信託法 第53条(信託財産からの損害の賠償)
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- 受託者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、信託財産からその賠償を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 一受託者が信託事務を処理するため自己に過失なく損害を受けた場合当該損害の額
- 二受託者が信託事務を処理するため第三者の故意又は過失によって損害を受けた場合(前号に掲げる場合を除く。)当該第三者に対し賠償を請求することができる額
- 2.第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)並びに前二条の規定は、前項の規定による信託財産からの損害の賠償について準用する。
この条文の基本情報
信託財産からの損害の賠償とは何ですか?
定義信託財産からの損害の賠償とは、信託法第53条に定められた規定で、「受託者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、信託財産からその賠償を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第53条(信託財産からの損害の賠償)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第53条の条文原文は「受託者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、信託財産からその賠償を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定…」で始まります。
- 信託法第53条は第四節 受託者の費用等及び信託報酬等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第53条の前の条は信託法第52条です。
- 信託法第53条の次の条は信託法第54条です。
- 信託法第53条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第53条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第53条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/53
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法53条は、受託者が信託事務の処理で自己に過失なく受けた損害は全額、第三者の故意・過失による損害はその第三者への請求可能額まで、信託財産から賠償を受けられると定める。
Q · 家族信託の受託者が仕事中にケガをしたら、その損害は自腹ですか?
過失がなければ信託財産から全額受けられるが契約の定めが優先
信託法53条1項により、受託者が信託事務を処理するため自己に過失なく受けた損害は、その全額を信託財産から賠償として受けられます。第三者の故意・過失による損害は、その第三者に請求できる額が上限です。ただし信託契約に別段の定めがあればそれに従い、受託者が40条のてん補責任を負っている場合は、それを果たした後でなければ受け取れません(48条4項の準用)。
解説
家族信託で受託者を引き受けた子どもの多くは、「親の財産を預かる以上、自分が受けた損害は自腹で負担するもの」と思い込んでいる。法律の扱いは違う。信託法53条は、信託事務(信託契約で任された財産の管理や処分の仕事)を処理するために受託者が損害を受けた場合に、二つの場面で信託財産から賠償を受けられると定めている。一つ目は、自分に過失がない場合で、損害の全額を受けられる。二つ目は、第三者の故意や過失で損害を受けた場合で、受け取れるのはその第三者に請求できる額までである。ここには、受託者自身にも落ち度があった場面も含まれる。ただし、落とし穴が二つある。一つは、信託契約に「別段の定め」があれば、そちらが優先されること。もう一つは、受託者が任務を怠って信託財産に損失を与え、てん補責任(40条)を負っている場合、それを先に果たさなければ受け取れないことである。請求する前に、契約書の該当条項と自分の帳簿の両方を確認する必要がある。
法的な位置づけ
受託者の損害補償請求権とは、信託法53条に基づき、受託者が信託事務の処理に際して受けた損害について、信託財産から賠償を受ける権利をいう。自己無過失の損害は全額、第三者の故意又は過失による損害は当該第三者に対する賠償請求可能額が上限となる。信託行為の別段の定めにより変更でき、48条・49条・51条・52条の規律が準用される。
手順
- 1.事故当日に状況を記録する 日時・場所・作業内容・第三者の関与の有無を、写真とメモで当日中に残す。自己に過失がなかったことを示す材料が、1号と2号のどちらを使えるかを左右する
- 2.損害の証拠をそろえる 治療費・修理費・休業損害の領収書や診断書をすべて保管し、損害額を一覧表にまとめる。第三者から回収した額も同じ表に記入し、二重取りがないことを示せる状態にする
- 3.信託契約と自分の責任を確認する 信託契約書に受託者の損害補償に関する別段の定めがないか確認する。あわせて、自分が40条のてん補責任を負っていないか帳簿で確かめる
- 4.受益者へ書面で通知してから受け取る 請求額・根拠条文・証拠を受益者と他の家族に書面で示してから、信託財産から受け取る(49条の準用)。残高が足りなければ、受益者との合意による直接負担か、52条の準用による手続を検討する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法53条とは?
受託者が信託事務の処理中に受けた損害を、信託財産から賠償として受けられると定めた条文です。無過失なら全額、第三者が原因なら第三者への請求可能額が上限です。
Q2家族信託の受託者がケガをしたら補償される?
