信託法 第52条(信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置)
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- 受託者は、第四十八条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産(第四十九条第二項の規定により処分することができないものを除く。第一号及び第四項において同じ。)が不足している場合において、委託者及び受益者に対し次に掲げる事項を通知し、第二号の相当の期間を経過しても委託者又は受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けなかったときは、信託を終了させることができる。
- 一信託財産が不足しているため費用等の償還又は費用の前払を受けることができない旨
- 二受託者の定める相当の期間内に委託者又は受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けないときは、信託を終了させる旨
- 2.委託者が現に存しない場合における前項の規定の適用については、同項中「委託者及び受益者」とあり、及び「委託者又は受益者」とあるのは、「受益者」とする。
- 3.受益者が現に存しない場合における第一項の規定の適用については、同項中「委託者及び受益者」とあり、及び「委託者又は受益者」とあるのは、「委託者」とする。
- 4.第四十八条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産が不足している場合において、委託者及び受益者が現に存しないときは、受託者は、信託を終了させることができる。
この条文の基本情報
信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置とは何ですか?
定義信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置とは、信託法第52条に定められた規定で、「受託者は、第四十八条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産(第四十九条第二項の規定により処分することができないも…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第52条(信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第52条の条文原文は「受託者は、第四十八条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産(第四十九条第二項の規定により処分することができないも…」で始まります。
- 信託法第52条は第四節 受託者の費用等及び信託報酬等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第52条の前の条は信託法第51条です。
- 信託法第52条の次の条は信託法第53条です。
- 信託法第52条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第52条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第52条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/52
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法52条は、費用の償還や前払を受けるのに信託財産が不足する場合、受託者が委託者と受益者に通知し、相当の期間内に支払がなければ信託を終了できると定める。
Q · 家族信託のお金が足りなくなったら、受託者は信託をやめられるの?
通知して相当の期間内に支払がなければ、受託者は信託を終了できる
信託法52条1項により、受託者は、費用等の償還や前払を受けるのに信託財産が不足するとき、委託者と受益者に「財産が不足している旨」と「期間内に支払がなければ信託を終了させる旨」の二点を通知できます。受託者の定めた相当の期間が過ぎても支払がなければ、委託者や受益者の同意なしに信託を終了させられます。終了後は清算手続(175条以下)に移ります。
解説
家族信託でアパートを預かった長男が、屋根の修繕見積300万円と信託口座の残高40万円を見比べている。旧信託法の時代なら、受託者は受益者に直接「費用を出してくれ」と請求できた。現行法はこの考え方を改めた。受益者は、受託者と合意しない限り費用を負担しない(48条5項)。では受託者は自腹を切り続けるしかないのか。そのための出口が52条である。信託財産が足りないとき、受託者は委託者と受益者に二つのことを通知する。一つは「財産が足りず費用の償還や前払を受けられない」こと、もう一つは「期限までに費用を出さなければ信託を終了させる」ことだ。相当の期間が過ぎても誰も払わなければ、受託者は自分の判断だけで信託を終了できる。辞任には原則として委託者と受益者の同意が要る(57条)。一方、この道に同意は要らない。受託者を引き受けた人にとっても、受益者の側にいる人にとっても、お金が尽きれば信託も終わる仕組みが、最初から法律に組み込まれている。
法的な位置づけ
信託法52条は、信託財産の不足による受託者の信託終了権を定める規定である。受託者が48条1項・2項に基づく費用等の償還または前払を信託財産から受けられない場合、委託者および受益者への所定事項の通知と相当期間の経過を要件として、受託者が単独で信託を終了させることを認める。終了事由として163条4号に列挙される。
手順
- 1.信託財産の不足を数字で確認する 見積書・請求書と信託口座の残高、処分可能な信託財産を一覧にする。49条2項で処分できない財産は計算から除き、費用の償還・前払に足りないことを書面で示せる状態にする
- 2.通知先を確定する 委託者と受益者が現に存するかを確認する。委託者不在なら受益者のみ、受益者不在なら委託者のみが通知先となる。受益者が意思能力を欠く場合は成年後見人など法定代理人の有無も確認する
- 3.二点を明記した通知書を送る 「信託財産が不足し費用等の償還・前払を受けられない旨」と「定めた期限までに支払がなければ信託を終了させる旨」を明記し、緊急度に見合った相当の期間を設定して、内容証明郵便など到達を証明できる方法で送付する
- 4.期間経過後に終了を記録し清算へ移る 期間内に委託者・受益者から支払がなかったことを確認し、信託終了の旨を書面で記録する。その後、清算受託者として債務の弁済と残余財産の引渡し(175条以下、182条)を進める
よくある質問 AI による整理
Q1信託法52条とは何ですか?
