信託法 第138条(受益者代理人の選任)
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- 信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
- 2.信託行為に受益者代理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受益者代理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
- 3.前項の規定による催告があった場合において、受益者代理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
この条文の基本情報
受益者代理人の選任とは何ですか?
定義受益者代理人の選任とは、信託法第138条に定められた規定で、「信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第138条(受益者代理人の選任)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第138条の条文原文は「信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。」で始まります。
- 信託法第138条は第三款 受益者代理人に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第138条の前の条は信託法第137条です。
- 信託法第138条の次の条は信託法第139条です。
- 信託法第138条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第138条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第138条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/138
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法138条は、信託行為で受益者代理人となるべき者を指定できると定める。利害関係人は就任承諾を催告でき、期間内に確答がなければ辞退とみなされる。
Q · 家族信託の受益者代理人は、契約書に書いていなくても後から裁判所に選んでもらえる?
できない。信託行為で指定しておく必要がある
信託法138条1項は、受益者代理人を信託行為(信託契約・遺言など)で指定する仕組みのみを定めています。信託管理人(123条4項)や信託監督人(131条4項)と異なり、裁判所が受益者代理人を選任する規定はありません。指定された者には利害関係人が就任の諾否を催告でき、期間内に委託者(不存在なら受託者)へ確答がなければ辞退とみなされます(同条2項・3項)。
解説
家族信託の契約書に「受益者代理人」という一行を入れるかどうかで、親が認知症になった後の家族の自由度は大きく変わる。信託法138条1項は、信託行為(信託を設定する契約や遺言のこと)の中で、どの受益者を代理するかを決めたうえで、受益者代理人になる人をあらかじめ指名できると定めている。見落とされやすい点が二つある。一つ目は、信託管理人(123条)や信託監督人(131条)と違い、受益者代理人については裁判所が最初の一人を選ぶ規定がないことだ。契約書に書いていなければ、後から裁判所に頼んで置いてもらう道は用意されていない。二つ目は、指名された人が黙っていると困るという点である。利害関係人は期間を区切って「引き受けるのか」と催告でき、期間内に委託者(いなければ受託者)へ返事がなければ、引き受けなかったものとみなされる。沈黙は承諾ではなく辞退として扱われる。指名する前に本人の内諾を取っておかないと、いざというときに誰もいない信託になってしまう。
法的な位置づけ
信託法138条は受益者代理人の選任手続を定める規定であり、信託行為において代理する受益者を特定したうえで受益者代理人となるべき者を指定できること、利害関係人が指定された者に就任承諾の確答を催告できること、及び期間内に委託者または受託者への確答がない場合は就任を承諾しなかったものとみなすことを規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.信託契約書の受益者代理人条項を確認する 信託契約書・遺言に受益者代理人の定めがあるか、どの受益者を代理するか、停止条件や始期が付いているか、予備候補者の定めがあるかを確認する
- 2.停止条件・始期の成就を確認する 指定に「要介護認定を受けたとき」などの停止条件や始期が付いている場合、その成就・到来を書類で確認する。成就前の催告は138条2項ただし書により認められない
- 3.相当の期間を定めて就任の催告をする 利害関係人として、指定された者に対し、相当の期間を定めて就任を承諾するか確答するよう書面で催告する。到達を立証できる内容証明郵便が確実
- 4.委託者・受託者への確答の有無を確認する 確答の相手方は委託者(委託者が現に存しない場合は受託者)である。期間満了時に確答の有無を委託者・受託者に確認し、確答がなければ就任を承諾しなかったものとみなされる
- 5.辞退・不就任の場合の対応を専門家と検討する 予備候補者の定めがあれば同様に催告する。定めがなければ、信託変更(149条)や任意後見など代替手段を信託に詳しい司法書士・弁護士と検討する
よくある質問 AI による整理
Q1受益者代理人とは何ですか?
信託の受益者に代わって受益者の権利を行使する者です。信託法138条により、信託行為の中で代理する受益者を定めて指定します。
Q2受益者代理人は誰がなれますか?
信託行為で指定された者がなります。家族や司法書士・弁護士など専門職を指定する例があります。受託者との兼任には注意が必要です。
Q3受益者代理人の就任承諾はどうやって確認する?
