会社更生法 第86条の2(相当の対価を得てした財産の処分行為の否認)
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- 更生会社が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
- 一当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、更生会社において隠匿、無償の供与その他の更生債権者等を害することとなる処分(以下「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
- 二更生会社が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
- 三相手方が、当該行為の当時、更生会社が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
- 2.前項の規定の適用については、当該行為の相手方が次に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、更生会社が同項第二号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
- 一更生会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員を含む。)、監査役、執行役、会計監査人(会計監査人が法人であるときは、その職務を行うべき社員を含む。)又は清算人
- 二更生会社の総株主の議決権の過半数を有する者
- 三更生会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社(法人が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該株式会社をいう。以下この号において同じ。)又は親法人(子株式会社である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する法人をいう。)及び子株式会社が有する場合における当該親法人
この条文の基本情報
相当の対価を得てした財産の処分行為の否認とは何ですか?
定義相当の対価を得てした財産の処分行為の否認とは、会社更生法第86条の2に定められた規定で、「更生会社が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第86条の2(相当の対価を得てした財産の処分行為の否認)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第86条の2の条文原文は「更生会社が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場…」で始まります。
- 会社更生法第86条の2は第四節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第86条の2の前の条は会社更生法第86条です。
- 会社更生法第86条の2の次の条は会社更生法第86条の3です。
- 会社更生法第86条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第86条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第86条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/86_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法86条の2は、相当の対価を得た財産処分でも、財産の種類変更による隠匿のおそれ・会社の隠匿意思・相手方の悪意の三要件が揃えば、管財人が否認できると定める。
Q · 時価でちゃんと買ったのに、倒産した会社との取引が取り消されることがあるの?
正当な対価でも、隠匿目的の三要件が揃えば否認されます
会社更生法86条の2により、相当の対価を払った取引でも、(1)不動産の現金化など財産の種類変更で隠匿のおそれが生じ、(2)更生会社に代金を隠す意思があり、(3)相手方がその意思を知っていた、という三要件が揃えば管財人が否認できます。価格の正当性だけでは盾になりません。さらに相手方が取締役や親会社の場合は、知っていたと推定され(同条2項)、知らなかったことの証明が相手方側に転換します。
解説
経営の傾いた会社が、本社として使っていた土地建物を、ある投資家に時価どおりの値段で売却した。買い手は一円もまけさせていない、後ろ暗いところのない正常な取引のつもりだ。ところが更生手続が始まると、管財人がその売買を「なかったこと」にできる場面がある。会社更生法86条の2が照らすのは、相当の対価、つまり正当な値段を払った取引ですら覆りうる領域だ。鍵は三つの要件が同時に揃うこと。第一に、不動産を現金に換えるなど、財産の種類が変わって隠しやすくなる処分であること。第二に、会社側が代金を隠す意思を持っていたこと。第三に、相手方がその隠匿意思を知っていたこと。値段が正当でも、この三つが重なれば取引は巻き戻される。さらに相手が取締役や親会社なら、知っていたと推定され、知らなかったという証明はあなたの側に回ってくる。
法的な位置づけ
会社更生法86条の2は、相当の対価を得てした財産の処分行為の否認を定める規定である。対価が正当であっても、不動産の現金化など財産の種類変更により隠匿等の処分のおそれを現に生じさせ、更生会社に隠匿の意思があり、相手方がこれを知っていた三要件が揃う場合に限り、管財人による否認を認める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.経営不振企業からの購入前に売主の財務と代金使途を確認 資産を買う前に、売主の財務状況・支払不能の兆候・代金の使い道を確認し、その記録を残す。後で管財人が否認を主張しても「隠匿意思を知らなかった」ことを示す証拠になり、第一号・第三号要件を崩す材料になる
- 2.取引が通常の事業処分にすぎないことを書面化 不動産を現金化する取引でも、それが正常な事業資産の売却・運転資金確保であることを契約書・取締役会議事録・資金計画で裏づける。財産の種類変更による隠匿のおそれを生じさせていないと示せれば第一号要件を否定できる
- 3.管財人側は内部者取引から優先的に精査 管財人・債権者の立場では、取締役・親会社など2項の推定が働く相手の取引を最初に洗う。悪意が推定されるため立証コストが軽く、相手方が善意を立証できない限り否認が通る
- 4.否認権を行使期間内に行使する 更生手続開始の日から2年以内に、訴え・抗弁・否認の請求のいずれかの方法で否認権を行使する。隠匿意思と相手方の悪意を立証する証拠を期限内に固め、散逸前に財産を取り戻す
よくある質問 AI による整理
Q1否認権とは何ですか?
