信託法 第49条(費用等の償還等の方法)
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- 受託者は、前条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けることができる場合には、その額の限度で、信託財産に属する金銭を固有財産に帰属させることができる。
- 2.前項に規定する場合において、必要があるときは、受託者は、信託財産に属する財産(当該財産を処分することにより信託の目的を達成することができないこととなるものを除く。)を処分することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 3.第一項に規定する場合において、第三十一条第二項各号のいずれかに該当するときは、受託者は、第一項の規定により有する権利の行使に代えて、信託財産に属する財産で金銭以外のものを固有財産に帰属させることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 4.第一項の規定により受託者が有する権利は、信託財産に属する財産に対し強制執行又は担保権の実行の手続が開始したときは、これらの手続との関係においては、金銭債権とみなす。
- 5.前項の場合には、同項に規定する権利の存在を証する文書により当該権利を有することを証明した受託者も、同項の強制執行又は担保権の実行の手続において、配当要求をすることができる。
- 6.各債権者(信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に限る。以下この項及び次項において同じ。)の共同の利益のためにされた信託財産に属する財産の保存、清算又は配当に関する費用等について第一項の規定により受託者が有する権利は、第四項の強制執行又は担保権の実行の手続において、他の債権者(当該費用等がすべての債権者に有益でなかった場合にあっては、当該費用等によって利益を受けていないものを除く。)の権利に優先する。この場合においては、その順位は、民法第三百七条第一項に規定する先取特権と同順位とする。
- 7.次の各号に該当する費用等について第一項の規定により受託者が有する権利は、当該各号に掲げる区分に応じ、当該各号の財産に係る第四項の強制執行又は担保権の実行の手続において、当該各号に定める金額について、他の債権者の権利に優先する。
- 一信託財産に属する財産の保存のために支出した金額その他の当該財産の価値の維持のために必要であると認められるものその金額
- 二信託財産に属する財産の改良のために支出した金額その他の当該財産の価値の増加に有益であると認められるものその金額又は現に存する増価額のいずれか低い金額
この条文の基本情報
費用等の償還等の方法とは何ですか?
定義費用等の償還等の方法とは、信託法第49条に定められた規定で、「受託者は、前条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けることができる場合には、その額の限度で、信託財産に属する金銭を固有財産に帰…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第49条(費用等の償還等の方法)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第49条の条文原文は「受託者は、前条第一項又は第二項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けることができる場合には、その額の限度で、信託財産に属する金銭を固有財産に帰…」で始まります。
- 信託法第49条は第四節 受託者の費用等及び信託報酬等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第49条の前の条は信託法第48条です。
- 信託法第49条の次の条は信託法第50条です。
- 信託法第49条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第49条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第49条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/49
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法49条は、受託者が48条で償還を受けられる額の限度で、信託財産の金銭を自己の財産に移せると定める。ただし信託目的の達成に必要な財産は処分できない。
Q · 家族信託の受託者が立て替えた費用は、信託口座から自分に戻していいの?
