判後の即時抗告期限を管理する 裁判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告するかを判断する。終了命令に対する即時抗告には執行停止の効力があるため、相手方の抗告と、その間の財産保全(信託法169条)も視野に入れる
よくある質問 AI による整理
Q1信託の終了命令とは?
裁判所が信託を強制的に終わらせる裁判です。信託法166条は、不法目的の信託や警告後も違法行為を続けた受託者の信託について、公益確保のために認めています。
Q2信託の終了命令を申し立てできるのは誰?
法務大臣のほか、委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人です(信託法166条1項)。ただし、2号の前提となる書面警告を出せるのは法務大臣だけです。
Q3信託終了命令の申立てはどこの裁判所?
受託者の住所地を管轄する地方裁判所です(信託法262条)。非訟事件として扱われ、受託者の陳述を聴いたうえで理由を付した裁判がされます。
Q4信託終了命令の即時抗告はいつまで?
裁判の告知を受けた日から2週間の不変期間内です(非訟事件手続法67条1項)。抗告できるのは申立人、委託者、受託者、受益者に限られます。
Q5受託者に法務大臣から警告が届くのはどんなとき?
受託者が法令や信託行為で定める権限を逸脱・濫用する行為、または刑罰法令に触れる行為をした場合です。警告後の継続・反覆が終了命令の要件になります。
Q6信託終了命令の申立てに担保は必要?
利害関係人が申し立て、受託者が申立ての悪意を疎明して求めた場合に、裁判所が相当の担保を命じられます。法務大臣の申立てには適用されません。
Q7信託が終了したら財産はどうなる?
終了後は清算手続に入り、清算受託者が信託債務を弁済したうえで、残余財産を帰属権利者などに引き渡します(信託法175条以下)。
Q8不法な目的の信託はそもそも無効では?
公序良俗に反する目的なら民法90条で無効となりうる一方、166条は信託の存立そのものを裁判で終わらせる手続です。両者は並行して検討されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託の受託者になった兄が、財産を勝手に使い込んでる。この条文で信託を終わらせられる?
多くの場合、本筋は別のルートだ。使い込みは受託者の任務違反として、損失てん補請求(40条)や裁判所への受託者解任の申立て(58条4項)で争うのが基本になる。166条は、不法目的や警告後も続く違法行為といった公益レベルの事案に向けた規定である。実務のポイント:家族間の紛争で166条を持ち出すと、要件不足で却下され、かえって交渉材料を失いかねない。解任と損失てん補の請求を先に並べる方が、相手への圧力は強い
Q2申し立てられた側だけど、相手の狙いは明らかに嫌がらせ。何か対抗手段はある?
委託者、受益者、信託債権者などの利害関係人が申し立てた場合、受託者は申立人に相当の担保を立てさせるよう裁判所に求められる(166条6項)。条件は、申立てが悪意によることを疎明すること(同7項)。法務大臣の申立てに対しては使えない。実務のポイント:同8項が準用する民事訴訟法78条により、申立人が期間内に担保を立てなければ申立ては却下されうる。この一手で、勝負が本案に入る前に決まることがある
Q3法務大臣が自分から動くことなんて、本当にあるの?
条文上、法務大臣は申立権者の筆頭であり、2号の書面警告も法務大臣にしか出せない。さらに裁判所その他の官庁や検察官は、職務上事由を知れば法務大臣に通知する義務を負う(167条)。実務のポイント:公刊された適用例がほとんど見当たらないことは、要件が緩いことを意味しない。2号ルートは警告という前段階を挟むので、警告の段階で是正されれば終了命令までは進まない設計になっている。警告書が届いた時点が、事実上の分岐点である
間違えやすい点 AI による整理
- 「家族信託で財産を隠された。166条で信託を潰せるか」という問いは、そもそも的を外していることが多い。自分の債権を回収したいなら、本筋は信託法11条(詐害信託の取消し)や強制執行である。166条の物差しは「あなたが受けた損害」ではなく「公益」だ。個人の被害がどれほど大きくても、それだけでは要件を満たさない
- 法務大臣の警告は形式的なお知らせではない。その重さが知られていない。2号ルートでは書面警告そのものが終了命令の前提要件であり、警告後に問題の行為を続けたり繰り返したりすることが要件の中心になる。警告を受けた瞬間から、受託者の行動はすべて証拠として積み上がっていく
- 裁判所が終了を命じたらその日のうちに信託が消える、と思われがちだが、そうではない。終了命令に対する即時抗告には執行停止の効力がある(166条5項)。抗告を申し立てれば、抗告審の判断が出るまで終了命令の効力は止まる。その間に財産をどう守るかが、次の争点になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 申立権者 | 信託法166条:法務大臣、委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人 | 信託法165条:委託者、受託者、受益者 信託法11条:委託者の債権者(受託者を被告とする取消請求) |
| 要件 | 不法目的の信託、または書面警告後の違法行為の継続・反覆+公益上存立を許せない | 予見できなかった特別の事情により、終了が受益者の利益に適合するに至ったことが明らか 委託者が債権者を害することを知って信託をしたこと |