倒産手続で、財産を不当に減少・流出させた行為を管財人が遡って無効にし、財産を取り戻す権限です。会社更生法では更生手続開始後に管財人が行使します。
Q2相当の対価を得た処分でも否認されるのはなぜですか?
正当な値段でも、隠しにくい不動産を隠しやすい現金に換える等で財産隠匿のおそれが生じ、会社に隠匿意思があり相手方がそれを知っていれば、債権者を害するため否認されます(86条の2)。
Q3隠匿等の処分とは何ですか?
受け取った代金を隠す、無償で他人に与える、その他更生債権者を害する処分を指します。財産の種類変更でこの処分のおそれが現に生じることが第一号の要件です。
Q4否認権はいつまで行使できますか?
更生手続開始の日から2年、または対象行為の日から20年を経過すると行使できなくなります。起算点は更生手続開始決定の日で、期限を過ぎると財産は戻りません。
Q5買主が取締役や親会社だと何が変わりますか?
86条の2第2項により、隠匿意思を知っていたと推定されます。立証責任が逆転し、相手方が「知らなかった」と自ら証明しない限り否認が通ります。
Q6否認されると買った財産はどうなりますか?
原則として更生会社財産に原状回復します。物件を返還し、支払った代金は更生債権として扱われる場合があり、全額回収できるとは限りません。
Q7詐害行為否認と偏頗行為否認の違いは何ですか?
詐害行為否認(86条系)は財産を不当に減少させる行為を対象とし、偏頗行為否認(86条の3)は特定の債権者だけを優遇する弁済等を対象とします。狙う局面が異なります。
Q8否認を避けるため買主は何を記録すべきですか?
売主の財務状況の確認記録、代金が正常な事業・債務弁済に使われた形跡、取引の経緯を残すことです。隠匿意思を知らなかったことを示し、三要件の一つを崩せます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1時価でちゃんと買ったのに、どうして取り消されるんですか?
相当の対価を払っても、不動産を現金に換えるなど隠匿しやすい形への財産変更があり、会社に隠匿意思があり、あなたがそれを知っていた、という三要件が揃えば否認されます(会社更生法86条の2第1項)。価格の正当性は要件の一つを外す材料にすぎません。実務のポイント:実務では「代金が何に使われたか」の追跡が勝負どころ。代金が会社の正常な事業や債務弁済に充てられた形跡があれば、隠匿のおそれ自体を否定しやすい。買主側は代金の使途を記録で押さえておくと守りが固くなる
Q2自分は売主の事情なんて何も知らなかった。それでも取り消されますか?
あなたが隠匿意思を知らなかったのなら、第1項三号の要件を欠き、原則として否認されません。ただし、あなたが売主の取締役・監査役・親会社などにあたる場合、2項で「知っていた」と推定され、立証責任が逆転します(会社更生法86条の2第2項)。実務のポイント:この推定はグループ内取引・役員取引を狙い撃ちにする設計。外部の第三者なら管財人が悪意を立証する側だが、内部者だと「知らなかった」証明をあなたが負う。立場一つで攻守が入れ替わる
Q3破産のときと会社更生のときで、否認のルールは違うんですか?
構造はほぼ同じです。本条は破産法161条、民事再生法127条の2と並ぶ姉妹規定で、相当対価の処分行為の否認要件は三法でそろえられています。違うのは手続の目的(破産は清算、更生は再建)と行使者です。実務のポイント:会社更生では管財人が必ず選任され強力な権限を握るため、否認が現実に行使される頻度は高い。更生手続に巻き込まれた取引相手は、破産より否認リスクを重く見ておくべき
間違えやすい点 AI による整理
- 相当の対価さえ払えば否認されない、と思い込みがちだ。だが本条は、対価が正当でも「財産の種類変更による隠匿のおそれ」「会社の隠匿意思」「相手方の悪意」の三要件が揃えば取引を覆す。正当価格は安全の保証ではなく、三要件の一つを外す材料にすぎない
- あなたから見れば「きちんとお金を払った正当な買い物」でも、債権者全体から見れば「隠しにくい不動産が、隠しやすい現金に化けた瞬間」だ。この見え方の落差が、善意のつもりのあなたを否認の対象に引きずり込む
- 「自分は善意だから問題ない」と問いを立てる人が多い。だが相手が取締役や親会社の場合、悪意は法律上推定される。本当に答えるべき問いは「知らなかったと自分で証明できるか」であって、「自分は善意か」ではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象とする行為 | 86条の2:相当の対価を得た財産処分(隠匿のおそれを伴うもの) | 86条:詐害行為の否認(財産を不当に減少させる行為一般) 86条の3:偏頗行為の否認(特定債権者への弁済・担保提供) |
| 対価の有無 | 相当の対価あり(正当価格でも要件次第で否認) | 無償・低廉など対価不相当を典型とする 既存債務への弁済等、対価関係は問題にならない |
