会社更生法 第86条(更生債権者等を害する行為の否認)
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- 次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
- 一更生会社が更生債権者等を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、更生債権者等を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 二更生会社が支払の停止又は更生手続開始、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした更生債権者等を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び更生債権者等を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 2.更生会社がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、更生手続開始後、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り、更生会社財産のために否認することができる。
- 3.更生会社が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
この条文の基本情報
更生債権者等を害する行為の否認とは何ですか?
定義更生債権者等を害する行為の否認とは、会社更生法第86条に定められた規定で、「次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第86条(更生債権者等を害する行為の否認)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第86条の条文原文は「次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。」で始まります。
- 会社更生法第86条は第四節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第86条の前の条は会社更生法第85条です。
- 会社更生法第86条の次の条は会社更生法第86条の2です。
- 会社更生法第86条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第86条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第86条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/86
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法86条は、更生手続開始後に管財人が過去の詐害行為・危機否認・無償行為・過大代物弁済を否認できる否認権を定める。無償行為には善意の抗弁が効かない。
Q · 倒産した取引先から先に受け取った財産は、もう自分のものですか?
原則として返還を迫られる。無償でもらった分は善意でも返す
会社更生法86条により、更生手続開始後、管財人は過去の詐害行為・危機否認・無償行為・過大代物弁済を否認し、流出した財産を取り戻せます。詐害行為否認と危機否認なら『債権者を害することを知らなかった』善意を立証すれば免れますが、立証責任はあなた側です。無償行為(3項)には善意の抗弁が一切効かず、支払停止等の前6か月以内の贈与は、何も知らなくても返還対象になります。
解説
取引先が倒産した。あなたが先に資産や利益を確保できていたなら、ひと安心だろうか。会社更生法86条は、その安心を覆す。更生手続が始まると、管財人は会社が過去にした取引を「否認」して巻き戻せる。狙われるのは三つ。第一に、会社が債権者を害すると知ってした行為(詐害行為否認)。第二に、支払停止や倒産申立ての後にした、債権者を害する行為(危機否認)。第三に、支払停止等の前6か月以内の贈与など無償行為(無償否認)。さらに、債務額を超える過大な代物弁済は、超過分だけ取り戻される。あなたが受け取ったものは、開始決定後にさかのぼって返還を迫られる。鍵は「善意」だ。詐害行為と危機否認なら、あなたが『害することを知らなかった』と立証できれば逃げられる。だが、タダでもらったものには、その抗弁が一切効かない。タダより高いものはない、を法が条文にした姿がこれである。
法的な位置づけ
会社更生法86条は、更生手続における否認権を定める規定である。更生手続開始後、管財人は更生会社財産のために、債権者を害する詐害行為(1項1号)、支払停止等の後の危機否認(1項2号)、債務額を超える過大な代物弁済(2項)、支払停止等の前6か月以内の無償行為(3項)を否認し、流出した財産を更生会社財産へ取り戻すことができる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.主張されている否認の類型を特定する 管財人の通知が、詐害行為否認(1項1号)・危機否認(1項2号)・過大代物弁済(2項)・無償行為(3項)のどれを根拠にしているかを最初に確定する。類型ごとに反論の筋道が全く異なる
- 2.善意の抗弁が使える類型かを判定する 詐害行為・危機否認なら『債権者を害することを知らなかった』善意を立証して反論する。無償行為なら善意の抗弁は効かないため、返還範囲や財産の評価額を争う方向に切り替える
- 3.反対給付の返還請求をセットで立てる 否認が成立して返還するとしても、自分が相手へ給付した対価(反対給付)の返還を必ず併せて請求する。一方的に返すだけで終わると対価が回収できず丸損になる
- 4.否認を認める決定には期間内に異議の訴えを起こす 否認の請求を認める決定が届いたら、定められた期間内に異議の訴えを提起する。期間を徒過すると返還が確定するため、弁護士相談を急ぐ
よくある質問 AI による整理
Q1否認権とは何ですか?
倒産手続で管財人が、開始決定前にされた不当な財産流出を巻き戻して取り戻す権利です。会社更生法86条はその基本類型(詐害・危機・無償・過大代物弁済)を定めます。
Q2否認されると受け取った財産はいつ返すのですか?
更生手続開始決定後、管財人の否認権行使により返還義務が生じます。取引が完了し登記・引渡しが済んでいても、さかのぼって効力を奪われます。
Q3無償行為の否認はどこまでさかのぼりますか?
