信託法 第254条(会計監査人の損失てん補責任等)
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- 会計監査人がその任務を怠ったことによって信託財産に損失が生じた場合には、受益者は、当該会計監査人に対し、当該損失のてん補をすることを請求することができる。
- 2.前項の規定による損失のてん補として会計監査人が受託者に対し交付した金銭その他の財産は、信託財産に帰属する。
- 3.第四十二条(第一号に係る部分に限る。)並びに第百五条第三項及び第四項(第三号を除く。)の規定は第一項の規定による責任の免除について、第四十三条の規定は第一項の規定による責任に係る債権について、第四十五条の規定は第一項の規定による請求に係る訴えについて、それぞれ準用する。この場合において、第百五条第四項第二号中「受託者がその任務」とあるのは、「会計監査人がその職務」と読み替えるものとする。
この条文の基本情報
会計監査人の損失てん補責任等とは何ですか?
定義会計監査人の損失てん補責任等とは、信託法第254条に定められた規定で、「会計監査人がその任務を怠ったことによって信託財産に損失が生じた場合には、受益者は、当該会計監査人に対し、当該損失のてん補をすることを請求することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第254条(会計監査人の損失てん補責任等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第254条の条文原文は「会計監査人がその任務を怠ったことによって信託財産に損失が生じた場合には、受益者は、当該会計監査人に対し、当該損失のてん補をすることを請求することができる。」で始まります。
- 信託法第254条は第十章 受益証券発行限定責任信託の特例に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第254条の前の条は信託法第253条です。
- 信託法第254条の次の条は信託法第255条です。
- 信託法第254条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第254条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第254条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/254
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法254条は、会計監査人が任務を怠り信託財産に損失が生じたとき、受益者が会計監査人に損失のてん補を請求できると定める。回収財産は信託財産に帰属する。
Q · 監査法人のミスで信託の受益証券が値下がりしたら、受益者は監査法人に請求できる?
請求できるが、回収金は信託財産に戻る
信託法254条1項により、会計監査人が任務を怠ったことで信託財産に損失が生じた場合、受益者は会計監査人に損失のてん補を請求できます。ただし2項により、回収された金銭等は請求した受益者個人ではなく信託財産に帰属します。訴訟費用等は45条の準用で信託財産に請求でき、責任の全部免除などは105条4項の準用により信託行為の多数決の定めでは決められません。
解説
監査報告書に「適正」と書いたプロが手を抜いた。その結果、信託財産に穴が開いた。信託法254条は、その穴を埋めろと受益者が会計監査人に直接迫れる道を開いている。対象は受益証券発行限定責任信託(受益権を有価証券のように流通させつつ、受託者の責任を信託財産の範囲に限定した特殊な信託)である。限定責任である以上、受託者個人の財産には手が届かない。だからこそ、帳簿の番人である会計監査人の責任が、受益者にとって数少ない現実的な回収ルートになる。ただし落とし穴がある。取り戻したお金はあなたの口座ではなく、信託財産に戻る(2項)。個人の取り分を請求する制度ではなく、全受益者共通の器を修復する制度なのだ。さらに、受益者が多数でも、全部免除や悪意・重過失の場合の一部免除は、信託行為で定めた多数決では決められない(3項による105条4項準用)。一部の大口受益者が勝手に監査法人を許すことはできない。この構造を知っているかどうかで、損失発覚後に取る行動が変わる
法的な位置づけ
信託法254条は、受益証券発行限定責任信託の会計監査人が任務を怠ったことにより信託財産に損失が生じた場合に、受益者が当該会計監査人に対して損失のてん補を請求できる旨を定める規定である。てん補として交付された財産は信託財産に帰属し、責任の免除、債権の消滅時効、訴訟の費用等については同法42条、105条、43条、45条が準用される。
よくある質問 AI による整理
Q1信託法254条とは何ですか?
受益証券発行限定責任信託の会計監査人が任務を怠って信託財産に損失を生じさせた場合に、受益者が損失のてん補を請求できると定める規定です。
Q2受益証券発行限定責任信託とは?
受益権を証券化して流通させつつ、受託者の責任を信託財産の範囲に限定した信託です。受託者個人の財産に請求できない点が特徴です。
Q3会計監査人の損失てん補責任 誰が請求できる?
254条1項は請求権者を「受益者」としており、保有口数の下限は定めていません。受益者であれば単独で請求できます。
Q4監査法人から回収したお金は誰のもの?
2項により、会計監査人が受託者に交付した金銭等は信託財産に帰属します。請求した受益者個人に直接支払われるわけではありません。
Q5会計監査人の責任 時効はいつまで?
43条の準用により債務不履行責任の時効の例によります。原則、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年です。
Q6会計監査人の責任は免除できる?
42条1号の準用により受益者全員の同意で免除できます。全部免除や悪意・重過失時の一部免除は、信託行為の多数決の定めでは行えません。
Q7会計監査人の設置が義務になるのはどんな信託?
248条により、最終の貸借対照表の負債の部の合計額が200億円以上の受益証券発行限定責任信託は会計監査人の設置が義務となります。
Q8監査法人が粉飾を見抜けなかったら必ず責任を負う?
負いません。要件は任務懈怠、つまり監査基準上必要な手続を怠ったかどうかです。見抜けなかった結果だけでは責任は成立しません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受益証券を数口しか持ってないけど、自分一人で監査法人を訴えられるんですか?