| 主たる要件 | 種類変更による隠匿のおそれ+会社の隠匿意思+相手方の悪意の三要件 | 更生債権者を害する事実+相手方の悪意 支払不能・支払停止後の偏頗性+相手方の悪意等 |
| 立証責任の特則 | 相手方が取締役・親会社等なら悪意を推定(2項) | 原則は管財人が悪意を立証 内部者等につき支払不能等の認識を推定する規定あり |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は破産法上の撤銷権と平時の詐害行為取消権で対応する。隠匿意思と相手方の悪意を問う構造は日本の否認権と類似する
韓国は統合倒産法(債務者回生・破産法)で否認権を一元的に規律し、相当対価処分の否認も同法の枠組みで扱う。日本の倒産三法整合と発想が近い
ドイツは倒産法(Insolvenzordnung)が手続を一本化し、直接不利益行為の否認(§132)と故意の債権者侵害(§133)で対応する。否認制度の母法の一つ
米国は詐欺的譲渡(fraudulent transfer)として、実際の詐害意図(actual intent)または相当対価の不存在+支払不能で取り消す。相当対価がある取引は intent 要件で争う点が日本に通じる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは投資目的で、業績の悪い会社の工場を鑑定どおりの時価で購入した。一年後にその会社の更生手続が始まり、管財人から「あの売買を否認する」という通知が届く。代金は正当に払ったのに、物件を返せと言われる。価格の正当性だけでは盾にならない現実が、ここで初めて分かる
- もし、あなたが買った不動産が、実は売主の財産隠しの一手だったと後で判明したら、どうなるのか。あなたが隠匿の意思を知らなければ取引は守られるが、知っていたと評価されれば巻き戻る。あなたの「知っていたか」一点に、数千万円の物件の帰すうがかかる
- 親会社のあなたが、傾いた子会社から本社ビルを適正価格で買い取った。更生手続が始まる。2項の推定で、あなたは「知らなかった」と自分で証明しない限り否認される
- 管財人に就任したあなたの手元で、開始決定から否認権を行使できる期間が刻々と過ぎていく。相当対価の処分を一件ずつ精査し、隠匿意思と相手方の悪意を立証する証拠を、期限内に固めなければならない。間に合わなければ、散逸した財産は二度と戻らない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 開始決定前後の相当対価の処分行為を洗い出し、特に不動産から現金への換価など隠匿しやすい財産変更を伴うものを優先2. 取締役・親会社など2項の推定が働く相手の取引を最初に攻める、立証負担が軽い3. 会社側の隠匿意思を示す証拠(代金の使途不明、簿外移転、関係者への流出)を確保4. 否認権の行使期間内に、訴え・抗弁・請求のいずれかで行使する
訴えられた側:1. その処分が本当に「財産の種類変更による隠匿のおそれ」を生じさせたか検証、通常の事業資産の売却にすぎないと示せれば一号要件を崩せる2. 代金が会社の正常な弁済・運転資金に使われた形跡を示し、隠匿意思を否定3. あなたが取締役・親会社でなければ、悪意の立証責任は管財人側にあると主張4. 内部者で推定が働く場合は、取引の経緯・善意を示す具体的証拠で推定を覆す
時効(請求できる期限):会社更生法上、否認権は更生手続開始の日から2年を経過したとき、または否認しようとする行為の日から20年を経過したときは行使できない(破産法176条に対応する期間制限規定、具体的条番号は現行効力を要確認)。起算点は更生手続開始決定の日
学説
通説:86条の2は相当の対価を得た処分の否認につき、財産の種類変更による隠匿等のおそれ・更生会社の隠匿意思・相手方の悪意の三要件を厳格に要求し、対価が正当な取引相手の信頼を原則として保護する。形式的に適正価格を装って実質的に財産を散逸させる行為のみを狙い撃ちにする趣旨と解される。
倒産三法整合説:本条は破産法161条・民事再生法127条の2と同一構造で設計され、手続の種別を問わず否認要件を統一する立法政策の現れと位置づけられる。手続目的(清算か再建か)と行使者は異なるが、要件解釈は三法で整合的に行うべきとされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年) 破産法の全面改正(平成16年法律第75号)に伴う関係法律整備により新設。破産法161条と同一構造の「相当の対価を得てした財産の処分行為の否認」を会社更生手続にも導入し、倒産三法の否認規定を整合させた
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 新設:破産法の全面改正(平成16年法律第75号)に伴う関係法律整備により新設。破産法161条と同一構造の『相当の対価を得てした財産の処分行為の否認』を会社更生手続にも導入し、倒産三法の否認規定を整合させた。
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