信託法 第33条(公平義務)
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受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。
この条文の基本情報
公平義務とは何ですか?
定義公平義務とは、信託法第33条に定められた規定で、「受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第33条(公平義務)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第33条の条文原文は「受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。」で始まります。
- 信託法第33条は第二節 受託者の義務等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第33条の前の条は信託法第32条です。
- 信託法第33条の次の条は信託法第34条です。
- 信託法第33条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第33条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第33条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/33
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法33条は、受益者が二人以上ある信託で、受託者に受益者のため公平に職務を行う義務を課す。公平の基準は均等配分ではなく、信託行為の定めである。
Q · 家族信託で受益者が複数いるとき、受託者は全員に同じ額を配らないといけないの?
均等ではなく、信託行為の定めに偏りなく従う義務です
信託法33条は、受益者が二人以上ある信託で、受託者に受益者のため公平に職務を行う義務を課しています。ただし公平とは全員に同額を配ることではありません。信託行為が「長男6、次男4」と定めていればその配分を忠実に実行し、定めのない修繕費や運用方針の判断でも、収益受益者と元本受益者のどちらかに肩入れしないことが求められます。違反のおそれがあれば、受益者は差止めを請求できます(同法44条2項)。
解説
「公平」という言葉を「全員に同じ額を配ること」と読むと、この条文の意味を取り違える。信託法33条が受託者(財産を預かって管理・運用する人)に求めているのは、受益者(信託から利益を受け取る人)全員を同じに扱うことではない。信託行為(信託契約や遺言で決めたルール)が受益者ごとに違う取り分や権利を定めているなら、それを特定の受益者に肩入れせずに実行することである。とくに問題になるのは、一つの財産から利益を受ける人が時間の軸で分かれる場面である。母が生きている間の家賃収入は母が受け取り、母の死後に不動産そのものは子が受け取る、という家族信託では、受託者が大規模修繕の費用を家賃収入から出すか元本から出すかを決めるだけで、母と子の取り分が入れ替わる。受託者が長男で、しかも元本を受け取る側にもいる場合、その判断は公平義務のど真ん中に立つ。この義務の違反で一部の受益者に著しい損害が生じるおそれがあれば、その受益者は行為の差止めを請求できる(信託法44条2項)。家族信託を組むあなたにとって、33条は「誰を受託者にするか」を決める前に読んでおくべき条文である。
法的な位置づけ
信託法33条は、受益者が二人以上ある信託において、受託者が受益者のために公平に職務を行うべき義務(公平義務)を定める規定である。ここでいう公平とは受益者を均等に扱うことではなく、信託行為が定める受益権の内容に従い、特定の受益者に偏らずに管理・運用・分配を行うことを意味する。違反行為には差止請求(同法44条2項)が対応する。
手順
- 1.信託行為の配分ルールを確認する 信託契約書・遺言を読み、受益者ごとの取り分、収益と元本の区別、修繕費や運用方針の定めがあるかを確認する。公平義務の基準はこの定めである
- 2.受託者に報告を求め帳簿を閲覧する 受託者に信託事務の処理状況の報告を求め(信託法36条)、帳簿・計算書類の閲覧・謄写を請求する(38条)。支出や分配が誰に有利だったかを洗い出す
- 3.偏った処分の実行前に差止めを求める 一部の受益者に著しい損害が生じるおそれのある処分が予定されていれば、内容証明郵便で差止めを求め、急ぐ場合は裁判所に仮処分を申し立てる(44条2項)
- 4.損害発生後はてん補請求・解任申立てを検討する すでに損害が生じた場合は損失てん補を請求し(40条)、重要な事由があれば裁判所に受託者の解任を申し立てる(58条4項)。時効期間(43条)に注意する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法33条の公平義務とは?
受益者が二人以上いる信託で、受託者が特定の受益者に偏らずに職務を行う義務です。基準は均等ではなく信託行為の定めです。
Q2公平義務と平等の違いは?
平等は全員を同じに扱うこと、公平義務は信託行為が定めた異なる取り分や権利を、偏りなく実行することです。均等配分が違反になる場合もあります。
Q3受益者が一人の信託でも公平義務はある?
