信託法 第66条(信託財産管理者の権限)
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- 第六十四条第一項の規定により信託財産管理者が選任された場合には、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、信託財産管理者に専属する。
- 2.二人以上の信託財産管理者があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。
- 3.二人以上の信託財産管理者があるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
- 4.信託財産管理者が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
- 一保存行為
- 二信託財産に属する財産の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
- 5.前項の規定に違反して行った信託財産管理者の行為は、無効とする。ただし、信託財産管理者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
- 6.信託財産管理者は、第二項ただし書又は第四項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
- 7.第二項ただし書又は第四項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
- 8.第二項ただし書又は第四項の規定による許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
この条文の基本情報
信託財産管理者の権限とは何ですか?
定義信託財産管理者の権限とは、信託法第66条に定められた規定で、「第六十四条第一項の規定により信託財産管理者が選任された場合には、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、信託財産管理者に専属する…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第66条(信託財産管理者の権限)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第66条の条文原文は「第六十四条第一項の規定により信託財産管理者が選任された場合には、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、信託財産管理者に専属する…」で始まります。
- 信託法第66条は第四款 信託財産管理者等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第66条の前の条は信託法第65条です。
- 信託法第66条の次の条は信託法第67条です。
- 信託法第66条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第66条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第66条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/66
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法66条は、選任された信託財産管理者に信託財産の管理処分権を専属させる規定。保存行為などを超える行為には裁判所の許可が必要で、許可のない行為は無効となる。
Q · 信託財産管理者は、信託財産の家を自分の判断で売ってもいいの?
売れない。売却には裁判所の許可が必要
信託法66条4項により、信託財産管理者が許可なしにできるのは、保存行為と、財産の性質を変えない範囲の利用・改良に限られます。売却のように財産の性質を変える行為には、裁判所の許可が必要です。許可を得ずにした行為は無効ですが(同条5項本文)、許可がないことを知らなかった第三者には無効を主張できません(同項ただし書)。許可の裁判に対しては不服を申し立てられないため(8項)、反対意見は許可が出る前に裁判所へ伝える必要があります。
解説
家族信託で実家を託された兄が、後見開始の審判を受けた。その時点で、兄の受託者としての任務は終わる(信託法56条1項2号)。新しい受託者が決まらず、家賃の回収も修繕も止まっている場合には、裁判所が信託財産管理者(裁判所が選ぶ、信託財産を一時的に預かる人。弁護士が就くことが多い)を選任できる(64条1項)。本条は、その管理者に何ができて何ができないかを決めている。第一に、選任された後は、財産を動かす権限が管理者だけのものになる(専属)。受益者であるあなたも、元受託者の家族も、もう勝手に契約できない。第二に、管理者にも限界がある。壊れた屋根の修理(保存行為)や、空き部屋を同じ用途で貸すこと(性質を変えない利用)はできる。しかし、売却のように財産の形そのものを変える行為には、裁判所の許可が必要だ。許可のない行為は無効になる。ただし、事情を知らない取引相手には無効を主張できない。売却を望むにしても止めたいにしても、あなたが働きかけるべき相手は、管理者本人よりも、許可を判断する裁判所である。
法的な位置づけ
信託法66条は、信託財産管理命令により選任された信託財産管理者の権限を定める規定である。受託者の職務の遂行と信託財産の管理処分権を管理者に専属させたうえで、複数管理者の共同行為の原則、保存行為および性質を変えない利用・改良を超える行為への裁判所の許可制、無許可行為の無効と善意の第三者の保護、許可手続の疎明と不服申立ての禁止を定める。
よくある質問 AI による整理
Q1信託財産管理者とは何ですか?
受託者の任務が終わり、新しい受託者が決まらないあいだ、裁判所の選任を受けて信託財産を一時的に管理する人です(信託法63条・64条)。弁護士が就くことが多いです。
Q2信託財産管理者は誰が選ぶのですか?
裁判所が、信託財産管理命令を出す際にあわせて選任します(信託法64条1項)。命令の申立ては、受益者などの利害関係人がします。
Q3信託財産管理者が許可なしでできることは?
建物の修繕などの保存行為と、空室を同じ用途で貸すなど財産の性質を変えない範囲の利用・改良です(信託法66条4項)。
Q4信託財産管理者の報酬は誰が払う?
