信託法 第60条(前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等)
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- 第五十六条第一項第一号又は第二号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又は成年後見人若しくは保佐人(以下この節において「前受託者の相続人等」と総称する。)がその事実を知っているときは、前受託者の相続人等は、知れている受益者に対し、これを通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2.第五十六条第一項第一号又は第二号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者の相続人等は、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
- 3.前項の場合において、前受託者の相続人等が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、これらの者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
- 4.第五十六条第一項第三号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、破産管財人は、新受託者等が信託事務を処理することができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
- 5.前項の場合において、破産管財人が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、破産管財人に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
- 6.前受託者の相続人等又は破産管財人は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、第一項、第二項又は第四項の規定による行為をするために支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
- 7.第四十九条第六項及び第七項の規定は、前項の規定により前受託者の相続人等又は破産管財人が有する権利について準用する。
この条文の基本情報
前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等とは何ですか?
定義前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等とは、信託法第60条に定められた規定で、「第五十六条第一項第一号又は第二号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第60条(前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第60条の条文原文は「第五十六条第一項第一号又は第二号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又…」で始まります。
- 信託法第60条は第二款 前受託者の義務等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第60条の前の条は信託法第59条です。
- 信託法第60条の次の条は信託法第61条です。
- 信託法第60条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第60条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第60条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/60
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法60条は、受託者の死亡や後見・保佐開始で任務が終わったとき、相続人等に受益者への通知と、新受託者が動けるまでの信託財産の保管・引継ぎを義務付ける。
Q · 家族信託の受託者が亡くなったら、信託の財産は遺族が相続するの?
相続しない。新受託者に渡すまで保管する役目を負う
信託財産は受託者の固有財産から切り離されているため、受託者が死亡しても相続財産には入りません。そのかわり信託法60条により、相続人(または成年後見人・保佐人)は、事実を知っていれば知れている受益者に通知し、新受託者等が信託事務を処理できるようになるまで財産を保管して、引継ぎに必要な行為をしなければなりません。勝手に処分しようとすれば、受益者はやめるよう請求できます。立て替えた費用は、利息を付けて新受託者等に請求できます。
解説
家族信託で父の不動産を預かっていた兄が急死した。兄の妻と子は、遺品整理のついでにその土地も「兄の遺産」として分けようとする。実際には、ここで最初のつまずきが起きる。信託財産は受託者個人の財産ではないので、相続財産には入らない。それでも相続人は無関係ではいられない。信託法60条は、受託者が死亡したり、後見開始や保佐開始の審判を受けたりして任務が終わったとき、その相続人、法定代理人、成年後見人、保佐人に三つの役目を負わせている。一つ目は、事実を知っていれば、知れている受益者に知らせること。二つ目は、新しい受託者が動けるようになるまで財産を保管し、引継ぎに必要なことをすること。三つ目は、勝手に処分しないことである。処分しようとすれば、受益者はやめるよう請求できる。かかった費用は、利息を付けて新受託者側に請求できる。相続人は財産を受け取る側ではない。新しい受託者へ渡すまでのつなぎ役である。この順序を知っているかどうかで、遺産分割の席で揉めるか、すんなり終わるかが決まる
法的な位置づけ
信託法60条は、受託者の任務が死亡、後見開始または保佐開始の審判、破産手続開始の決定によって終了した場合に、前受託者の相続人等または破産管財人が、新受託者等が信託事務を処理できるに至るまで信託財産を保管し、引継ぎに必要な行為をする義務を定める規定である。あわせて受益者の処分差止請求権と、保管者の費用償還請求権を定める。
手順
- 1.信託財産を特定する 遺品整理や遺産調査の前に、不動産登記簿の信託目録、信託口口座、信託契約書を確認し、信託財産と故人(本人)の固有財産を区別する。遺産分割協議の対象から信託財産を外す。
- 2.知れている受益者に通知する 受託者の死亡または後見開始・保佐開始の審判を知ったら、信託契約書に記載された受益者に書面で通知する。信託行為に別段の定めがあれば、それに従う。写しを保管する。
- 3.保管と引継ぎの準備をする 新受託者等が事務処理を始められるまで、財産を処分せずに保管する。賃料の入金管理、保険の継続、鍵・帳簿・契約書類の整理など、引継ぎに必要な行為を行う。
- 4.立替費用を記録し償還を請求する 保管・引継ぎのために支出した費用は、領収書と支出日を記録する。新受託者等が就任したら、費用と支出日以後の利息の償還を請求する(60条6項)。
よくある質問 AI による整理
Q1信託法60条とは何ですか?