254条1項は請求権者を「受益者」としており、保有口数の下限は定めていない。勝訴すれば、要した費用や弁護士報酬の相当額を信託財産から支払うよう請求できる(45条準用)。実務のポイント:少数受益者の単独訴訟は、それ自体で回収するより、受託者や他の受益者を動かす圧力として使われることが多い。訴えを起こした事実が、和解交渉のテーブルを作る
Q2取り戻したお金が自分に来ないなら、訴える意味ないですよね?
2項で回収金は信託財産に帰属するため、あなたの持分の価値が回復する形で戻る。負けた場合でも、悪意がなければ受託者等への賠償責任を負わない旨の規律が45条にあり、準用される。実務のポイント:監査法人は評判リスクを嫌い、公開訴訟になる前の和解を好む傾向がある。訴訟提起の予告書面が届いた段階で、交渉余地が一気に広がるケースは少なくない
間違えやすい点 AI による整理
- 「監査法人から取り戻したお金は、訴えた自分がもらえる」と思われがちだが、2項は明確に信託財産への帰属を定める。訴えた受益者は、費用や弁護士報酬の相当額を信託財産から支払うよう請求できる道(45条準用)を知らないと、労力だけ負担して利益は全員で分ける、という状態に陥る
- 会計監査人の責任が重いことは知っていても、その免除がどれほど難しいかは知られていない。受益者が何千人いても、全部免除や悪意・重過失時の一部免除は、信託行為の多数決条項では処理できない。監査法人側から見れば、一度生じた責任は事実上消えない負債になりうる
- 「監査は粉飾を見抜く保証だ」という問いの立て方自体がずれている。254条が問うのは結果ではなく任務懈怠、つまり監査基準に照らして必要な手続を怠ったかどうかである。不正を見抜けなかった事実だけでは責任は成立しない。争点は監査調書の中身に移る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 責任を負う者 | 信託法254条:会計監査人 | 信託法40条:受託者 信託法255条:会計監査人 |
| 請求できる者 | 受益者 | 受益者 損害を受けた第三者 |
| 請求の内容 | 信託財産に生じた損失のてん補(回収財産は信託財産に帰属) | 信託財産の損失のてん補または原状の回復 第三者に生じた損害の賠償 |
| 責任の要件 | 会計監査人の任務懈怠と信託財産の損失 | 受託者の任務懈怠と信託財産の損失・変更 職務上の悪意・重過失など同条所定の要件 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾信託法には限定責任信託・会計監査人の特則がなく、会計師の一般的な損害賠償責任規定が近似対照となる
外部監査人の会社・第三者に対する損害賠償責任を定める。信託財産への帰属という構造は日本固有
決算監査人の会社に対する責任を定め、過失責任に上限額を設ける点が日本と異なる
登録届出書の虚偽記載について監査人が投資家に直接責任を負う。回収金は請求者個人に帰属し、日本の信託財産帰属型と対照的
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 保有する受益証券の基準価額が、ある日の訂正開示を境に急落した。原因は過去数期分の資産評価の誤り。監査法人は毎期「無限定適正意見」を出していた。受託者は限定責任で財産が乏しい。残る標的は会計監査人である
- あなたが監査法人のパートナーとして、受益証券発行限定責任信託の監査を引き受けた。報酬は株式会社の監査より安い。だが任務懈怠があれば、受益者一人からでも損失てん補を求められる。安い案件ほど手続を省きたくなる、その誘惑が責任の入口になる
- もし大口受益者が監査法人と裏で話をつけ、「受益者集会の多数決で責任を全部免除した」と言ってきたら、どうなる? 全部免除は多数決の定めでは決められない。その決議は効力を持たない可能性が高い
- 訂正開示から4年半が経った。権利を行使できると知った時から5年の時効が迫っている。残りは半年、訴訟準備には足りない
- 友人から「デジタル証券の運用先で会計不正が出たらしい。誰を訴えればいい?」と相談された。まず確認すべきは、そのスキームが限定責任信託か、会計監査人が置かれているかの二点である
取るべき行動
被害を受けた側:1. 訂正開示、監査報告書、受託者の説明資料を日付つきで保存する2. 損失が会計監査人の任務懈怠と結びつくか、監査基準上の手続欠落を専門家に検討させる3. 受託者に対し、会計監査人への責任追及を書面で求める4. 自ら訴える場合、勝訴時の費用・弁護士報酬の相当額を信託財産から支払うよう請求できる(45条準用)点を踏まえ、費用対効果を計算する5. 他の受益者と情報共有し、多数決による不当な免除を監視する
訴えられた側:1. 監査調書と手続記録を直ちに保全し、改変と疑われる行為は一切しない2. 争点は結果ではなく監査基準に照らした任務懈怠であると整理し、実施した手続を立証する3. 受託者側の虚偽説明や資料隠しがあれば、因果関係・過失の評価で主張する4. 免除の合意を得る場合、105条4項の準用で多数決では足りない場面があるため、有効性を慎重に確認する5. 専門職賠償責任保険への通知期限を確認する
時効(請求できる期限):43条の準用により、債務不履行責任に係る債権の消滅時効の例による。原則として権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年(民法166条)。43条には受益者が受益者としての指定を知るまで進行しない旨などの特則もある(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 新信託法の制定に伴い、受益証券発行限定責任信託の会計監査人制度とともに新設された。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により、受益証券発行限定責任信託の会計監査人制度とともに新設。その後の改正の有無は要確認
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