会社更生法 第87条(手形債務支払の場合等の例外)
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- 前条第一項第一号の規定は、更生会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。
- 2.前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出しを委託した者が振出しの当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、管財人は、これらの者に更生会社が支払った金額を償還させることができる。
- 3.前条第一項の規定は、更生会社が租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)又は第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為には、適用しない。
この条文の基本情報
手形債務支払の場合等の例外とは何ですか?
定義手形債務支払の場合等の例外とは、会社更生法第87条に定められた規定で、「前条第一項第一号の規定は、更生会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第87条(手形債務支払の場合等の例外)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第87条の条文原文は「前条第一項第一号の規定は、更生会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。」で始まります。
- 会社更生法第87条は第四節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第87条の前の条は会社更生法第86条の3です。
- 会社更生法第87条の次の条は会社更生法第88条です。
- 会社更生法第87条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第87条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第87条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/87
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法87条は、更生会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けないと遡求権を失う場合に、否認の規定を適用しないと定め、手形取引の安全を保護する例外規定である。
Q · 倒産前に取引先の手形を取り立てた入金、管財人に返せと言われたら返すの?
原則として返さなくてよい。手形の支払は否認の対象外。
会社更生法87条1項により、その支払を受けなければ裏書人など他の手形債務者への手形上の権利(遡求権)を失う受取人については、否認の規定(86条1項1号)が適用されません。つまり手形で受け取った金は原則返さなくてよい。ただし2項で、最終の償還義務者や手形の振出しを委託した者が支払停止等を知っていた(または過失で知らなかった)場合、管財人はその者から更生会社の支払額を償還させられます。受取人の安全と背後の依頼人の責任は別問題です。
解説
取引先から約束手形で支払を受けた。数か月後、その会社が会社更生手続に入ったと知る。普通の振込で受け取った金なら、管財人に「否認」されて返還を求められるリスクがある。だが手形の支払は違う。会社更生法87条1項は、その支払を受けなければ裏書人など他の手形債務者への手形上の権利を失ってしまう受取人について、否認の規定(86条1項1号)を適用しないと定める。つまり手形で受け取った者は、原則として返さなくてよい。なぜか。手形を呈示して支払を受領しないと、あなたは遡求権(裏書人への請求権)を失う。法はその犠牲を強いてまで否認を貫かない。手形取引の安全を、債権者平等より優先したのだ。さらに3項は、租税や開始前の罰金の支払も否認の対象外とする。あなたが何を握っているか、売掛金か手形か、その一点で倒産局面の生死が分かれる。
法的な位置づけ
会社更生法87条は、倒産手続における否認権(86条)の例外を定める規定である。更生会社から手形の支払を受けた者が、その受領をしなければ他の手形債務者に対する手形上の権利を失う場合に否認を適用しないとし、あわせて租税等の請求権や開始前の罰金等の徴収権限を有する者への支払も否認の対象外とする。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
よくある質問 AI による整理
Q1会社更生法の否認権とは何ですか?
否認権とは、倒産前の危機時期に行われた偏頗弁済や財産処分を管財人が取り消し、財団に取り戻す権限です(会社更生法86条)。全債権者の平等を回復するための制度で、87条はその例外を定めます。
Q2偏頗弁済とは何ですか?
偏頗弁済とは、危機時期に特定の債権者だけに支払をして他の債権者より有利に扱う行為です。否認の対象になりますが、手形の支払は87条1項で原則として否認されません。
Q3会社更生と破産で否認のルールは違いますか?
基本的な発想は共通です。破産法163条にも手形支払の同趣旨の否認例外があります。手続の種類は違っても、手形取引の安全を保護する点は共通しています。
Q4否認権はいつまで行使できますか?
会社更生法95条により、否認権は更生手続開始の日から2年で行使できなくなり、行為の時から20年経過でも同様です。この枠が実務上の時間軸になります(最新の改正状況をご確認ください)。
Q5手形の振出しを委託した者はどんな責任を負いますか?
