信託法 第27条(受託者の権限違反行為の取消し)
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- 受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。
- 一当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知っていたこと。
- 二当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
- 2.前項の規定にかかわらず、受託者が信託財産に属する財産(第十四条の信託の登記又は登録をすることができるものに限る。)について権利を設定し又は移転した行為がその権限に属しない場合には、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。
- 一当該行為の当時、当該信託財産に属する財産について第十四条の信託の登記又は登録がされていたこと。
- 二当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
- 3.二人以上の受益者のうちの一人が前二項の規定による取消権を行使したときは、その取消しは、他の受益者のためにも、その効力を生ずる。
- 4.第一項又は第二項の規定による取消権は、受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)が取消しの原因があることを知った時から三箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から一年を経過したときも、同様とする。
この条文の基本情報
受託者の権限違反行為の取消しとは何ですか?
定義受託者の権限違反行為の取消しとは、信託法第27条に定められた規定で、「受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第27条(受託者の権限違反行為の取消し)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第27条の条文原文は「受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。」で始まります。
- 信託法第27条は第一節 受託者の権限に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第27条の前の条は信託法第26条です。
- 信託法第27条の次の条は信託法第28条です。
- 信託法第27条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第27条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第27条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/27
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法27条は、受託者の権限外の行為を、相手方の悪意または重過失の要件を満たすときに限り受益者が取り消せると定める。期限は知った時から3か月、行為から1年。
Q · 家族信託の受託者が契約で禁止された売却をしたら、取り消せるの?
要件を満たせば取消し可、ただし期限は最長1年
信託法27条により、受託者の権限外の行為は当然に無効ではなく、受益者が取り消せるかどうかの問題になります。不動産など信託の登記ができる財産は、行為当時に信託の登記があり、相手方が権限外と知っていたか重過失で知らなかったことが条件です。取消権は原因を知った時から3か月、行為の時から1年で消滅します。
解説
家族信託を組んだから、親の財産はもう安全だ。そう信じている家族は多いが、受託者(財産を預かって管理する人)が契約で許されていない売却をしてしまえば、その取引は原則として有効に成立する。受益者(信託から利益を受ける人)がそれを取り消せるのは、信託法27条の要件を満たす場合に限られる。不動産のように信託の登記ができる財産なら、売却の時点で信託の登記が済んでおり、しかも買主が権限外だと知っていたか、知らなかったことに重大な過失(少し注意すれば分かったのに怠った、という程度のひどい不注意)があったことが条件になる。登記がなければ、買主が事情をすべて知っていても取り消せない。しかも取消しの期限は、原因を知ってから3か月、取引から1年。民法の一般的な取消権(5年・20年)に比べると、驚くほど短い。家族信託の守りは、契約書を作った日ではなく、登記を入れた日に固まる。
法的な位置づけ
信託法27条は、受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合の受益者による取消権を定める規定である。登記・登録できない財産は相手方の信託財産性の認識と権限外についての悪意・重過失を、登記・登録できる財産は行為当時の信託の登記・登録と相手方の悪意・重過失を要件とし、短期の行使期間を設ける。
手順
- 1.気付いた日を記録し、取引を特定する 受託者の権限外の取引に気付いた日を日付入りで記録する。3か月の起算点になる。取引日、相手方、対象財産を特定し、行為から1年の期限も同時に計算する
- 2.登記事項証明書と信託目録を取得する 不動産など登記できる財産なら、法務局で登記事項証明書と信託目録を取得し、取引当時に信託の登記がされていたかを確認する。登記がなければ27条2項は使えない
- 3.相手方の悪意・重過失の証拠を集める 相手方が権限外の行為と知っていた、または重大な過失で知らなかったことを示す資料を集める。やり取りの記録、相場から乖離した価格、信託目録の未確認などが材料になる
- 4.期限内に取消しの意思表示を送る 相手方に対し、内容証明郵便で取消しの意思表示を行う。並行して受託者への損失てん補請求(40条)や解任(58条)、売却前なら差止請求(44条)を弁護士と検討する
よくある質問 AI による整理
Q1信託法27条の取消権とは?
受託者が権限外の行為をしたとき、相手方の悪意・重過失などの要件を満たせば、受益者がその行為を取り消せる権利です。
Q2家族信託 受託者 勝手に売却 取り戻せる?
