信託法 第75条(信託に関する権利義務の承継等)
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- 第五十六条第一項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
- 2.前項の規定にかかわらず、第五十六条第一項第五号に掲げる事由(第五十七条第一項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合(第五十九条第四項ただし書の場合を除く。)には、新受託者は、新受託者等が就任した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
- 3.前二項の規定は、新受託者が就任するに至るまでの間に前受託者、信託財産管理者又は信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
- 4.第二十七条の規定は、新受託者等が就任するに至るまでの間に前受託者がその権限に属しない行為をした場合について準用する。
- 5.前受託者(その相続人を含む。以下この条において同じ。)が第四十条の規定による責任を負う場合又は法人である前受託者の理事、取締役若しくは執行役若しくはこれらに準ずる者(以下この項において「理事等」と総称する。)が第四十一条の規定による責任を負う場合には、新受託者等又は信託財産法人管理人は、前受託者又は理事等に対し、第四十条又は第四十一条の規定による請求をすることができる。
- 6.前受託者が信託財産から費用等の償還若しくは損害の賠償を受けることができ、又は信託報酬を受けることができる場合には、前受託者は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、費用等の償還若しくは損害の賠償又は信託報酬の支払を請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
- 7.第四十八条第四項並びに第四十九条第六項及び第七項の規定は、前項の規定により前受託者が有する権利について準用する。
- 8.新受託者が就任するに至るまでの間に信託財産に属する財産に対し既にされている強制執行、仮差押え若しくは仮処分の執行又は担保権の実行若しくは競売の手続は、新受託者に対し続行することができる。
- 9.前受託者は、第六項の規定による請求に係る債権の弁済を受けるまで、信託財産に属する財産を留置することができる。
この条文の基本情報
信託に関する権利義務の承継等とは何ですか?
定義信託に関する権利義務の承継等とは、信託法第75条に定められた規定で、「第五十六条第一項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第75条(信託に関する権利義務の承継等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第75条の条文原文は「第五十六条第一項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託…」で始まります。
- 信託法第75条は第五款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第75条の前の条は信託法第74条です。
- 信託法第75条の次の条は信託法第76条です。
- 信託法第75条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第75条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第75条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/75
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法75条は、新受託者が就任すると前受託者の任務終了時にさかのぼって信託の権利義務を承継すると定める。委託者と受益者の同意による辞任の場合だけは就任時に承継する。
Q · 家族信託の受託者が亡くなったら、預かっていた財産は誰のものになるの?
後任受託者が死亡時にさかのぼって引き継ぎ、相続人のものにはならない
信託法75条1項により、新受託者が就任すると、前受託者の任務が終了した時点(死亡時)にさかのぼって信託に関する権利義務を承継したものとみなされます。信託財産は受託者個人の相続財産には入りません。新受託者が決まるまでの間は信託財産が法人とみなされ(74条)、その間に信託財産法人管理人などが権限内でした行為は、新受託者の就任後も有効なまま残ります(75条3項)。
解説