48条の償還額の範囲なら、信託の金銭から回収できる
信託法49条1項により、受託者は48条1項・2項で償還または前払を受けられる額の限度で、信託財産に属する金銭を自分の財産に移すことができます。金銭が足りなければ、信託目的の達成を妨げない財産を処分できます(2項)。土地や株式など金銭以外の財産を自分のものにするには、31条2項各号の要件(信託行為の定めや受益者の承認など)が必要です(3項)。振替の根拠となる領収書と信託帳簿を必ず残してください。
解説
親の自宅と預金を家族信託で預かった長男が、雨漏りの修理代40万円を自分の財布から立て替えたとする。信託口座から40万円を自分の口座へ移せば、形の上では「信託財産を受託者自身のものにする」取引になる。この種の取引は31条で利益相反行為として原則禁止されている。49条は、その例外として回収の道を正式に認めた規定である。48条で償還を受けられる額(信託事務に必要と認められる費用など)の範囲なら、信託財産の金銭を自分の財産に移してよい。現金が足りなければ、信託財産を売って換金できる。ただし、売れば信託目的を果たせなくなる財産は売却の対象から外れる。たとえば「父が住み続けるため」の自宅がそうだ。信託財産が差し押さえられた場合、立替金は金銭債権とみなされ、配当要求ができる。保存や改良のための支出は、他の債権者より先に回収できる。立て替えた側が最後に損をしないための、精算ルールの全体図である。
法的な位置づけ
信託法49条は、受託者の費用償還請求権の実現方法を定める規定である。償還額の限度での信託財産に属する金銭の固有財産への帰属、信託目的の達成を妨げない財産の処分、31条2項の要件の下での金銭以外の財産の帰属を認め、信託財産への強制執行等ではその権利を金銭債権とみなして配当要求と一定の優先権を付与する。
手順
- 1.償還を受けられる額を確定する 支出が48条1項の「信託事務の処理に必要と認められる費用」にあたるかを確認し、見積書・領収書で金額を特定する。自分に40条の損失てん補責任がある場合は先に履行する
- 2.信託口座の金銭から振り替える 償還額の範囲内で信託口座から自分の口座へ振り替え、振込摘要と信託帳簿に「○月○日 修繕費立替分の償還」など理由を記録する
- 3.金銭不足なら処分可能な財産を選んで換金する 信託契約の目的を確認し、処分すると目的を達成できなくなる財産(居住用の自宅など)を除外したうえで、換金する財産を選ぶ。信託行為に別段の定めがあればそれに従う
- 4.差押えが始まったら配当要求する 信託財産に強制執行や担保権実行が開始したら、償還請求権の存在を証する文書を添えて、執行裁判所が定める配当要求の終期までに配当要求する。保存費・改良費の区分と増価額の資料も揃える
よくある質問 AI による整理
Q1信託法49条とは?
受託者が立て替えた費用を信託財産から回収する方法を定めた条文です。金銭の振替、財産の処分、現物の取得、差押え時の配当要求と優先回収を規定しています。
Q2家族信託 受託者 立替金 回収方法
まず信託口座の金銭から、48条で償還を受けられる額の範囲で振り替えます。現金が足りなければ、信託目的を害しない財産を売却して回収できます。
Q3受託者 信託口座から自分の口座へ振替 違法?
48条の償還額の範囲内なら49条1項で適法です。範囲を超える振替や根拠のない振替は利益相反・任務違反となり、損失てん補責任(40条)を問われ得ます。
Q4信託財産 売却 受託者の判断でできる?
償還のために必要があれば処分できますが、処分すると信託目的を達成できなくなる財産は対象外です。信託行為に別段の定めがあればそれに従います。
Q5信託財産 差押え 受託者の立替金はどうなる?
立替金の償還請求権は金銭債権とみなされ、権利の存在を証する文書を提出すれば配当要求ができます(49条4項・5項)。
Q6信託 修繕費 優先回収 できる?
保存のための支出は全額、改良のための支出は支出額と現に存する増価額のいずれか低い額が、他の債権者に優先します(49条7項)。
Q7受託者 費用償還 いつまで請求できる?
本条固有の期限はありませんが、民法166条の消滅時効(知った時から5年・行使できる時から10年)が及びます。差押え時は配当要求の終期までが勝負です。
Q8受託者が損失てん補責任を負っている場合も回収できる?
原則として、40条の損失てん補等の責任を履行した後でなければ償還を受けられません(48条4項)。信託行為に別段の定めがある場合は例外です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で受託者になったんだけど、立て替えたお金って信託口座から自分に振り込んでいいの?
48条1項で償還を受けられる費用(信託事務の処理に必要と認められるもの)であれば、その額までは49条1項により振り込める。実務のポイント:揉める原因は振替そのものより、記録がないことのほうが多い。振込の摘要欄に「○月○日 修繕費立替分の償還」と書いておくだけで、何年も後の遺産分割の場面で立証材料になる
Q2立て替えた分を返してもらう代わりに、信託の土地を自分名義にしちゃダメ?
