信託法 第77条(前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等)
クイックジャンプ
- 新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)に対しその承認を求めるとともに、新受託者等が信託事務の処理を行うのに必要な信託事務の引継ぎをしなければならない。
- 2.受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)が前項の計算を承認した場合には、同項の規定による当該受益者に対する信託事務の引継ぎに関する責任は、免除されたものとみなす。ただし、前受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
- 3.受益者が前受託者から第一項の計算の承認を求められた時から一箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者は、同項の計算を承認したものとみなす。
この条文の基本情報
前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等とは何ですか?
定義前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等とは、信託法第77条に定められた規定で、「新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第77条(前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第77条の条文原文は「新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人…」で始まります。
- 信託法第77条は第五款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第77条の前の条は信託法第76条です。
- 信託法第77条の次の条は信託法第78条です。
- 信託法第77条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第77条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第77条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/77
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法77条は、受託者交代時に前受託者が計算の承認を求め事務を引き継ぐ義務を定める。受益者が一か月異議を述べなければ承認とみなされる。
Q · 家族信託で前の受託者から届いた収支報告書、放っておいたらどうなる?
一か月以内に異議を出さないと承認したとみなされます
信託法77条3項により、受益者が前受託者から計算の承認を求められた時から一か月以内に異議を述べなければ、計算を承認したものとみなされます。承認があると、その受益者に対する前受託者の信託事務の引継ぎに関する責任は免除されたものとみなされます(同条2項)。ただし、前受託者の職務の執行に不正の行為があった場合は免除されません。疑問があれば期限内に書面で異議を述べておくことが重要です。
解説
受託者が交代するとき、前の受託者には三つの義務がある(1項)。在任中のお金の出入りを「計算」としてまとめること、受益者に承認を求めること、新しい受託者に通帳・契約書・帳簿を引き継ぐこと。肝心なのはその先だ。受益者が計算を承認すると、引継ぎについての前受託者の責任は「免除されたもの」とみなされる(2項)。さらに、承認を求められてから一か月何も言わなければ、承認したものとみなされる(3項)。黙っていれば同意したのと同じ扱いになる。家族信託で受託者が兄から妹に替わり、届いた収支報告書を「家族だし」と引き出しにしまえば、一か月後には異議を言える機会のひとつが静かに閉じる。ただし、前受託者に不正の行為があった場合、この免除は働かない。書類が届いたら、厚さより先に日付を確認することだ。
法的な位置づけ
信託法77条は、新受託者等の就任に際し、前受託者に信託事務の計算、受益者(信託管理人が現に存する場合は信託管理人)への承認請求、信託事務の引継ぎを義務付ける規定である。受益者の承認または承認請求から一か月以内の無異議により、当該受益者に対する引継ぎに関する責任は免除されたものとみなされるが、職務執行に不正の行為があった場合は除外される。
手順
- 1.受領日を記録し期限を確定する 前受託者から計算書と承認の求めが届いたら、受領日を記録し、そこから一か月後の期限をカレンダーに入れる。承認を求める旨の記載があるかも確認する
- 2.裏付け資料の開示を求める 通帳の写し、領収書、賃貸借契約書など計算の根拠資料を前受託者または新受託者に求める。帳簿等の閲覧等請求(信託法38条)も活用できる
- 3.不明な支出を洗い出す 科目ごとに入出金を照合し、説明のない支出や信託口口座と個人口座の混在がないかを確認する
- 4.期限内に書面で異議を述べる 疑問が残る場合は、一か月以内に内容証明郵便などで承認しない旨を通知する。詳細な理由は後から補足してもよい。不正の疑いが濃ければ弁護士に相談する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法77条とは?
受託者が交代したとき、前受託者が信託事務の計算をして受益者の承認を求め、新受託者に事務を引き継ぐ義務を定めた条文です。
Q2信託 計算の承認 いつまでに異議を出す?
承認を求められた時から一か月以内です。期限内に異議を述べなければ承認したものとみなされます(信託法77条3項)。
Q3受託者 交代 引継ぎ 何をする?
在任中の収支を計算書にまとめて受益者の承認を求め、通帳・契約書・帳簿など新受託者が事務処理に必要なものを引き継ぎます。
Q4計算の承認 撤回 できる?
