信託法 第55条(受託者による担保権の実行)
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担保権が信託財産である信託において、信託行為において受益者が当該担保権によって担保される債権に係る債権者とされている場合には、担保権者である受託者は、信託事務として、当該担保権の実行の申立てをし、売却代金の配当又は弁済金の交付を受けることができる。
この条文の基本情報
受託者による担保権の実行とは何ですか?
定義受託者による担保権の実行とは、信託法第55条に定められた規定で、「担保権が信託財産である信託において、信託行為において受益者が当該担保権によって担保される債権に係る債権者とされている場合には、担保権者である受託者は、信託事務と…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第55条(受託者による担保権の実行)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第55条の条文原文は「担保権が信託財産である信託において、信託行為において受益者が当該担保権によって担保される債権に係る債権者とされている場合には、担保権者である受託者は、信託事務と…」で始まります。
- 信託法第55条は第四節 受託者の費用等及び信託報酬等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第55条の前の条は信託法第54条です。
- 信託法第55条の次の条は信託法第56条です。
- 信託法第55条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第55条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第55条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/55
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法55条は、セキュリティ・トラストの受託者が、被担保債権の債権者でなくても、信託事務として担保権実行を申し立て、配当や弁済金を受け取れると定める。
Q · セキュリティ・トラストで、債権を持っていない受託者が競売を申し立てられるのはなぜ?
信託法55条が受託者に申立権と配当受領権を与えているから
信託法55条は、担保権が信託財産となっている信託において、受益者が被担保債権の債権者とされている場合、担保権者である受託者が信託事務として担保権実行の申立てをし、配当や弁済金の交付を受けられると定めています。民法上は債権者と担保権者が一致するのが原則ですが、本条はその分離を認める特則です。受け取った金銭は信託財産となり、信託行為の定めに従って受益者に分配されます。
解説
お金を貸した者と抵当権を持つ者は、同一人物でなければならない。民法の教科書が「付従性」と呼んで当然視してきたこの常識を、信託法55条は正面から外している。たとえば10行の銀行が協調融資(シンジケートローン)をする場合でも、担保権(抵当権など、返済が滞ったとき特定の財産から優先して回収できる権利)は受託者1社の名義にまとめてよい。債権者である銀行は受益者になる。本条によれば、債権を持っていない受託者が「信託事務」として競売を申し立て、配当金を受け取ることができる。受け取ったお金は、受託者が受益者に分配する。ここで押さえておきたいのは、受益者である銀行が自分では競売を申し立てられないという点だ。貸し手として融資の輪に入るなら、契約書の金利より先に、受託者がどんな条件で動き、誰の指図に従い、どこまで責任を負うのかを確認する必要がある。借り手の側でも同じで、交渉相手は10行ではなく、指図を受けて動く受託者1社になる。どちらの立場でも、最初に「この担保は誰の名義か」を確かめる必要がある
法的な位置づけ
信託法55条は、担保権を信託財産とする信託(セキュリティ・トラスト)において、被担保債権を有しない受託者に担保権実行の申立権と配当・弁済金の受領権を認める規定である。受益者が被担保債権の債権者とされていることを要件とし、担保権者と債権者の分離を許容する点で、担保物権の付従性に対する特則として機能する。
よくある質問 AI による整理
Q1セキュリティ・トラストとは何ですか?
担保権を信託財産として受託者に設定し、債権者を受益者とする信託です。信託法3条で設定でき、55条で受託者が担保権を実行できます。
Q2信託法55条が適用される要件は?
担保権が信託財産であること、信託行為で受益者が被担保債権の債権者とされていることの2点です。この場合、受託者が担保権実行を申し立てられます。
Q3受益者の銀行は自分で競売を申し立てられる?
原則としてできません。担保権者は受託者であり、本条が申立ての権限を与えているのも受託者です。受益者は受託者への指図や照会で関与します。
Q4セキュリティ・トラストの登記はどうする?