33条は受益者が二人以上ある信託を前提とする規定です。受益者が一人なら、善管注意義務(29条)や忠実義務(30条)が中心になります。
Q4収益受益者と元本受益者とは?
信託財産から生じる家賃や配当を受け取る人が収益受益者、信託終了時などに財産そのものを受け取る人が元本受益者です。利害が逆向きになりやすい関係です。
Q5受託者が受益者を兼ねるのは違法?
違法ではありません。ただし受託者が唯一の受益者として信託の利益を全部享受する状態が続くと信託の終了事由になる点(163条)に注意が必要です。
Q6公平義務違反 差止め できる?
できます。公平義務違反の行為で一部の受益者に著しい損害が生じるおそれがあれば、その受益者は行為の差止めを請求できます(信託法44条2項)。
Q7公平義務は信託契約で免除できる?
33条には任意規定と明示する但書がなく、全面免除は困難と考えられます。ただし配分や優先順位を信託行為で具体的に定めれば、その定めが公平の基準になります。
Q8家族信託 受託者 選び方 注意点は?
受益者を兼ねる家族を受託者にすると利害対立が生じやすくなります。修繕費の負担ルールの明記や信託監督人の設置を設計段階で検討するのが要点です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄が受託者で、自分も兄も受益者です。兄が自分に有利なことをしてないか、どうやって確かめればいいですか?
受益者には信託事務の処理状況について報告を求める権利(信託法36条)と、帳簿などの閲覧・謄写を請求する権利(38条)がある。兄弟でも遠慮は要らない。実務のポイント:信託行為でこれらの権利を制限しようとしても、92条は受益者の監督的な権利を信託行為で制限できないと定めている。「契約書に書いてないから見せない」という言い分は通らない
Q2親の家賃収入は母、建物は自分たち子どもが継ぐ家族信託です。屋根の修理代はどっちから払うのが正解ですか?
まずは信託行為の定めが基準になる。定めがない場合、受託者は収益受益者と元本受益者のどちらかに偏らないよう判断する義務を負う(信託法33条)。実務のポイント:争いになる家族信託の多くは、この「収益か元本か」の振り分けを契約書で決めていない。設計段階で修繕費の負担ルールを一行入れておくだけで、将来の紛争の芽を一つ減らせる
Q3受託者が公平義務を破ったら、すぐクビにできますか?
受託者の任務違反で信託財産に著しい損害を与えたなど重要な事由があれば、受益者などの申立てにより裁判所が解任できる(信託法58条4項)。ただし小さな偏り一つでは足りないことが多い。実務のポイント:解任より先に、損害が出る前の差止め(44条2項)と帳簿の確認で実績を積み上げておくと、裁判所に「重要な事由」を示しやすくなる。証拠の蓄積が交渉力そのものになる
間違えやすい点 AI による整理
- 「公平に」とは均等に配ることだと思われがちだが、基準になるのは信託行為の定めである。受益者ごとに違う取り分を決めることは適法で、受託者はその差を忠実に実行しなければならない。定めを無視した均等配分は、善意であっても義務違反になりうる
- 公平義務は、配当や分配をするときだけの話だと思われがちだが、それは問題の一部にすぎない。どの資産に投資するか、修繕費を収益と元本のどちらから出すか、空室をどう埋めるか。日常の管理判断の一つ一つが、時間軸で分かれた受益者の利益配分を動かしている
- 「家族だから揉めない」と考えて長男を受託者にする家庭は多い。だが法律から見れば、受益者を兼ねる長男は利害当事者として天秤を操作する立場にある。仲が良いうちは問題にならないこの構造が、相続をきっかけに兄弟の溝を一気に広げる。受託者の独断を見張る仕組み(信託監督人など)を設計段階で組み込んでいない信託ほど、法廷に行きやすい
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 義務の中身 | 信託法33条:複数の受益者の間で偏らずに職務を行う(公平義務) | 信託法29条:善良な管理者の注意をもって信託事務を処理する(善管注意義務) 信託法30条:受益者のため忠実に信託事務を処理する(忠実義務) |
| 適用前提 | 受益者が二人以上ある信託 | すべての信託 すべての信託 |
| 典型的な違反場面 | 修繕費を収益と元本のどちらから出すかで一方の受益者に肩入れする | 相場調査をせずに不利な条件で物件を売却する 信託財産を受託者自身や知人に安く譲る |
| 受益者の主な救済 | 差止請求(44条2項)、損失てん補(40条) | 損失てん補(40条)、差止請求(44条1項) 損失てん補(40条)、差止請求(44条1項) |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は善管注意義務・忠実義務を明文で定めるが、受益者間の公平義務を独立の条文としては置いておらず、解釈で補う構造である