家族信託で父の財産を預かっていた長男が急死した。後任が決まるまでの数週間、実家の賃料や預金は誰が持っていたことになるのか。信託法75条は、この空白期間を法的になかったことにする条文である。新受託者が就任すると、権利義務は前受託者の任務が終わった時点にさかのぼって引き継がれたものとみなされる(1項)。ただし、委託者と受益者の同意による辞任(57条1項)は扱いが違う。前受託者が後任の就任まで受託者の権利義務を持ち続けるため、承継は新受託者等が就任した時点で起こる(2項)。空白期間中に権限内で行われた取引は有効なまま残る(3項)。見落とされやすいのは、退く受託者と就く受託者のあいだのお金の精算である。前任者の任務違反の責任は新受託者が追及できる(5項)。前任者が立て替えた費用や報酬は新受託者に請求できるが、支払いは信託財産からだけでよい(6項)。受託者の交代は名義を書き換えるだけの手続ではない。債権債務を清算する場面なのだ。
法的な位置づけ
信託法第75条は、受託者の交代に伴う信託上の権利義務の承継を定める規定である。新受託者は原則として前受託者の任務終了時に権利義務を承継したものとみなされ、合意辞任の場合は就任時に承継する。あわせて前受託者への責任追及、費用等の請求と留置権、強制執行手続の続行を規律する。
手順
- 1.新受託者としての就任を書面で証明できるようにする 信託契約の後継受託者条項、または委託者と受益者の合意書・裁判所の選任決定(62条)など、就任の根拠となる書類を揃える。前受託者の死亡なら死亡の記載がある戸籍謄本等も用意する。金融機関や法務局の手続はこの書類が起点になる
- 2.帳簿・通帳・権利証・契約書を引き継ぐ 前受託者またはその相続人から、信託帳簿、信託口口座の通帳、不動産の権利証、賃貸借契約書などを受け取る。賃借人など取引先には受託者交代と新しい振込先を通知する
- 3.引継ぎの計算書を精査してから承認する 前受託者が作る計算書を通帳や領収書と突き合わせる。受益者が承認すると、不正な行為がない限り引継ぎに関する責任は免除されたものとみなされる(77条2項)。疑義があれば承認を保留し、5項と40条に基づく損失てん補・原状回復請求を検討する
- 4.前受託者の費用・報酬請求に書面で回答する 前受託者から費用等の償還や報酬を請求されたら、明細と証拠の提出を求め、最初の回答で「信託財産に属する財産のみをもって履行する」(6項ただし書)と明記する。正当な部分だけ先に支払い、留置されている財産の返還を求める選択肢もある
- 5.受託者変更登記と信託口口座の名義手続を行う 信託不動産について受託者変更の登記を申請する。死亡などが理由の場合は新受託者が単独で申請できる場合がある(不動産登記法100条)。信託口口座は金融機関ごとに手続が異なるため、事前に必要書類を確認する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法75条とは?
受託者が交代したとき、新受託者がいつの時点で信託の権利義務を引き継ぐかを定める条文です。原則は前受託者の任務終了時にさかのぼって承継します。
Q2家族信託の受託者が死亡したらどうなる?
信託は終わらず、信託財産は相続財産にもなりません。新受託者が就任すれば、死亡時にさかのぼって財産と契約上の地位を引き継ぎます(75条1項)。
Q3後継受託者を決めていないとどうなる?
委託者と受益者の合意で新受託者を選べます。合意できなければ、利害関係人の申立てで裁判所が選任します(62条)。その間、財産管理が滞りやすくなります。
Q4受託者を辞任したらすぐに責任はなくなる?
なくなりません。委託者と受益者の同意による辞任では、新受託者等が就任するまで前受託者が受託者の権利義務を持ち続けます(59条4項、75条2項)。
Q5受託者が変わったら不動産の登記は必要?
必要です。受託者変更の登記をしないと第三者との関係で不便が生じます。死亡などで任務が終了した場合は、新受託者が単独で申請できる特則があります(不動産登記法100条)。
Q6前の受託者が通帳を渡さないのは違法?
前受託者は費用や報酬の弁済を受けるまで信託財産を留置できるため、直ちに違法とはいえません(75条9項)。ただし請求の根拠と金額は精査すべきです。
Q7受託者不在の間に結んだ賃貸契約は有効?
前受託者、信託財産管理者、信託財産法人管理人が権限内で結んだ契約は、新受託者が就任しても有効なまま残ります(75条3項)。
Q8信託財産への差押えは受託者が変わると止まる?
止まりません。交代前にすでに始まっていた強制執行、仮差押え、仮処分、担保権の実行や競売は、新受託者を相手にそのまま続行できます(75条8項)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受託者が亡くなって後任が決まるまで、家賃の受け取りとかって誰がやるんですか?