受託者を担保権者とする抵当権などの設定登記と、信託の登記を併せて行うのが一般的です。具体的な申請方法は司法書士に確認してください。
Q5シンジケートローンの債権を売ったら担保はどうなる?
担保権は受託者名義のまま残るため、移転登記は不要な設計にできます。債権の譲受人が受益権を取得する形にしておけば、担保の裏付けが引き継がれます。
Q6受託者が担保権を実行しないのは違法?
合理的な理由なく実行を遅らせ、信託財産に損害が生じた場合は、善管注意義務(信託法29条)違反として責任を問われる可能性があります。
Q7担保権実行の費用は誰が負担する?
受託者が信託事務として支出した費用は、原則として信託財産から償還を受けられます(信託法48条)。結果的に受益者への分配額から差し引かれます。
Q8信託法55条はいつから施行されている?
平成18年(2006年)の信託法全部改正で新設され、新信託法の施行日である2007年9月30日から適用されています。旧信託法に同様の規定はありませんでした。
この条文についての質問 AI による整理
Q1担保の名義が信託銀行なのに、うちの銀行がお金を回収できるのはなぜですか?
担保権そのものは受託者の信託財産であり、貴行は受益者として信託の利益を受け取る立場だからだ。信託法55条は、債権者ではない受託者が信託事務として競売を申し立て、配当を受領できると定めている。実務のポイント:分配順位は融資額の割合ではなく信託契約の定めで決まる。劣後的な扱いが紛れ込んでいないか、サインの前に確認しておくべきだ
Q2借り手が破産したら、受託者が別除権を行使してくれるんですか?
担保権者は受託者なので、別除権(破産法65条)の行使も受託者が担うと考えるのが一般的だ。ただし、不足額の扱いや破産債権の届出を誰の名義でどう行うかについては、実務上、解釈が分かれている。実務のポイント:信託契約の段階で、倒産時の届出主体と受託者・受益者の役割分担を明記しておくと、破産管財人との交渉で揉めずに済む
間違えやすい点 AI による整理
- 「抵当権は債権を持つ人にしか付けられない」と思い込んでいる人は多い。信託法の下では、債権者(受益者)と担保権者(受託者)を切り離すことが明文で認められている。民法の付従性の発想だけで登記簿を読むと、誰が回収の主導権を握っているのかを取り違える
- 受益者として配当を受けられることは知っていても、受託者が動かない場合の深刻さを知らない人が多い。本条が申立ての権限を与えているのは受託者である。受益者は担保権者ではないため、自分で競売を申し立てる道は原則として閉じられている。信託契約に受託者への指図権や受託者の解任・交代手続が書かれていなければ、価値が下がり続ける担保をただ見ていることになる
- 「受託者が競売で得た配当金は自分の銀行に直接入る」と考えるのは、問いの立て方そのものがずれている。配当金はまず受託者が信託財産として受け取る。その後、信託行為(信託契約など)の定める順位と割合で受益者に分配される。融資額に比例して分けられるとは限らず、分配のルールは契約書の中にしかない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 信託法55条:担保権信託で受託者が担保権を実行する場面 | 信託法3条:担保権の設定によって信託を成立させる場面 信託法29条:受託者が信託事務を処理する際の注意義務 |
| 受託者に与えるもの | 担保権実行の申立権と配当・弁済金の受領権 | 担保権そのもの(信託財産として取得) 権限ではなく、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務 |
| 受益者(貸し手)から見たポイント | 自分では申し立てられず、受託者の行動に回収を委ねる | 信託行為で自分が受益者・債権者と定められているかが出発点 受託者が動かないときに責任を追及する根拠になる |
| 利益相反との関係 | 実行の申立てと配当の受領は信託事務として行う | 設定の時点では直接規律しない 信託法31条:受託者が自ら貸し手でもある場合の利益相反行為を制限 |
他国ではどう定めているか 4 か国
担保権信託の受託者に実行権を与える明文規定は見当たらず、協調融資では契約上の設計で担保管理を行うのが一般的とされる
2011年の全部改正で担保権の設定による信託が明文化され、日本と同様の担保権信託が利用可能になった
2017年改正で agent des sûretés 制度を整備し、債権者のために担保権を保有・実行する担当者を認めた