信託財産が費用に足りないとき、受託者が委託者と受益者に通知し、期間内に支払がなければ信託を終了できると定めた規定です。
Q2家族信託 受託者 費用 足りない どうする?
まず固有財産から立て替えて信託財産から償還を受ける方法(48条)があります。財産自体が不足するなら、52条の通知で費用負担か終了かを委託者・受益者に問えます。
Q3信託終了の通知に書くべき内容は?
「信託財産が不足し費用の償還・前払を受けられない旨」と「相当の期間内に支払がなければ信託を終了させる旨」の二点が必須です。片方でも欠けると要件を満たしません。
Q4相当の期間とは何日くらい?
法律に日数の定めはありません。費用の額や緊急度、相手が資金を準備できる時間を踏まえて受託者が定めます。極端に短い期間は効力を争われる余地があります。
Q5委託者が亡くなっている場合、通知は誰に送る?
委託者が現に存しない場合は受益者だけに通知すれば足ります(52条2項)。逆に受益者が存しない場合は委託者だけが通知先です(同条3項)。
Q6委託者も受益者もいないときはどうなる?
信託財産が不足し、委託者と受益者がともに現に存しない場合、受託者は通知なしで信託を終了させることができます(52条4項)。
Q7受託者の報酬が払えない場合も信託を終了できる?
できます。信託報酬について54条4項が52条を準用しており、報酬を信託財産から受けられない場合にも同じ手続で終了させられます。
Q852条で信託を終了したら登記はどうなる?
信託不動産は清算の中で処分や帰属権利者への引渡しが行われ、それに応じた信託登記の抹消や移転登記が必要になります。手続は司法書士への相談が一般的です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受託者を引き受けたけど修繕費が足りない。自腹を切るしかないの?
自腹を強制する規定はない。自分の財産から立て替えれば、信託財産から償還を受けられる(48条1項)。それでも財産が足りなければ、委託者と受益者に通知し、期間内に支払がないときは信託を終了できる(52条1項)。実務のポイント:後に相続の場面で兄弟から使い道を疑われたとき、証憑のない立替えは説明しきれない。立替えの記録と通知書の写しが、将来の自分を守る盾になる
Q2受益者は母で、もう認知症。通知って誰に送ればいいの?
意思能力を欠く人に通知しても、法定代理人(成年後見人など)がそれを知るまでは、通知の効力を本人に主張できない(民法98条の2)。後見人がいなければ、後見開始の申立てから考える必要がある。受益者代理人がいる場合の扱いは、実務上、解釈が分かれうる。実務のポイント:家族信託は「後見を使わずに済む」と勧められがちだが、52条を使う局面では後見の問題が再び浮上する。契約時に受益者代理人を置いておけば、通知先が宙に浮くのを防げる
Q3信託を終わらせたら、預かってたアパートはどうなるの?
終了しても、すぐに家族の手に戻るわけではない。清算に入り(175条)、受託者が清算受託者として債務を払い、残った財産を残余財産受益者や帰属権利者に引き渡す(177条、182条)。現金が足りなければ売却もありうる。実務のポイント:契約で帰属先を決めていないと、委託者やその相続人が帰属権利者に指定されていたものとみなされる(182条2項)。信託が終わる局面になって初めて、「誰のものになるか」が争いになる
間違えやすい点 AI による整理
- 受益者は信託から利益を受けるのだから、費用も当然負担する義務がある。そう思われがちだが、現行法では受託者との合意がない限り、受益者に費用を負担する義務はない(48条5項)。義務がないからこそ、受託者は52条を使って「払うか、終わらせるか」の二択を示すしかない
- 信託を終了させれば受託者はすぐに解放される、という理解は半分しか正しくない。終了後は清算が始まり(175条)、受託者は清算受託者として債務の弁済から残余財産の引渡しまで務める(177条)。非常口を出た先に、もう一本廊下が続いている
- 家族から見れば「長男が勝手に信託をやめた」となる。法律から見れば「通知と期間を経た正当な終了」である。手続を正しく踏んでいれば、家族の感情的な反発は終了の効力を覆す根拠になりにくい。逆に、二つの通知事項のどちらかが欠けていれば、どれほど家族の理解を得ていても、終了の効力そのものが揺らぐ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 受託者が信託から離れる方法 | 信託法52条:信託そのものを終了させる | 信託法57条:受託者が辞任し、信託は存続 信託法48条:終了はせず費用の償還・前払を受ける |
| 委託者・受益者の同意 | 不要(通知と相当期間の経過で足りる) | 原則必要(やむを得ない事由があれば裁判所の許可で辞任) 信託財産からの償還に同意は不要、受益者からの償還は合意が必要(48条5項) |