受託者が死亡すると信託財産は法人とみなされ(74条)、必要に応じて裁判所が信託財産法人管理人を選びます。相続人には、受益者への通知や財産の保管などの義務があります(60条)。管理人などが権限内でした行為は、新受託者が就任しても有効なままです(75条3項)。実務のポイント:契約書に後継受託者を指名しておけば、こうした裁判所の手続をほぼ使わずに済みます。指名がない信託では、新受託者が決まるまで数か月、財産を事実上動かせないこともあります
Q2前の受託者に報酬を払えって言われてるんですけど、新しく受託者になった私が自腹で払うんですか?
自腹で払う必要はありません。新受託者は信託財産だけで支払えばよいと定められています(75条6項ただし書)。前任時代の信託債務も同様に、新受託者の責任は信託財産の範囲に限られます(76条)。実務のポイント:前受託者は支払いを受けるまで財産を留置できます(9項)。請求に正当な部分があるなら、信託財産からその部分だけ先に払って通帳と権利証を取り戻すほうが、全額を争って管理が止まるより安く済むことが多いです
Q3引き継いでしばらくたってから、前任者の使い込みに気付きました。今からでも追及できますか?
追及できます。新受託者は、前受託者やその相続人に対して、40条の損失てん補・原状回復を請求できます(75条5項)。前受託者が法人なら、関与した取締役などへの請求(41条)も可能です。実務のポイント:引継ぎ時の計算書を受益者がすでに承認している場合、不正な行為を立証しない限り、引継ぎに関する責任は免除されたものとみなされます(77条2項)。「とりあえず承認」の一筆が最大の落とし穴です
間違えやすい点 AI による整理
- 受託者が亡くなれば、預かっていた財産は相続人のものになると思われがちだが、そうはならない。信託財産は受託者個人の財産から切り離されており、受託者が死亡すると信託財産は法人とみなされる(74条)。新受託者が就任すれば、死亡時にさかのぼって承継される。相続人に残るのは、新受託者への通知や財産の保管といった義務である(60条)
- 新受託者が前任時代の信託債務を引き継ぐことは知っていても、責任の範囲まで把握している人は少ない。新受託者が払うのは信託財産の範囲だけで(76条)、前受託者は原則として自分の固有財産でも責任を負い続ける。この区別を知らないと、新受託者は不要な不安から就任を断り、前受託者は辞めれば身軽になれると勘違いする
- 当事者から見れば、受託者の交代は銀行口座や登記の名義を変える事務手続にすぎない。法律から見れば、前任者の責任追及、費用と報酬の精算、留置権の行使、強制執行の続行が一度に起こる清算の場面である。名義変更だけ済ませて精算をあいまいにすると、数年後に前任者の流用が発覚したとき、誰がいつ何を承認したのかを争うことになる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法75条:権利義務の承継時点、空白期間の行為の効力、新旧受託者間の請求と留置権 | 信託法76条:承継された信託債務について新旧受託者がどの財産で責任を負うか 信託法77条:前受託者による引継ぎの計算と受益者の承認 |
| 新受託者の負担 | 前受託者の費用・報酬請求には信託財産のみで応じればよい(6項ただし書) | 承継債務は信託財産に属する財産のみで履行する責任を負う 計算書の内容を確認し、受益者の承認手続に関与する |
| 前受託者の立場 | 新受託者等に費用・報酬を請求でき、弁済まで信託財産を留置できる(6項、9項) | 承継された債務について原則として固有財産でも責任を負い続ける 受益者の承認により、不正な行為がない限り引継ぎに関する責任を免除される |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾法も受託者変更時に信託財産が原受託者の任務終了時に新受託者へ移転したものとみなす構造をとり、日本法と近い。費用補償と留置の規定も置かれている
韓国法も日本の旧信託法を経由して信託制度を継受しており、新受託者による権利義務の承継を定める。条番号は2011年全面改正後の条文で確認が必要
新受託人が原受託人の信託事務処理に関する権利義務を承継し、原受託人は報告と移交手続を行うと定める。承継時点のさかのぼりは日本法ほど明確に規定していない
