信託法 第140条(受益者代理人の義務)
クイックジャンプ
- 受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。
- 2.受益者代理人は、その代理する受益者のために、誠実かつ公平に前条第一項の権限を行使しなければならない。
この条文の基本情報
受益者代理人の義務とは何ですか?
定義受益者代理人の義務とは、信託法第140条に定められた規定で、「受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第140条(受益者代理人の義務)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第140条の条文原文は「受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。」で始まります。
- 信託法第140条は第三款 受益者代理人に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第140条の前の条は信託法第139条です。
- 信託法第140条の次の条は信託法第141条です。
- 信託法第140条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第140条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第140条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/140
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法140条は、受益者代理人に善良な管理者の注意をもって権限を行使する義務と、代理する受益者のために誠実かつ公平に権限を行使する義務を課す規定である。
Q · 家族信託の受益者代理人って、名前を貸すだけでいいの?
名前だけでも善管注意義務を負い、放置すれば責任を問われる
信託法140条1項により、受益者代理人は善良な管理者の注意をもって権限を行使しなければなりません。受託者の報告を一度も確認せず放置すれば義務違反になり得ます。さらに2項により、代理する受益者のために誠実かつ公平に行動する義務も負うため、複数の受益者がいる場合に一方だけを優遇することも許されません。無報酬で引き受けても義務の程度を軽くする規定はありません。
解説
家族信託の契約書の中に「受益者代理人」という見慣れない役職名を見つけたら、ここで指を止める価値がある。受益者代理人は、受益者に代わって受託者を見張り、裁判上又は裁判外の一切の行為ができる人物だ(信託法139条1項)。しかも受益者代理人がいるあいだ、本人である受益者は、92条に列挙された権利と信託行為で定めた権利を除いて、自分の権利を行使できなくなる(139条4項)。つまり本人の手から、権利を使う「ハンドル」が外れる。その代わりに本条が受益者代理人に課しているのが、善管注意義務(その立場の人なら当然払うべき注意のレベル)と、誠実かつ公平に権限を行使する義務だ。言い換えると、受益者代理人が受託者の帳簿を一度も見ないまま放置した場合や、代理する複数の受益者のうち一人だけを優遇した場合、それは単なる「気の利かなさ」ではなく義務違反になる。役職名だけの名誉職ではないと分かっているかどうかで、引き受けるときの判断も、見張られる側の受託者の緊張感も変わってくる
法的な位置づけ
信託法140条は受益者代理人の義務を定める規定であり、受益者代理人が139条1項の権限を行使する際に、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負うこと、および代理する受益者のために誠実かつ公平に権限を行使する義務(誠実義務・公平義務)を負うことを規定する。信託監督人の義務を定める133条と同旨の構造をとる。
手順
- 1.引受け前に信託行為の定めを確認・交渉する 受益者代理人として署名する前に、信託契約書で権限の範囲、受託者からの報告頻度、報酬、辞任条件が定められているかを確認し、不足があれば追記を求める
- 2.受託者に定期報告を求める 少なくとも年1回、受託者に信託事務の処理状況と信託財産の収支について報告を求め、帳簿等の閲覧も行う。受け取った資料と確認内容は日付入りで保存する
- 3.複数受益者の意見を聴き判断理由を残す 財産売却など受益者間で利害が対立する場面では、全員の意見を聴いたうえで判断し、判断理由を書面に残す。一方の受益者の指示だけで動かない
- 4.不正の兆候があれば実行前に書面で異議を示す 受託者の利益相反取引や不当廉売の予定を知ったら、取引実行前に書面で異議と差止めの意思を伝え、必要に応じて専門家に差止請求の可否を相談する
よくある質問 AI による整理
Q1受益者代理人とは何ですか?
受益者に代わって受託者を監督し、受益者の権利に関する裁判上・裁判外の一切の行為をする者です(信託法139条1項)。義務は140条が定めます。
Q2受益者代理人の義務は何条に書いてありますか?
信託法140条です。1項が善管注意義務、2項が代理する受益者のために誠実かつ公平に権限を行使する義務を定めています。
Q3受益者代理人に報酬は支払えますか?