原則としてできない。金銭以外の財産を自分の財産にするには、31条2項各号のいずれかに該当すること(信託契約に許可する定めがある、重要な事実を開示して受益者の承認を得た、など)が必要になる(49条3項)。実務のポイント:受益者の承認を得る場合は、口頭で済ませず、評価額の根拠を添えた承認書を残すのが定石である。評価額が低すぎれば、後で利益相反として争われる
Q3信託の家が競売にかけられた。自分が払った修繕費は戻ってくる?
受託者の償還請求権は金銭債権とみなされ、証明文書があれば配当要求できる(49条4項・5項)。保存費は全額が、改良費は支出額と現存増価額のいずれか低い額が、他の債権者に優先する(同7項)。実務のポイント:改良費の優先額は競売の時点の価値で判断される。工事前後の写真と査定資料を残しているかどうかで、優先して回収できる額が変わる
間違えやすい点 AI による整理
- 「自腹で立て替えたのだから、信託口座から戻すのは自由だ」と考えがちだが、回収できる上限は48条で償還を受けられる額に限られる。しかも受託者自身が任務違反による損失てん補責任(40条)を負っている場合は、その責任を果たした後でなければ償還を受けられない(48条4項、信託行為に別段の定めがある場合を除く)。自分の失敗を放置したまま回収だけ先に済ませることはできない
- 「立替金を現金で返してもらうか、土地や株で返してもらうか」という選択肢があると思うこと自体が前提として誤っている。49条の基本は金銭での回収であり、金銭以外の財産を自分のものにできるのは、31条2項各号(信託行為の定め、重要な事実を開示したうえでの受益者の承認など)に該当する場合に限られる。物で受け取るのは例外であり、受託者が自由に選べるものではない
- 受託者から見れば当然の精算でも、他の受益者や相続人から見れば「信託のお金が受託者の口座に流れた」記録にしか見えない。法律はこの精算を認めているが、それを証明できるのは受託者が残した帳簿と証拠書類だけである。この見え方の落差が、相続のときに兄弟間の訴訟へ発展する
- 差押えの場面で費用が優先的に回収されることは知られていても、その範囲の狭さはあまり知られていない。改良費(価値を高める支出)として優先されるのは、支出額と「現に存する増価額」のいずれか低い金額だけである。300万円かけたリフォームで建物の価値が100万円しか上がっていなければ、優先回収できるのは100万円にとどまる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律内容 | 信託法49条:償還・前払の権利をどう実現するか(回収方法) | 信託法48条:費用等の償還・前払を受ける権利の発生と範囲 信託法31条:利益相反行為の制限と例外要件 |
| 金銭以外の財産の扱い | 31条2項各号に該当すれば固有財産に帰属させ得る(3項) | 規定なし(償還額の算定のみ) 信託財産を固有財産に帰属させる行為は原則禁止、2項各号で例外許容 |
| 受託者の制約 | 償還額が上限、信託目的に必要な財産は処分不可 | 損失てん補責任の履行が先(48条4項)、前払時は受益者へ通知(3項) 重要事実の開示と受益者の承認などが必要 |
他国ではどう定めているか 4 か国
受託者が信託財産に関して支出した租税・費用や負担した債務を信託財産から充当できると定め、日本と同様に信託財産からの回収を正面から認める
2011年全部改正で受託者の費用상환청구권を整理。日本新信託法の影響を受けた構造をもつ
受託者が固有財産で先に支払った費用について、信託財産に対する優先受償権を認める
受託者が適切に支出した費用について信託財産からの償還を受ける権利を定める。信託財産上のリーエンとして扱われる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 信託不動産の固定資産税18万円を自腹で払った受託者が、信託口座から同じ額を自分の口座へ移した。これは使い込みになるのか? 48条で償還を受けられる費用であれば、その額の範囲内の振替は49条1項で認められている。問題になるのは記録である。領収書と信託帳簿(37条)がなければ、ほかの兄弟の疑いを晴らす材料がない
