会社更生法 第90条(支払の停止を要件とする否認の制限)
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更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にした行為(第八十六条第三項に規定する行為を除く。)は、支払の停止があった後にされたものであること又は支払の停止の事実を知っていたことを理由として否認することができない。
この条文の基本情報
支払の停止を要件とする否認の制限とは何ですか?
定義支払の停止を要件とする否認の制限とは、会社更生法第90条に定められた規定で、「更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にした行為(第八十六条第三項に規定する行為を除く。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第90条(支払の停止を要件とする否認の制限)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第90条の条文原文は「更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にした行為(第八十六条第三項に規定する行為を除く。」で始まります。
- 会社更生法第90条は第四節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第90条の前の条は会社更生法第89条です。
- 会社更生法第90条の次の条は会社更生法第91条です。
- 会社更生法第90条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第90条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第90条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/90
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法90条は、更生手続開始の申立て等の日から一年以上前の行為を、支払停止を理由に否認することを禁じる。ただし無償行為(86条3項)は除かれる。
Q · 取引先が倒産したら、一年以上前に受け取った代金まで返さないといけないの?
一年以上前の有償取引なら支払停止を理由に否認されません
会社更生法90条により、更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にされた有償行為は、『支払停止の後だった』『支払停止を知っていた』という理由だけでは否認できません。つまり一年以上前の取引で受け取った代金は、支払停止を根拠とする巻き戻しから守られます。ただし第86条3項の無償行為(贈与・債務免除など)は例外で、一年を超えても否認されえます。また申立ての認識など別の根拠による否認は残ります。
解説
取引先の会社が会社更生を申し立てた。あなたは十か月前にその会社から売掛金を回収していた。ある日、更生管財人から「あの弁済は否認する、受け取った金を返せ」という通知が届く。否認権とは、管財人が倒産直前の不公平な財産の流出を巻き戻す強力な権限だ。だがここに時間の壁がある。会社更生法90条は、更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にした行為については、「支払の停止があった後だから」「相手が支払停止を知っていたから」という理由だけでは否認できないと定める。支払の停止、つまり会社が『もう一般的に払えません』と外部に示した事実は、倒産の危険信号だ。だがその信号が一年以上前のものなら、それを根拠にした巻き戻しは封じられる。あなたの取引がいつ行われたか、その一点が、受け取った金を守れるかどうかを分ける。
法的な位置づけ
会社更生法90条は否認権の時間的制限を定める規定であり、更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にされた有償行為について、支払の停止を理由とする否認を封じる。無償行為(第86条3項)はこの制限の対象外とされ、債権者平等と取引安全の調整を客観的な時間軸で画する。
よくある質問 AI による整理
Q1否認権とは何ですか?
倒産手続で、管財人が手続開始前の不公平な財産流出(偏頗弁済・無償譲渡など)を巻き戻し、債権者全体の取り分を回復する権限です。会社更生法では更生管財人が行使します。
Q2会社更生法90条をわかりやすく言うと?
申立て等の日から一年以上前の有償取引は、『支払停止後だった』『支払停止を知っていた』というだけでは否認できないという、否認権の時間的な歯止めです。
Q3偏頗行為の否認とは何ですか?
特定の債権者だけを優遇する弁済や担保提供を巻き戻す否認です。危機時期に支払停止を知って受けた弁済などが対象で、90条はその根拠を一年で制限します。
Q4支払停止はいつ認定されますか?
債務者が『一般的に弁済できない』と外部に示した時点で認定されます。手形不渡り、休業の貼り紙、債権者への一斉支払猶予通知などが典型で、認定日自体がよく争点になります。
Q5否認権の行使期間はどれくらいですか?
否認権は更生手続開始の日から二年、または行為の時から二十年で消滅します。これは90条の『一年ライン』とは別の制度なので混同しないことが重要です。
Q6無償行為は一年経っても否認されますか?
されえます。贈与・債務免除などの無償行為(第86条3項)は90条の保護対象外で、一年を超えても否認の余地が残ります。有償か無償かの線引きが決定的です。
Q7破産法166条と会社更生法90条の違いは?
規律内容はほぼ同一で、支払停止を理由とする一年超の行為の否認を制限します。破産法166条が破産手続、会社更生法90条が更生手続に対応する同旨規定です。
Q8否認の請求とは何ですか?
管財人が否認権を行使する方法の一つで、訴えのほか裁判所への決定申立て(否認の請求)によって行えます。相手方は通知を放置せず期間内に対応する必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1取引先が倒産したら、受け取った代金は全部返さないといけないんですか?