信託行為に定めがあれば報酬を受けることができます(信託法141条で準用する規定による)。報酬の有無にかかわらず140条の義務は同じです。
Q4受益者代理人は誰がなれますか?
信託行為の定めにより指定されます(信託法138条)。未成年者など一定の者は就任できず、当該信託の受託者も就任できません。詳細は最新条文で確認が必要です。
Q5受益者代理人がいると受益者は何もできない?
受益者は92条に列挙された権利と信託行為で定めた権利を除き、自分では権利行使できなくなります(139条4項)。代理人の働きが本人の保護を左右します。
Q6受益者代理人の善管注意義務違反になるのはどんな場合?
受託者の報告や帳簿を長期間確認しない、利益相反取引を知りながら放置する、などが典型です。判断過程の記録がないと注意を尽くしたと示しにくくなります。
Q7受益者代理人を辞めることはできますか?
辞任・解任のルールは信託法の準用規定と信託行為の定めによります。引受け前に辞任条件を信託行為に明記しておくと、後の紛争を避けやすくなります。
Q8受益者代理人の公平義務とは?
代理する受益者が複数いる場合、特定の受益者だけを有利に扱わず、全員の利益を公平に考慮して権限を行使する義務です(信託法140条2項)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受益者代理人って、信託監督人と何が違うんですか?
信託監督人は受益者と並んで受託者を見張る役で、受益者本人も自分の権利を使えます(信託法131条以下)。受益者代理人は受益者の代わりに一切の行為ができる代わりに、本人の権利行使が大きく制限されます(139条4項)。実務のポイント:本人がまだ元気な段階で受益者代理人を置くと、本人が自分で受託者に物を言えなくなる。設計時に「監督人で足りないか」を必ず検討する
Q2親族なので無報酬で引き受けました。それでも責任を問われますか?
本条1項は報酬の有無で善管注意義務の程度を分けていません。無償だから注意義務が軽くなる、という規定は置かれていないのです。実務のポイント:民法の無償寄託(659条)のような軽減規定は信託法の受益者代理人にはない。無報酬で引き受けるなら、信託行為に報告頻度や確認範囲を具体的に書いておくことが、事実上の防御になる
Q3受益者代理人は、受託者の責任を免除してあげることもできるんですか?
できません。受益者代理人の権限からは、受託者の責任免除(信託法42条)に関する行為が明文で除かれています(139条1項括弧書き)。実務のポイント:受託者が親族の受益者代理人に「水に流してくれ」と念書を求めてくることがある。その念書には効力がなく、署名すると逆に誠実義務違反を疑われかねない
間違えやすい点 AI による整理
- 「受益者代理人は受益者の味方なのだから、受益者に言われたとおり動けばいい」と考えがちだが、代理する受益者が複数いる場合、本条2項は公平義務を課している。声の大きい受益者の指示に従うこと自体が、他の受益者に対する義務違反になりうる。味方の意味が一人分ではない
- 受益者代理人は「何かあったときに出ていく人」だと理解されているが、本条1項の善管注意義務は平時の監視にもかかる。問題が表面化してから動いたのでは遅く、表面化する前に受託者の報告や帳簿(信託法36条・38条の権利)を確認していたかが、責任の有無を分ける。この義務の重さを知らないまま引き受ける親族は多い
- 視点を変えると、受益者から見れば受益者代理人は「自分を守ってくれる人」だが、法律から見れば「本人の権利行使を大きく制限する人」でもある(139条4項)。代理人が怠けた場合、受益者本人には自力で動ける手段がほとんど残っていない。この落差に気付くのは、たいてい財産がすでに目減りした後だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 義務を負う者 | 信託法140条:受益者代理人 | 信託法133条:信託監督人 信託法29条・33条:受託者 |
| 役割 | 受益者に代わり一切の行為をする(本人の権利行使は制限) | 受益者と並んで受託者を監督(本人も権利行使可) 信託財産の管理・処分を行う当事者 |
| 課される義務 | 善管注意義務+誠実義務・公平義務 | 善管注意義務+誠実義務・公平義務(同旨) 善管注意義務(29条)・公平義務(33条)ほか忠実義務等 |
| 公平義務の対象 | 自らが代理する受益者の間 | 受益者全体 受益者が2人以上いる場合の受益者全体 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾には受益者代理人制度はなく、信託監察人が受益者のために職務を行い、善良管理人の注意義務を負う。日本の信託監督人に近い位置付け
韓国も2011年改正で受益者代理人に相当する制度を導入しており、日本の2006年改正の影響がうかがえる。条番号・要件は原典で要確認
米国では trust protector や指図権者が受託者を監督する実務が発達しており、その義務を受託者的義務として扱う州がある。州ごとに規律が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が設定した家族信託で、長男が受託者、母と障害のある次男が受益者、そして叔父が二人の受益者代理人になった。数年後、長男が信託財産のアパート収益を自分の生活費に流用していたと判明。叔父は年に一度も収支報告を求めていなかった。母と次男の側は、長男だけでなく叔父の責任も問えるのか?
