信託法 第76条(承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任)
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- 前条第一項又は第二項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。ただし、信託財産に属する財産のみをもって当該債務を履行する責任を負うときは、この限りでない。
- 2.新受託者は、前項本文に規定する債務を承継した場合には、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
この条文の基本情報
承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任とは何ですか?
定義承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任とは、信託法第76条に定められた規定で、「前条第一項又は第二項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。た…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第76条(承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第76条の条文原文は「前条第一項又は第二項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。た…」で始まります。
- 信託法第76条は第五款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第76条の前の条は信託法第75条です。
- 信託法第76条の次の条は信託法第77条です。
- 信託法第76条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第76条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第76条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/76
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法76条は、受託者交代で信託債権に係る債務が新受託者に承継されても、前受託者が固有財産で履行責任を負い続けると定める。新受託者の責任は信託財産の範囲に限られる。
Q · 受託者を辞めたら、信託で借りたローンとはもう関係なくなるの?
関係は残り、前受託者は個人財産でも払う責任を負う
信託法76条1項本文により、受託者が交代して信託債権に係る債務が新受託者に承継されても、前受託者は自己の固有財産でその債務を履行する責任を負い続けます。例外は、当初から信託財産のみで履行する責任限定(責任財産限定特約など)がある場合です(同項ただし書)。一方、新受託者が承継した債務の責任は信託財産の範囲に限られます(同条2項)。前受託者が責任を外れるには、債権者との免責的債務引受(民法472条)などの合意が必要です。
解説
受託者を交代すれば、信託のために背負った借金も一緒に手放せる。家族信託を組んだ人の多くがそう考えているが、信託法76条の定めは逆である。受託者が辞任・解任・死亡などで交代すると、信託債権(受託者が信託のために負った債務のうち、受益者への給付以外のもの。例:信託した土地に建てたアパートの建築ローン、修繕業者への代金)は新受託者に引き継がれる。それでも前受託者は、自分の預金や給与からも払う責任を負い続ける。一方、新受託者が責任を負うのは信託財産の範囲だけだ。債権者から見ると、取り立て先は「信託財産」と「前受託者の個人財産」の二つのまま残る。前受託者が逃れられるのは一つの場合だけで、もともと「信託財産のみで払う」という責任限定の約束(責任財産限定特約)があったときである。交代の書類にハンコを押す前に、債権者との間でこの点を片付けたかどうかで、あなたの家計の行方が変わる。
法的な位置づけ
信託法76条は、受託者交代時の承継債務の責任を定める規定である。信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合も、前受託者は固有財産による履行責任を負い続け、信託財産のみで責任を負う定めがある場合に限り免れる。新受託者の責任は信託財産に属する財産の範囲に限定される。
手順
- 1.信託内の債務と責任条項を棚卸しする 受託者交代を決める前に、信託のために結んだ融資契約・工事請負契約などを一覧化し、各契約に「信託財産のみをもって履行する」旨の責任限定条項があるかを確認する
- 2.責任限定のない債務の債権者と協議する 責任限定条項がない債務について、債権者(金融機関等)に受託者交代の予定を伝え、前受託者の免責(免責的債務引受、民法472条)または責任限定条項の追加を申し入れる
- 3.合意内容を書面化してから交代する 債権者との合意は必ず書面で取り交わし、その後に受託者交代の手続(辞任・新受託者の選任、登記の変更)を進める。調印の順番を逆にしない
- 4.新受託者への引継ぎを記録に残す 前受託者から新受託者へ、信託財産と承継債務の明細を書面で引き継ぐ(信託法77条)。何を承継したかを明確にし、後の責任の線引きの証拠とする
よくある質問 AI による整理
Q1信託法76条とは何ですか?
受託者が交代したときの承継債務の責任を定める条文です。前受託者は個人財産でも責任が残り、新受託者は信託財産の範囲でのみ責任を負います。
Q2責任財産限定特約とは?
債権者との間で「信託財産に属する財産のみで支払う」と約束する条項です。これがあれば前受託者は76条1項ただし書により個人財産での責任を負いません。
Q3家族信託の受託者 辞任 手続きは?
信託行為の定めに従うのが原則で、定めがなければ委託者と受益者の同意などが必要です(信託法57条)。辞任しても信託債務の個人責任は自動では消えません。
Q4前受託者の責任 いつまで続く?