collateral agent などの代表者が secured party となれることを明文で認め、協調融資で広く使われている
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 地方のホテル開発で7行から協調融資を受けた。登記簿を見ると、抵当権者の欄にあるのは見覚えのない信託銀行の名前だけだった。返済が3か月滞ったら、競売を申し立ててくるのは貸した7行ではなくその信託銀行である
- 融資団の1行が、自分の貸付債権を投資ファンドに売却したら、抵当権はどうなる? 通常なら抵当権の移転登記が必要になる。セキュリティ・トラストでは担保権が受託者名義のままなので、債権の譲受人が受益権を引き継げば足りる設計にできる。債権の流動化が速いのはこの仕組みのおかげだ
- あなたは融資団の1行の担当者だ。借り手が倒れたのに、受託者は受益者集会の決議を待って競売の申立てを先送りしている。担保物件の価値は日々下がっていく。自分で申し立てようとしても、申立権は受託者にある
- 別の債権者が同じ物件で先に競売を申し立てた。執行裁判所からの催告に応じ、配当要求の終期までに債権の届出をしなければならない。動くべきなのは受託者だ。受託者が期限を落とせば、受益者全員の回収計画が崩れる
- あなたが受託者側の信託銀行で、受益者の一部から「早く売れ」、別の一部から「市況回復まで待て」と言われた。どちらを選んでも、善管注意義務違反を問われるリスクがある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益者(貸し手)として、信託契約にある受託者への指図権、受益者集会の決議要件、分配順位を確認する2. 借り手の延滞が始まったら、受託者に担保権実行の方針と時期を書面で照会し、記録を残す3. 受託者が合理的な理由なく動かない場合は、善管注意義務(信託法29条)違反を指摘し、契約上の受託者交代手続を検討する4. 他の債権者が競売を申し立てた場合は、受託者による債権届出と配当要求が期限内に行われたかを確認する
訴えられた側:1. 借り手(債務者)は、競売を申し立てる受託者に、担保権の存在を証する文書(民事執行法181条)が整っているかを確認する2. 被担保債権の額や弁済充当に争いがあれば、執行異議や請求異議の可能性を弁護士と検討する3. 受託者は個別の貸し手ではなく受益者全体の意思で動くため、リスケジュールの交渉は受託者と主要な受益者の両方に並行して持ちかける4. 任意売却のほうが競売より高く売れる見込みがあるなら、具体的な数字を示して受託者に提案する
時効(請求できる期限):本条に特有の時効はない。被担保債権には一般の消滅時効(民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年)が適用される。抵当権は、債務者と設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効で消滅しない(民法396条)。他の債権者が競売を申し立てた場合、債権届出と配当要求は裁判所書記官が定める配当要求の終期までに行う必要がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
立法趣旨(一般的な理解):担保権者と債権者の分離を明文で認め、協調融資における担保の一元管理と、債権譲渡時の担保権移転手続の省略を可能にする。受益者保護は受託者の善管注意義務・忠実義務・利益相反規制で補うと理解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 新信託法の制定で新設された。担保権の設定による信託(セキュリティ・トラスト)を明文で認め、受託者が担保権を実行し、配当を受領する権限を定めた。旧信託法には対応する規定がなかった
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)で新設。担保権の設定による信託を前提に、受託者が担保権実行の申立てと配当受領をできることを明文化した。旧信託法には対応規定がなかった
- 信託法 第3条担保権の設定による信託の成立
- 信託法 第26条受託者の権限の範囲
- 信託法 第29条担保権実行における善管注意義務
- 信託法 第31条利益相反行為の制限
- 民事執行法 第181条担保権実行の開始要件
- 民法 第369条抵当権の基本的内容
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