信託法 第82条(信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託)
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受託者が二人以上ある信託においては、各受託者は、信託行為に別段の定めがある場合又はやむを得ない事由がある場合を除き、他の受託者に対し、信託事務(常務に属するものを除く。)の処理についての決定を委託することができない。
この条文の基本情報
信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託とは何ですか?
定義信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託とは、信託法第82条に定められた規定で、「受託者が二人以上ある信託においては、各受託者は、信託行為に別段の定めがある場合又はやむを得ない事由がある場合を除き、他の受託者に対し、信託事務(常務に属するもの…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第82条(信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第82条の条文原文は「受託者が二人以上ある信託においては、各受託者は、信託行為に別段の定めがある場合又はやむを得ない事由がある場合を除き、他の受託者に対し、信託事務(常務に属するもの…」で始まります。
- 信託法第82条は第六節 受託者が二人以上ある信託の特例に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第82条の前の条は信託法第81条です。
- 信託法第82条の次の条は信託法第83条です。
- 信託法第82条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第82条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第82条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/82
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法82条は、受託者が二人以上いる信託で、常務以外の信託事務の決定を他の受託者に委託することを原則禁止する。例外は信託行為の別段の定めとやむを得ない事由。
Q · 共同受託者の片方に「全部任せる」と伝えれば、もう一人だけで決めてもいいの?
原則できない。信託行為の定めかやむを得ない事由が必要
信託法82条により、受託者が二人以上いる信託では、常務を除く信託事務の決定を他の受託者に委託することは原則としてできません。例外は、信託契約などの信託行為に別段の定めがある場合と、やむを得ない事由がある場合だけです。不動産の売却や借入れなど常務外の判断は、LINEやメールで「任せる」と伝えただけでは一人に寄せられず、違反すれば任せた側も任務違反を問われうる点に注意が必要です。
解説
兄と妹を共同受託者にした家族信託は、一見「二人で見ているから安心」に見える。だが信託法はここに細い仕掛け線を張っている。受託者が二人以上いる場合、信託事務の決定は原則として受託者の過半数で行う(80条)。受託者が二人なら過半数は二人全員である。そして82条は、その決定を「全部お兄ちゃんに任せる」ことを原則として禁じている。例外は二つしかない。信託契約などの信託行為に別段の定めがある場合と、やむを得ない事由がある場合だ。常務(家賃の受領や税金の支払いのような日常の細かな事務)は対象外だが、実家の売却、借入れ、大規模修繕のような判断は、遠方の妹が LINE で「そっちで決めて」と返した程度では一人に寄せられない。共同受託の価値は互いに牽制し合う点にあり、一人に寄せた瞬間にその価値は消えるからだ。共同受託者として、反対票を投じる自由はある。だが考えることを放棄する自由はない。
法的な位置づけ
信託法82条は、受託者が二人以上ある信託において、各受託者が他の受託者に対し、常務に属するものを除く信託事務の処理についての決定を委託することを禁止する規定である。信託行為に別段の定めがある場合およびやむを得ない事由がある場合には例外的に委託が許される。共同受託者間の相互牽制を確保する趣旨を持つ。
よくある質問 AI による整理
Q1信託法82条とは?
受託者が複数いる信託で、常務以外の信託事務の決定を他の受託者に委ねることを原則として禁じる規定です。例外は信託行為の別段の定めとやむを得ない事由です。
Q2共同受託者 決定 委託 できる?
原則できません。信託契約に決定の委託を許す条項がある場合か、やむを得ない事由がある場合に限り委託が認められます。常務は委託の問題になりません。
Q3家族信託 受託者 二人 デメリットは?
二人の場合、過半数は二人全員となるため、一方が同意しないだけで売却や借入れが止まります。さらに82条で決定の丸投げもできず、膠着しやすい構造です。
Q4共同受託者の一人が認知症になったら?
判断能力を失った場合は後見開始などの任務終了事由(56条)の問題になりえます。新受託者の選任(62条)など体制の組み直しを検討することになります。
Q5信託契約 別段の定め 書き方は?