米国では受託者の欠缺時の後任選任と、前受託者による財産引渡し義務を州法レベルで規律する。信託財産は受託者個人の財産と区別される点は共通
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 家族信託の受託者だった兄が交通事故で亡くなったら、実家の賃料は誰の口座に入るべきなのか? 兄の相続人ではない。信託財産は兄の相続財産に含まれず、新受託者が就任すれば、兄が亡くなった時点にさかのぼって賃貸人の地位を引き継ぐ。兄嫁が賃料を受け取り続けていれば、それは信託財産に返すべきお金になる
- あなたは事業承継のための信託で受託者を務めてきたが、高齢を理由に委託者と受益者の同意を得て辞任した。後任が決まるまでの二か月間、法律上あなたはまだ受託者の権利義務を負っている(59条4項、75条2項)。この間の管理ミスはあなたの責任として残る。「辞めたからもう関係ない」は通らない
- 引継ぎの前に、信託財産の土地へ仮差押えが入っていた。受託者が替わっても手続は止まらず、新受託者を相手にそのまま続く(8項)
- 解任された前受託者から「立て替えた修繕費300万円と未払い報酬を払うまで、通帳も権利証も渡さない」と通告された。借入金の返済期日まであと三週間しかない。9項の留置権は前受託者の正当な権利だが、支払いは信託財産からでよく(6項ただし書)、新受託者が自分の財布から払う義務はない。請求の根拠を精査し、払うか争うかを期日前に決めなければならない
- 親の家族信託で新受託者に指名された友人から相談を受けた。前任の叔父が、信託の預金を自分の事業資金に流用していた疑いがある。就任した瞬間から、友人は叔父に損失てん補を請求できる立場になる(5項、40条)。逆に放置すれば、受益者から友人自身の任務懈怠を問われる余地がある
取るべき行動
被害を受けた側:(新受託者・受益者の立場)1. 信託行為で決まった方法、または62条の手続で就任したことを書面で証明できるようにする2. 前受託者または相続人から、帳簿、通帳、権利証、契約書を引き継ぐ。受け取る前に計算書を承認しない(77条) 3. 流用や任務違反の疑いがあれば、5項と40条に基づいて損失てん補・原状回復を請求する。相続人も相手方になる4. 不動産があれば、受託者変更の登記を急ぐ。死亡などが理由なら新受託者が単独で申請できる場合がある(不動産登記法100条)
訴えられた側:(前受託者・その相続人の立場)1. 合意辞任なら、後任が就任するまで受託者の義務が続く前提で管理を続ける(59条4項) 2. 立て替えた費用、損害、報酬の明細と証拠を整理し、新受託者に請求する(6項)。支払いは信託財産からになることを理解しておく3. 支払いを受けるまで信託財産を留置できる(9項)。ただし、留置が信託財産に損害を生むと逆に責任を問われうるので、使い方は慎重にする4. 引継ぎの計算書を作り、受益者の承認を得て責任関係を整理する(77条)
時効(請求できる期限):75条自体に特定の期限はない。5項による40条の責任追及には一般消滅時効(民法166条:権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年)が基本となり、信託法43条に起算点などの特則がある(最新の改正状況をご確認ください)。前受託者の費用償還請求なども一般消滅時効に服する
学説
通説:1項が承継を任務終了時にさかのぼらせるのは、受託者不在の期間にも信託財産の帰属を途切れさせず、管理の連続性と取引の安全を確保するためである。合意辞任では前受託者が義務を負い続けるため、2項で承継時点を就任時とする整理がされている。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定 大正11年の旧信託法を全面的に改める現行信託法の制定により規定された。承継の時点、合意辞任の特則、前受託者の費用請求と留置権などを体系的に整理した。制定後の改正の有無は人による確認が必要である
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:大正11年の旧信託法を全面的に改めた現行信託法の制定により規定。受託者交代時の承継時点、合意辞任の特則、前受託者の費用請求と留置権、強制執行の続行などを体系的に整理した
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