会社更生法 第86条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
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- 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
- 一更生会社が支払不能になった後又は更生手続開始、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この節において「更生手続開始の申立て等」という。)があった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
- 一当該行為が支払不能になった後にされたものである場合支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
- 二当該行為が更生手続開始の申立て等があった後にされたものである場合更生手続開始の申立て等があったこと。
- 二更生会社の義務に属せず、又はその時期が更生会社の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の更生債権者等を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 2.前項第一号の規定の適用については、次に掲げる場合には、債権者は、同号に掲げる行為の当時、同号イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実(同号イに掲げる場合にあっては、支払不能であったこと及び支払の停止があったこと)を知っていたものと推定する。
- 一債権者が前条第二項各号に掲げる者のいずれかである場合
- 二前項第一号に掲げる行為が更生会社の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が更生会社の義務に属しないものである場合
- 3.第一項各号の規定の適用については、支払の停止(更生手続開始の申立て等の前一年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。
この条文の基本情報
特定の債権者に対する担保の供与等の否認とは何ですか?
定義特定の債権者に対する担保の供与等の否認とは、会社更生法第86条の3に定められた規定で、「次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第86条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第86条の3の条文原文は「次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。」で始まります。
- 会社更生法第86条の3は第四節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第86条の3の前の条は会社更生法第86条の2です。
- 会社更生法第86条の3の次の条は会社更生法第87条です。
- 会社更生法第86条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第86条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第86条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/86_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法86条の3は、倒産間際に特定の債権者だけが受けた弁済や担保供与を、管財人が更生手続開始後に否認できると定める。債権者に支払不能等の認識があれば対象となる。
Q · 潰れかけた取引先が払ってくれた代金、後で返せと言われることがあるって本当?
本当。管財人が偏頗行為として否認し返還を求められる
会社更生法86条の3により、倒産に向かう会社が特定の債権者だけにした弁済や担保供与は、更生手続開始後に管財人が否認できます。原則として、その行為が支払不能になった後または更生手続開始の申立て後にされ、かつ債権者がその事実を知っていた場合が対象です。義務でない弁済や期限前の繰上返済は、支払不能になる前30日以内でも狙われます。否認されると受け取った金額を返還しなければならず、債権は更生債権として復活しますが弁済率は大幅にカットされるのが通常です。
解説
取引先の資金繰りが怪しい。あなたは慌てて未払いの代金を回収する、あるいは追加の担保を取る。回収できて一安心、と思ったその行為こそが、後で標的になる。会社更生法86条の3は「偏頗行為否認」(へんぱこうい、特定の債権者だけを優遇する行為のひっくり返し)を定める。倒産に向かう会社が、特定の債権者だけに弁済したり担保を与えたりする抜け駆けを、管財人(更生会社の財産を管理する裁判所選任の責任者)が後から無効化できる制度だ。ポイントは三つ。第一に、対象は既存の債務についての弁済や担保供与に限られる。第二に、それが支払不能になった後(または更生手続開始等の申立て後)で、かつあなたがその窮状を知っていた場合に否認される。第三に、義務でない弁済や期限前の繰上返済は、支払不能になる前30日以内でも狙われる。つまり「正当な債権を正当に回収しただけ」でも、タイミングと認識次第で、手にした金を吐き出す側に回る。
法的な位置づけ
会社更生法86条の3は偏頗行為否認を定める規定であり、既存の債務に対する弁済または担保の供与のうち、更生会社が支払不能になった後や更生手続開始の申立て後にされ、債権者が当該事実を知っていたものなどを、管財人が更生会社財産のために否認できる旨を規定する。総債権者の公平な弁済(債権者平等)を確保するための制度である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.否認の対象行為を特定する 否認したい行為が既存債務への弁済か担保供与かを確定する。偏頗行為否認の対象になるのはこの二類型に限られ、新規与信そのものは対象外
- 2.行為の時期を確定する 支払不能になった後か、更生手続開始の申立て後か、義務でない弁済・繰上返済なら支払不能前30日以内かを切り分ける。時期によって適用号と要件が変わる
- 3.債権者の悪意の立証材料を収集する 支払停止(手形不渡り・廃業通知等)が1年以内にあれば3項で支払不能が推定され、相手が内部者または非義務行為なら2項で悪意が推定される。推定を働かせる事実を固める
- 4.行使方法を選び期間内に行使する 管財人が否認の訴え・否認の請求・抗弁のいずれで行使するかを選び、更生手続開始から2年等の行使期間内に動く。期間徒過すると否認できなくなる
よくある質問 AI による整理
Q1偏頗行為否認とは何ですか?
