信託法 第81条(職務分掌者の当事者適格)
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前条第四項に規定する場合には、信託財産に関する訴えについて、各受託者は、自己の分掌する職務に関し、他の受託者のために原告又は被告となる。
この条文の基本情報
職務分掌者の当事者適格とは何ですか?
定義職務分掌者の当事者適格とは、信託法第81条に定められた規定で、「前条第四項に規定する場合には、信託財産に関する訴えについて、各受託者は、自己の分掌する職務に関し、他の受託者のために原告又は被告となる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第81条(職務分掌者の当事者適格)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第81条の条文原文は「前条第四項に規定する場合には、信託財産に関する訴えについて、各受託者は、自己の分掌する職務に関し、他の受託者のために原告又は被告となる。」で始まります。
- 信託法第81条は第六節 受託者が二人以上ある信託の特例に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第81条の前の条は信託法第80条です。
- 信託法第81条の次の条は信託法第82条です。
- 信託法第81条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第81条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第81条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/81
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法81条は、職務分掌の定めがある共同受託者の信託において、担当受託者が自己の分掌職務に関する信託財産の訴えにつき、他の受託者のために単独で原告又は被告となると定める。
Q · 受託者が二人以上いる信託を訴えるとき、受託者全員を被告にしないといけないの?
分掌の定めがあり担当範囲内なら、担当受託者一人で足りる
信託法81条により、信託行為に職務分掌の定め(80条4項)がある場合、各受託者は自己の分掌する職務に関する信託財産の訴えについて、他の受託者のために原告又は被告となります。担当受託者一人を相手にすれば足り、判決の効力は他の受託者にも及びます(民事訴訟法115条1項2号)。一方、分掌の定めがない場合や担当外の訴えでは、信託財産が合有(79条)であることから全員を当事者とするのが安全とされています。
解説
共同受託者を相手に裁判を起こすとき、最初の落とし穴は「訴状の被告欄に誰の名前を書くか」である。受託者が二人以上いる信託では、信託財産は受託者全員の合有(全員でひとかたまりとして持つ形態、信託法79条)になる。そのため、信託財産をめぐる訴訟は原則として受託者全員をそろえて起こす必要がある、と一般に解されている。一人でも抜ければ、訴えが中身の審理に入る前に門前払い(却下)されるおそれがある。ところが信託行為(信託契約や遺言)に「職務の分掌」(受託者ごとの担当分けの定め、80条4項)があれば、話は変わる。担当の受託者一人が、自分の担当範囲の訴訟について、他の受託者のために原告にも被告にもなれる。判決の効力は他の受託者にも及ぶ(民事訴訟法115条1項2号)。全員を相手にするのか、担当者一人で足りるのか。訴状を書く前に信託契約の分掌条項を確かめるかどうかで、手間も期間も大きく変わる。
法的な位置づけ
信託法81条は、共同受託者のうち職務分掌の定め(80条4項)を受けた各受託者に、自己の分掌する職務に関する信託財産の訴えについて、他の受託者のために原告又は被告となる資格(当事者適格)を認める規定である。合有(79条)を前提とする共同訴訟の原則に対する特則であり、判決の効力は民事訴訟法115条1項2号により他の受託者にも及ぶ。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.受託者の人数と顔ぶれを把握する 紛争の相手方が信託の受託者である場合、まず受託者が何人いるかを確認する。信託不動産なら法務局で登記事項証明書と信託目録を取得し、受託者全員の氏名・住所を特定する
- 2.職務分掌の定めと担当範囲を確認する 信託契約書や遺言、信託目録の記載から、信託法80条4項の職務分掌の定めがあるか、紛争の対象がどの受託者の担当範囲に入るかを確認する。不明な場合は内容証明郵便で受託者に照会し、回答の有無を記録する
- 3.被告(または原告)とする受託者を決める 分掌があり担当範囲内なら担当受託者一人を当事者とする(信託法81条)。分掌が確認できない、または担当範囲が曖昧な場合は、合有(79条)を前提に受託者全員を当事者とする
- 4.訴状を作成し、時効管理とあわせて提出する 当事者欄に選んだ受託者を記載し、分掌の根拠を訴状に明示する。消滅時効が迫っている場合は、当事者の選び方を誤って却下されるリスクを避けるため、提出前に弁護士の確認を受ける
よくある質問 AI による整理
Q1共同受託者とは?
