信託法 第178条(清算受託者の権限等)
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- 清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2.清算受託者は、次に掲げる場合には、信託財産に属する財産を競売に付することができる。
- 一受益者又は第百八十二条第一項第二号に規定する帰属権利者(以下この条において「受益者等」と総称する。)が信託財産に属する財産を受領することを拒み、又はこれを受領することができない場合において、相当の期間を定めてその受領の催告をしたとき。
- 二受益者等の所在が不明である場合
- 3.前項第一号の規定により信託財産に属する財産を競売に付したときは、遅滞なく、受益者等に対しその旨の通知を発しなければならない。
- 4.損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、第二項第一号の催告をしないで競売に付することができる。
この条文の基本情報
清算受託者の権限等とは何ですか?
定義清算受託者の権限等とは、信託法第178条に定められた規定で、「清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第178条(清算受託者の権限等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第178条の条文原文は「清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」で始まります。
- 信託法第178条は第二節 信託の清算に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第178条の前の条は信託法第177条です。
- 信託法第178条の次の条は信託法第179条です。
- 信託法第178条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第178条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第178条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/178
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法178条は、清算受託者に清算に必要な一切の権限を与え、受益者等が受領を拒むときは相当期間の催告後、所在不明なら催告なしで信託財産を競売できると定める。
Q · 家族信託が終わって、実家の受け取りを断り続けたらどうなるの?
催告の期間が過ぎれば、受託者は実家を競売にかけられる
信託法178条2項1号により、受益者や帰属権利者が信託財産の受領を拒む場合、清算受託者は相当の期間を定めて受領を催告し、その後に財産を競売に付すことができます。民法497条の自助売却と異なり、裁判所の許可は要件とされていません。競売後は遅滞なく受益者等へ通知する義務があります(同条3項)。受け取りを拒むことは交渉材料にならず、安値での換価を招くおそれがあります。
解説
家族信託は「始めるとき」の話ばかりされるが、実際に揉めるのは終わるときである。信託が終了すると、受託者は清算受託者(信託の後片付けを担う人)となり、本条1項により清算に必要な一切の行為をする権限を持つ。見落とされやすいのは2項だ。残った実家や株式を受け取るべき受益者や帰属権利者(信託終了後に残った財産を受け取ると定められた人)が受け取りを拒む、または受け取れない場合、清算受託者は相当の期間を定めて受領を催告すれば、その財産を競売にかけられる。行方が分からない相手なら催告すら要らない。民法497条の自助売却(受け取ってもらえない物を売って代金を供託する制度)は裁判所の許可を要するが、本条にはその要件がない。つまり「受け取らない」という抵抗は財産を守る盾にならず、市場より安い値で手放させる引き金になりうる。一方で受託者の側は、信託行為の「別段の定め」で任意売却など柔軟な換価方法をあらかじめ書き込める。信託の終わり方は、始めるときの一行で決まっている。
法的な位置づけ
信託法178条は、信託終了後に清算事務を担う清算受託者の権限を定める規定である。清算受託者は清算に必要な一切の行為をする権限を有し、受益者等が受領を拒絶し又は受領できない場合には相当期間の催告後に、受益者等が所在不明の場合には催告なしに、信託財産を競売に付すことができる。信託行為に別段の定めがあればそれに従う。
手順
- 1.信託契約の清算条項を確認する 信託行為に清算方法や換価方法の別段の定めがあるか確認する。任意売却の権限や価格決定の手順が定められていれば、まずそれに従う(信託法178条1項ただし書)
- 2.受益者等の意思と所在を確認する 帰属権利者等に受領の意思を確認する。連絡が取れない場合は住民票や戸籍の附票で住所の履歴を調べ、最後の住所への郵送記録も含めて調査結果を保存する
- 3.相当の期間を定めて受領を催告する 受領拒絶や受領不能の場合は、財産の内容、相当の受領期間、期間経過後に競売を予定している旨を記載した催告書を内容証明郵便で送る。価格下落のおそれがある物は催告を省略できる(同条4項)
- 4.競売を申し立て、遅滞なく通知する 期間経過後に競売を申し立てる(形式競売、民事執行法195条)。競売を実施したら、遅滞なく受益者等へその旨の通知を発し、清算の最終計算に反映させる
よくある質問 AI による整理
Q1清算受託者とは?
信託が終了した時以後の受託者のことで、残った事務の処理、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の給付といった清算事務を担います(信託法177条)。
Q2信託財産の競売に裁判所の許可は必要?