受託者が死亡したり、後見・保佐開始や破産となって任務が終わった後、新受託者が就任するまでの間、相続人等や破産管財人に信託財産の保管と引継ぎを義務付ける規定です。
Q2受託者が死亡したら家族信託は終わる?
直ちには終わりません。ただし新受託者が就任しない状態が1年続くと、信託は終了します(信託法163条3号)。後継受託者の定めを確認し、早めに選任することが重要です。
Q3受託者の成年後見人は信託財産を管理できる?
後見開始の審判で受託者の任務は終了します。成年後見人は新受託者に渡すまで保管と引継ぎをする立場にとどまり、被後見人の財産として信託財産を運用・処分することはできません。
Q4前受託者の相続人等とは誰のこと?
前受託者の相続人(法定代理人がいればその法定代理人)、成年後見人、保佐人の総称です(信託法60条1項)。受託者が破産した場合は、破産管財人が保管義務を負います。
Q5受益者への通知はいつまでにすべき?
条文に期限の定めはありません。ただし通知義務は事実を知った時点で生じるため、知った後は速やかに書面で通知し、写しを保管しておくのが実務上安全です。
Q6相続人が信託の不動産を売ろうとしたら止められる?
止められます。受益者は相続人等に対し、処分をやめるよう請求できます(60条3項)。ただし新受託者等が事務処理できるようになった後は、この請求はできません。
Q7受託者が破産したら信託財産は差し押さえられる?
信託財産は破産財団に属しません(信託法25条)。破産管財人は新受託者が就任するまで保管義務を負い、処分しようとすれば受益者が中止を請求できます(60条4項・5項)。
Q8新しい受託者はどうやって決める?
信託行為に定めがなければ、委託者と受益者の合意で選任します(信託法62条1項)。合意できない場合などは、利害関係人の申立てにより裁判所が選任します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1信託の受託者だった父が死にました。信託の土地って、私たち兄弟で相続するんですか?
相続しない。信託財産は受託者の固有財産から独立しており(信託法74条、25条)、相続人の役目は保管と新受託者への引継ぎである(60条2項)。実務のポイント:信託登記が付いた不動産は、登記簿の「信託目録」に受益者と信託条項が記録されている。司法書士に遺産の調査を依頼するとき、信託目録まで確認するよう頼むかどうかで、遺産分割協議の手戻りがまったく変わる
Q2保管って言われても、賃貸アパートの管理費とか修繕費、誰が払うの?
相続人等が立て替えた場合、その費用と支出日以後の利息を、新受託者または信託財産法人管理人に請求できる(60条6項)。この請求権には、49条6項・7項の規定が準用される。実務のポイント:立替えの記録が曖昧だと、後で新受託者と揉める原因になる。信託財産の支出は、自分の口座から払っても必ず専用のメモと領収書で切り分けておく。それが後日の回収額を決める
Q3相続放棄したら、この保管義務からも逃れられますか?
相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされるため(民法939条)、本条の「前受託者の相続人」から外れると考えるのが自然である。ただし、放棄前に行った管理行為の扱いや、民法940条の保存義務(現に占有している場合)との関係は、実務上、解釈が分かれうる。実務のポイント:放棄を検討していても、受益者への事実の連絡だけは早めに済ませる。それだけで、後になって「知っていて黙っていた」と争われるリスクを減らせる
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者だった父が死んだのだから、信託の不動産も遺産分割の対象になる」と考えられがちだが、信託財産は受託者の固有財産から切り離されている(信託法25条、74条)。相続人の役目は財産を分けることではなく、保管して新受託者に引き継ぐことである。遺産分割協議書に信託財産を書き込んでも、法的な意味はない
- 相続人にも保管義務があることは知っていても、その範囲を知らない人が多い。賃貸物件の家賃回収、修繕業者とのやり取り、保険の継続など、「引継ぎに必要な行為」が実務上どこまで含まれるかは、事案ごとに判断が分かれる。何もしないまま放置して財産の価値が下がれば、責任を問われるおそれがある
- 「受託者が認知症になったら信託は止まる」と心配する人がいるが、その心配の立て方がずれている。任務終了事由になるのは後見開始・保佐開始の審判であり(56条1項2号)、補助開始や任意後見契約の発効は含まれない。問うべきは「認知症になったか」ではなく、「どの審判が出たか」である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる場面 | 信託法60条:受託者の死亡、後見・保佐開始の審判(56条1項1・2号)、破産(同3号) | 信託法59条:辞任・解任・法人の解散など、前受託者本人が対応できる任務終了 信託法74条:受託者の死亡(56条1項1号)による任務終了 |
