信託法 第211条(受益証券の喪失)
クイックジャンプ
- 受益証券は、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。
- 2.受益証券を喪失した者は、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定を得た後でなければ、その再発行を請求することができない。
- 3.受益証券を喪失した者が非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをしたときは、当該受益証券を喪失した者は、相当の担保を供して、受益証券発行信託の受託者に当該受益証券に係る債務を履行させることができる。
この条文の基本情報
受益証券の喪失とは何ですか?
定義受益証券の喪失とは、信託法第211条に定められた規定で、「受益証券は、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第211条(受益証券の喪失)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第211条の条文原文は「受益証券は、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。」で始まります。
- 信託法第211条は第三節 受益証券に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第211条の前の条は信託法第210条です。
- 信託法第211条の次の条は信託法第212条です。
- 信託法第211条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第211条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第211条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/211
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法211条は、喪失した受益証券を公示催告手続で無効にでき、除権決定後に再発行を請求できると定める。申立て後は相当の担保を供して履行も求められる。
Q · 受益証券をなくしたら、すぐに再発行してもらえるの?
除権決定まで再発行は不可。担保を出せば先に支払いは受けられる
信託法211条2項により、受益証券を喪失した者は、非訟事件手続法106条1項の除権決定を得るまで再発行を請求できません。まず簡易裁判所に公示催告を申し立て、2か月以上の公示催告期間を経る必要があります。ただし、公示催告を申し立てた時点で、相当の担保を供すれば、受託者に証券にかかる債務(分配金・償還金など)を履行させることができます(同条3項)。
解説
受益証券(信託から利益を受け取る権利を表した紙の証券)は、なくしたらおしまい、というわけではない。とはいえ、受託者(信託財産を預かり運用する人や会社)に「なくしたので再発行してほしい」と頼んでも、それだけでは通らない。信託法211条が定める道は一本だけである。まず簡易裁判所に公示催告(「この証券を持っている人は名乗り出よ」と裁判所が公告する手続)を申し立てる。2か月以上の期間を経て除権決定(その紙を無効にする裁判所の決定)を得る。再発行を請求できるのはそのあとだ。ただし、その間ずっと配当や償還金を待つ必要はない。公示催告を申し立てた時点で、相当の担保を差し入れれば、受託者に支払いを求められる(3項)。この「担保を出せば先にお金を受け取れる」という一手を知らない人は、何か月も現金が止まったまま待ち続けることになる。紙をなくしたら、まず公示催告を申し立てる。最初の一手を間違えないことが、時間とお金の両方を守る。
法的な位置づけ
信託法211条は、受益証券発行信託における受益証券の喪失時の救済を定める規定である。受益証券は公示催告手続により無効とすることができ、喪失者は除権決定を得た後に限り再発行を請求できる。また、公示催告の申立て後は、相当の担保を供して受託者に証券上の債務を履行させることができる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.喪失した受益証券を特定する 証券の控え、取引報告書、分配金の通知書、通帳の入金記録などから、銘柄、証券番号、券面額、受託者名を特定する。公示催告の申立てでは証券の特定が必須になる
- 2.受託者に喪失を通知する 受託者に受益証券の喪失を書面で通知し、支払いの取扱いと、証券を提示する者が現れた場合の対応を確認する
- 3.簡易裁判所に公示催告を申し立てる 証券に表示された義務履行地を管轄する簡易裁判所に、有価証券無効宣言の公示催告を申し立てる。申立書には証券の要旨と喪失の経緯を記載し、疎明資料を添付する
- 4.支払日が近ければ担保を供して履行を請求する 公示催告の申立てを示したうえで、受託者と担保の額・種類・返還条件を協議し、相当の担保を供して分配金や償還金の支払いを求める(信託法211条3項)
- 5.除権決定を得て再発行を請求する 2か月以上の公示催告期間を経て除権決定が出たら、その決定書の写しを添えて受託者に受益証券の再発行を請求する(信託法211条2項)
よくある質問 AI による整理
Q1受益証券とは何ですか?