倒産に向かう会社が特定の債権者だけにした弁済や担保供与を、後から無効化する制度です。会社更生法86条の3が根拠で、債権者平等を守るために管財人が行使します。
Q2否認権は誰が行使しますか?
更生会社財産のために管財人が行使します。債権者や更生会社自身が個別に行使することはできず、裁判所が選任した管財人が訴え・請求・抗弁の形で行います。
Q3否認権の行使期間はいつまでですか?
一般に更生手続開始の日から2年、行為の日から20年で行使できなくなるとされます(破産法176条と同趣旨、最新の規定はご確認ください)。
Q4詐害行為否認と偏頗行為否認はどう違いますか?
詐害行為否認は財産を不当に減らす行為が対象、偏頗行為否認は既存債務への弁済・担保供与など特定債権者の優遇が対象です。86条の3は後者を規律します。
Q5支払不能と支払停止はどう違いますか?
支払不能は弁済能力を欠く客観的状態、支払停止は手形不渡りや廃業通知などの外形的行為です。支払停止が1年以内にあると支払不能が推定されます(3項)。
Q6担保を取ったら否認されますか?
既存債務への担保供与は否認対象です。支払不能後に相手の窮状を知って取った追加担保は、管財人にひっくり返され、担保債権が無担保債権に戻ることがあります。
Q7否認されたら払った金はどうなりますか?
受け取った金額を返還します。その後あなたの債権は更生債権として復活しますが、更生計画での弁済率は大幅にカットされ、戻るのは一部のみが通常です。
Q8会社更生と破産で否認のルールは違いますか?
趣旨はほぼ同じで、破産法162条・民事再生法127条の3が並行する偏頗行為否認を定めます。倒産三法で否認規定は横断的に調整されています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ちゃんとした借金の返済なのに、なんで返さなきゃいけないんですか?
偏頗行為否認の核心です。債務そのものは有効でも、倒産間際に特定の債権者だけ優遇すると債権者平等を破る。だから弁済や担保供与という行為自体を否認します(86条の3第1項)。実務のポイント:「正当な債権だから安全」という思い込みが一番危ない。否認は債権の有効性を問わず、回収のタイミングと相手の窮状認識だけを見る。だから優良企業ほど駆け込み回収で足をすくわれる
Q2相手が苦しいって知らなかったら、返さなくていいんですか?
原則そうです。1項1号は債権者の悪意(支払不能・支払停止・申立てがあったことを知っていたこと)を要件にします。ただし支払停止から1年以内は支払不能が推定され(3項)、内部者や非義務行為では悪意が推定されます(2項)。実務のポイント:「知らなかった」は口で言うだけでは通らない。与信管理記録・社内メール・取引先の信用調査報告が逆に「知っていた」証拠として使われる。皮肉にも、管理が丁寧な会社ほど悪意を立証されやすい
Q3倒産前30日以内なら、どんな返済も否認されるんですか?
いいえ。1項2号の30日ルールは非義務行為(支払う義務がない、または支払う時期が義務に属しない行為)に限ります。期限どおりの通常弁済は対象外で、期限前の繰上返済や約束にない追加担保が狙われます。実務のポイント:危ない取引先から「期限より早く払う」「特別に担保を付ける」と言われたら、喜ぶ前に警戒する。その厚意こそが30日以内なら否認の入口になり、受け取った側が後で全額返還を迫られる
間違えやすい点 AI による整理
- 「有効な債権の正当な弁済が否認されるはずがない」と思い込んでいるが、偏頗行為否認は弁済が有効であることを前提に、その有効な弁済行為自体をひっくり返す制度だ。債権や弁済が有効であることは、否認をまったく妨げない。
- 否認されても「もらった分を返すだけ」だと考えがちだが、深刻なのはその先。返還した後、あなたの債権は更生債権として復活するが、更生計画での弁済率は何割もカットされるのが通常。100万円を返して、戻ってくるのは数万円ということが現実に起きる。
- あなたから見れば「正当に回収した自分のお金」だが、倒産法から見れば「他の債権者から先取りした共同財産」。この視点の落差が、ある日突然の返還請求としてあなたを襲う。否認の相手方になるのは、弁済や担保を受け取った債権者そのものだ。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 否認の対象行為 | 86条の3:既存債務への弁済・担保供与(偏頗行為) | 86条:財産を減少させる行為一般(詐害行為否認) 86条の2:相当の対価を得てした財産処分行為 |
| 保護法益 | 債権者平等(特定債権者への抜け駆けの防止) | 総債権者の責任財産の保全 対価が得られても隠匿等のおそれがある処分の規制 |
| 主観的要件 | 原則として債権者の悪意(支払不能等の認識) | 債務者の詐害意思 + 受益者の悪意 隠匿等の処分をする意思 + 相手方の認識 |