| 義務を負う者 | 前受託者の相続人・法定代理人・成年後見人・保佐人、破産時は破産管財人 | 前受託者本人 信託財産法人管理人(利害関係人の申立てにより裁判所が選任) |
| 制度の仕組み | 新受託者等が動けるまでの一時的な保管・引継ぎと、受益者の処分差止請求 | 前受託者本人による通知、保管・引継ぎ 信託財産そのものを法人とし、管理人に管理させる |
他国ではどう定めているか 4 か国
受託者の死亡・破産・後見宣告等で任務が終了した場合、相続人や後見人、破産管財人等が新受託者の接管まで信託財産を保管し、移交に必要な措置をとる点で日本と同じ構造をとる
受託者の任務終了時に相続人等が受益者への通知と信託財産の保管・引継ぎを担う枠組みで、日本法と近い
受託者の職責が終了した場合、相続人・遺産管理人・後見人・清算人が信託財産を適切に保管し、新受託者の接管に協力するとされる
前受託者による後任受託者への財産引渡しを定める。採択の有無や内容は州ごとに異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 義父が受託者を務める家族信託で、義父が亡くなった。義母は「アパートの家賃収入はうちの生活費」と考え、信託口口座から引き出し始めている。受益者である義父の妹が気付いたとき、使える手段は60条3項の処分差止め請求である。ただし、新しい受託者が就任してしまえば、この請求権は使えなくなる
- 受託者である長男が認知症になり、成年後見人として司法書士が選任された。もし後見人が、信託の存在を知らずにその不動産を長男の財産として売却手続に乗せたら、どうなる? 後見人も前受託者の相続人等に含まれ、保管義務と引継ぎ義務を負う。財産目録を作るとき、信託登記の有無を確認しなければ職務上の大きな事故になる
- あなたは亡くなった父の相続人で、遺品から信託契約書が出てきた。受益者は叔母と書いてある。知った以上、叔母への通知義務が生じる
- 受託者が死亡してから、すでに10か月が過ぎた。新しい受託者が決まらない状態が1年続くと、信託そのものが終了する(信託法163条3号)。親族の誰も動かないまま、残りは約2か月。信託で設計した財産承継の計画が、その時点で崩れる
- 受託者だった個人事業主の叔父が破産手続開始決定を受けた。破産管財人が、叔父名義の土地を破産財団の財産として換価しようとしている。だが、その土地には信託登記がある。受益者は破産管財人に対し、処分の中止を請求できる(60条5項)
取るべき行動
被害を受けた側:受益者の立場なら:1. 信託契約書で後継受託者の定めを確認し、定めがあればその人に就任の意思を確かめる2. 定めがなければ、委託者と受益者の合意で新受託者を選ぶ(信託法62条1項)。まとまらなければ裁判所に選任を申し立てる3. 相続人等が財産を売却・処分しようとしていれば、内容証明郵便で処分の中止を請求する(60条3項) 4. 新受託者が決まらない状態が1年続くと信託が終了するため(163条3号)、カレンダーに期限を書いておく
訴えられた側:前受託者の相続人・後見人の立場なら:1. 信託財産と被相続人・本人の固有財産を区別し、信託登記と信託口口座を特定する2. 知れている受益者に、受託者の死亡または審判の事実を書面で通知し、写しを保管する3. 新受託者が事務処理を始められるまで、財産を処分せず保管し、帳簿・鍵・契約書類の引渡しを準備する4. 管理のために支出した費用は領収書を残し、利息とあわせて新受託者に償還を請求する(60条6項)
時効(請求できる期限):本条に特定の期限はない。費用償還請求権には一般の消滅時効(民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される。関連して、新受託者が就任しない状態が1年続くと信託は終了する(信託法163条3号)。相続放棄・限定承認の熟慮期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月である(民法915条)。(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 現行信託法(平成18年法律第108号)の制定により、旧信託法の相続人等による保管義務の考え方を整理し、本条として規定した(旧法の対応条番号と、その後の文言改正の有無は要確認)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法(平成18年法律第108号)の制定により、旧信託法を全面的に見直し、前受託者の相続人等および破産管財人の通知・保管・引継ぎ義務、受益者の処分差止請求権、費用償還請求権を本条に整理した
- 信託法 第56条受託者の任務終了事由を列挙
- 信託法 第59条前受託者本人の通知・保管義務
- 信託法 第62条新受託者の選任手続
- 信託法 第74条受託者死亡時の信託財産法人化
- 信託法 第163条受託者欠缺1年継続による信託終了
- 民法 第918条相続財産管理義務の一般則との対比
- 民法 第940条相続放棄者の保存義務との関係
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