条文に撤回の定めはなく、承認後は引継ぎ責任が免除扱いになります。錯誤や詐欺など意思表示の一般原則で争う余地は別途検討が必要です。
Q5信託管理人がいる場合 承認は誰がする?
信託管理人が現に存する場合は、受益者ではなく信託管理人に承認を求め、信託管理人が承認や異議の判断をします(77条1項・2項)。
Q6前受託者 不正 承認後でも責任追及できる?
できる余地があります。職務の執行に不正の行為があれば、承認しても引継ぎ責任の免除は働きません(77条2項ただし書)。
Q7受益者が複数いる場合 一人の承認で足りる?
足りません。二人以上の受益者がいれば全員に承認を求める必要があり、免除は承認した受益者との関係でのみ生じます。
Q8信託 異議 方法 口頭でもいい?
条文上方式の定めはなく口頭でも異議になりえますが、期限内に述べた証拠を残すため内容証明郵便など書面が安全です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄からの収支報告、なんとなく怪しいけど証拠がない。とりあえず黙っておいていい?
黙っているのがいちばん危ない。承認を求められてから一か月以内に異議を述べないと承認したものとみなされ(信託法77条3項)、引継ぎに関する兄の責任は免除されたものとみなされる(同2項)。まず期限内に「現時点では承認しない。資料を開示してほしい」と書面で伝えること。実務のポイント:条文上、異議を述べるのに詳しい理由づけまでは求められていない。先に止めておき、調べるのはそのあとでよい
Q2承認したあとで使い込みが見つかったら、もう何もできないの?
手立てが残っている可能性はある。77条2項ただし書により、前受託者の職務の執行に不正の行為があれば免除は働かない。また、文言上免除されるのは「引継ぎに関する責任」なので、在任中の任務違反についての損失てん補責任(40条)は別に争う余地がある。実務のポイント:争いの中心は「不正の行為」を立証できるかどうかになる。当時の取引履歴を金融機関から取り寄せられるうちに動くこと
Q3受託者だった夫が亡くなりました。私が引継ぎまでやらないといけないんですか?
原則としてそうなる。前受託者が死亡した場合、相続人等は、新受託者等が就任したら遅滞なく計算を行って受益者の承認を求め、引継ぎをしなければならない(信託法78条。77条2項・3項の扱いも準用される)。なお、信託財産は夫の遺産には含まれず、受託者の死亡によって法人とされる(74条1項)。実務のポイント:いちばん揉めるのは、夫個人の口座と信託口口座でお金が混ざっているケースである。引継ぎの前に、両方の入出金を分けて洗い出しておくこと
間違えやすい点 AI による整理
- 受益者にとって計算書は「報告」に見える。しかし法律上は「承認してほしい」という申入れであり、放っておけば承認とみなされる(3項)。読むかどうかではなく、返事をするかどうかが問われている。この見え方の差に気づかないと、黙っていたことがそのまま不利に働く
- 承認すれば前受託者の責任がすべて消える、と考えるのは早い。2項がみなし免除の対象にしているのは、文言上「信託事務の引継ぎに関する責任」である。在任中の任務違反についての損失てん補責任(40条)まで当然に消えるかは別の問題と読むのが条文に忠実だが、どこまで免除されるかは解釈が分かれうる。承認した側もされた側も、これで全部片づいたと思わないほうがよい
- 「兄が使い込んだかどうか」を問う前に、そもそも兄が計算の承認を求めてきたのかを確かめるべきである。承認を求められていなければ、一か月の期限は始まっていない。この順番を逆にすると、わざわざ自分から相手に有利な土俵に上がることになる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 義務を負う者 | 信託法77条:前受託者本人 | 信託法78条:前受託者の相続人等・破産管財人 信託法59条:任務終了した前受託者(新受託者就任まで) |
| 主な義務の内容 | 計算・受益者への承認請求・信託事務の引継ぎ | 77条と同様の計算・承認請求・引継ぎ(2項・3項準用) 受益者への通知、信託財産の保管、引継ぎに必要な行為 |
| 発動時期 | 新受託者等が就任した場合、遅滞なく | 前受託者の死亡・破産後、新受託者等が就任した場合 受託者の任務終了後、新受託者等の就任まで |
他国ではどう定めているか 3 か国
受託人變更時に結算書・報告書を作成し、受益人または信託監察人の承認があれば責任解除とみなす。不正当行為がある場合を除外する構造が日本と類似