原則として信託財産から支払われます。管理の期間が長くなるほど受益者の取り分が減るため、新受託者を早く選ぶことがコスト対策になります。
Q5信託財産管理者が選任されたら元の受託者は何もできない?
できません。権限は管理者に専属します(66条1項)。管理命令の後に前受託者がした行為は、信託財産との関係で効力を主張できません(65条)。
Q6信託財産管理者の売却許可に反対できる?
許可の裁判に対しては不服を申し立てられません(66条8項)。反対するなら、許可の申立てが出た段階で裁判所に上申書を提出する必要があります。
Q7信託財産管理者の許可申立てが却下されたら?
却下の裁判には理由が付されます(66条7項)。理由を読み、不足していた疎明資料を補って再度申し立てるかを検討します。
Q8信託財産管理者はいつまで管理する?
新しい受託者が選任されるまでの間です。新受託者が就任すれば、管理者は財産と事務を引き継ぎ、管理は終了に向かいます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託の受託者が認知症になったら、受益者の私が代わりに家を売ってもいいんですか?
できない。受託者が後見開始の審判を受けると任務が終わり(56条1項2号)、管理者が選任されれば権限は管理者だけのものになる(66条1項)。売却には裁判所の許可が必要だ(同条4項)。実務のポイント:委託者と受益者が合意すれば、新受託者を自分たちで選べる(62条1項)。委託者が存命で判断能力があるなら、管理者ルートより早く、費用も安く済むことが多い
Q2管理者が裁判所の許可を取らずに売った物件は、取り戻せますか?
許可のない行為は無効だが(66条5項本文)、許可がないことを知らなかった第三者には無効を主張できない(同項ただし書)。買主が事情を知らなければ、取り戻すのは難しい。その場合は、受託者と同じ義務を負う管理者の責任を問うことになる(69条)。実務のポイント:争点は買主が本当に知らなかったかどうかに移る。仲介業者が許可の有無を確認した記録が残っているかが、勝敗を分けやすい
Q3管理者が二人いて意見が割れたら、手続は止まってしまいますか?
二人で一緒に行うのが原則なので(66条2項)、意見が割れればその行為はできない。裁判所の許可を得れば、それぞれが単独で動いたり、職務を分担したりできる(同項ただし書)。申立てには理由の疎明が必要で(6項)、許可されると不服を申し立てられない(8項)。実務のポイント:選任された直後に、修繕担当と賃貸担当を分ける分担の許可を取っておくと、後で対立しても日常管理は止まらない
間違えやすい点 AI による整理
- 「受益者は実質的なオーナーなのだから、受託者がいない間は自分で管理すればいい」と考えがちである。しかし管理者が選任された時点で、権限は管理者だけのものになる。受益者が自分で賃貸契約を結んでも、信託財産を拘束する保証はない
- 許可のない行為が無効になることは知っていても、その「無効」の効き目が弱いことを知らない人は多い。事情を知らない買主には無効を主張できないため(5項ただし書)、物件は戻ってこないことがある。そうなると、残るのは管理者の義務違反を問う金銭請求だけだ
- 「管理者はどこまで売ってよいのか」という問いの立て方自体が間違っている。基準は「売るかどうか」ではなく「財産の性質を変えるかどうか」である。預金を株式に換えることも、売買と同じく性質を変える行為として、許可が必要な側に入ると解される
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 誰が信託財産を動かすか | 信託法66条:信託財産管理者(権限は専属) | 信託法62条:新受託者(受託者として権限を全面的に持つ) 信託法65条:前受託者(管理命令後の行為は信託財産との関係で効力を主張できない) |
| 選ばれ方 | 裁判所が信託財産管理命令の際に選任(64条1項) | 委託者と受益者の合意。合意できなければ裁判所が選任 選任ではなく、任務が終了した元の受託者 |
| 処分の制限 | 保存・利用・改良を超える行為は裁判所の許可が必要 | 信託行為の定めと受託者の義務の範囲内で行動し、裁判所の個別許可は不要 処分権限なし |
| 向いている場面 | 新受託者がすぐに決まらず、財産の劣化や家賃未回収を止める必要があるとき | 委託者が存命で判断能力があり、家族で後継者を合意できるとき 前受託者の家族が勝手に契約した後始末の場面 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は、新受託者を選任できないとき、裁判所が利害関係人等の申立てにより新受託者を選任し、必要な処分をする構造。日本のような独立した「信託財産管理者」の権限規定は置いていない。