受益証券発行信託において、受益者が信託から利益を受け取る権利(受益権)を表示した有価証券です。信託行為に定めがある場合に発行されます(信託法185条)。
Q2公示催告とはどんな手続ですか?
裁判所が官報などで「この証券を持つ人は権利を届け出よ」と公告する手続です。期間内に届出がなければ除権決定により証券が無効になります。
Q3除権決定が出るまでどのくらいかかりますか?
公示催告期間は2か月以上と定められており、申立ての準備や公告の期間を含めると、実際には数か月かかるのが一般的です。
Q4公示催告の申立てはどこの裁判所にしますか?
有価証券の公示催告は、原則として証券に表示された義務履行地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。申立て前に証券記載事項を確認しましょう。
Q5受益証券をなくしても分配金は受け取れる?
公示催告を申し立てたうえで相当の担保を供すれば、受託者に分配金や償還金の支払いを求められます(信託法211条3項)。
Q6上場 ETF の受益権をなくすことはありますか?
振替制度で管理される受益権には紙の証券がないため、証券喪失の問題は原則生じません。本条が問題になるのは紙の証券が発行されている場合です。
Q7除権決定後に元の証券が見つかったらどうなる?
除権決定により元の証券は無効となっているため、その証券で権利を行使することはできません。権利は申立人が主張することになります。
Q8相続で受益証券が見つからないときは?
相続人が証券の特定資料(控え・通知書など)を集め、公示催告を申し立てます。現金化できないと遺産分割が止まるため早めの着手が重要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1証券なくしたんですけど、身分証見せれば再発行してもらえませんか?
できない。信託法211条2項により、除権決定を得るまで再発行は請求できない。本人確認で足りるとすると、拾った人が善意の取得者として権利を主張したときに、証券が二枚並ぶことになるからだ。実務のポイント:窓口では「規則なので」としか説明されないことが多い。しかし、再発行を待っている間でも3項の担保ルートで支払いは受けられる。そこまで教えてくれる窓口は少ない
Q2担保ってどれくらい積めばいいんですか?
条文は「相当の担保」としか書いていない。実務では、二重払いになった場合に受託者が負う損失、つまり支払う元本と分配金の額が基準になりやすい。実務のポイント:現金に限らず、銀行の支払保証などで代えられるかを交渉する余地がある。民法520条の12は指図証券について供託という選択肢も定めているが、信託法211条3項は担保だけである。この違いを知っていると、交渉の論点を外さずに済む
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者が自分を受益者だと知っているのだから、再発行してくれるはず」と考えるのは自然だが、2項はそれを明確に封じている。除権決定を得るまで再発行は請求できない。紙の証券が世の中に二枚出回ると取引の安全が崩れるため、受託者の善意や顧客対応の問題ではなく、法律が手続の順番を固定している
- 「証券をなくした=権利も消えた」と思い込む人がいるが、問いの立て方がそもそも違う。消えるのは紙の効力であり、権利そのものではない。除権決定で無効になるのは証券のほうで、申立人は証券がなくても権利を主張できるようになる(非訟事件手続法118条)
- 受益証券の喪失は、紙の時代の古い問題だと思われがちである。たしかに上場 ETF など振替制度で管理される受益権には、そもそも紙の証券がないので本条の出番はない。ただし、紙の証券を発行している私募型の信託や、家族の遺品から出てくる古い証券では、今でも本条がそのまま問題になる。自分の権利が紙か振替か、それを知らないこと自体がリスクである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる証券 | 信託法211条:受益証券発行信託の受益証券 | 民法520条の12:指図証券 会社法699条:社債券 |
| 無効化の手続 | 非訟事件手続法の公示催告手続・除権決定 | 非訟事件手続法の公示催告手続・除権決定 非訟事件手続法の公示催告手続・除権決定 |
| 除権決定前の履行 | 公示催告申立て後、相当の担保を供して履行させることができる | 公示催告申立て後、債務者に供託させるか、相当の担保を供して履行させることができる 除権決定後でなければ社債券の再発行を請求できない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も無記名証券の喪失について公示催告による無効宣告を認める。信託受益証券固有の規定より、一般の証券喪失ルールで処理される面が大きい