支払停止等の後、又はその前6か月以内にした無償行為が対象です(86条3項)。贈与や著しく安い対価での譲渡が典型で、善意でも返還を免れません。
Q4過大な代物弁済はどう否認されますか?
受けた給付の価額が消滅した債務額より過大な場合、超過分のみが否認されます(86条2項)。債務300万円に対し500万円の物を受け取れば200万円分が対象です。
Q5否認の請求を受けたらすぐ返さないといけませんか?
いいえ。否認の請求を認める決定には期間内に異議の訴えで争えます。善意の立証や三類型に当たらないとの反論が可能で、反対給付の返還請求も併せて主張できます。
Q6善意の抗弁とは何ですか?
詐害行為否認・危機否認で『債権者を害することを知らなかった』と相手方が立証すれば否認を免れる抗弁です。無償行為(3項)には適用されません。
Q7否認権は誰が行使しますか?
管財人だけが行使できます。一般の更生債権者は直接行使できず、不審な資産流出を管財人に情報提供して行使を促す形になります。
Q8否認権はいつまで行使できますか?
更生手続開始の日から2年、又は対象行為の時から20年で行使できなくなります(会社更生法99条、最新の改正状況をご確認ください)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1善意だったら本当に返さなくていいんですか?
詐害行為否認と危機否認(会社更生法86条1項)では、あなたが『債権者を害することを知らなかった』と立証できれば否認を免れます。ただし立証責任はあなた側。さらに無償行為(同条3項)には善意の抗弁が一切効きません。実務のポイント:管財人は取引時のメールや決算書の入手記録を狙い撃ちにする。相手の窮状を知っていた痕跡が一つでもあれば善意は崩れる。怪しい取引ほど、知らなかった記録を残した側が生き残る
Q2正当な売掛金を回収しただけなのに、なぜ返せと?
純粋な弁済の回収は、実は86条1項の対象外です(同項は債務消滅行為を除く)。それは86条の3の偏頗行為否認の領域。86条が狙うのは資産を不当に流出させる詐害行為、過大な代物弁済(同条2項)、無償行為です。実務のポイント:あなたから見れば正当な回収でも、法は他の債権者を出し抜く抜け駆けとして公平の物差しで測る。支払停止の後か前かで結論が変わるので、回収のタイミングが運命を分ける
Q3タダでもらった贈与まで返すのは、ひどくないですか?
無償否認(会社更生法86条3項)では、支払停止等の後、又はその前6か月以内の贈与は、あなたが何も知らなくても返還対象です。対価を払っていないあなたには、保護すべき信頼がないからです。実務のポイント:実務では『これと同視すべき有償行為』、つまり著しく安い対価での譲渡も無償否認の射程に入る。倒産しかけの会社から破格で買った資産は、実質贈与とみなされて引き戻されることがある
Q4管財人から否認の通知が来たら、すぐ払うしかない?
いいえ。否認は管財人の否認の請求や訴え等で行使され、その決定に不服があれば異議の訴えで争えます。善意の立証や、三類型のどれにも当たらないという反論が可能です。実務のポイント:否認が成立して返還するなら、あなたが相手へ給付した反対給付の返還も請求できる。一方的に返すだけで終わらせず、自分の出した対価を取り戻す主張をセットで出すのが鉄則
間違えやすい点 AI による整理
- 取引が完了して登記も引渡しも済めば、もう取り戻されないと思われている。だが否認権が狙うのは、まさに完了した取引そのものだ。手続開始後にさかのぼって効力を奪うのが否認であって、『済んだこと』は防御にならない
- 善意なら返さなくていい、とは多くの人が知っている。だが、その善意の立証責任が自分側にあること、そして無償行為(86条3項)には善意の抗弁が一切通用しないことまでは知らない。知っている範囲が浅いまま安心している、ここが落とし穴
- 『自分は正当に資産を取得しただけだ』と問う人が多い。だがその問いの立て方自体がずれている。否認の世界で測られるのは『正当か』ではなく『他の債権者との公平を破ったか』だ。あなたから見れば正当な取得、法から見れば抜け駆け。この落差が返還義務を生む
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 否認の対象行為 | 86条1項:詐害行為・危機否認(担保供与・債務消滅を除く財産処分) | 86条の2:相当の対価を得た財産処分の否認 86条の3:担保供与・債務消滅(偏頗行為)の否認 |
| 狙われる典型 | 資産の廉価売却・贈与・過大な代物弁済 | 時価相当でも資産を換価し隠匿のおそれがある処分 特定債権者への弁済・担保提供(抜け駆け弁済) |