信託法178条2項は裁判所の許可を要件にしていません。この点で、裁判所の許可を要する民法497条の自助売却とは仕組みが異なります。
Q3受領の催告の「相当の期間」は何日?
条文に日数の定めはありません。財産の種類や受益者等の事情に応じて個別に判断されます。短すぎると善管注意義務違反を問われるおそれがあります。
Q4帰属権利者が所在不明でも信託を清算できる?
できます。所在不明であれば催告をしなくても信託財産を競売に付せます(信託法178条2項2号)。所在調査の記録は必ず保存しておきましょう。
Q5信託財産の競売後に通知は必要?
必要です。2項1号に基づいて競売したときは、遅滞なく受益者等に競売した旨の通知を発しなければなりません(信託法178条3項)。
Q6腐りやすい信託財産はすぐ競売できる?
損傷などで価格が下がるおそれがある物は、受領の催告をせずに競売に付すことができます(信託法178条4項)。食品や生花などが典型例です。
Q7家族信託の清算で任意売却はできる?
清算に必要な行為として認められる余地があり、信託契約の別段の定めで任意売却の権限を明記しておけば確実です。善管注意義務には注意が必要です。
Q8信託終了後の競売は違法になる?
要件を満たした競売は適法です。ただし催告期間が不当に短い、所在調査が不十分といった事情があれば、損失てん補責任を問われる可能性があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄が受託者で、実家を受け取れって言われてるけど、正直いらない。断ったらどうなるの?
断ったまま催告の期間が過ぎると、兄は清算受託者として実家を競売にかけられる(信託法178条2項1号)。競売は相場より安く落札されやすく、手元に残る価値が減るのはあなたの側である。実務のポイント:本当に要らないなら、拒絶ではなく「任意売却して代金で受け取る」形を兄に提案するほうが、手取りが大きくなる場合が多い
Q2帰属権利者の叔父がどこにいるのか分からない。勝手に競売しちゃって大丈夫?
所在不明であれば、催告なしで競売に付すことが認められている(信託法178条2項2号)。ただし「探したけれど見つからなかった」ことの裏付けが要る。実務のポイント:戸籍の附票で住所の履歴をたどり、最後の住所へ郵送して返送された封筒まで保管しておく。後で本人が現れたとき、この記録があるかどうかで受託者の立場は大きく変わる
Q3清算受託者って、競売以外に普通に売ったりもできるの?
清算に必要な行為であれば、一切の行為をする権限がある(信託法178条1項)。債務の弁済のための換価などがこれに当たる。ただし信託行為に別段の定めがあればそれに従い、善管注意義務(同29条)もかかる。実務のポイント:清算時の任意売却権限や価格決定の手順を契約に明記しておくと、後で「安く売った」と争われるリスクを大きく減らせる
間違えやすい点 AI による整理
- 「受け取りを拒めば、相手は困って譲歩してくるはずだ」と考える帰属権利者は多い。だが本条2項1号は、受領拒絶そのものを競売の発動条件にしている。拒絶は交渉カードではなく、受託者に換価の正当性を与える行為である。不満があるなら、受け取ったうえで受託者の任務違反(信託法40条の損失てん補責任など)を別途争うのが筋である
- 深化型の誤解として、競売できることは知っていても、それが受託者にとって「安全な選択」だと思い込んでいる人がいる。競売価格は任意売却より大きく下回ることが多く、受託者には清算中も善管注意義務(プロとして当然払うべき注意、信託法29条)がかかっている。催告の期間が短すぎる、所在調査が雑であるといった事情があれば、競売が適法でも、安値処分による損失の責任を問われうる
- 「清算受託者は裁判所が選ぶ特別な人」という前提で考えている人がいるが、通常は信託終了時の受託者がそのまま清算受託者になる(信託法177条)。家族信託であれば、親の財産を預かっていた長男や長女が、そのまま清算の全権を握るということである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 信託法178条:清算受託者の権限と競売権 | 信託法177条:清算受託者の職務(現務の結了・債権取立て・弁済・残余財産給付) 民法497条:弁済目的物の自助売却 |
| 競売の要件 | 受領拒絶・受領不能時の相当期間の催告、または所在不明(腐敗物は催告不要) | 競売の定めはなく、職務の範囲を定める 供託に適しない等の事由+裁判所の許可 |
| 事後の手続 | 遅滞なく受益者等へ競売の通知(3項) | 職務終了後に最終計算(184条) 代金を供託 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾の信託法には清算受託者による競売の明文がなく、受領されない給付物は民法331条の法院拍売と提存で処理する構造となり、日本法より手続負担が重い