「受託者甲は、受託者乙に対し、○○に関する決定を委託することができる」など、委託できる事務の範囲と方法を具体的に定めるのが一般的です。職務分掌の条項も有効です。
Q6共同受託者 委任状 有効?
常務外の事務の決定を包括的に委ねる委任状は、信託行為に別段の定めがなければ82条に抵触するおそれがあります。手続先が受け付けても、後で任務違反を問われうる点に注意が必要です。
Q7受託者 複数 意見が割れたら?
二人の場合は過半数が得られず決定できません。信託行為で決定方法や調整役を定めておくか、受益者との協議、受託者の辞任・選任による体制変更で対応することになります。
Q8信託法82条 違反 責任は?
違反で損失が生じれば損失てん補責任(40条)を負いうる上、二人以上の受託者が責任を負う場合は連帯債務となります(85条)。任せた側も責任を免れるとは限りません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1「常務」って具体的に何ですか?どこまでなら一人で決めていいの?
信託財産の通常の管理に属する日常的な事務を指し、家賃の受領、固定資産税の支払い、軽微な修繕などが典型である。常務は各受託者が単独で決定できる(80条)。一方、売却、借入れ、大規模修繕は常務外と解するのが一般的だが、信託の目的や規模で境界は動き、実務上解釈が分かれる。実務のポイント:設計段階で信託契約に常務の例を列挙しておくと、後の争いがほぼ消える
Q2病気や海外赴任なら「やむを得ない事由」になりますか?
法は定義を置いておらず、事案ごとの判断となる。一時的に連絡がつきにくいだけでは直ちに該当しないという見方もある。長期にわたり判断能力を失った場合は、後見開始などの任務終了事由(56条)の問題になりうる。実務のポイント:事由が生じた時点の診断書や通信記録を残しておくこと。状態が恒常的なら、委託で凌ぐより辞任(57条)と新受託者選任(62条)で体制を組み直す方が後腐れがない
Q3一人に任せた判断で損が出たら、責任を取るのは任された方だけですか?
そうとは限らない。任された側の任務違反に加え、原則禁止の委託をした側も82条に反したことになりうる。二人以上の受託者が任務違反で損失てん補責任(40条)を負う場合は連帯債務となる(85条)。実務のポイント:受益者は資力のある方の受託者を選んで全額を請求しうる。受託者同士の負担割合は後で内部で清算する話であり、受益者には対抗できない
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者は二人いた方が安全」と思われがちだが、二人受託の過半数は二人全員であり、片方が判を押さないだけで売却も借入れも止まる。牽制が効くということは、膠着もしやすいということだ。金融機関によっては共同受託の口座開設や手続に慎重な対応をとる例もある
- 「どこまでなら任せていいのか」と問う人が多いが、問いの立て方がずれている。最初に問うべきは、その事務が常務か否か、そして信託行為に別段の定めがあるか否かの二点だ。この二つが決まれば、任せてよい範囲は自動的に決まる
- 決定を丸投げしたことは単なる手続上の手抜きと思われがちだが、その深刻度は想像以上だ。任された側だけでなく任せた側も任務違反を問われうる。二人以上の受託者が任務違反で損失てん補責任を負う場合は連帯債務となる(85条)。「自分は何も決めていない」は言い訳にならない可能性がある(具体的な当てはめは事案による)
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法82条:共同受託者間での決定の委託の禁止 | 信託法80条:複数受託者の意思決定方法(過半数・常務は単独) 信託法28条:第三者への信託事務の処理の委託 |
| 委託・決定の相手 | 他の共同受託者 | 受託者全体(過半数) 受託者以外の第三者 |
| 許容される場合 | 信託行為の別段の定め、またはやむを得ない事由がある場合 | 常務は各受託者が単独で決定可、信託行為で別段の定めも可 信託行為の定め、信託目的に照らし相当な場合等 |
| 常務の扱い | 常務は対象外(委託禁止の対象にならない) | 常務は単独決定が可能 常務か否かを問わず委託の要件で判断 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は経常事務・保存行為を除き全受託者の共同処理を原則とし、日本の過半数決定より厳格。信託行為による別段の定めを許す点は共通
中国は共同受託者による共同処理を原則とし、信託文書で個別事務の分担を定めた場合のみ分別処理を認める。連帯責任の規定も置く
