信託法 第72条(信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等)
クイックジャンプ
第七十七条の規定は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合について準用する。この場合において、同条第一項中「受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)」とあり、同条第二項中「受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)」とあり、及び同条第三項中「受益者」とあるのは「新受託者」と、同条第二項中「当該受益者」とあるのは「当該新受託者」と読み替えるものとする。
この条文の基本情報
信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等とは何ですか?
定義信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等とは、信託法第72条に定められた規定で、「第七十七条の規定は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合について準用する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第72条(信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第72条の条文原文は「第七十七条の規定は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合について準用する。」で始まります。
- 信託法第72条は第四款 信託財産管理者等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第72条の前の条は信託法第71条です。
- 信託法第72条の次の条は信託法第73条です。
- 信託法第72条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第72条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第72条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/72
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法72条は、信託財産管理者が新受託者に計算の承認を求め、引き継ぐ手続を定める。新受託者が1か月異議を述べなければ承認とみなされ、不正がない限り責任は免除される。
Q · 信託財産管理者の計算書は誰が承認するの?黙っていたらどうなる?
新受託者です。1か月黙ると承認したとみなされます
信託法72条は77条を準用し、信託財産管理者は新受託者が就任した後、遅滞なく管理期間中の計算をして新受託者に承認を求め、引継ぎをしなければなりません。承認を求める相手方は受益者ではなく新受託者です。新受託者が承認するか、承認を求められてから1か月以内に異議を述べなければ、引継ぎに関する管理者の責任は免除されたものとみなされます。ただし、管理者の職務の執行に不正の行為があったときは免除されません。
解説
家族信託の受託者だった長男が急死し、後継の受託者が決まっていない。こうした場面では、裁判所が弁護士などを「信託財産管理者」(新しい受託者が決まるまで財産を預かるつなぎ役)に選任する(信託法63条、64条)。本条が定めるのは、その後に新しい受託者が決まったときの引継ぎの手順である。準用される77条を読み替えると、管理者は遅滞なく管理期間中の収支を計算し、その結果について新受託者の承認を求め、引継ぎに必要な行為をしなければならない。ここで注意したいのは、承認する人が受益者ではなく「新受託者」になっている点だ。新受託者が承認すれば、管理者の責任は免除されたものとみなされる。承認を求められてから1か月黙っていた場合も、承認したものとみなされる。例外は、管理者の職務に不正の行為があったときだけである。新受託者を引き受けたあなたが届いた計算書を放置すれば、1か月で前任者の責任を問う道がほぼ閉じる。受益者の側から見れば、自分の財産の点検を新受託者に任せきりにすることになる。
法的な位置づけ
信託法72条は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合の引継ぎ手続を定める規定である。同条は77条を準用し、管理者に信託事務に関する計算と引継ぎを義務づけたうえで、計算の承認を求める相手方を受益者から新受託者に読み替える。新受託者の承認または1か月以内の異議不述により、不正の行為がない限り、引継ぎに関する管理者の責任は免除されたものとみなされる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.計算書の受領日を記録し期限を設定する 管理者から計算の承認を求める書面が届いたら、受領日を記録し、そこから1か月後の期限をカレンダーに登録する。封筒・配達記録も保管する
- 2.計算書と裏付け資料を照合する 収入・支出の各項目を、預金通帳の写し・領収書・契約書と突き合わせる。「管理費用」などひとまとめの項目は内訳を管理者に請求する
- 3.受益者に計算書を共有し意見を聞く 承認権者は新受託者だが、受益者に計算書の写しを示して疑問点を確認しておくと、後に善管注意義務違反を問われるリスクを下げられる
- 4.疑問があれば期限内に書面で異議を述べる 1か月の期限前に、疑問のある項目と理由を記載した異議書面を、到達を証明できる方法(内容証明郵便など)で管理者に送る
- 5.財産・書類の引継ぎを受ける 登記・預金名義の変更、通帳・印鑑・契約書類など、信託事務の処理に必要な物の引継ぎを受け、引継ぎ財産目録と照合して受領書を交わす
よくある質問 AI による整理
Q1信託財産管理者とは何ですか?
受託者の任務が終了して新受託者が決まらない間、裁判所の信託財産管理命令により選任され、信託財産を管理・処分する者です(信託法63条・64条)。弁護士などが選ばれることが多いです。
Q2信託法72条の計算の承認 いつまで?
新受託者が管理者から承認を求められた時から1か月以内です。この期間内に異議を述べなければ、計算を承認したものとみなされます(72条で準用する77条3項)。
Q3新受託者は管理者の計算を拒否できる?
できます。承認は義務ではなく、内容に疑問があれば期限内に異議を述べれば足ります。異議を述べた場合、承認擬制による責任免除の効果は生じません。
Q4家族信託で受託者が死亡したらどうなる?
信託契約に後継受託者の定めがなければ、新受託者の選任が必要です(62条)。それまでの間、裁判所が信託財産管理者を選任することがあり、新受託者就任後に本条の引継ぎが行われます。
Q5信託財産管理者の不正は承認後も追及できる?
できる余地があります。管理者の職務の執行に不正の行為があったときは、承認しても責任は免除されません(77条2項ただし書の準用)。不正の立証が争点になります。
Q6管理者の計算書に何が書かれていればいい?
条文は様式を定めていませんが、実務上は管理期間中の収入・支出の明細、残高、報酬(71条)、引継ぎ財産の目録と、それを裏付ける通帳写しや領収書が求められます。
Q7受益者は管理者の計算を承認できないの?
本条の読み替えにより、承認を求められる相手方は新受託者です。受益者は承認手続の当事者ではありませんが、新受託者に計算書の開示や確認を求めることは可能です。
Q8新受託者が計算書を放置したら責任を問われる?