受託者に過失がなければ、治療費などの損害を信託財産から受けられます。ただし信託契約に別段の定めがある場合はその定めに従います。
Q3家族信託の受託者がケガをしたら労災は使える?
家族信託の受託者は通常、雇用関係にある労働者ではないため、原則として労災保険の対象外と考えられます。その代わりに信託法53条による信託財産からの賠償が問題になります。
Q4信託法53条と48条の違いは?
48条は受託者が支出した「費用」の償還、53条は受託者が受けた「損害」の賠償を扱います。53条は48条の一部規定を準用しており、両者は対になる仕組みです。
Q5受託者の損害に休業損害も含まれる?
条文は「損害の額」と規定するだけで、費目を限定していません。事故との相当因果関係が認められる範囲であれば、休業損害も含まれる余地があります。
Q6信託契約で受託者の損害補償を排除できる?
できます。53条1項ただし書が「信託行為に別段の定め」を優先させているため、契約で補償を制限したり排除したりすることが可能です。
Q7受託者は受益者に直接損害を請求できる?
当然にはできません。受益者個人から受け取るには、その受益者との合意が必要です(48条5項の準用)。旧信託法の補償請求とは扱いが異なります。
Q8信託法53条の請求はいつまでできる?
53条自体に特別な期間制限はなく、一般の消滅時効(民法166条)によると考えられます。第三者への請求は民法724条の期間にも注意が必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄が受託者で、ケガの治療費を信託口座から勝手に出したと言っています。そんなことしていいんですか?
自分に過失なく受けた損害であれば、53条1項により信託財産から受けることができ、49条の準用で信託口座の金銭を自分に帰属させることもできる。ただし、信託契約に別段の定めがある場合や、兄が40条の責任を果たしていない場合は受け取れない。実務のポイント:受益者は帳簿等の閲覧を請求できる(38条)。感情的に責める前に、まず領収書と事故記録の開示を求めるほうが話は早く進む
Q2信託財産がほとんど現金のない不動産だけなんですが、受託者はどうやって損害を回収するんですか?
受益者との合意があれば、受益者から直接受けられる(48条5項の準用)。また、償還を受けるまで受益者への給付を拒むことができ(51条の準用)、不足が続く場合は通知のうえで信託を終了させる道もある(52条の準用)。実務のポイント:不動産だけの家族信託は、最初に少額の金銭も信託しておかないと、修繕費も受託者の損害も払えずに行き詰まりやすい
Q3他人のせいでケガをしたとき、相手と信託のどちらに先に請求すればいいですか?
53条1項2号には請求の順序は書かれておらず、受け取れる額の上限はその第三者に請求できる額である。相手が無資力で回収が難しい場面で、この規定の価値が出る。実務のポイント:相手からも信託からも受け取る二重取りは認められないと解されている。実務では、どちらからいくら回収したかを一つの表で管理し、受益者に見せられる状態にしておく。これが後の紛争を防ぐ
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者は無償の奉仕者なので、損害は自分でかぶるもの」と思われがちである。実際は逆で、自分に過失がなければ、信託財産から損害の全額を受けられるのが法律の原則である。自腹になるのは、契約書でそう定めた場合に限られる
- 「過失なく」という要件の重さは見落とされやすい。少しでも自分に落ち度があれば1号は使えない。そのうえで責任を負う第三者もいなければ、2号も使えないので、53条による救済はまったく受けられない。ケガをした時点の状況を記録しておくかどうかが、請求の可否そのものを左右する
- 「受益者である親に直接請求すればいい」という発想は、前提から誤っている。旧信託法(大正11年法)では受益者に対する補償請求が認められていたが、現行法では受益者が当然に負担することはない。受益者個人から受け取るには、その受益者との合意が必要である(48条5項の準用)
- 受益者のきょうだいから見れば、兄のケガは兄個人の問題に見える。しかし法律上は、信託財産が負担する出費になる。その分だけ、母に渡る収益も、将来の相続で分ける財産も減る。この認識のずれが、家族信託をめぐる兄弟げんかの火種になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象 | 53条:信託事務の処理で受託者が受けた損害 | 48条:信託事務の処理に必要な費用 54条:信託事務の対価としての信託報酬 |
| 要件 | 自己無過失(1号)または第三者の故意・過失(2号) | 信託事務処理に必要と認められる費用の支出 信託行為に信託財産から報酬を受ける旨の定めがあること |
| 受けられる額 | 1号は損害の全額、2号は第三者に請求できる額が上限 | 支出した費用とその利息 信託行為の定めによる額(定めのない場合は相当額) |