米国統一信託法典は共同受託者の多数決を認めつつ、委託者が共同で行うことを合理的に期待した職務を他の共同受託者に委ねることを禁じる。日本82条と発想が近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 実家を信託財産にして、長男と次男が共同受託者になった。東京にいる次男が「売却の件は兄に一任する」という念書を渡し、不動産会社はそれで手続を進めようとしている。売却は常務とはいえない。信託契約に決定の委託を許す条項がなければ、この念書は82条の壁にぶつかる
- 共同受託者の一人が入院し、意思表示が難しくなったらどうなる? 82条の「やむを得ない事由」として決定の委託が認められる余地はあるが、その事由があったかどうかは後で争われうる。後見開始などの任務終了事由(56条)にあたるのか、新受託者の選任(62条)で対応すべきかも同時に検討することになる
- 妹に頼まれ、あなたは外壁工事の数百万円の契約を一人で決めた。善意のつもりだった。半年後、受益者である母の代理人から、手続違反を理由に損失のてん補(40条)を求められる側に立っていた
- 買主から「金曜までに決済できなければ他の買い手に回す」と迫られている。共同受託者の弟は海外出張中で連絡がつきにくい。「任せる」というメールさえもらえば大丈夫だと考えるのは危険だ。残り三日でまず開くべきは、信託契約書にある別段の定めの条項である
- 依頼者が「兄弟二人で受託すれば公平だから」と共同受託を希望してきた。設計を担当する専門家が80条と82条を説明すると、多くの依頼者は単独受託者に後継受託者を定める方式か、信託行為で職務分掌や決定の委託を定める方式に切り替える
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益者または蚊帳の外に置かれた共同受託者として、信託契約書の決定方法・委託・職務分掌の条項をまず確認する2. 独断の決定に関するメール、契約書、登記事項証明書を集め、決定の経緯を時系列で整理する3. 処分や借入れが未了なら、差止め(44条)や他の受託者への書面による異議で進行を止める4. 損失が出ていれば損失てん補(40条)を検討し、受託者の解任(58条)や新受託者の選任も視野に入れて専門家に相談する
訴えられた側:1. 問題の事務が常務にあたるか、信託行為に委託を許す定めがあるかを最初に確認する2. 委託した時点の事情(入院、連絡途絶など)を診断書や通信記録で裏付け、「やむを得ない事由」の主張材料を固める3. 今後の決定は全受託者の同意を書面に残す運用へ直ちに切り替える4. 恒常的に関与できないなら辞任(57条)や信託契約の変更(149条)を提案し、問題を構造的に解消する
時効(請求できる期限):本条に特定の期間制限はない。違反による損失てん補等の債権は、債務不履行による責任に係る債権の消滅時効の例による(信託法43条、民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)。受益者が自分が受益者であることを知らない間の特則がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
一般的な理解:本条は共同受託者間の相互牽制を確保するための規定であり、常務外の事務の決定を他の受託者に包括的に委ねることは原則として許されない。例外要件のうち「やむを得ない事由」は限定的に解され、恒常的な関与不能は辞任・新受託者選任で対処すべきとの見方が有力である
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定 旧信託法(大正11年法律)に代わる新信託法の制定に伴い、共同受託における決定の委託禁止の規律として置かれた。平成19年(2007年)9月30日施行
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年法律)に代わる現行信託法の制定に伴い、共同受託者間の決定の委託を原則禁止する規律として新設。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第80条受託者の過半数決定と常務の単独決定
- 信託法 第28条第三者への信託事務委託の要件
- 信託法 第40条任務違反による損失てん補責任
- 信託法 第85条複数受託者の任務違反責任の連帯
- 信託法 第44条受益者による受託者行為の差止め
- 民法 第644条の2復受任者選任の制限、同構造の一般則
- 民法 第104条任意代理人の復代理制限、同構造の一般則
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