수탁자였던 자가 계산・인계를 하고, 승인이 있으면 책임이 면제된 것으로 본다. 부정행위가 있으면 예외
解任・辞任した受託者は信託財産を速やかに後任に引き渡す義務を負う。承認によるみなし免除の規律は日本とは構造が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症の母が受益者で、兄が受託者を降りることになった。届いた計算書を誰も開けなかったら、どうなるか。3項のみなし承認が問題になる。ただ、意思表示を受け取る能力がない受益者に一か月ルールをそのまま当てはめてよいかは、解釈上の論点になりうる。信託を組む段階で信託管理人を置いておけば承認を求める相手は信託管理人になるので(1項かっこ書)、この空白は生じない
- あなたは父の家族信託で三年間受託者を務めてきたが、転勤で辞任し、弟に引き継ぐことになった。賃料の入金記録、修繕費の領収書、固定資産税の納付書をまとめて「計算」を作り、受益者である父に承認を求めなければならない。どんぶり勘定で済ませてきた三年分が、ここで一度に表に出る
- 受託者だった兄が急死した。計算と引継ぎの義務は、兄の妻や子どもに回ってくる(78条)。
- 計算書を受け取ってから三週間がたった。説明のない「雑費80万円」が一行だけ載っている。残り一週間のうちに異議を述べなければ、承認したものとみなされる。電話で「これ、おかしくない?」と聞いただけでも異議にはなりうるが、言った証拠が残らない。今夜のうちに書面を作ること
取るべき行動
被害を受けた側:1. 計算書を受け取った日を記録し、一か月の期限を確定させる2. 通帳の写し、領収書、賃貸借契約書など裏付け資料の開示を求める(38条の帳簿等の閲覧請求も使える) 3. 説明のつかない支出があれば、期限内に内容証明郵便で「承認しない」と異議を述べる4. 使い込みの疑いが濃いなら、損失てん補請求(40条)も視野に入れて弁護士に相談する
訴えられた側:1. 交代が決まったら、遅滞なく在任期間の収支を科目ごとに整理し、計算書を作る2. 受益者が複数いればその全員に、信託管理人がいれば信託管理人に承認を求める。免除は承認した受益者との関係でしか生じない(2項)ので、一人でも漏れればその人との関係では免責されない3. 承認を求めた日付が残る方法で送る4. 通帳・印鑑・契約書・鍵を引き継ぐときは受領書をもらう5. 異議が出たら資料をもとに説明し、感情的なやり取りに乗らない
時効(請求できる期限):承認を求められた時から一か月以内に異議を述べなければ、承認したものとみなされる(3項)。前受託者の計算と引継ぎは「遅滞なく」行うこととされ(1項)、具体的な日数の定めはない。在任中の任務違反による損失てん補責任の債権は、債務不履行責任と同じ消滅時効による(43条、民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)。これとは別に、受託者の行為の時から20年で消滅する定めもある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
文理解釈:77条2項がみなし免除の対象とするのは文言上「信託事務の引継ぎに関する責任」であり、在任中の任務違反に基づく損失てん補責任(40条)まで当然に免除されるかは別問題と解する余地があり、範囲については解釈が分かれうる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正(平成19年(2007年)9月30日施行) 旧信託法を全面的に改めた現行信託法で、本条が置かれた。旧法にも受託者交代時の計算承認に関する規定があったとされるが、条文の対応関係や文言の違いは要検証
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全部改正により現行信託法が制定され、本条が置かれた(平成19年(2007年)9月30日施行)
- 信託法 第59条前受託者の通知・財産保管義務
- 信託法 第75条新受託者による権利義務の承継
- 信託法 第78条相続人等・破産管財人による引継ぎ
- 信託法 第40条任務違反による損失てん補責任
- 信託法 第37条帳簿等の作成義務、計算の基礎資料
- 民法 第646条受任者の受取物引渡義務、本条はその特則
- 民法 第98条の2意思表示の受領能力、みなし承認の前提
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める