信託法 第26条(受託者の権限の範囲)
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受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。
この条文の基本情報
受託者の権限の範囲とは何ですか?
定義受託者の権限の範囲とは、信託法第26条に定められた規定で、「受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第26条(受託者の権限の範囲)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第26条の条文原文は「受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを…」で始まります。
- 信託法第26条は第一節 受託者の権限に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第26条の前の条は信託法第25条です。
- 信託法第26条の次の条は信託法第27条です。
- 信託法第26条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第26条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第26条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/26
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法26条は、受託者が信託財産の管理・処分その他信託の目的の達成に必要な行為をする権限を有すると定める。信託行為によりその権限を制限することもできる。
Q · 家族信託の受託者は、親の財産をどこまで動かせるの?
信託の目的に必要な範囲で、管理も処分もできる
信託法26条により、受託者は信託財産の管理・処分その他、信託の目的の達成に必要な行為をする権限を原則として包括的に持ちます。売却や賃貸も、目的に沿えば明記がなくても権限に含まれえます。一方、ただし書により信託契約などで権限を制限できます。権限外の行為は一定の要件の下で受益者が取り消せ(27条)、違反のおそれがあれば差止めも請求できます(44条)。
解説
家族信託で親の不動産や預金を託された子ども(受託者)は、名義上の持ち主になる。それだけでなく、管理も売却も、信託の目的を果たすために必要な行為なら原則として自分の判断でできる。信託法26条はこの権限を、制限を書かない限り広く認める仕組みになっている。成年後見なら、居住用不動産を売るには家庭裁判所の許可が要る(民法859条の3)。信託ではその許可が要らない。だから家族信託が選ばれる。ただし26条の範囲は条文どおり「信託の目的の達成のために必要な」行為に限られる。契約書に「父が自宅で暮らし続けるため」とだけ書き、売却や借入れの想定を書いていなければ、いざ施設入所の費用を作るために家を売ろうとしたとき、買主や銀行から「その売却は権限の範囲内なのか」と問われる。逆に、ただし書で権限を絞ることもできる。広く書くか、狭く絞るか。この一点の設計が、10年後の家族の選択肢を決める。
法的な位置づけ
信託法26条は受託者の権限の範囲を定める規定であり、受託者が信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する旨を規定する。権限は原則として包括的に認められ、ただし書により信託行為で制限を加えることができる。
手順
- 1.信託の目的を具体的に書く 「自宅での生活の維持」だけでなく、「施設入所・医療費の確保のための換価」「賃貸による収益確保」など、将来起こりうる場面を目的に含めておく。26条の権限は目的に必要な範囲で決まるため、目的の書き方が権限の広さを左右する
- 2.権限条項で「売却・賃貸・借入れ・建替え」を明記 法律上は明記がなくても権限に含まれうる行為も、買主側司法書士や金融機関の審査を通すために契約書に明記する。必要な行為を一つずつ確認する
- 3.絞りたい権限には制限と同意手続を付ける 自宅の売却など重要な処分には「受益者の書面同意を要する」といった制限をただし書として設計する。制限しすぎると必要な場面で動けなくなるため、範囲を見極める
- 4.信託登記・信託目録に権限と制限を反映 不動産を信託したら信託登記を申請し、信託目録に目的と処分制限を記載する。取引の相手方が登記で制限を確認できる状態にしておくと、権限外行為の取消し(27条)を主張しやすくなる
よくある質問 AI による整理
Q1受託者の権限とは何ですか?
信託財産を管理・処分し、信託の目的の達成に必要な行為をする権限です。信託法26条が原則として広く認め、信託行為で制限することもできます。
Q2家族信託の受託者は銀行から借入れできる?
目的の達成に必要なら権限に含まれうるものの、借入れ権限を明記していない契約では、金融機関が融資に応じないことが多いのが実務の現状です。
Q3信託目録とは何ですか?
不動産の信託登記の際に作成される記録で、信託の目的や管理方法などが記載されます(不動産登記法97条)。登記事項証明書で第三者も確認できます。
Q4受託者が権限外の行為をしたらどうなる?
相手方が権限外であることを知っていた、または重大な過失で知らなかったなどの要件を満たせば、受益者が取り消せます(信託法27条)。損失があれば受託者に損失てん補も請求できます。
Q5家族信託で受託者の権限を制限する方法は?