韓国も公示催告・除権判決の枠組みで有価証券の喪失を処理する点で日本と共通する
ドイツは Aufgebotsverfahren による無記名債券の無効宣言を定め、日本の公示催告制度の源流にあたる
米国は裁判手続ではなく、発行者への通知と補償保証(indemnity bond)の提供を条件に新証券を発行させる方式をとる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 亡くなった父の金庫を整理していたら、受益証券発行信託の受益証券を預けたという控えだけが出てきて、本体の証券が見当たらない。受託者に問い合わせても「証券の提示がなければ払えない」と言われた。この場面でやることは、相続手続より先に、証券に記載された義務履行地を管轄する簡易裁判所へ公示催告を申し立てることだ
- もし、あなたが受託者側の担当者で、証券をなくしたという受益者から「本人確認は済んでいるのだから払ってほしい」と強く求められたらどうするか。担保なしで払えば、のちに証券を拾った善意の取得者が現れたとき、二重払いのリスクを負うのはあなたの会社である
- 償還日まで残り3週間。証券が見つからない。今日公示催告を申し立てて担保の算定を受託者と詰めれば、償還日にお金を受け取れる余地が残る
取るべき行動
被害を受けた側:1. 証券番号、銘柄、受託者名、券面額を控えや通帳、通知書から特定する。2. 受託者に喪失を通知し、支払停止の扱いを確認する。3. 義務履行地を管轄する簡易裁判所に公示催告を申し立てる(非訟事件手続法114条、115条)。4. 支払日が近ければ、申立ての事実を示して担保を差し入れ、支払いを求める(本条3項)。5. 除権決定を得たら再発行を請求する(本条2項)
訴えられた側:受託者として「なくした」と申し出を受けた場合:1. 公示催告の申立ての有無を確認するまで、担保なしでは払わない。2. 3項による請求を受けたら、二重払いのリスクをカバーできる担保額を算定し、返還条件を合意書にする。3. 除権決定の謄本を確認してから再発行する。4. 期間中に証券を提示する者が現れたら、権利の届出をするよう案内し、自分では判断しない
時効(請求できる期限):公示催告期間は2か月以上(非訟事件手続法103条)。期間内に権利の届出がなければ除権決定が出る。除権決定の取消しの申立てには期間制限がある(同法108条。最新の改正状況をご確認ください)。受益債権そのものには一般の消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年または行使できる時から10年)がかかるので、手続中も時効の管理を怠らないこと
学説
立法趣旨:受益証券は占有者が権利者と推定され善意取得も生じうるため、再発行を除権決定後に限って証券の唯一性を守る一方、担保を条件に履行を認めて正当な権利者の資金回収を確保する構造とされる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 受益証券発行信託の制度創設に伴い新設。受益証券の喪失時の公示催告、除権決定前の再発行の禁止、担保を差し入れたうえでの履行請求を定めた
- 平成23年(2011年)非訟事件手続法制定に伴う整備 新しい非訟事件手続法(平成23年法律第51号)の制定に合わせ、引用条文を同法100条、106条、114条に改正した
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正により受益証券発行信託制度が創設され、受益証券喪失時の公示催告、除権決定前の再発行請求の禁止、担保を供した履行請求を定めた
- 2.平成23年(2011年) 改正:非訟事件手続法(平成23年法律第51号)の制定に伴い、引用条文を同法100条、106条1項、114条に改めた
- 信託法 第185条受益証券発行信託の成立根拠
- 信託法 第194条受益権譲渡に証券交付を要求(現行効力を要確認)
- 信託法 第196条証券占有者の権利推定と善意取得(現行効力を要確認)
- 信託法 第209条受益証券の記載事項、喪失時の特定資料
- 民法 第520条の12指図証券喪失時の担保・供託による履行
- 会社法 第699条社債券喪失時の公示催告と再発行の並行規定
- 会社法 第233条株券は公示催告の適用除外、喪失登録制度へ
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める