信託法 第200条(受益証券発行信託における受益権の質入れの対抗要件)
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- 受益証券発行信託の受益権(第百八十五条第二項の定めのある受益権を除く。)の質権者は、継続して当該受益権に係る受益証券を占有しなければ、その質権をもって受益証券発行信託の受託者その他の第三者に対抗することができない。
- 2.第百八十五条第二項の定めのある受益権の質入れは、その質権者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載し、又は記録しなければ、受益証券発行信託の受託者その他の第三者に対抗することができない。
この条文の基本情報
受益証券発行信託における受益権の質入れの対抗要件とは何ですか?
定義受益証券発行信託における受益権の質入れの対抗要件とは、信託法第200条に定められた規定で、「受益証券発行信託の受益権(第百八十五条第二項の定めのある受益権を除く。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第200条(受益証券発行信託における受益権の質入れの対抗要件)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第200条の条文原文は「受益証券発行信託の受益権(第百八十五条第二項の定めのある受益権を除く。」で始まります。
- 信託法第200条は第二節 受益権の譲渡等の特例に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第200条の前の条は信託法第199条です。
- 信託法第200条の次の条は信託法第201条です。
- 信託法第200条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第200条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第200条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/200
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法200条は、受益証券発行信託の受益権質の対抗要件を定める。証券発行型は質権者による受益証券の継続占有、証券不発行型は受益権原簿への質権者の氏名・住所の記載が必要となる。
Q · 信託の受益権を質に取ったら、契約書だけで差押債権者に勝てるの?
勝てない。証券の継続占有か原簿記載が必要
信託法200条により、受益証券発行信託の受益権の質権は、契約だけでは受託者その他の第三者に対抗できません。受益証券が発行されている受益権なら、質権者が証券を継続して占有していることが必要です(1項)。第185条第2項の定めにより証券を発行しない受益権なら、質権者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載・記録することが必要です(2項)。証券を一度設定者に返すと、対抗力を失うおそれがあります。
解説
質権を設定し、契約書も公正証書にした。それでも差押えに来た税務署や別の債権者に「その質権は私たちには主張できない」と言われることがある。信託法200条は、その分かれ目を二本の線で引いている。受益証券発行信託(受益権を「受益証券」という紙に乗せ、有価証券のように流通させる信託)で受益証券が発行されている場合、質権者が第三者に勝つ条件は一つ。証券を「継続して」自分の手元に置き続けることである。書換えのためでも、一度設定者に返した時点で対抗力(自分の権利を他人に主張できる力)は失われうる。一方、信託行為で受益証券を発行しないと定めた受益権(185条2項)には、そもそも紙がない。この場合の唯一の守り方は、受託者が管理する受益権原簿(受益者の公式台帳)に質権者の氏名と住所を記載させることである。同じ「質入れ」でも、紙があるかないかで守り方が真逆になる。担保を取る側に立ったら、契約書の文言より先に、その受益権に証券が出ているかどうかを確かめることになる。
法的な位置づけ
信託法第200条は、受益証券発行信託の受益権に設定された質権の対抗要件を定める規定である。受益証券が発行される受益権については質権者による受益証券の継続占有を、第185条第2項の定めにより受益証券が発行されない受益権については受益権原簿への質権者の氏名又は名称及び住所の記載又は記録を、受託者その他の第三者に対抗するための要件とする。
よくある質問 AI による整理
Q1受益証券発行信託とは何ですか?
受益権を受益証券という有価証券に表示し、株式のように流通させることを信託行為で定めた信託です。信託法第8章(185条以下)が特則を置いています。
Q2受益権原簿とは何ですか?
受益証券発行信託の受託者が作成・管理する受益者の公式台帳です。受益者や質権者の氏名・住所などが記載され、対抗要件の判断基準になります。
Q3受益権の質権 対抗要件 何が必要?
証券が発行されている受益権なら質権者による証券の継続占有、185条2項の不発行受益権なら受益権原簿への質権者の氏名・住所の記載が必要です。
Q4質に取った受益証券を一時的に返すと質権はどうなる?
信託法200条1項は「継続して」の占有を要求しているため、返還した時点で第三者への対抗力を失うおそれがあります。設定者との間の効力とは別問題です。
Q5受益権原簿への質権記載はどうやって請求する?