| 発動の前提 | 信託財産が費用等の償還・前払に不足していること | 辞任の意思と同意(または裁判所の許可) 信託事務処理に必要と認められる費用の支出・見込み |
| その後の流れ | 清算手続に移行(175条以下) | 新受託者の選任へ 信託事務を継続 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は信託財産が不足する場合に受託人が受益人へ補償や担保提供を請求できる構造を維持しており、受益者負担を廃止した日本の新法とは対照的
韓国も受託者の費用償還請求権を規定する。2011年全部改正で日本の新法を参照した部分がある
米国の統一信託法典は受託者が信託財産から適正な費用の償還を受ける権利を定める。費用不足を理由とする受託者単独の終了権という形はとっていない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症の母の預金とアパートを家族信託で預かって五年。空室が増えたところへ、給排水管交換の見積書が届いた。信託口座の残高では足りない。自分の貯金から出すか、兄弟に負担を頼むか、52条の通知を出すか。三つ目の選択肢を知らないまま、黙って自腹を切っている受託者は少なくない
- もし兄が受託者で、あなたが受益者の一人だったら、どうなる? ある日「期限までに修繕費を出さなければ信託を終了する」という書面が届く。払って信託を続けるか、終了を受け入れるかを選ぶことになる。終了すれば清算が始まり、アパートは売却されるかもしれない。書面に書かれた期限が、あなたに残された判断の時間のすべてである
- 受託者から届いた通知の期限は「本書到達後7日以内」だった。短すぎると感じたなら、その感覚は正しいかもしれない。期間が「相当の期間」といえなければ、終了の効力そのものを争う余地がある
- 受託者のあなたは通知書に「修繕費をご負担ください」とだけ書き、「払わなければ信託を終了させる」とは書かなかった。期限が過ぎてから終了を宣言しても、1項2号の通知事項が欠けているため、要件を満たさない可能性が高い。家族に効力を争われる隙を、自分で作ってしまったことになる
- 父の遺言で信託が設定され、委託者である父はもういない。2項により、通知先は受益者だけになる。受益者が未成年の孫であれば、親権者が通知を知らない限り、その効力を孫に主張できない(民法98条の2)。宛先を一つ間違えるだけで、待機期間の起算がずれる
取るべき行動
被害を受けた側:立替えに追われる受託者の場合。1. 見積書や領収書を整理し、現金と処分できる財産(49条2項で除外される財産を除く)では費用を賄えないことを数字で示す2. 委託者と受益者の双方に、財産不足の旨と、期限までに支払がなければ信託を終了させる旨の二点を明記した書面を、内容証明郵便などで送る3. 期間は、修繕の緊急度と相手の準備時間に見合った長さにする4. 期間が過ぎたら終了を記録に残し、清算(175条以下)に移る
訴えられた側:終了通知を受け取った委託者・受益者の場合。1. 通知に二つの必須事項がそろっているか、通知先から誰かが漏れていないかを確認する2. 期限が短すぎれば「相当の期間」ではないとして争う余地がある3. 信託を続けたいなら期限内に費用を払い、その条件を受託者と書面で合意しておく4. 終了を受け入れる場合でも、清算での売却方法や残余財産の帰属(182条)について意見を出す準備をしておく
時効(請求できる期限):特定の時効はない。通知の期間は受託者が「相当の期間」として定め、その期間が過ぎたことが終了の要件になる。合意に基づいて受益者に請求する費用償還債権には、一般の消滅時効(民法166条:行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される
学説
一般的理解(立法趣旨):新法が受益者の当然の費用負担義務を廃止したことの帰結として、受託者が固有財産で費用を負担し続ける事態を防ぐため、通知と相当期間の経過を条件に受託者の単独終了権を認めたものと理解されている。通知事項の欠落は終了の効力を左右しうる。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)新信託法制定(平成19年9月30日施行) 新設。旧信託法36条は受託者から受益者への費用補償請求を認めていた。新法はこの受益者の当然負担を廃止し(48条5項)、その代わりに、財産不足時に通知を経て受託者が信託を終了させる権限を本条で創設した
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号、平成19年9月30日施行)により新設。旧信託法36条の受益者に対する費用補償請求を廃止し、その代替として信託財産不足時の受託者の終了権を創設した
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