| 守る利益 | 公益(社会全体の利益) | 受益者の利益(私益) 個々の債権者の利益 |
| 効果 | 信託の終了(即時抗告に執行停止効) | 信託の終了 信託行為の取消し(受益者の善意等による制限あり) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では強行規定や公序良俗に反する目的の信託行為は当初から無効とされる。日本の166条のように、裁判所が公益を理由に事後的に終了を命じる独立の手続は一般の私益信託には置かれていない
韓国も善良な風俗その他の社会秩序に反する目的の信託を無効とする。無効構成であり、法務大臣の警告を前提とする終了命令のような段階的手続は見られない
信託目的が法律・行政法規に違反し、または社会公共利益を害する場合、信託は無効とされる。日本法と同じく公益を基準とするが、無効構成である
信託目的は適法かつ公序に反しないことを要し、目的が違法・公序違反となれば信託は終了する。州司法長官が公益信託を監督する伝統はあるが、日本の法務大臣警告のような前置手続はない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 親族が「相続対策」として組んだ家族信託が、実は債権者から財産を隠すためのものだったと分かったら、どうなる? 債権者として自分の債権を回収したいなら、まず信託法11条の詐害信託の取消しを検討する。166条は公益を害するレベルの不法目的を対象にした別のルートであり、二つを混同すると貴重な時間を失う
- あなたは受託者として投資スキームの信託財産を運用している。ある日、法務大臣名の書面警告が届いた。この時点では、2号の終了命令の要件はまだそろっていない。だが警告後も同じ運用を続ければ、「継続的に又は反覆して」という要件にそのまま当てはまる。警告書は最後通告として読むべきだ
- 受益者の一人が、明らかな嫌がらせで終了命令を申し立ててきた。受託者は申立ての悪意を疎明して、申立人に担保を立てさせるよう求められる。
- 地方裁判所が信託の終了を命じる決定を出した。即時抗告の期限は告知を受けた日から2週間。抗告すれば執行は止まり、しなければ確定へ進む。受託者にも受益者にも、迷っている時間はほとんどない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 問題の性質を仕分ける。自分の債権回収が目的なら11条や民事訴訟、公益を害する不法目的や受託者の継続的な違法行為なら166条2. 受益者であれば帳簿等の閲覧等請求(38条)で受託者の行為を記録に残す3. 法務省へ情報提供し、書面警告が出るよう働きかける4. 申立ては受託者の住所地を管轄する地方裁判所へ(262条)。悪意の疎明による担保命令に備え、資金を準備しておく
訴えられた側:1. 法務大臣の書面警告を受けたら、問題とされた行為をただちに止め、止めた事実を記録に残す2. 申立てがあったら、陳述の機会(2項)に、信託目的が適法であることと行為が権限内であることを資料で示す3. 申立人の悪意を疎明できれば、担保の提供を求める(6項・7項) 4. 終了命令が出たら、告知から2週間以内に即時抗告する。執行停止で時間を確保しつつ、是正策を示す
時効(請求できる期限):終了命令の申立てそのものに特定の期間制限はない。裁判に対する即時抗告は、裁判の告知を受けた日から2週間の不変期間内に行う(非訟事件手続法67条1項)。2号ルートでは、法務大臣の書面警告後の継続・反覆が要件になるため、警告日が実質的な起算点になる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:166条の終了命令は、会社法824条の会社解散命令と同じ構造を持つ公益確保型の制度であり、私的自治を前提とする信託への国家介入は、不法目的と警告後の違法行為の継続・反覆という限定された事由に絞られていると理解される
実務的理解:受益者や債権者の個別的救済は、詐害信託の取消し(11条)、損失てん補(40条)、受託者解任(58条)などで図るのが本筋であり、166条は公益レベルの事案に限られる最終手段と位置づけられる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定(平成18年法律第108号) 旧信託法(大正11年法律)に代わる新しい信託法の一条として制定され、平成19年(2007年)9月30日に施行された。その後の手続法改正に伴う文言修正の有無は要検証
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年法律第62号)を全面的に改める信託法(平成18年法律第108号)の一条として制定。会社の解散命令にならい、公益確保のための信託終了命令を設けた。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第163条信託の終了事由、本条の裁判を列挙
- 信託法 第165条特別の事情による終了命令、私益型
- 信託法 第167条官庁等の法務大臣への通知義務
- 信託法 第11条詐害信託の取消し、債権者個人の救済
- 信託法 第262条非訟事件の管轄、受託者住所地の地裁
- 非訟事件手続法 第67条即時抗告期間2週間の一般規定
- 民事訴訟法 第75条担保提供規定、本条8項で準用
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