ドイツ法には信託清算の一般規定がなく、債権者の受領遅滞時に供託に適しない物を競売する自助売却で対応する
米国の統一信託法典は信託終了時に受託者が合理的な期間内に財産を分配する手続を定め、受託者の分配権限を中心に構成している
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の家族信託が父の死亡で終了した。帰属権利者に指定された次男は、長男が受託者として仕切ってきたことに腹を立て、実家の受け取りを拒み続けている。長男が受領期間を定めた催告書を送り、その期間が過ぎれば、実家は競売の対象になる。次男の意地は、実家を競売の最低価格で手放す結果を招きかねない
- 帰属権利者の叔母は二十年前に海外へ渡り、連絡先が誰にも分からない。清算受託者のあなたは信託口口座と不動産を抱えたまま身動きが取れずにいた。所在不明であれば催告なしで競売に付せる(本条2項2号)。ただし「所在不明」と言えるだけの調査記録を残しておかなければ、後で叔母が現れたとき、あなたの責任が問われる
- 倉庫ごと信託していた在庫の食品や生花。帰属権利者が受け取りを渋っている間にも腐っていく。どうなる? 価格が下がるおそれのある物は、催告を省いて競売に付せる(本条4項)。待っていれば損が膨らむだけだ
- あなたは清算受託者として受領の催告を送り、期間経過後に競売を実施した。手続はそれで終わりではない。遅滞なく受益者等へ競売した旨を通知しなければならない(本条3項)。通知を怠れば、受益者等に損失が出たとき責任追及の口実を与えることになる
- もし催告書が届いたのに放置していたら、どうなる? 指定された期間が終わった時点で、受託者は競売の申立てに動ける。異議があるなら、期間内に受け取るか、受け取り方の条件について書面で回答しておくべきである
取るべき行動
被害を受けた側:(受益者・帰属権利者として競売を迫られている場合)1. 催告書の日付と期間を確認し、期限を把握する2. 受け取りに不満があるだけなら、ひとまず受領して財産価値を守り、受託者の任務違反は信託法40条などで別に争う3. 催告の期間が短すぎる、所在調査が不十分だと考える場合は、書面で異議を伝えて記録を残す4. 競売後は本条3項の通知の有無と時期を確認する。専門家への相談は期限内に行う
訴えられた側:(清算受託者として責任を問われそうな場合)1. まず信託行為に清算方法の別段の定めがあるか確認する(本条1項ただし書) 2. 催告は相当の期間を定めて内容証明郵便で送り、受領拒絶の経緯を証拠化する3. 所在不明を理由にするなら、住民票・戸籍附票の調査結果などを保存する4. 競売後は遅滞なく通知を発する5. 換価代金の扱いは弁済供託(民法494条)の可否も含め、司法書士・弁護士に確認する
時効(請求できる期限):本条に固有の時効はない。2項1号の催告では「相当の期間」を定める必要があり、具体的な日数は財産の種類や事情によって判断される。競売後の通知は「遅滞なく」発する。受託者に対する損失てん補請求などには、一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用されると考えられる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
条文構造からの整理:本条2項の競売は、民法497条の自助売却と異なり裁判所の許可を要しない。その一方で、清算受託者には清算中も善管注意義務(信託法29条)が及ぶため、催告期間の相当性や換価方法の選択は義務違反の判断対象になる。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法(大正11年法律第62号)に代わる新信託法の制定に伴い、清算受託者の権限と競売に関する規定が整備された。旧法との条文対応関係および制定後の改正の有無については、人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:新信託法(平成18年法律第108号)の制定により、清算受託者の権限、受領拒絶・所在不明時の競売、競売後の通知義務、価格下落物の催告省略が規定された。
- 信託法 第175条信託終了後の清算開始
- 信託法 第177条清算受託者の職務内容を列挙
- 信託法 第182条残余財産の帰属先と帰属権利者の定義
- 信託法 第184条清算事務終了時の最終計算と承認
- 信託法 第29条清算中も及ぶ受託者の善管注意義務
- 民法 第497条裁判所許可を要する自助売却との対比
- 商法 第524条商人間売買の催告後競売という類似構造
- 民事執行法 第195条法律の規定による換価の形式競売手続
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