利害関係人が相当の期間を定めて、就任を承諾するか確答するよう催告できます(信託法138条2項)。書面・内容証明が確実です。
Q4受益者代理人が催告に返事しないとどうなる?
期間内に委託者(不存在なら受託者)へ確答しなければ、就任を承諾しなかったものとみなされます(信託法138条3項)。
Q5受益者代理人の催告はいつからできる?
指定に停止条件や始期が付いている場合は、条件成就・始期到来の後に限られます。それ以前の催告は2項ただし書により認められません。
Q6受益者代理人を家庭裁判所に選んでもらえる?
信託法に裁判所が受益者代理人を選任する規定はありません。信託管理人・信託監督人と異なり、信託行為での指定が唯一の入口です。
Q7受益者代理人の予備候補は定められる?
条文上禁止されておらず、実務では辞退に備えて予備の候補者や選任方法を信託契約に書き込む設計が用いられます。
Q8受益者代理人がいると受益者本人は何ができなくなる?
信託法139条4項により、92条列挙の権利と信託行為で定めた権利を除き、代理される受益者本人は権利行使ができなくなります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託を作った後で、やっぱり受益者代理人を置きたくなったらどうすればいいですか?
信託行為の変更(149条)で受益者代理人の定めを追加する方法が考えられる。ただし、その変更には原則として受益者の合意が必要になるため、受益者の判断能力が落ちた後では難しくなる。信託管理人(123条4項)や信託監督人(131条4項)と違い、受益者代理人については裁判所が最初の一人を選ぶ規定がない。実務のポイント:経験豊富な専門家は、使うかどうか分からない段階でも、停止条件付きで受益者代理人の定めを入れておく。後から入れるのが最も難しい条項だと知っているからである
Q2催告を無視されたら、承諾したことにはならないんですか?
ならない。138条3項は、期間内に確答がなければ就任を承諾しなかったものとみなすと定めている。沈黙は辞退として扱われる。実務のポイント:確答する相手は催告をした人ではなく、委託者(委託者がいなければ受託者)である。受益者が催告した場合でも、本人が受益者に返事をしただけでは条文上の確答にならない可能性があるため、委託者や受託者にも同時に書面を送る運用が安全である
間違えやすい点 AI による整理
- 「受益者が認知症になったら、成年後見人を付ければ同じことができる」と考えがちだが、ここには問題が二つある。成年後見人は家庭裁判所の監督の下で動くため、信託の柔軟な運用とかみ合わないことが多い。さらに後見人の選任には数か月かかり、その間は手続が止まる。受益者代理人を最初から置いておけば、こうした空白を避けられる
- 受益者代理人を置けば受益者を守る味方が一人増えるだけだと思われているが、それだけではない。139条4項により、受益者代理人がいる間、代理される受益者本人は92条に列挙された権利と信託行為で定めた権利を除き、自分で権利を行使できなくなる。守る仕組みであると同時に、本人の手を縛る仕組みでもある。この重さを知らずに条項を入れると、元気な受益者本人が置き去りにされることがある
- 「指名されたら就任を断れないのか」という心配は、そもそも問いの立て方が違う。法律は、指名された人が積極的に断らなくても、催告期間内に返事をしなければ辞退として扱う。問題は断れるかどうかではなく、誰も引き受けないまま信託が動いてしまうリスクのほうにある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 置かれる場面 | 受益者代理人(138条):信託行為で代理する受益者を定めて指定 | 信託管理人(123条):受益者が現に存しない場合 信託監督人(131条):受益者が受託者の監督を適切に行えない特別の事情がある場合 |
| 裁判所による選任 | 規定なし(信託行為での指定のみ) | あり(123条4項) あり(131条4項) |
| 就任の催告と沈黙の扱い | 利害関係人が催告可、確答なしは不承諾とみなす | 同型の催告規定あり 同型の催告規定あり |
| 受益者本人への影響 | 代理される受益者は92条等を除き権利行使不可(139条4項) | 受益者が現に存しないため問題とならない 受益者自身の権利行使は制限されない |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾には受益者代理人制度はなく、信託監察人が受益者保護を担う。信託行為に信託監察人またはその選任方法の定めがあればそれに従い、なければ法院が利害関係人等の声請で選任できる点で日本の受益者代理人と異なる
