受講中の講座ブックマーク無料で登録

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)e-Gov法令検索出典公布 収録時点 令和8年7月4日読了 6 分6 分6 分

信託法 第51条(費用等の償還等と同時履行)

クイックジャンプ

受託者は、第四十九条第一項の規定により受託者が有する権利が消滅するまでは、受益者又は第百八十二条第一項第二号に規定する帰属権利者に対する信託財産に係る給付をすべき債務の履行を拒むことができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

この条文の基本情報

費用等の償還等と同時履行とは何ですか?

定義費用等の償還等と同時履行とは、信託法第51条に定められた規定で、「受託者は、第四十九条第一項の規定により受託者が有する権利が消滅するまでは、受益者又は第百八十二条第一項第二号に規定する帰属権利者に対する信託財産に係る給付をすべ…」と規定しています。

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

  1. 信託法第51条(費用等の償還等と同時履行)は、日本の信託法に含まれる条文です。
  2. 信託法第51条の条文原文は「受託者は、第四十九条第一項の規定により受託者が有する権利が消滅するまでは、受益者又は第百八十二条第一項第二号に規定する帰属権利者に対する信託財産に係る給付をすべ…」で始まります。
  3. 信託法第51条は第四節 受託者の費用等及び信託報酬等に置かれています。
  4. 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
  5. 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
  6. 信託法第51条の前の条は信託法第50条です。
  7. 信託法第51条の次の条は信託法第52条です。
  8. 信託法第51条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。

この条文を引用する

下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。

  • 正式書式信託法(平成十八年法律第百八号)第51条
  • 官報・e-Gove-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108
  • 本サイト収録信託法(平成十八年法律第百八号)第51条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/51

わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です

要点信託法51条は、受託者が信託財産から費用の償還を受ける権利(49条1項)が消滅するまで、受益者や帰属権利者への給付を拒めると定める。信託行為で排除も可能。

Q · 受託者が「立替費用の精算が先」と言って配当や残余財産を渡してくれないのは、法的に許されるの?

必要費の償還前なら拒める。契約で排除も可能

信託法51条により、受託者は信託事務のために立て替えた費用の償還を信託財産から受ける権利(49条1項)が残っている間、受益者や帰属権利者への給付を拒むことができます。ただし対象は信託事務の処理に必要と認められる費用(48条1項)に限られ、不要な支出を理由とする拒絶は正当化されません。また信託行為(信託契約・遺言など)に別段の定めがあれば、拒絶権は排除・制限されます。

解説

信託の受託者は、受益者にお金を渡すだけの「財布の番人」だと思われがちだ。ところが信託法51条は、その番人に一枚の盾を持たせている。受託者が信託事務のために自腹で立て替えた費用(固定資産税、修繕費、管理会社への支払など)がある。その費用を信託財産から償還してもらう権利(49条1項)が残っている間は、受託者は受益者への給付を拒むことができる。信託が終わった後に残った財産を受け取る帰属権利者(182条1項2号)への給付も同じである。民法の同時履行の抗弁(民法533条、相手が払うまで自分も払わなくてよいという仕組み)を、信託の世界に持ち込んだ規定である。受益者の側から見ると、「配当が止まった」「親が遺した不動産の名義が移らない」という事態の裏で、この条文が動いている可能性がある。ただし盾が使えるのは、信託事務の処理に必要と認められる費用(48条1項)の範囲に限られる。信託行為(信託契約や遺言など、信託を設定した行為)で別の定めを置けば、この盾を外すこともできる。立替えの領収書を握っているのがどちらか。それが交渉の主導権を決める。

法的な位置づけ

信託法51条は、受託者の費用償還請求権を担保するための給付拒絶権を定める規定である。受託者は、信託財産から費用等の償還を受ける権利(49条1項)が消滅するまで、受益者および帰属権利者に対する信託財産に係る給付債務の履行を拒むことができる。民法上の同時履行の抗弁に類似する機能を持ち、信託行為による別段の定めで排除できる任意規定である。

手順

  1. 1.信託行為の別段の定めを確認する 信託契約書や遺言を開き、費用の精算方法、給付停止の可否、立替費用の上限に関する条項があるかを確認する。別段の定めがあれば51条ではなくその定めに従う
  2. 2.拒絶の根拠と立替費用の明細を書面で求める 受益者・帰属権利者は、受託者に対し立替費用の項目、金額、支出日を書面で明示するよう求める。受託者側は求められる前に通知しておくと、不当な遅延とみられにくい
  3. 3.報告請求と帳簿閲覧で必要費かを検証する 信託事務の処理状況の報告請求(36条)と帳簿等の閲覧請求(38条)を行い、各費用が信託事務の処理に必要と認められるもの(48条1項)かを確認する
  4. 4.確定した償還額の精算と引換えに給付を受ける 必要費として確定した額を信託財産から償還させるか、受益者側が先に支払い、その引換えに配当の支払や不動産の名義移転を求める。償還を受ければ拒絶の根拠は消える

よくある質問 AI による整理

Q1信託法51条とは?