韓国の2011年全面改正信託法は、信託財産管理人の制度を明文化しており、日本の信託財産管理命令と近い発想をとる。
米国のUTCは、受託者が欠けた場合の後継受託者の補充を定め、裁判所は必要に応じて special fiduciary を任命できる。管理者の権限の範囲は裁判所の命令で個別に画定される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 母を受益者とする家族信託で、受託者の兄が脳梗塞で倒れ、後見開始の審判を受けた。賃貸アパートの入居者から「来月の家賃はどこに振り込めばいいのか」と電話がくる。管理者が選任された後の受け取り窓口は管理者である。気を利かせて妹が受け取ると、後で精算をめぐる争いの火種になる
- 管理者が選任された後に、辞任した元受託者が「前から話がついていた」と言って、信託財産の土地を知人に売る契約を結んだらどうなるか。権限はすでに管理者だけのものになっており(66条1項)、管理命令の後に前受託者がした行為は、信託財産との関係で効力を主張できない(65条)。買った知人は、所有権ではなく元受託者への責任追及しか手元に残らない
- 台風で信託財産のアパートの屋根が飛んだ。修理は保存行為なので、管理者は裁判所の許可を待たずに発注できる。三日後の雨には間に合う
- あなたは不動産業者で、管理者から収益物件を買い取る話が進んでいる。決済の前に、売却許可の裁判書の写しを確認しなかったとする。条文上、許可がないことを知らなかった買主は保護される(5項ただし書)。しかし業者として調べるべきことを怠った事情があれば、「善意」の主張そのものが争点になる
- 管理者が二人選任されたが、一人は長期の出張中で押印できず、入居者との契約更新が止まっている。二人で一緒に行うのが原則であり、一人で動くには裁判所の許可が要る(2項)。一方、入居者からの解約通知は、どちらか一人に届けば有効になる(3項)
取るべき行動
被害を受けた側:受益者または債権者の立場の場合:1. 受託者の任務が終わったと知ったら、信託契約に後継受託者の定めがあるかを確認する。2. 定めがなければ、委託者と受益者の合意による新受託者の選任(62条)か、利害関係人として信託財産管理命令の申立て(63条)を検討する。3. 管理者が選任されたら、入居者や取引先への連絡窓口を管理者に一本化する。4. 売却などに反対するなら、許可の申立て段階で裁判所に上申書を出す。
訴えられた側:管理者または取引相手の立場の場合:1. 管理者は、予定している行為が保存行為または性質を変えない範囲の利用・改良にとどまるかを、着手前に判定する。2. 範囲を超えるなら、理由となる事実の疎明資料を添えて許可を申し立てる。3. 元受託者の家族は信託財産に手を出さず、引継ぎに協力する。4. 買主は決済前に許可の裁判書の写しを確認し、善意で取引したことを示す記録を残す。
時効(請求できる期限):本条に特定の時効はない。管理者の義務違反による損害賠償には、一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される。実務上の期限としては、許可が出た後は不服を申し立てられないため、反対意見は許可の裁判が出る前に出す必要がある
学説
通説:4項の「保存行為」と「性質を変えない範囲内の利用・改良」は、民法103条の権限の定めのない代理人の権限と同じ基準で判断する。預金を株式に換えるなど財産の性質を変える行為は、売却と同様に許可が必要な側に入ると解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 現行信託法(平成18年法律第108号)の制定に伴い、信託財産管理命令制度とともに設けられた条文。平成19年(2007年)9月30日施行。その後に文言の改正があったかは人による確認が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全部改正(平成18年法律第108号)に伴い、信託財産管理命令の制度とともに新設された。平成19年(2007年)9月30日施行。
- 信託法 第56条受託者の任務終了事由、管理者制度の起点
- 信託法 第62条新受託者の選任、管理者ルートの代替手段
- 信託法 第64条信託財産管理者の選任、本条1項の前提
- 信託法 第65条管理命令後の前受託者の行為の効力
- 信託法 第69条管理者が受託者と同一の義務を負う根拠
- 民法 第103条権限の定めのない代理人の権限、4項と同じ基準
- 民法 第28条不在者財産管理人の権限外行為の許可、同型の構造
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