フランスのフィデュシーでは、契約に別段の定めがない限り、委託者が自己の利益の保全を確保する第三者を指定できる。代理する対象が委託者側である点に違いがある
米国統一信託法典は、受益者を他の者が代表(representation)して通知受領・同意を行う規律を設ける。代表関係を法律上の地位から認める点で、信託行為の指定に限る日本と構造が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が元気なうちに長男を受託者とする家族信託を組んだ。父自身が受益者である。数年後に父の認知症が進み、信託の内容を変えるには受益者の同意が必要になった(149条)。契約書に受益者代理人の定めがなく、裁判所に選んでもらう条文もないため、変更の手続が止まってしまった
- 契約書には「父が要介護3以上と認定されたときは、二女を受益者代理人とする」と書いてある。もし認定の前に、受託者の長男が二女に「引き受けるのか今すぐ答えろ」と催告したら、その催告に効果はあるのか? 停止条件(一定の事実が起きるまで効力が生じない条件)が成就する前の催告は、2項ただし書により認められない
- 受託者の側に立つあなたは、受益者代理人に指名された叔父に催告書を送った。回答期限は30日。叔父は何も返事をしてこない。期限を過ぎた時点で、叔父は就任を承諾しなかったものとみなされ、受益者代理人のいない状態がそのまま固まる
- 障害のある子のために親が福祉型信託を設計した。受益者代理人には親しい行政書士を指名したつもりだったが、本人には何も伝えていなかった。親が亡くなった後に初めて事情を知った行政書士が、催告に対して「辞退します」と回答。子の権利を見守る人が誰もいなくなった
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益者または受益者の家族として、信託契約書に受益者代理人の定めがあるか、代理範囲がどこまでかを確認する2. 指名された人が就任するのか曖昧なら、利害関係人として相当の期間を定めて書面で催告する(138条2項)。内容証明郵便が確実である3. 停止条件や始期が付いている場合は、それが成就・到来した後に催告する4. 辞退とみなされた場合は、定めのない状態でどう動くかを、信託に詳しい司法書士や弁護士と早めに検討する
訴えられた側:1. 受益者代理人に指名されていると知らされたら、139条以下の権限と義務(善管注意義務、つまり専門家として当然払うべき注意)の重さを確認してから回答する2. 引き受けるなら、期間内に委託者(委託者がいなければ受託者)へ書面で承諾を伝える。返事をする相手は催告をしてきた人ではない点に注意する3. 断るなら、明確に辞退を伝えたほうが関係者が次の手を早く打てる4. 受託者と兼任していないかも確認する
時効(請求できる期限):法律が定める固定の期間はない。2項の催告で利害関係人が定めた「相当の期間」が締切となり、その期間内に委託者(いなければ受託者)へ確答しなければ、承諾しなかったものとみなされる(3項)。停止条件・始期付きの場合、催告できるのは成就・到来後に限られる
学説
条文構造からの理解:信託管理人(123条4項)・信託監督人(131条4項)には裁判所選任の規定があるのに対し、受益者代理人には同種の規定がない。受益者代理人の存在は受益者本人の権利行使を制限する(139条4項)ため、その設置は信託設定時の意思に委ねられていると理解される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法(大正11年法)にはなかった受益者代理人制度を新設し、本条で信託行為による指定と就任催告の手続を定めた。施行は平成19年(2007年)。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により受益者代理人制度を新設し、本条で信託行為による指定と就任の催告手続を規定。平成19年(2007年)施行
- 信託法 第139条受益者代理人の権限と受益者の権利行使制限
- 信託法 第92条受益者代理人がいても受益者に残る権利
- 信託法 第123条信託管理人の選任、同型の催告規定と裁判所選任
- 信託法 第131条信託監督人の選任、同型の催告規定と裁判所選任
- 信託法 第149条信託変更の合意、代理人の主要な活躍場面
- 民法 第99条代理行為の効果帰属に関する一般原則
- 任意後見契約に関する法律 第2条判断能力低下に備える代替制度の定義
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