76条自体に期限はなく、元の信託債権が時効消滅するか弁済されるまで続きます。一般の消滅時効(民法166条)が基準になります。
Q5新受託者 引き継ぎ 何を確認すべき?
信託財産と債務の一覧、各融資契約の責任限定条項の有無、前受託者からの事務引継ぎ(信託法77条)の書面化を確認します。
Q6前受託者が払ったお金は取り戻せる?
固有財産で信託債務を弁済した受託者は、信託財産から費用等の償還を受けうる仕組みがあります(信託法48条等)。行使方法は個別に専門家へ確認が必要です。
Q7信託内融資で受託者個人が保証人になる?
保証契約がなくても、受託者は信託のための借入について原則として固有財産でも責任を負います(信託法21条)。責任限定特約の有無が分かれ目です。
Q8限定責任信託なら前受託者は安全?
限定責任信託では受託者の責任が原則として信託財産に限られるため、76条1項ただし書の典型場面に当たります。登記などの要件を満たす必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で兄が受託者を降りたら、アパートローンはもう兄と関係ないんですか?
関係は残ります。債務が新受託者に引き継がれても、前受託者である兄は自分の財産で払う責任を負い続けます(信託法76条1項本文)。例外は、当初から信託財産限りの責任と約束していた場合だけです(同項ただし書)。実務のポイント:信託内融資では、金融機関が受託者個人の責任を外すことに慎重だとされます。契約書の責任条項を一度は自分の目で確認してください
Q2新受託者を頼まれました。前の人の借金まで自腹で払うことになりますか?
引き継いだ債務については、信託財産の範囲でしか責任を負いません(信託法76条2項)。注意すべきは、就任後に自分が受託者として結ぶ契約です。そちらは原則として固有財産でも責任を負います(21条)。実務のポイント:就任前に、前受託者から信託財産と債務の一覧を引継ぎ(77条)で必ず書面で受け取ってください。何を引き継いだかが曖昧だと、後で責任の線引きができません
Q3受託者だった父が亡くなりました。信託の借金も相続するんですか?
信託財産は父の遺産にはなりません。受託者の死亡は任務終了事由で(信託法56条1項1号)、新受託者が就任するまでの間、信託財産は法人として扱われます(74条)。ただし前受託者として父が負っていた個人責任(76条1項)が相続の対象になりうるかは、実務上慎重な検討が必要です。実務のポイント:熟慮期間の3か月が過ぎる前に、信託内の借入の有無と責任限定条項の有無を確認してください
間違えやすい点 AI による整理
- 受託者を辞任すれば、信託のために借りたお金とも縁が切れると思われがちである。実際には、債務が新受託者に引き継がれた後も、前受託者は固有財産で払う責任を負い続ける(76条1項本文)。辞任は「信託の仕事」から降りる手続であって、「債権者への責任」から降りる手続ではない
- 「新受託者が払わなかったら、次は前受託者が責任を取るのか」という問いの立て方そのものがずれている。条文は前受託者の責任に「まず信託財産から」という順番を付けていない。債権者は最初から、新受託者の管理する信託財産と前受託者の個人財産のどちらに請求するかを選べる構造と読むのが素直である
- 新受託者を頼まれた人の中には「前任者の借金を自腹でかぶる」と恐れて断る人がいる。引き継いだ債務の責任は信託財産の範囲に限られるので(76条2項)、その恐れは半分だけ正しく、半分は誤りである。本当に怖いのは別の点で、就任後に自分が受託者として新たに結んだ契約の債務は、原則どおり自分の固有財産でも責任を負う(21条)。注意すべきなのは前任者の借金ではなく、自分がこれから押すハンコのほうである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法76条:受託者交代後の承継債務の責任 | 信託法21条:信託財産責任負担債務の範囲と固有財産責任 信託法216条:限定責任信託 |
| 受託者の固有財産責任 | 前受託者は交代後も固有財産で責任を負う(1項本文) | 受託者は原則として固有財産でも責任を負い、責任限定の合意等があれば例外 受託者の責任が原則として信託財産に限られる仕組み |
| 責任を限定する方法 | 信託財産のみで履行する責任を負う場合は免れる(1項ただし書) | 債権者との間で信託財産のみで履行する旨を合意 信託行為で定め、登記により限定責任信託とする |
| 新受託者の立場 | 承継債務は信託財産の範囲のみで責任(2項) | 自ら受託者として負った債務は原則どおり固有財産でも責任 限定責任信託の受託者として信託財産の範囲で責任 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾も受託人変更時の債務承継を規定し、新受託人の責任を信託財産の限度に関連付ける構造を持つ。日本の旧信託法の影響を受けた立法とされる