信託法201条に基づき、質権設定者が受託者に対し、質権者の氏名又は名称及び住所の記載・記録を請求する仕組みです。融資実行前に段取りを詰めるのが実務です。
Q6受益権の質権設定 公正証書にすれば対抗できる?
できません。公正証書は合意の証拠力を高めるだけで、信託法200条の対抗要件(証券の継続占有または原簿記載)の代わりにはなりません。
Q7受益証券を盗まれたら質権はどうなる?
継続占有が失われるうえ、善意の第三者が証券を取得すると善意取得(信託法196条)が問題になり、質権者の地位が大きく揺らぐおそれがあります。
Q8受益権 質権 受託者に対抗できない場合 どうなる?
受託者は原簿上の受益者に配当等を支払えば足り、質権者は自らへの支払を受託者に求められません。差押債権者や管財人にも優先を主張しにくくなります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受益証券を貸し手に渡したんですが、配当はまだ私のところに来ます。これって質入れになってないんですか?
配当の受け取りと質入れの成否は別問題です。証券型の受益権の質入れは証券の交付で効力を生じ(信託法199条)、第三者への対抗には質権者の継続占有が要ります(本条1項)。受託者が質権の存在を知らなければ、配当は原簿上の受益者であるあなたに払われ続けます。実務のポイント:質権者が配当を直接受け取りたい場合は、原簿に質権を記載させる「登録質」に切り替える方法があり、金融機関はこの切替えを担保条件に入れることが多い
Q2セキュリティトークンを担保にお金を借りられますか?
可能ですが、多くは受益証券を発行しない設計なので、質権の対抗要件は受益権原簿への質権者の氏名・住所の記載になります(本条2項)。ブロックチェーン上の移転記録だけで足りるかは、商品ごとの原簿管理の仕組み次第です。実務のポイント:受託者や原簿管理会社が質権の記載手続きに対応していない商品もある。借入れを検討する前に、受託者に「質権記載に対応しているか」を直接聞くことで、時間の無駄を避けられる
Q3株を担保にするのと何が違うんですか?
構造はほぼ同じです。会社法147条も、株券発行会社の株式は株券の継続占有、それ以外は株主名簿への記載を対抗要件としており、本条はこれと平行な作りになっています。違いは台帳の管理者が会社ではなく受託者である点です。実務のポイント:株式担保の実務に慣れた担当者ほど、信託の受益権を同じ感覚で扱って、受託者への手続を忘れがちになる。窓口が会社でなく信託銀行であることを最初に確認するだけで事故は減る
間違えやすい点 AI による整理
- 「質権設定契約を結んだのだから、質権は誰に対しても有効だ」と考えるのは自然だが、法律は当事者間の効力と第三者への対抗力を別の問題として扱う。契約は設定者との間でしか効かない。差押債権者、二重に担保を取った別の貸し手、倒産時の管財人を相手にしたとき、証券の継続占有か原簿の記載がなければ、契約書はただの紙になる
- 継続占有が対抗要件であることは知っていても、「ほんの数日返すだけ」の重さを知っている人は少ない。条文は占有が「継続」していることを求めており、一度途切れた時点で対抗力を失いうる。設定者の頼みに応じた親切が、数千万円の担保をただの無担保債権に変える
- 「受益証券を受け取れば安心」という問いの立て方自体がずれていることがある。185条2項の定めのある受益権には受益証券が発行されないので、受け取る紙がない。その受益権に関して受益証券のように見える書面を受け取っても、本条2項の対抗要件である原簿記載がなければ何の担保にもならない。まず、その受益権がどちらの類型かを確認するのが先である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律対象 | 信託法200条:受益権質の第三者対抗要件 | 信託法199条:受益権質の効力発生要件 信託法195条:受益権譲渡の対抗要件 |
| 証券発行型の要件 | 質権者による受益証券の継続占有 | 受益証券の交付で質入れの効力が生じる 受益権原簿への取得者の記載が受託者への対抗要件 |
| 証券不発行型(185条2項)の要件 | 受益権原簿への質権者の氏名・住所の記載・記録 | 証券交付の規律は及ばない 受益権原簿への記載が受託者その他の第三者への対抗要件 |
| 実務上の落とし穴 | 証券を一時返還すると対抗力を失うおそれ | 交付前に融資を実行すると質権自体が未成立 譲受人の原簿記載未了で受託者に権利行使できない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾信託法には受益証券発行信託の特則がなく、受益権の質入れは民法の権利質の一般規定で処理される。有価証券質権は証券の交付で設定される
韓国も2011年の信託法全部改正で受益証券発行信託を導入しており、日本法と類似した制度設計がとられている