| 信託行為による変更 | 別段の定めで変更可 | 別段の定めで変更可 そもそも信託行為の定めがなければ報酬を受けられない |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾も受託人が処理信託事務で受けた損害の補償を信託財産で充てる仕組みを持ち、旧日本法の影響を受けて受益人への請求を認める点が現行日本法と異なる
韓国も2011年の全部改正で受託者の費用償還請求権を整理しており、日本の現行法と同時期に近代化した
米国では受託者が適切に負担した費用の償還を信託財産から受けられるとし、州法と判例で損害の扱いが補完される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の賃貸アパートを信託で管理している長男が、台風のあと屋根を点検していて脚立から落ち、手首を骨折した。脚立の固定に落ち度がなければ、治療費と休業損害は53条1項1号により信託財産から回収できる。一方、固定を怠っていた場合で、ほかに責任を負う第三者もいないときは、53条ではどこからも回収できない。「過失なく」の四文字が、受け取れるかどうかの全部を決めている
- もし物件の巡回中に、入居者が通路に放置した自転車につまずいて大ケガをしたら、どうなるか。53条1項2号により、その入居者に請求できる額を限度として信託財産から賠償を受けられる。あなた自身もスマホを見ながら歩いていたなら、過失相殺で減った後の額が上限になる
- あなたは受益者である母の側に立つ次女である。受託者の兄が「自分の治療費」として信託口座から80万円を引き出していたことを知った。それが正当かどうかは、兄に過失がなかったか、信託契約に別段の定めがないか、兄自身が信託財産へのてん補責任を負っていないか、の三点で決まる。まず帳簿と領収書の開示を求めることから始める
- 信託契約書の一行に「受託者が受けた損害は受託者の負担とする」と書いてあった。この一行で、53条の請求権は消えうる。サインしたのは、ほかでもないあなたである
- 信託口座の残高は30万円しかなく、受託者が負った損害は120万円である。来月には固定資産税の引落しも控えている。信託財産が足りない場合、受託者は委託者と受益者に通知したうえで、相当の期間内に償還を受けられなければ信託を終了させることができる(52条の準用)。家族会議を開くまで、残された時間は長くない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 事故の状況(日時、作業内容、第三者の関与)を写真やメモで当日中に記録する2. 治療費・修理費・休業損害の領収書をすべて保管する3. 信託契約書に別段の定めがないか、自分が40条のてん補責任を負っていないかを確認する4. 受益者に請求額と根拠を書面で通知してから、信託財産から受け取る。残高が足りなければ、受益者との合意による直接負担か、52条の準用による手続を検討する
訴えられた側:受益者の側から受託者の引出しを問題にする場合の手順である。1. 帳簿等の閲覧を請求し(38条)、領収書と事故状況の記録を確認する2. 受託者に過失がなかったかどうか、第三者の責任額を超えて受け取っていないかを検討する3. 受託者が信託財産に損失を与えていて、てん補が済んでいなければ、受け取りは認められない(48条4項の準用)と主張する4. 根拠のない引出しについては、返還を求め、受託者の解任も視野に入れる
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。第三者への損害賠償請求は、損害と加害者を知った時から3年(人身損害は5年、民法724条、724条の2)である。信託財産が不足する場合の信託終了は、委託者と受益者への通知から相当期間の経過が要件となる
学説
通説:53条1項2号による信託財産からの賠償と、第三者からの損害賠償の両方を受ける二重取りは認められない。信託財産が賠償した場合、その範囲で第三者に対する請求権の扱いが問題となる
立案担当者の解説:旧法36条が認めていた受益者に対する当然の補償請求は、受益者に予期しない負担を負わせるため廃止され、受益者との個別の合意による方式(48条5項の準用)に改められた
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法36条にあった受託者の損害補償の規律を整理し、現行の53条として規定した。受益者に対する当然の補償請求は廃止され、受益者との合意による方式に改められた。施行後の改正の有無は要確認
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法36条が、受託者が過失なく受けた損害の補償を信託財産から受けられること、および受益者に対する補償請求を定めた
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正。受託者の損害賠償を現行53条として整理し、2号(第三者の故意・過失による損害)を明文化、受益者への当然の補償請求を廃止して合意方式とした
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