- あなたは受託者として親の介護費用の管理を任されている。信託口座の残高が尽き、立て替えた修繕費を回収するために、親が住んでいる自宅の売却を考え始めた。ところが信託契約の目的が「委託者が自宅で生活を続けること」なら、自宅は49条2項の括弧書きにより処分できない財産にあたる。別の財産で回収する方法を探すしかない
- 立替金の代わりに、信託財産の上場株式を自分の証券口座へ移したい。受益者の承認もなく、信託契約にも定めがなければ、49条3項の要件を満たさない
- 信託事務のために借りた資金の返済が滞り、債権者が信託アパートの競売を申し立てた。配当要求の終期まであと10日しかない。受託者が自分で立て替えた屋根の修繕費を証明する文書(請求書、領収書、信託帳簿)を今週中に揃えて配当要求しなければ、立替金は配当表から漏れる
- あなたは信託アパートに融資した銀行の担当者である。競売の配当段階で、受託者が「建物の保存のために支出した」として数百万円の優先回収を主張してきた。49条7項1号に該当すれば、その金額は他の債権者に優先する。回収見込みが一気に縮むため、支出が本当に保存にあたるのかを一件ずつ精査することになる
取るべき行動
被害を受けた側:(受託者の自己振替に疑問を持つ受益者や債権者の場合)1. 信託帳簿や領収書の閲覧・謄写を請求する(38条)2. 振替額が48条の「信託事務の処理に必要と認められる費用」の範囲に収まっているか、一件ずつ照合する3. 処分された財産が、信託目的の達成に欠かせない財産でなかったかを確認する(49条2項括弧書き)4. 不当な振替であれば、損失のてん補・原状回復の請求(40条)や、裁判所への受託者解任の申立て(58条4項)を検討する
訴えられた側:(使い込みを疑われた受託者の場合)1. 支出ごとに見積書、領収書、信託帳簿の記載を揃え、振替の摘要欄に理由を書く2. 費用の前払を受けたときは、受益者に前払の額と算定根拠を通知していたかを確認する(48条3項)3. 金銭以外の財産を自分のものにした場合は、31条2項の根拠(信託契約の定め、受益者の承認書など)を示す4. 自分に損失てん補責任がある場合は、まずそれを履行する(48条4項)5. 差押えが来たら、証明文書を添えて配当要求する(49条5項)
時効(請求できる期限):本条に固有の時効はないが、費用償還請求権には一般の消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年)が適用される。信託財産に強制執行または担保権の実行が始まった場合は、執行裁判所が定める配当要求の終期(民事執行法49条)までに配当要求しなければ、配当を受けられない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:49条は48条で発生した償還請求権の実現手段を定めるにとどまり、権利の範囲そのものは48条で画される。1項の自己帰属は31条の利益相反規制の特則として、償還額の範囲で当然に許容されると解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法36条の費用補償に関する規律を引き継ぎつつ、新信託法(平成18年法律第108号)で、金銭の自己帰属、財産の処分、現物の帰属、配当要求、優先順位を体系的に整理した規定となった。施行後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法36条で、受託者が信託財産に関して負担した租税・費用等について信託財産から補償を受ける権利を規定
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により現行49条として整理。金銭の自己帰属、財産処分、現物帰属、配当要求、優先順位を体系的に規定
- 信託法 第48条費用償還・前払の権利の発生根拠
- 信託法 第31条利益相反行為の制限、現物取得の要件
- 信託法 第23条信託財産に対する強制執行の制限
- 信託法 第51条費用償還と受益者への給付の同時履行
- 信託法 第52条信託財産不足時の受託者の措置
- 民法 第307条共益費用の先取特権、6項の順位基準
- 民法 第650条受任者の費用償還請求の一般規定
- 民事執行法 第51条配当要求の一般規定、5項の手続基盤
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