| 推定規定 | 支払停止1年以内で支払不能推定(3項)、内部者・非義務行為で悪意推定(2項) | 個別規定による 前条2項の内部者列挙を参照 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も現有債務への担保供与・債務消滅行為の偏頗性を否認対象とする点で日本と同趣旨
韓国の統合倒産法も偏頗行為(편파행위)の否認を定め、支払不能・悪意を要件とする構造が日本と類似
ドイツはkongruente Deckung(130条)とinkongruente Deckung(131条)に分けて偏頗弁済を否認。義務的か否かで扱いを分ける点が日本の1項1号・2号に対応
米国はpreferential transferとして申立前90日(内部者は1年)以内の偏頗的移転を回避可能。期間で機械的に画する点が日本と異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、倒産しかけた取引先が「今のうちに」と未払い代金を全額振り込んできたら? ほっとしたのも束の間、半年後に更生手続が始まり、管財人から「あの弁済は否認する、全額返せ」と書面が届く。あなたが相手の苦境を当時知っていたかどうかが、返すか保持できるかの分水嶺になる(1項1号)。
- あなたが銀行の融資担当で、回収が怪しくなった融資先から急いで不動産に追加担保を設定させた。これは既存債務への担保供与そのもの。支払不能後に相手の窮状を知って取った担保は、管財人にひっくり返される。担保があると思って安心していた債権が、ある日無担保債権に戻る。
- 友人の会社が倒産した。倒産直前、友人は世話になった親類にだけ借金を返していた。その返済は義務のない弁済として、支払不能前30日以内なら狙い撃ちで否認されうる(1項2号)。
- 更生手続開始の通知を受け取った債権者のあなた。手元では開始決定から数えて否認権行使の時計が回り始めている。管財人がいつ動いてくるか分からない。過去1年間の自社との取引を、あと数日のうちに洗い直しておく必要がある。
- あなたが更生会社の元取締役で、退任前に自分の会社への貸付金を返済させていた。内部者は「知っていた」と推定される(2項)。立証責任が逆転し、あなたが「知らなかった」を証明しない限り、その返済は否認される。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 否認したい行為を特定する。既存債務への弁済か担保供与か、対象になるのはこの二類型2. 時期を確定する。支払不能後か、申立て後か、義務でない行為なら支払不能前30日以内か3. 相手の悪意の立証材料を集める。支払停止の事実があれば3項で支払不能が推定され、相手が内部者または非義務行為なら2項で悪意が推定される4. 否認の訴え・否認の請求・抗弁のいずれで行使するかを選び、行使期間内に動く。管財人が更生会社財産のために行使する
訴えられた側:1. 受領時に相手が支払不能だったか、自分がそれを知っていたかを争点化する2. 1号否認なら自分の善意(知らなかったこと)を主張、内部者・非義務行為で2項推定が働く立場なら推定を覆す反証を準備3. 2号(30日・非義務行為)なら「他の更生債権者を害することを知らなかった」ことを立証する(1項2号但書) 4. 弁済が義務的かつ履行期どおりだったことを示せれば2号の射程外。義務性とタイミングの記録を固める
時効(請求できる期限):否認権は更生手続開始の日から2年を経過すると行使できず、行為の日から20年でも同様(会社更生法上の否認権行使期間、破産法176条と同趣旨)。1項2号の30日ルールは支払不能の時点が起算点、3項の推定は支払停止が更生手続開始の申立て等の前1年以内であることが前提(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:偏頗行為否認は弁済や担保供与が有効であることを前提に、危機時期における特定債権者の優遇という行為自体を否認する制度であり、債権や弁済の有効性は否認を妨げない。支払不能を中心的な時期基準とし、推定規定により債権者の悪意立証の負担が緩和されると解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)破産法等改正の可能性(要検証) 支払不能を中軸に据えた偏頗行為否認の分離整理は、平成16年の破産法現代化と倒産三法(破産・民再・会更)の否認規定の横断的調整によるものと考えられる。本条(86条の3)が同改正での新設か、それ以前からの改正かの確証がないため、改正年と新設/改正の区別は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:会社更生法の全部改正(平成14年法律第154号)により現行法が成立。倒産法現代化の流れの中で否認規定が整序された。本条が同改正での新設か旧法からの承継かの確証がないため、人的検証を要する
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