一つの信託に受託者が二人以上いる状態の各受託者です。信託財産は受託者全員の合有となり(信託法79条)、信託事務は原則として過半数で決めます(80条1項)。
Q2信託法の職務分掌とは何ですか?
信託行為(信託契約や遺言)で、受託者ごとに担当する職務を分ける定めです(信託法80条4項)。不動産は甲、金銭は乙といった分け方が典型です。
Q3信託財産に関する訴えとは具体的に何ですか?
信託財産である不動産の明渡し、賃料請求、修繕・損害賠償請求、工事代金請求など、信託財産の権利義務をめぐる訴訟をいいます。
Q4分掌受託者が訴訟で負けたら他の受託者はどうなる?
判決の効力は他の受託者にも及びます(民事訴訟法115条1項2号)。担当受託者の訴訟対応が不十分なら、善管注意義務違反や損失てん補責任が問題になり得ます。
Q5家族信託で受託者を二人にするメリットは?
相互牽制で財産を守れること、一人に事故があっても信託が止まりにくいことです。ただし訴訟や意思決定の手間が増えるため、分掌条項の設計が重要になります。
Q6共同受託者の一人だけ訴えたら却下される?
分掌の定めがない場合や担当外の訴えでは、当事者適格を欠くとして却下されるおそれがあります。分掌の有無が不明なら全員を被告にするのが安全です。
Q7信託目録で分掌の定めは確認できる?
信託不動産の登記に付される信託目録には信託の条項が記録されることがあり、手がかりになる場合があります。記載がなければ信託契約の写しで確認します。
Q8分掌受託者は和解を単独でできる?
訴訟追行の資格は認められますが、和解は他の受託者や受益者の利益に影響します。信託契約上の決定手続の要否を確認し、記録を残して進めるのが無難です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄と私の二人が受託者なんですが、兄だけが訴えられました。私は何もしなくていいんですか?
信託契約に分掌の定めがあり、訴えの内容が兄の担当範囲なら、兄があなたのためにも被告となるので(信託法81条)、あなたが訴訟に加わる必要はありません。ただし判決はあなたも拘束します(民事訴訟法115条1項2号)。実務のポイント:訴訟に出ないことと、情報を受け取らないことは別の話です。兄から訴訟の進み具合を定期的に共有してもらう約束を書面にしておくと、後になって不利な和解を知らされるという事態を防げます
Q2相手の信託契約が見られないとき、誰を訴えればいいか分からないんですが?
信託不動産であれば、登記事項証明書と信託目録を取得すれば、受託者全員の氏名や信託の条項が分かることがあります。分掌の定めが確認できなければ、受託者全員を被告にするのが安全策です(信託法79条の合有を前提にした扱い)。実務のポイント:全員を被告にすれば当事者の欠けによる却下は避けられますが、送達先が増えて審理開始が遅れます。訴える前に内容証明郵便で分掌の有無を照会し、回答や無回答を記録として残しておくと、その後の手続選択の根拠になります
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者の一人を訴えれば、残りの受託者にも効力が及ぶはずだ」と考えがちだが、本条が使えるのは分掌の定めがあり、しかもその受託者の担当範囲の訴えである場合に限られる。担当外の受託者を訴えた場合や、分掌の定めがない場合は、当事者適格(その訴訟で原告・被告になれる資格)を欠くとされるリスクが残る。分掌がない場合に必ず全員で訴える必要があるかについては、実務上も解釈に幅がある
- 分掌は内部の役割分担にすぎない、と軽く考えるのも危うい。分掌の定めがあると、訴訟の窓口が一本化されるだけでなく、担当受託者が負った債務について他の受託者は信託財産の範囲でしか責任を負わなくなる(83条2項)。訴える相手の範囲と、回収をあてにできる財産の範囲が、同時に狭まる
- 受託者の側からは「自分が担当した分の訴訟だから、勝っても負けても自分の問題だ」と見える。しかし法律上、担当受託者は他の受託者の代わりに訴訟をしている扱いであり、敗訴判決は他の受託者も拘束する。手を抜いた訴訟対応は、他の受託者に対する任務違反(40条の損失てん補責任)の問題に発展しかねない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する内容 | 信託法81条:分掌受託者が他の受託者のために原告・被告となる | 信託法79条:信託財産は受託者の合有 信託法80条:信託事務の決定と職務分掌の定め |
| 適用前提 | 80条4項の分掌の定めがあり、訴えが自己の分掌職務に関する | 受託者が二人以上いる信託 受託者が二人以上いる信託(分掌は信託行為の定めによる) |
| 第三者から見た効果 | 担当受託者一人を相手に訴えれば足り、判決は他の受託者にも及ぶ | 財産が全員の一体的な持分となり、訴訟は原則全員で行うと解される 事務の決定は原則過半数、分掌があれば各受託者が単独で決定・執行 |