不動産なら、売却時に信託の登記があり、買主が権限外と知っていたか重過失で知らなかった場合に限り、取消しで取り戻せる余地があります。
Q3信託法27条 取消し いつまで?
取消しの原因を知った時から3か月、または行為の時から1年のいずれか早い時点で消滅します(27条4項)。
Q4信託の登記がない不動産の売却は取り消せる?
取り消せません。登記できる財産は行為当時の信託の登記が必須要件で、買主が悪意でも27条2項は使えません。
Q5受益者が複数いるとき全員の同意が必要?
不要です。受益者の一人が取消権を行使すれば、その取消しは他の受益者のためにも効力を生じます(27条3項)。
Q6受託者の権限外の行為 取消しの方法は?
相手方に対する取消しの意思表示で行います。期限管理と証拠化のため、内容証明郵便で送るのが実務上一般的です。
Q7預金や動産など登記できない財産も取り消せる?
取り消せます。相手方が信託財産のための行為だと知り、かつ権限外であることに悪意または重過失があれば27条1項で取消し可能です。
Q8取り消された場合 買主の代金はどうなる?
取消しで行為は遡って無効となり、買主は代金の返還を求めることになります。誰に請求するかは事案により整理が必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1信託契約で売却禁止って書いてあるのに、兄が売った家って無効じゃないんですか?
無効にはならず、受益者が取り消せるかどうかの問題になります(信託法27条)。不動産なら、売却時に信託の登記があり、買主が権限外だと知っていたか、重過失で知らなかったことが条件です。実務のポイント:争いになって最初に見られるのは契約書ではなく登記事項証明書です。登記がないと分かった時点で、取消しではなく受託者個人への責任追及に方針を切り替えるのが通例です
Q2母が認知症で取消しの判断ができない場合、誰が動けばいいですか?
信託管理人がいればその人が受益者のために権利を行使でき、3か月の期限もその人が知った時から数えます(27条4項)。受益者代理人がいる場合も、受益者の権利を代わりに行使できます。実務のポイント:信託管理人も受益者代理人もいない設計だと、成年後見の申立てから始めることになり、それだけで数か月かかります。設計段階で信託監督人などの見張り役を置いておかないと、1年の期限に間に合わないことがあります
Q3信託契約に「受益者は取消しをしない」って一文を入れたら、受託者は安心できますか?
できません。27条の取消権は、信託行為で制限できない受益者の権利として信託法92条に列挙されています。実務のポイント:受託者の動きやすさを優先したいなら、取消権を封じようとするのではなく、権限の範囲そのものを広く定め、売却などの条件を明確にしておくのが正しい設計です
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託契約で売却を禁止しているのだから、受託者が売っても無効だ」と考える人は多い。しかし権限外の行為でも、取引は原則として有効に成立する。27条は「無効」ではなく「受益者が取り消せる」と定めており、しかも取り消せるのは要件を満たした場合だけである。何もしなければ、その売却は有効なまま確定する
- 取消しの期限があることは知っていても、その短さを甘く見ている人が多い。民法の一般の取消権は追認できる時から5年、行為の時から20年だが、信託法27条4項は知った時から3か月、行為の時から1年である。家族会議を二度開いて弁護士を探しているうちに、期限が切れてしまう
- 「買主が事情を知っていたかどうか」が勝負だと思われがちだが、不動産の場合はその問いを立てる前に決着がついていることがある。信託の登記がなければ、買主の悪意を立証できても2項では取り消せない。争点は買主の内心ではなく、登記簿にある一行の有無である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる受託者の行為 | 信託法27条:権限に属しない行為 | 信託法31条:利益相反行為 信託法40条:任務懈怠による損失 |
| 受益者の救済手段 | 相手方との行為の取消し | 行為の無効・取消し(取消しは27条3項・4項を準用) 受託者への損失てん補・原状回復請求 |
| 相手方(第三者)への影響 | 悪意・重過失の相手方は取消しにより財産を失いうる | 第三者が悪意・重過失なら取消しの対象 第三者には及ばず、受託者個人の責任 |
| 実効性の鍵 | 信託の登記の有無と短期の期限 | 利益相反の該当性と承認の有無 受託者の資力 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は受益者が法院に撤銷を申し立てる構造で、行使期間は知った時から1年、処分から10年と日本より長い。登記済み財産は登記の存在で取消し可能となる点が日本と異なる