受託者が信託事務のために立て替えた費用の償還を信託財産から受けるまで、受益者や帰属権利者への給付を拒めると定める条文です。

Q2家族信託の立替金はどうやって精算する?

信託財産に金銭があれば、受託者は49条1項により信託財産から直接償還を受けられます。領収書を添えて帳簿に記録しておくのが基本です。

Q3信託の配当が止まったのは違法?

受託者に必要費の償還を受ける権利が残っていれば、51条に基づく正当な拒絶になり得ます。まず帳簿の閲覧請求(38条)で費用の中身を確認しましょう。

Q4帰属権利者とは?

信託終了時に残余財産の給付を受ける者として信託行為で指定された者です(182条1項2号)。51条の拒絶は帰属権利者にも及びます。

Q5受託者の費用償還請求権に時効はある?

特別の時効規定はなく、民法166条の一般消滅時効(知った時から5年、行使できる時から10年)によると解されています。

Q6信託財産が足りないとき受託者はどうする?

52条により、委託者と受益者に通知し、相当期間内に費用の償還等が受けられなければ、信託を終了させることができる仕組みがあります。

Q7受託者が不要な費用を理由に給付を止めたら?

48条1項の必要費に当たらない支出は償還の対象外で、拒絶の根拠になりません。損失てん補(40条)や受託者の解任(58条)を検討できます。

Q8信託銀行の信託でも51条は適用される?

51条は受託者一般に適用されます。ただし商事信託では契約で費用の精算方法が細かく定められていることが多く、まず信託契約の条項を確認するのが先です。

この条文についての質問 AI による整理

Q1家族信託の受託者をやってる兄が、立替金が戻るまで実家を渡さないって言うんだけど、本当にそんなことできるの?

できる場合がある。信託法51条は、受託者が信託財産から費用の償還を受ける権利(49条1項)が残っている間は、帰属権利者への給付を拒めると定めている。ただし対象になるのは、信託事務に必要な費用に限られる(48条1項)。実務のポイント:立替額が実家の価値に比べて小さいなら、その額を先に支払い、引換えに名義の移転を求める方が早い。償還を受ければ拒絶の根拠は消える

Q2受託者が立て替えたお金って、受益者の私に直接請求されることある?

原則としてない。受託者が費用の償還を受ける相手は信託財産であり、受益者個人から償還を受けるには、その受益者との合意が必要である(48条5項)。実務のポイント:だから受託者は、給付を止める51条の盾を使う。逆に言えば、「追加費用は受益者が負担する」という合意書に軽い気持ちでサインすると、自分の財布が直接請求の対象になる

Q3契約書でこの拒絶権をなくすことってできる?

できる。51条のただし書は、信託行為に別段の定めがあればそれに従うとしている。給付は止めずに別途精算する、拒める額に上限を設けるといった設計が可能である。実務のポイント:家族信託の契約書には、この点に触れていないものも少なくない。受益者側の家族も契約づくりに関わるなら、作成段階で一行入れておくことが、将来の兄弟間紛争を防ぐ最も安い保険になる

Q4信託報酬が払われていない場合も、給付を止められる?

信託法54条4項が51条を信託報酬に準用しているため、報酬の支払を受けるまで同じように給付を拒めると解されている(最新の改正状況をご確認ください)。ただし、受託者が信託報酬を受けられるのは、信託行為に報酬の定めがある場合などに限られる(54条1項)。実務のポイント:家族信託は無報酬で組むことが多い。無報酬なら報酬を理由にした拒絶は成り立たず、争えるのは純粋な立替費用だけになる

間違えやすい点 AI による整理

  • 「受託者が払わないのは義務違反だ」と怒る前に、問いの立て方を変える必要がある。問うべきは「払わないことが違法か」ではなく、「受託者に信託財産から償還を受ける権利がまだ残っているか」である。権利が残っていれば、給付の拒絶は51条に基づく正当な権利行使になりうる
  • 受託者は、立て替えた費用を受益者本人に請求できると思われがちだ。しかし信託法48条5項により、受託者が受益者から直接償還を受けるには、その受益者との合意が必要である。原則として回収先は信託財産だけであり、だからこそ51条の拒絶権が、受託者にとってほぼ唯一の実効的な担保になっている
  • 費用を立て替えれば給付を止められることは知っていても、その範囲を広く見積もりすぎる受託者は多い。償還の対象は、信託事務の処理に必要と認められる費用(48条1項)に限られる。不要な支出や過大な金額を理由に給付を止めれば、受託者自身が任務を怠ったとして、損失てん補責任(40条)を問われる余地がある
比較の観点この条文ほかの条文
規定の内容信託法51条:償還を受けるまで給付を拒む抗弁権信託法49条:信託財産から費用等の償還を受ける権利そのもの
民法533条:双務契約における同時履行の抗弁
相手方受益者・帰属権利者信託財産(受益者個人ではない)
双務契約の相手方当事者
前提となる権利49条1項の償還権が存続していること48条1項の必要費等の支出
対価関係にある相手方の債務
排除の可否信託行為の別段の定めで排除・制限可信託行為で償還の範囲・方法を調整可
当事者の特約で先履行等を定め可