信託契約に「処分には受益者の書面同意を要する」などの制限条項を置きます。不動産なら信託目録にも反映させると、取引の相手方に示しやすくなります。
Q6受託者は信託財産と自分の財産を混ぜてもいい?
いけません。受託者には分別管理義務があり(信託法34条)、信託財産は固有財産と区別して管理する必要があります。預金なら信託口口座を使うのが一般的です。
Q7家族信託で実家を建て替えることはできる?
建替えが信託の目的に沿えば権限に含まれえますが、解体や新築、融資を伴うため、契約書に建替え権限を明記しておかないと実務上進みにくくなります。
Q8信託した不動産を受託者が賃貸に出せる?
賃貸は典型的な管理・活用行為で、信託の目的に沿えば26条の権限に含まれます。ただし信託行為で賃貸を禁止・制限している場合はその範囲に限られます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託の契約書に『売却できる』って書かなくても、受託者は家を売れるんですか?
条文上は、信託の目的の達成に必要な処分であれば、明記がなくても権限に含まれうる(信託法26条本文)。ただし、目的が「自宅での生活の維持」だけだと、売却が目的に沿うかについて争いの余地が残る。実務のポイント:法律上できるかどうかと、取引が実際に通るかどうかは別の話である。買主側の司法書士や融資する銀行は、明記のない権限を嫌って取引を止めることが多い。実務では「売却できる」と明記するのが事実上の標準になっている。
Q2受託者の兄が勝手に信託した土地を売っちゃったら、取り戻せますか?
権限外の行為なら、受益者は取り消せる場合がある(27条)。ただし相手方が、その行為が信託財産のためにされたことを知っていたうえで、権限外であることを知っていた、または重大な過失で知らなかった場合などに限られる。登記された財産なら信託の登記も要件になる。実務のポイント:勝負を分けるのは信託目録の書き方だ。目録に処分制限まで書いてあれば、相手方は登記を見れば分かったはずと主張しやすい。契約時に目録へ何を載せるかで、後の取消しのしやすさが決まる。
Q3受託者になったら、親の入院の手続も代わりにできますか?
できない。受託者の権限は信託財産の管理や処分などに限られ(26条)、本人の身上に関する契約や医療の同意は含まれない。入院費を信託財産から払うことは、目的に沿えば可能だ。実務のポイント:家族信託を勧める側は、身上監護が別枠だという点を強調しないことがある。任意後見契約を同時に結んでおくと、財産は信託、身の回りの手続は後見という二本立てで漏れなく備えられる。
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託契約に書いたことしか受託者はできない」と思われがちだが、条文の構造は逆である。26条本文は、信託の目的の達成に必要な行為について、管理も処分も原則として権限ありとする。ただし書で信託行為により制限を加えた場合に限り、権限が狭まる。書かなければ縛れない。
- 受託者が何でも決められるという誤解とは別に、権限の質を見落としている人も多い。受託者の権限が及ぶのは信託財産だけだ。親の施設入所契約、入院手続、介護サービスの選択といった身の回りのこと(身上監護)は、受託者の権限ではできない。家族信託だけで認知症対策が完結すると考えて任意後見を準備しなかった家族は、病院の窓口で立ち往生する。
- 見る位置で結論が変わる論点もある。受益者から見れば、信託契約に「売却禁止」と書いた時点で守られているように感じる。しかし取引の相手方から見れば、受託者は登記上の所有者であり、契約書の内側のルールは原則として見えない。権限外の行為を取り消せるのは、相手方が権限外であることを知っていたか、重大な過失で知らなかったなど、27条の要件を満たすときに限られる。不動産なら信託の登記が前提になる。この落差を埋めるのは登記と信託目録である。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 信託法26条:受託者の権限の範囲を定める | 信託法27条:権限外行為を受益者が取り消す 信託法44条:違反行為を受益者が差し止める |
| 効果が働く時点 | 行為の前提(権限の有無を決める) | 行為の後(取引の効力を事後に否定) 行為の前(違反行為をやめるよう請求) |
| 相手方の主観 | 問わない(権限の範囲そのものの問題) | 相手方の悪意・重過失などが要件 問わない(受託者に対する請求) |
| 期間制限 | なし | 原因を知ってから3か月、行為の時から1年 明文の期間制限なし(行為前に行使) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は信託の定義で受託者が信託本旨に従って管理・処分すると定め、本旨違反の処分は受益者が取り消せる構造。日本のような権限の包括規定は独立していない