| 善意の抗弁 | 詐害・危機否認は可、無償行為(3項)は不可 | 相手方の隠匿等の意思の認識が要件 支払不能・支払停止の認識が要件 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は破産における撤銷権と民法の詐害行為取消権で同種の機能を担う。会社更生に直接対応する単一条文はなく、複数規定の組合せで実現する点が日本と異なる
韓国は会社更生・破産・個人回生を統合した債務者回生法に否認権(부인권)を一元的に置く。否認類型は日本と近似
ドイツ破産法(Insolvenzordnung)の Insolvenzanfechtung が母法。詐害的・偏頗的・無償の各類型に区分する構造は日本法の原型となった
米国連邦倒産法は preference(偏頗弁済の否認、90日/インサイダー1年)と fraudulent transfer(詐害譲渡)を区分。日付基準で機械的に判定する点が日本の善意要件と対照的
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先が資金難と知りつつ、その会社の不動産を相場より安く買い取った。会社はその現金を別の用途に流用。半年後に更生手続が始まると、管財人から『債権者を害する廉価処分だ、否認する』と通知が届く。安く買った掘り出し物が、まるごと取り戻される
- もし、倒産しかけの親会社があなたの会社へ資産を『贈与』していたら、どうなる? 無償否認の射程は支払停止等の前6か月にまで及ぶ。あなたが親会社の窮状を知らなくても、無償行為に善意の抗弁は効かない。受け取った資産は、そのまま返還だ
- 債権300万円の回収として、相手から時価500万円の機械を代物弁済で受け取った。得をした気分になったが、消滅した債務額を超える200万円分は否認される。過大な部分だけ切り取られて、返還を迫られる
- 管財人の否認の請求を認める決定が届いた。不服があれば、定められた期間内に異議の訴えを起こさなければ、返還が確定してしまう。残された時間はわずか。動かなければ、それで終わりだ
- 倒産した取引先から、最後に『お礼』として高級車を譲り受けた。対価は払っていない。それは無償否認の標的だ
取るべき行動
被害を受けた側:あなたが倒産した会社の一般債権者なら、否認権を直接行使できるのは管財人だけだ。1. 開始決定前に会社がした不審な資産流出(関係者への贈与、廉価売却、過大な代物弁済)を洗い出し、証拠とともに管財人へ情報提供する2. 管財人が否認権を使えば財産が更生会社財産へ戻り、結果としてあなたへの配当原資が増える3. 管財人が動かない場合、債権者集会や監督委員等を通じて指摘し、財産回復を促す
訴えられた側:1. まず否認の三類型(詐害行為・危機否認・無償否認、過大代物弁済)のどれを主張されているか特定する2. 詐害行為・危機否認なら『害することを知らなかった』善意を立証して反論、無償行為なら善意は効かないので返還範囲や評価額を争う3. 否認が成立する場合でも、自分が給付した反対給付の返還を必ず請求する4. 否認の請求を認める決定には、期間内に異議の訴えで争う
時効(請求できる期限):否認権は、更生手続開始の日から2年を経過したとき、又は否認の対象行為の時から20年を経過したときは行使できない(会社更生法99条、最新の改正状況をご確認ください)。無償否認は支払停止等の後、又はその前6か月以内の行為に限られる(同86条3項)
学説
通説:86条の否認は、書面要件等の形式ではなく『他の債権者との公平を破ったか』という実質で判断される。詐害行為・危機否認には善意の抗弁を認め取引の安全に配慮しつつ、無償行為には抗弁を認めず公平を優先する段階的構造をとる。
実務通説:否認が成立して相手方が財産を返還する場合、相手方は自己が給付した反対給付の返還を請求できる。一方的な返還で終わらせず反対給付の主張をセットで立てるのが実務上の鉄則とされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年) 旧会社更生法(昭和27年)を全部改正し現行法を制定。否認の規律を詐害行為否認・偏頗行為否認等に類型化し、86条にその基本類型(詐害行為・危機否認・過大代物弁済・無償行為)を置いた。その後の改正履歴は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:旧会社更生法(昭和27年)を全部改正し現行法を制定。否認の規律を詐害行為否認・偏頗行為否認等に類型化し、86条に基本類型(詐害行為・危機否認・過大代物弁済・無償行為)を置いた。
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