受託者の職責終了時に新受託者が原受託者の信託事務処理上の権利義務を承継する旨を定める
受託者が受託者たる資格を開示して適切に締結した契約については個人責任を負わないとする方向で、日本の原則とは出発点が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 受託者を辞めたのに、なぜ自分の給与口座に督促が来るのか? 父の家族信託で長男が受託者になり、受託者として銀行から8,000万円のアパートローンを借りた。その後、兄弟間の対立で辞任し、弟が新受託者に就いた。弟が返済を止めると、銀行は信託財産だけでなく長男個人にも請求できる。76条1項本文がそのまま働く
- あなたは工務店を経営していて、信託物件のリフォーム代600万円が未払いのままになっている。受託者が交代し、新受託者は「信託財産にはもう現金がない」と言う。ここで諦める必要はない。契約時の受託者、つまり前受託者個人に固有財産での支払を請求できる。契約書に「信託財産の限度で」という一文がなかったかだけは先に確認しておく
- 叔母から信託の新受託者を頼まれた。前の受託者が残したローンを自腹で払うことになるのか不安でいる。引き継いだ債務について、あなたの責任は信託財産の範囲に限られる(76条2項)
- 受託者交代の合意書に調印するまで、あと7日。銀行に新受託者の免責的債務引受(民法472条。新受託者だけが債務者になり、前受託者が外れる仕組み)を認めさせるか、責任限定の条項を追加させるか。交渉の材料が残っているのは調印前のこの1週間だけで、調印後は銀行に応じる理由がない
- 受託者だった兄が急死し、相続人として家庭裁判所の相続放棄の期限が気になり始めた。信託財産そのものは兄の遺産にはならない。しかし前受託者として兄が負っていた個人責任が相続の対象になりうる点は見落とされやすい。熟慮期間の3か月(民法915条)が過ぎる前に、信託内の借入の有無を確かめる必要がある
取るべき行動
被害を受けた側:(信託債権の支払を受けられない債権者の場合)1. 信託目録や受託者変更の通知で、交代の事実と新受託者を確認する2. 新受託者には信託財産からの支払を、前受託者には固有財産での支払を、それぞれ内容証明で請求する(76条1項本文、2項) 3. 契約書に信託財産限りの責任限定条項がないかを確認する。あれば前受託者個人には請求できない4. 両方に請求して時効を管理する
訴えられた側:(前受託者として請求を受けた場合)1. 当初の契約に「信託財産のみで払う」という約定がないかを確認する。あれば76条1項ただし書で拒める2. 支払った場合に信託財産から償還を受ける権利(48条、49条。行使方法は個別に要確認)を確保するため、領収書を保管する3. 債権者と免責的債務引受(民法472条)を交渉する4. 受託者の死亡で相続人になった場合は、相続放棄・限定承認の期限を最優先で確認する
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。前受託者への請求権も元の信託債権と同じ時効に服し、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で消える。受託者の死亡で相続人が関わる場合、相続放棄・限定承認は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(民法915条)
学説
一般的理解(立法趣旨):受託者交代によって債権者が前受託者の固有財産という引当てを失わないようにする一方、新受託者の責任を信託財産に限ることで受託者の引受けを容易にし、信託の継続性を確保する趣旨と理解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年制定の旧信託法を全面的に改める現行信託法(平成18年法律第108号)の制定に伴い、本条は受託者交代時の承継債務の責任を定める規定として置かれた。その後の改正の有無は人的検証を要する
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年)を全面的に改める現行信託法(平成18年法律第108号)の制定により、受託者交代時の承継債務の責任を定める規定として新設
- 信託法 第75条新受託者による権利義務承継の前提規定
- 信託法 第21条信託財産責任負担債務と固有財産責任の範囲
- 信託法 第56条受託者の任務終了事由(死亡・辞任等)
- 信託法 第48条固有財産で弁済した受託者の費用償還
- 信託法 第216条限定責任信託、ただし書の典型場面
- 民法 第472条免責的債務引受による前受託者の離脱
- 民法 第470条併存的債務引受、新旧併存構造の一般則
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