| 責任との関係 | 訴訟追行の窓口を一本化(責任範囲は83条で別途規律) | 合有財産として一体で信託債権者の引当てになる 分掌に従った執行は他の受託者を拘束(83条で責任範囲が限定) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も受託人が数人の場合は信託財産を公同共有とし、信託事務は原則全員で処理する。信託行為で別段の定めを置く余地はあるが、分掌受託者の訴訟追行を直接定める明文はない。
韓国も共同受託者の信託財産を合有とする構成で、日本と構造が近い。訴訟上の扱いは個別の規定と解釈に委ねられる。
中国は共同受託者による共同処理を原則としつつ、信託文書で具体的事務を分担処理する定めを認める。訴訟上の当事者適格を明文で定めた規定ではない。
米国統一信託法典は共同受託者の多数決や受託者間の職務委任を規律する。州ごとに採用状況と訴訟上の扱いが異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 家族信託で、兄が実家の賃貸アパートを、妹が預金を担当する分掌が契約書に定められている。入居者が雨漏りの修繕と損害賠償を求めるとき、遠方に住む妹まで被告にする必要はあるか? アパートが兄の担当なら、兄一人を被告にすれば足りる。判決は妹にも及ぶ
- あなたは共同受託者の一人で、収益不動産の管理を担当している。家賃を半年滞納しているテナントを相手に、明渡しと未払賃料の訴えを起こしたい。他の受託者は海外赴任中で連絡がつきにくい。分掌の定めがあれば、あなた一人を原告として訴えられる
- 工事代金を払ってもらえない工務店が、共同受託者のうち一人だけを被告にして訴えた。信託契約に分掌の定めがないと分かったのは、相手の答弁書を読んだときだった。消滅時効の完成まであと二か月。当事者を補正するのか、訴えを取り下げて全員を相手に出し直すのか、今週中に決めなければならない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相手の受託者が複数いると分かったら、信託契約の写しや不動産登記の信託目録を入手し、職務分掌の定めの有無と担当範囲を確認する2. 分掌があり、紛争の対象がある受託者の担当範囲内であれば、その受託者を被告とする3. 分掌が確認できない、または担当範囲が曖昧であれば、全員を被告にしておくのが安全である4. 時効が迫っている場合は、当事者の選び方で却下されるリスクを避けるため、早めに弁護士へ相談する
訴えられた側:1. 訴状を受け取ったら、信託契約の分掌条項を確認し、その請求が自分の担当範囲かどうかを判断する2. 担当外であれば当事者適格がないと主張し、担当内であれば他の受託者へ速やかに通知する(判決の効力は他の受託者にも及ぶ) 3. 和解や認諾は他の受託者や受益者の利益に影響するため、信託契約上の手続の要否を確かめる4. 不十分な訴訟対応は善管注意義務違反(29条)を問われかねないので、記録を残す
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される。被告になった場合は、答弁書の提出期限と、判決送達の日から2週間の控訴期間(民事訴訟法285条)に注意する
学説
通説:本条は、分掌受託者に他の受託者のための訴訟追行を認める法定訴訟担当の一種と位置づけられ、その判決効は民事訴訟法115条1項2号を通じて他の受託者に及ぶと解されている。
分掌がない場合の扱い:分掌の定めがない場合、合有構成から受託者全員が当事者となる必要があるとする見解が一般的だが、保存行為や一部の請求について単独での訴訟追行を認める余地があるかは解釈に幅がある。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法には共同受託者の職務分掌に関する訴訟上の規定がなかった。全部改正後の新信託法で、80条4項の職務分掌制度とあわせて、担当受託者の当事者適格を定める本条が新設された(平成19年(2007年)施行)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により、80条4項の職務分掌制度とあわせて、分掌受託者の当事者適格を定める本条が新設された。平成19年(2007年)施行。
- 信託法 第79条共同受託者による信託財産の合有
- 信託法 第80条職務分掌の定めと信託事務処理の決定
- 信託法 第83条分掌受託者の債務と他受託者の責任範囲
- 信託法 第29条訴訟追行における受託者の善管注意義務
- 民事訴訟法 第115条他人のための当事者に対する判決効の拡張
- 民事訴訟法 第40条必要的共同訴訟の規律
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