放置して不当な支出を承認擬制させた場合、新受託者自身が受益者から善管注意義務(29条)違反を問われる可能性があります。ただし、その成否は事案ごとの判断になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1新しい受託者になったんですが、前の管理者の計算書って絶対に承認しないといけないんですか?
承認する義務はない。内容に疑問があれば異議を述べればよい。ただし、承認を求められてから1か月黙っていると、承認したものとみなされる(信託法72条で準用する77条3項)。実務のポイント:管理者の報酬や、業者に支払った外注費の明細は、計算書では「管理費用」とひとまとめにされていることが多い。項目ごとの内訳を求めるだけで、不自然な支出が見つかることがある
Q2受益者の私が知らないうちに新受託者が承認していたら、もう何もできないんですか?
管理者の責任は免除されたものとみなされるが、不正の行為があった場合は免除されない(77条2項ただし書の準用)。また、新受託者が中身を確かめずに承認したのであれば、新受託者自身の善管注意義務違反(29条)を問える余地がある。ただし、この点は実務上、解釈が分かれている。実務のポイント:新受託者に就任するときに「承認する前に受益者に計算書を見せる」と合意しておけば、こうした事態は防げる
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託の財産は受益者のものだから、管理者の帳簿を最終的に承認するのも受益者だ」と考えがちだが、本条の読み替えによって承認するのは新受託者になる。受益者は、承認の手続に直接は関わらない
- 新受託者を引き受けた人の多くは、前任者が残した計算書を「事務的な書類」と受け止める。しかし、その書類に対する1か月の沈黙が、管理者の責任を免除するという法的な効果を生む。届いた書類の重さを見誤ると、新受託者自身が受益者から善管注意義務(プロとして当然払うべき注意のレベル)の違反を問われる側に回りかねない
- 「承認したらもう一切責任を追及できない」というのも正確ではない。管理者の職務に不正の行為があった場合は、承認しても責任は免除されない(77条2項ただし書の準用)。問われるのは「何が不正の行為にあたるか」であり、単純なミスと不正をどう線引きするかは事案ごとの判断になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 場面 | 信託法72条:信託財産管理者の選任後に新受託者が就任 | 信託法77条:受託者の任務終了後に新受託者等が就任 信託法64条:信託財産管理者の選任 |
| 計算・引継ぎをする者 | 信託財産管理者 | 前受託者 規定なし(選任手続を定める) |
| 承認を求める相手方 | 新受託者(読み替え) | 受益者(信託管理人がいれば信託管理人) 該当なし |
| 責任免除の効果 | 新受託者の承認または1か月の異議不述で免除擬制、不正の行為は除く | 受益者の承認または1か月の異議不述で免除擬制、不正の行為は除く 該当なし |
他国ではどう定めているか 4 か国
受託人変更時、原受託人は結算書・報告書を作成して新受託人に移交し、受益人または信託監察人の承認で責任が解除される(不正当行為を除く)。承認権者が受益者側である点で日本の72条とは異なる
受託者の職責終了時、報告を作成し新受託者に移交し、委託者または受益者の認可で報告記載事項の責任が解除される(不正当行為を除く)
fiduciaire が義務を怠る場合などに、裁判所に fiduciaire provisoire の選任または交代を求めうる。暫定管理者という発想は日本の信託財産管理者に近い
受託者欠缺時の後継受託者の選任と、前受託者による財産引渡義務を定める。日本のような1か月の承認擬制は置かれていない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症の母のために組んだ家族信託で、受託者の兄が亡くなった。裁判所が選任した弁護士が半年間管理し、その後あなたが新受託者になった。届いた計算書には、使途がはっきりしない支出が数十万円ある。1か月以内に異議を出さなければ、承認したものとみなされる
- 信託財産管理者になった弁護士として、新受託者に計算書を送ったのに返事がない。この沈黙はどう扱われるのか。承認を求めた日から1か月が過ぎれば、承認したものとみなされて責任は免除される。だから、送った日付を証明できる形で残しておくことが自分の身を守る
- あなたが受益者で、新受託者になった叔父が管理者の計算書を中身も見ずに承認してしまった。管理者の責任が消えた後、損失を誰に請求すればよいのか?
取るべき行動
被害を受けた側:新受託者または受益者として、管理者の管理に疑問がある場合:1. 計算書を受け取った日を記録し、1か月の期限を確認する2. 預金通帳の写し、領収書、管理者の報酬の決定内容(71条)を管理者に求める3. 疑問点は期限内に書面(内容証明郵便が望ましい)で異議として伝える4. 不正の疑いがあれば、承認しないまま弁護士に相談し、損害賠償請求を検討する
訴えられた側:信託財産管理者として引継ぎを行う場合:1. 管理期間中の収支を項目ごとに整理し、裏付けとなる資料を添付する2. 計算書は配達日を証明できる方法で新受託者に送り、承認を求める3. 登記・名義変更・通帳など、引継ぎに必要な手続を漏れなく行う4. 1か月が過ぎるまで送付の記録を保管する。不正の行為と疑われないよう、利益相反にあたる取引は事前に記録しておく
時効(請求できる期限):新受託者が計算の承認を求められた時から1か月以内に異議を述べなければ、承認したものとみなされる(本条で準用する信託法77条3項)。不正の行為があった場合の責任追及には特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 新しい信託法の制定にあわせて設けられた。信託財産管理者の制度とともに、新受託者への引継ぎ手続を77条の準用によって定めた。制定後に改正があったかどうかは人の手で確認する必要がある
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法(平成18年法律第108号)の制定により、信託財産管理者制度とあわせて新設。77条を準用し、承認権者を新受託者に読み替える構成をとった。その後の改正の有無は要確認
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める