韓国は2011年の全部改正で日本の現行法と近い構造を採用し、相手方の悪意・重過失を取消しの要件とする
中国は委託者(受益者も同様の権利を有する)が人民法院に撤銷を申し立てる構造で、知った時から1年で消滅する
米国は善意・有償で受託者と取引した者を保護する方向で規定し、受益者の救済は主に受託者の信認義務違反の責任追及による
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 母の認知症対策で家族信託を組み、長男が受託者になった。信託契約には「自宅は売却しない」と書いてある。ところが長男は事業の資金繰りに困り、自宅を不動産業者へ売ってしまった。長女がそれに気付いたのは売却から10か月後。信託の登記はあり、業者も信託目録を見ていた。それでも、取引から1年という壁まで残りは2か月しかない。取消しの意思表示を今週中に内容証明で送らなければ、権利そのものが消える
- 信託の登記を「費用がかかるから後回し」にしていた土地を、受託者が勝手に売却したらどうなるか。買主が信託の存在も権限外であることも承知の上だったとしても、27条2項の取消しは使えない。残る道は受託者への損失てん補請求(40条)だけで、その受託者に資力がなければ回収できないまま終わる
- あなたは不動産業者として、相場の7割で出てきた物件を仕入れようとしている。登記簿の権利部に「信託」の文字があるのに、信託目録を取り寄せないまま決済を急いだ。1年以内に受益者から取消しの通知が届けば、物件を返し、代金の返還は受託者個人に求めることになりかねない
- 受託者の兄が、信託口口座のお金で高級車を買った。ディーラーは信託財産のお金だと知っており、契約書の権限外だということも聞かされていた。この売買は27条1項で取り消せる
- 受益者が三兄弟の信託で、長男の受託者が権限外の取引をした。次男だけが取消しの手続を進め、三男は何もしなかった。それでも次男の取消しは三男のためにも効力を生じる(27条3項)。全員の足並みがそろうのを待っている間に3か月が過ぎるほうが、はるかに危ない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 取引の日付、相手方、対象の財産を特定し、気付いた日を記録する(3か月の起算点になる)2. 不動産なら登記事項証明書と信託目録を取得し、取引時点で信託の登記があったかを確認する3. 相手方が権限外だと知っていた、または重過失があったことを示す資料(やり取りの記録、価格の不自然さなど)を集める4. 期限内に内容証明で取消しの意思表示を行い、並行して受託者への損失てん補請求(40条)と解任(58条)を検討する
訴えられた側:1. 取引相手として取消しを主張されたら、まず期限を確認する(受益者または信託管理人が知ってから3か月、行為から1年)2. 不動産なら、取引時点で信託の登記がなかったことは2項の要件を欠く決定的な反論になる3. 権限の範囲について受託者から受けた説明や、確認した書類を示し、悪意でも重過失でもなかったことを主張する4. 取り消された場合の代金返還請求の相手(受託者・信託財産)を早めに整理する
時効(請求できる期限):取消権は、受益者(信託管理人がいる場合は信託管理人)が取消しの原因を知った時から3か月で時効により消滅し、行為の時から1年を経過したときも同様に消滅する(信託法27条4項)。受託者への損失てん補請求には、信託法43条に期間の特則がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:受託者の権限外の行為も原則として有効であり、27条は受益者保護と取引の安全を調整する規定と理解される。登記できる財産で信託の登記を必須とするのは、相手方が登記により信託を知り得る点を根拠とする
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法31条(受託者の信託違反処分の取消し)に代わる規定として、現行信託法に置かれた。登記できる財産とできない財産で要件を分けた構造は、この改正で整えられたとされる。施行後の文言改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により、旧信託法31条の信託違反処分の取消しに代わる規定として新設。登記・登録できる財産とできない財産で要件を区別する構造が整えられた
- 信託法 第26条受託者の権限の範囲を定める前提規定
- 信託法 第14条信託の登記・登録による対抗要件
- 信託法 第31条利益相反行為の効力、本条を準用
- 信託法 第40条受託者の損失てん補責任による救済
- 信託法 第92条信託行為で取消権を制限できない
- 民法 第126条一般の取消権の期間に対する短期特則
- 不動産登記法 第97条信託の登記事項と信託目録
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