87条2項により、最終の償還義務者または振出しを委託した者が振出し当時に支払停止等を知り、または過失で知らなかったときは、管財人はその者に更生会社の支払額を償還させられます。
Q6でんさい(電子記録債権)も手形と同じく否認されませんか?
電子記録債権は手形そのものではないため、87条の手形例外がそのまま及ぶかは個別判断になります。遡求関係の有無や制度設計が異なるため、専門家への確認が必要です。
Q7遡求権とは何ですか?
遡求権とは、手形が支払われなかった場合に、裏書人など前の手形債務者に支払を請求できる権利です。手形を呈示して支払を受領しないと、この遡求権を失う関係にあります。
Q8共助対象外国租税とは何ですか?
共助対象外国租税とは、租税条約等に基づき日本が徴収を共助する外国の租税です。87条3項の否認例外からは除外され、通常の国内租税等の支払とは扱いが分かれます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1倒産しそうな取引先から手形で支払ってもらいました。後で返せと言われますか?
原則として返さなくて大丈夫です。会社更生法87条1項により、その支払を受けないと裏書人など他の手形債務者への手形上の権利を失う場合、否認(86条1項1号)は適用されません。実務のポイント:同じ金額を『普通の振込』で受けていたら危機時期の偏頗弁済として否認されえます。手形か振込か、その違いを管財人は最初に確認します。手形なら根拠を示して強気で反論してよい
Q2会社が更生に入る前に税金を納めていました。管財人がそれを取り戻せるって本当ですか?
取り戻せません。会社更生法87条3項は、租税等の請求権(共助対象外国租税を除く)や開始前の罰金等について、徴収権限を持つ者への担保提供・債務消滅行為に否認規定を適用しないと定めます。実務のポイント:一般債権者から見れば『税務署だけ守られてずるい』と映りますが、これは徴収権限の公益性ゆえの設計です。だから管財人は税の取戻しには手を出さず、否認は私的債権者間の偏頗弁済に絞ります
間違えやすい点 AI による整理
- 「危機時期に受け取った支払は全部否認されて返さされる」と思われているが、手形の支払は原則として否認されない(87条1項)。手形債務者への遡求権を失わせてまで否認を貫くことを、法は避けている
- 手形の支払が保護されることは知っていても、その保護が無条件でないことを知らない人が多い。2項により、振出しを委託した者が悪意または有過失なら、管財人はその者から更生会社の支払額を償還させられる。受取人の安全と、その背後にいる依頼人の責任は、まったく別の問題だ
- 「税金を払ったのだから、倒産したら一般債権者のために取り戻されるはず」と更生会社や債権者は考えがちだが、法から見れば租税等の支払は否認の射程外(3項)。あなたが『税務署だけ守られて不公平だ』と立てた問いそのものが、徴収権限の公益保護という法の設計と噛み合っていない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の性質 | 87条:否認の例外(手形支払・租税等を否認対象外とする) | 86条:否認権の根拠規定(偏頗弁済等を取り戻す) 破産法163条:破産手続における同趣旨の手形支払例外 |
| 適用対象 | 支払を受けないと遡求権を失う手形受取人、徴収権限者への租税等の支払 | 危機時期の偏頗弁済・無償行為など否認対象行為全般 破産手続で手形の支払を受けた者 |
| 効果 | 受取人は受領金を返還しなくてよい | 否認により受領金を財団へ返還させる 受取人は返還を免れる |
| 救済・例外の余地 | 2項で悪意・有過失の振出依頼人に償還請求できる | 91条で否認された相手方の債権が回復しうる 破産法上も振出依頼人への償還の余地がある |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も危機時期の偏頗行為を撤銷の対象とするが、手形支払の明文の例外規定の整理は日本ほど詳細でない。重整は公司法が別途規律する
韓国の統合倒産法も否認権を定め、手形・有価証券の支払について同趣旨の例外を設ける構造を持つ
ドイツ倒産法は否認(Insolvenzanfechtung)を広く認めつつ、§137で手形・小切手の支払について特則を置き、取引の安全を保護する