他国ではどう定めているか 2 か国

台湾
台湾 信託法第41條

受託人が費用償還等の権利を満たされるまで信託財産の交付を拒めるとする趣旨の規定があり、日本と同系統の構造を持つ

アメリカ
Uniform Trust Code § 709

受託者が適切に支出した費用について信託財産からの償還を認める。給付拒絶の明文構造は日本とは異なる

AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です

想定される場面と対応 AI による整理

こんなときに使う

  • 認知症対策として父の賃貸アパートを家族信託にし、長男のあなたが受託者になった。屋根の修繕費180万円を自分の口座から立て替えたまま父が亡くなり、信託は終了した。残余財産の帰属権利者である妹からは「早く名義を移して」と迫られている。立替分の償還を受けるまでは、引渡しを拒める立場にある
  • 毎月振り込まれていた信託の収益配当が、ある月から突然止まったらどうなる? 受託者に問い合わせると「立替費用の精算が先」との回答だった。51条に基づく正当な拒絶なのか、ただの遅延なのか。帳簿を見るまでは判断できない
  • 信託の終了から3か月。清算受託者のあなたのもとに、帰属権利者から「2週間以内に引き渡さなければ訴える」という内容証明が届いた。今週中に立替費用の明細と領収書を整理し、償還を受けるべき額を書面で通知しなければならない。そうしないと、拒絶が正当であることを示す材料がない
  • 信託契約書に「受託者は費用償還を理由に給付を拒むことができない」と一行書いてある。その一行で、51条の盾は消える
  • 亡くなった叔母の遺言信託で、帰属権利者に指定された友人から相談を受けた。受託者の従兄弟が「費用の精算が済んでいない」と言って預金を渡してくれないという。最初に確かめるべきは、その費用が本当に信託事務に必要だったかどうかである

取るべき行動

被害を受けた側:1. 給付を拒む根拠を書面で求め、立替費用の項目、金額、支出日を受託者に明示させる。2. 報告請求(36条)と帳簿の閲覧請求(38条)で、その費用が信託事務に必要なものだったか(48条1項)を検証する。3. 必要費として確定した額は、その償還と引換えに給付を求める。4. 不要な費用を理由に止めているなら、給付請求に加えて、損失てん補(40条)や受託者の解任(58条)を検討する。5. 最初に、信託契約や遺言に別段の定めがないかを確認する

訴えられた側:1. 立替えの領収書、振込記録、業者の見積書を一式保存し、信託事務との関係を説明できる状態にしておく。2. 給付を拒むときは、償還を受けるべき額を受益者や帰属権利者に書面で通知する。金額を示さない拒絶は、不当な遅延とみられやすい。3. 信託財産の中に金銭があれば、49条1項により先に償還を受けてから給付する方が、紛争を早く終わらせられる。4. 信託財産が足りない場合は、52条の手続を検討する

時効(請求できる期限):51条そのものに期間の定めはない。給付を拒めるのは、49条1項の償還を受ける権利が消滅するまでである。受託者の費用償還請求権には特別の時効規定がなく、一般消滅時効(民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用されると解されている(最新の改正状況をご確認ください)

学説

通説:本条は、受託者が受益者に直接償還を求めるには合意が必要(48条5項)であることを踏まえ、信託財産からの回収を実効化するための担保的な抗弁権を受託者に与えたものと理解される。

改正沿革 AI による整理

  • 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法の費用補償に関する規律を受け継ぎつつ、現行信託法の制定に伴って第51条として整備された。受益者に加えて帰属権利者への給付も拒絶の対象とし、信託行為による別段の定めを認めた。その後の改正の有無は人的検証が必要

改正の年表

  1. 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により現行第51条として整備。受益者に加えて帰属権利者への給付も拒絶の対象とし、信託行為による別段の定めを認めた。

ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。

信託法の全文を見る所属する編章節を開く:第四節 受託者の費用等及び信託報酬等

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)。AI による解説は理解の補助であり、法的効力は条文原文が基準です。

次に調べる

判例を探す:条文単位の判例の紐づけは準備中です。上のカードから法令名で検索できます。裁判所「裁判例検索」で探す ›