- 友人の弁護士から「お父さんの信託の受益者代理人を引き受けてほしい、名前だけでいいから」と頼まれた。名前だけで済む役職ではない。引き受けた瞬間から、善管注意をもって受託者を監視する義務を負う
- あなたが受益者代理人で、代理している受益者は兄と妹の二人。受託者から「信託不動産を売却して兄の事業資金を出したい」と打診された。兄は大賛成、妹は反対。どちらか一方の言い分だけに乗れば、公平義務違反を問われかねない
- 受託者が来週の金曜に信託財産の土地を時価より安く親族へ売る契約に調印する予定だと、あと5日の時点で知った。受益者代理人として差止めを求めるか、黙認するか。黙っていた事実そのものが、後で善管注意義務違反の証拠になりうる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益者代理人が受託者の不正や放置を見逃していたと疑うなら、まず信託行為(契約書)を確認し、代理人の権限と報告ルールを把握する2. 受託者への報告請求・帳簿閲覧の記録が代理人側に残っているかを照会する3. 損害が出ていれば、受託者には損失てん補請求(信託法40条)、代理人には義務違反に基づく損害賠償を検討する4. 代理人の交代が必要なら、信託行為の定めや裁判所への申立ての可否を専門家と確認する(準用関係は最新条文で要確認)
訴えられた側:1. 受託者に報告を求めた日時、受け取った資料、検討した内容を時系列で整理する。善管注意を尽くしたかは判断過程の記録で決まる2. 複数受益者の利害が対立した場面では、双方の意見を聴いた経緯と判断理由を示し、公平義務を果たしたことを立証する3. 信託行為に義務の範囲を限定する定めがないか確認する4. 自分と受託者・受益者との利害関係を開示していたかも整理し、誠実義務違反の疑いを先に潰す
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。不法行為構成なら損害及び加害者を知った時から3年、行為時から20年(民法724条)。責任追及の法的構成は実務上、解釈が分かれる余地がある
学説
立法趣旨の一般的理解:受益者代理人が置かれると受益者本人の権利行使が制限されるため、代理人の権限行使の適正を確保する必要がある。本条は信託監督人の義務(133条)と同旨の善管注意義務・誠実公平義務を課すことでこれを担保すると理解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法には存在しなかった受益者代理人制度が新信託法で新設され、本条で善管注意義務と誠実公平義務が定められた。平成19年(2007年)9月施行
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正により受益者代理人制度が新設され、本条で善管注意義務と誠実公平義務が定められた。平成19年(2007年)9月施行。
- 信託法 第139条受益者代理人の権限と本人の権利制限
- 信託法 第138条受益者代理人の選任方法
- 信託法 第133条信託監督人の同旨の義務規定
- 信託法 第29条受託者の善管注意義務との対比
- 信託法 第33条受託者の公平義務との対比
- 民法 第644条受任者の善管注意義務の原型
- 民法 第415条義務違反時の債務不履行責任の根拠
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める