2011年全面改正で、信託目的の達成に必要なすべての行為をする権限と、信託行為による制限を定め、日本26条とほぼ同じ構造をとる
フランスの fiducie は、契約に受託者の管理・処分権限の範囲を記載しなければならない方式で、権限を契約で特定する発想が強い
米国統一信託法典は、信託条項による制限に服しつつ、受託者に広い一般的権限と具体的権限の列挙を与える
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が認知症と診断される前に、長男を受託者とする家族信託契約を結んだ。5年後、介護施設の入居一時金800万円が必要になり、長男は実家を売ろうとする。ところが信託契約には「自宅の管理」しか書いておらず、買主側の司法書士が登記簿の信託目録を見て決済を止めた。
- 受託者になった兄が、信託した賃貸アパートを担保に、自分の事業資金として銀行から借入れをしようとしている。受益者の母と、妹のあなたは止められるのか? 受託者が信託行為や法令に違反する行為をして信託財産に著しい損害が出るおそれがあるとき、受益者は差止めを請求できる(信託法44条)。取引がすでに行われていても、相手方が事情を知っていれば取消しの道が残る(27条)。
- あなたは不動産業者で、信託された土地の売却を任された。売主は受託者本人。登記簿に信託目録があり、「処分には受益者の書面同意を要する」と書かれている。この同意書を確認しないまま決済すれば、取引が受益者に取り消されるおそれがある。損をするのはあなたの顧客である買主だ。
- 受益者が取消しの原因を知ってから3か月。受託者が権限外で信託財産を安値売却したと母が気づいたのは2か月前だ。27条の取消権は3か月で時効消滅する。残りは約1か月しかない。
取るべき行動
被害を受けた側:受益者として受託者の権限外行為が疑われる場合:1. 信託契約書と不動産の登記事項証明書(信託目録)を取り寄せ、行為が目的と権限の範囲内かを照合する2. 受託者に事務処理の状況について報告を求め(36条)、帳簿の閲覧を請求する(38条) 3. 処分の前なら差止請求(44条)を検討する4. 処分の後なら、相手方の悪意や重過失を示す材料を集め、3か月以内に取消権(27条)を行使する。損失が出ていれば、損失てん補責任(40条)も並行して追及する
訴えられた側:受託者として権限外を指摘された場合:1. その行為が信託の目的の達成に必要だった理由を、日付入りの資料(見積書、介護費用の試算、修繕の必要性)で説明できるよう整える2. 信託行為に制限条項がないかを再確認する3. 判断が分かれそうな処分は、事前に受益者全員の書面同意を取る4. 善管注意義務(29条)と忠実義務(30条)に照らし、自分や家族に利益が流れていないかを点検する
時効(請求できる期限):権限外行為の取消権は、受益者(信託管理人がいる場合は信託管理人)が取消しの原因を知った時から3か月で時効消滅し、行為の時から1年を経過したときも消滅する(信託法27条4項)。受託者の損失てん補責任等に係る債権の消滅時効は、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効の例によるとされ、受益者に関する特則もある(同43条、最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:26条は受託者に信託目的の達成に必要な行為についての包括的権限を認め、その必要性は信託行為の定めと信託の目的に照らして判断される。権限の制限は信託行為による明示を要し、権限外行為の効力は27条の要件の下で受益者による取消しにより調整される。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法制定 大正11年制定の旧信託法を全面的に改める新信託法(平成18年法律第108号)で、受託者の権限の範囲を明文化した。施行は平成19年(2007年)9月30日
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:大正11年の旧信託法を全面的に改める新信託法(平成18年法律第108号)で、受託者の権限の範囲を本条として明文化。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第27条権限外行為の受益者による取消し
- 信託法 第29条権限行使に伴う善管注意義務
- 信託法 第30条権限行使を受益者のために縛る忠実義務
- 信託法 第40条任務懈怠による損失てん補責任
- 信託法 第44条違反行為に対する受益者の差止請求
- 信託業法 第28条信託会社の権限行使に課す忠実義務等
- 不動産登記法 第97条信託目録による目的・管理方法の公示
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