米国は危機時期の偏頗弁済(preference)を否認の対象とするが、手形の支払に関する扱いは個別の抗弁・例外規定の体系で処理する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 得意先が振り出した約束手形を期日に取り立て、無事入金された。半年後、その得意先が会社更生開始。管財人から「あの手形金を否認するので返せ」と通知が来る。だが87条1項を盾にできる。裏書人がいる手形なら、あなたが返金すれば遡求権を失う関係にある。その犠牲を理由に否認は及ばない。落ち着いて根拠を示して反論せよ
- もし、あなたが受け取ったのが手形ではなく単なる売掛金の振込だったとしたら? 同じ支払日、同じ金額でも、危機時期の偏頗弁済として86条で否認されうる。手形か否か、その一点が運命を分ける
- あなたが管財人だとして、手形金は本当に取り戻せないのか。87条2項を見よ。最終の償還義務者や手形の振出しを委託した者が、振出し当時に支払の停止等を知っていた、または過失で知らなかったときは、その者に更生会社が支払った金額を償還させられる。受取人は守られても、悪意の振出依頼人からは回収できる
- 更生会社が手続開始前に滞納していた税金を税務署に納付していた。一般債権者の取り分が減ると考えた管財人は「あれも否認して財団に取り戻したい」と動こうとする。だが3項により租税等の支払は否認できない。共助対象外国租税だけが例外で、徴収権限を持つ国や自治体への支払は堅く守られる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受け取ったのが手形の支払か、単なる振込かをまず確認。手形なら87条1項の適用を主張できる2. その支払を受けなければ裏書人など他の手形債務者への遡求権を失う関係だったかを、手形の裏書状況で立証する3. 管財人の否認通知には87条1項を根拠に書面で反論し、安易に返還に応じない4. 不安なら倒産案件に強い弁護士へ。遡求関係の有無が争点になる
訴えられた側:1. 受取人本人への否認は87条1項で原則封じられると認識する2. 代わりに2項で、最終の償還義務者または手形の振出しを委託した者が、振出し当時に支払の停止等を知っていた、または過失で知らなかったことを立証する3. 立証できれば、その者に更生会社が支払った金額を償還させる4. 租税・罰金等の支払は3項で否認できないため、徴収権限者への支払の取戻しは断念する
時効(請求できる期限):本条は否認の例外規定であり独自の時効はないが、前提となる否認権の行使には期間制限がある。否認権は更生手続開始の日から2年を経過したときは行使できず、否認しようとする行為の時から20年を経過したときも同様(会社更生法95条)。この枠がそのまま実務上の時間軸になる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:87条1項の趣旨は、手形を呈示して支払を受領しなければ受取人が遡求権を失う点にある。否認によりその犠牲を強いると手形取引の連鎖的安全が害されるため、債権者平等の例外として否認を排除する。2項は悪意・有過失の振出依頼人からの償還で衡平を保ち、3項は徴収権限の公益から租税等の支払を保護すると理解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)全部改正 現行会社更生法(平成14年法律第154号、平成15年施行)の制定により、旧法下の否認例外を引き継いで現行87条が整備された。手形支払の否認例外と租税等の支払の否認例外を規定
- 共助対象外国租税の除外(年次・要検証) 3項の『共助対象外国租税の請求権を除く』との文言は、租税条約等に基づく徴収共助の制度導入に伴う改正で追加されたと考えられるが、改正年と『新設/改正』の正確な区別は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:現行会社更生法(平成14年法律第154号、平成15年施行)の全部改正により、旧法下の否認例外を引き継いで現行87条が整備された。手形支払の否認例外と租税等の支払の否認例外を規定する。
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