ドイツでは有価証券上の質権に動産質の規定が準用され、占有の返還(§ 1253)が質権消滅につながる点で、継続占有を重視する発想が共通する
米国では証券に対する担保権を占有(possession)または支配(control)により完全化(perfection)し、公示手段で第三者関係を決める点が本条と機能的に対応する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは知人の会社に2,000万円を貸し、担保として受益証券発行信託の受益証券を預かった。半年後、社長が「名義書換えの手続きで一週間だけ証券を返してほしい」と言ってきた。言われたとおり返したその週に、社長の会社へ別の債権者の差押えが入る。継続占有が途切れているので、あなたの質権は差押債権者に対抗できない可能性が高い
- 不動産のセキュリティトークンを持っているあなたが、事業資金を借りるためにそのトークン(受益権)を質に入れようとしている。証券を発行しない設計の商品なら、渡せる紙は存在しない。それなら質権の対抗要件をどう備えるのか? 答えは受益権原簿への質権者の記載であり、貸し手から受託者への記載請求の段取りを先に詰めておかなければ融資は実行されない
- 受託者である信託銀行の担当者のもとに、ある日「この受益権には質権が付いている、配当はこちらに払え」と主張する人物が現れた。だが原簿を見ても記載はない。証券不発行型であれば、受託者は原簿の記載だけを見て判断してよい。記載のない質権者に払う義務はない
- 取引先が民事再生を申し立てる見込みだという噂が入った。あなたの質権は、証券不発行型の受益権に付いた質権で、合意書はあるが原簿への記載がまだ済んでいない。申立てまでに記載が完了するかどうかで、管財人や他の債権者に対抗できるかが決まる。残り日数を数えて、今日中に受託者へ記載請求を出す
- 質権者として預かった受益証券を事務所の金庫で保管していたが、盗まれた。善意の第三者の手に渡れば、その者が受益権を善意取得するおそれがあり、継続占有を失ったあなたは立場を一気に失う
取るべき行動
被害を受けた側:質権者として対抗力を問われた場合1. 受益証券が発行されているか、185条2項の不発行の定めがあるかを信託行為と受益権原簿で確認2. 証券型なら、設定時から現在まで途切れずに占有していることを保管記録や受領書で立証できるよう整える3. 不発行型なら受託者に原簿の記載事項証明を請求し、記載日を確定させる4. 対抗要件に欠落があれば、被担保債権の回収を一般債権として届け出る準備を並行して進める
訴えられた側:差押債権者や管財人、または二重に担保を取られた側として質権者と争う場合1. 証券型なら、証券の占有が設定者に戻った時期がなかったかを洗い出す(書換え・閲覧・預け替えの記録) 2. 不発行型なら原簿の記載の有無と記載日を受託者に照会する3. 記載が危機時期になされていれば、倒産手続における対抗要件否認の可否を弁護士と検討する4. 受託者の立場なら、原簿記載に基づかない支払請求には応じず、記載内容のみを基準に処理する
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。被担保債権が時効消滅すれば、付従性により質権も消える。対抗要件は期限の問題ではなく「継続」の問題であり、証券型では占有を手放した時点で失われる。倒産手続が見込まれる場合、危機時期に備えた対抗要件は否認の対象となりうるので早めの具備が必要(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条は会社法147条の株式質と平行な構造をとり、証券発行型では継続占有、不発行型では受益権原簿記載を対抗要件とする。占有が一時的にでも設定者に戻れば、第三者への対抗力を失いうると解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 受益証券発行信託の制度創設に伴い新設。証券発行型は継続占有、証券不発行型は受益権原簿への記載を質権の対抗要件と定めた(2007年9月施行)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正により受益証券発行信託の制度が創設され、受益権質の対抗要件として本条が新設された(2007年9月施行)。
- 信託法 第185条受益証券発行の定めと不発行受益権
- 信託法 第199条質入れは証券交付で効力発生
- 信託法 第201条受益権原簿への質権記載の請求
- 信託法 第195条受益権譲渡の対抗要件
- 信託法 第196条証券占有者の権利推定・善意取得
- 民法 第352条動産質の継続占有要件と同構造
- 会社法 第147条株式質の対抗要件と平行構造
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