韓国は2011年の信託法全部改正で、受益者が複数ある場合の公平義務を明文化しており、日本法と構造が近い
米国統一信託法典は、受益者が複数ある場合に受託者が信託目的に照らして公平に行動すべきことを定め、収益と元本の配分は別途 Uniform Principal and Income Act 系の州法で規律される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が認知症対策で家族信託を組み、長男が受託者になった。受益者は父と、父の死後は長男・次男の二人。父が亡くなったあと、長男は自分が住む実家の修繕に信託財産を使い、次男が受け取る予定の預金部分が目減りした。次男は帳簿の閲覧を請求し(信託法38条)、33条違反を理由に差止めを求められる
- あなたが受託者の立場なら、どうなる? 収益受益者である母は「家賃収入を増やしてほしい」と言い、元本受益者である妹は「建物の価値を落とさないで」と言う。どちらか一方の要望だけで運用方針を決めれば、それ自体が公平義務違反と言われうる。判断した理由を議事メモに残しておくことが自分を守る
- 家族信託の契約書を作る段階で、受益権の配分を「長男6、次男4」と明記した。受託者がそれを無視して5対5で配れば、平等であっても信託行為違反になる。公平は契約書の定めが基準である
- 受託者の兄が、来週、信託財産の賃貸物件を兄の知人の会社に相場よりかなり安く売ろうとしている。売買が終われば取り返すのは難しい。受益者のあなたに残された数日のうちに、まず内容証明郵便で差止めを求め、必要なら裁判所に仮処分を申し立てる流れになる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受託者に信託事務の処理状況の報告を求め(信託法36条)、帳簿・計算書類の閲覧を請求する(38条) 2. 信託行為の定めと実際の分配・支出を照らし合わせ、どの判断が誰に有利だったかを整理する3. 偏った処分が実行される前なら、内容証明郵便で差止めを求め、急ぐ場合は仮処分を検討する(44条2項) 4. 損害が生じたあとなら損失てん補を請求し(40条)、悪質な場合は裁判所に受託者の解任を申し立てる(58条4項)
訴えられた側:1. 自分の判断が信託行為のどの定めに基づくかを、条項番号つきで説明できるよう整理する2. 収益と元本の振り分け、修繕・運用の判断理由を記録した資料(議事メモ、見積書、専門家の意見)を揃える3. 受益者間の利害が真っ向から対立する判断は、事前に全受益者へ説明し、書面で同意を取っておく4. 契約書の定めが曖昧で紛争が続くなら、信託の変更(149条)や信託監督人の選任(131条)を自分から提案し、独断の疑いを晴らす
時効(請求できる期限):受託者の任務違反による損失てん補責任(信託法40条)にかかる債権は、債務不履行責任と同じく、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効にかかる(信託法43条、民法166条)。受益者が受益者として指定されたことを知るまでは時効は進行しない。(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:公平義務は受益者の均等扱いを求めるものではなく、信託行為の定めを前提に、受益者間で利害が対立する場面で一方に偏らない判断を求める義務と解される。忠実義務(30条)とは別個の義務として位置付けられる
実務上の見解:収益受益者と元本受益者が分かれる信託では、費用・損失の配分や投資方針の選択が公平義務の主戦場となるため、信託行為で配分ルールを具体的に定めておくことが紛争予防に有効とされる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正(2007年9月30日施行) 大正11年制定の旧信託法には公平義務の明文規定がなく、解釈で認められていた。新信託法の制定で、受益者が二人以上ある信託における受託者の公平義務を本条として新設し、違反行為の差止請求(44条2項)と結び付けた
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法制定。受託者の公平義務に関する明文規定はなく、解釈により認められていた
- 2.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号、2007年9月30日施行)。受益者が二人以上ある信託における受託者の公平義務を本条として明文化し、違反行為の差止請求(44条2項)と結び付けた
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