全部返すとは限りません。否認は管財人が選んで行う巻き戻しで、対象も根拠も限られます。会社更生法90条は、更生手続開始の申立て等の日から一年以上前の有償取引について、『支払停止後だった』『支払停止を知っていた』という理由だけでの否認を封じます。実務のポイント:実務家は否認通知を受け取ると、法律論より先にカレンダーで行為日と申立て日の差を数える。一年を一日でも超えていれば、支払停止を根拠とする否認はそれだけで崩せるからだ
Q2『支払の停止』って具体的に何ですか?倒産の申立てとは違うんですか?
違います。『支払の停止』は、債務者が『もう一般的に弁済できない』と外部に示す行為で、明示でも黙示でもよく、裁判所への申立てとは別の概念です。手形の不渡り、事業停止の貼り紙、債権者への支払い猶予の一斉通知などが典型例です(会社更生法90条)。実務のポイント:支払停止の『日』はしばしば争点になる。管財人は早い日を、相手方は遅い日を主張する。その一日が一年の線の内か外かを決め、否認の成否を左右するからだ
Q3一年以上前の取引なら絶対に安全なんですか?
絶対ではありません。会社更生法90条が守るのは有償の取引で、第86条3項の無償行為(贈与・債務免除など)は一年を超えても否認の対象です。また支払停止以外の根拠、たとえば詐害の意図を直接立証する詐害行為否認なら、一年超でも成立しえます。実務のポイント:『一年経てば安全』と油断した相手が、無償行為のラインで足をすくわれる例は実務で珍しくない。有償か無償かの線引きを最初に確認するのが鉄則だ
間違えやすい点 AI による整理
- 「取引先が倒産したら受け取った金は全部返さないといけないのか」と身構える人がいるが、問いの立て方そのものがずれている。否認できるかは『行為の時期』『否認の根拠』『有償か無償か』で決まる。全部返すか全く返さないかの二択ではなく、条件次第で結論が割れる
- 90条が一年の保護を与えることは知っていても、その保護に大きな穴があることを見落としがちだ。第86条3項の無償行為(贈与・債務免除など)はこの制限の対象外で、一年を超えても否認されうる。『一年経てば安全』という理解は、有償取引に限った話にすぎない
- 「支払停止の事実を知らなければ否認されない」と思われがちだが、90条が封じるのは『支払停止』を根拠にした否認だけだ。更生手続開始の申立てを知っていたことなど、別の根拠による否認は一年を超えても成立する余地が残る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 会社更生法90条:否認の時間的制限(一年の歯止め) | 会社更生法86条:否認権の一般規定(否認できる場面) 会社更生法86条3項:無償行為の否認(90条の制限対象外) |
| 働く方向 | 否認を封じる(相手方を守る) | 否認を認める(財団を回復する) 否認を広く認める(一年超でも巻き戻し可) |
| 時間軸 | 申立て等の日から一年以上前なら支払停止理由の否認不可 | 危機時期・故意により可否を判断 一年の制限を受けず否認しうる |
| 有償・無償 | 有償行為が保護対象 | 有償・無償いずれも対象になりうる 無償行為に特化(贈与・債務免除等) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も危機時期の偏頗弁済を撤銷・否認の対象とするが、支払停止に着目した『一年』の固定的な時間制限の立て方は日本ほど明文化されていない。
韓国の統合倒産法(채무자회생법)も否認権を規律し、危機否認・故意否認の二分や時期制限の発想は日本法と類似する。
ドイツ倒産法は、支払不能を知った上で危機時期に受けた弁済(kongruente/inkongruente Deckung)の否認を、申立て前の一定期間に限定する点で日本の90条と発想を共有する。
米国連邦倒産法のpreference否認は、原則として申立て前90日(インサイダーは1年)の偏頗的譲渡を対象とし、期間で線を引く点は共通だが、支払停止ではなく申立てを起点とする。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが部品メーカーで、取引先に納品し代金も回収済み。十四か月後、その取引先が会社更生を申し立てた。管財人が「支払停止を知っていて弁済を受けたはずだ」と否認をちらつかせる。だが取引も弁済も申立ての一年以上前。90条があなたの受け取った代金を守る壁になる
- もし、あなたがその会社から無償で機械を譲り受けていたとしたら? 第86条3項の無償行為はこの一年の保護から除かれる。有償取引なら守られても、タダでもらった財産は一年を超えても巻き戻されうる。有償か無償か、その線引きが運命を分ける
- 銀行のあなたが、融資先から二年前に担保を取った。融資先が経営難に陥り会社更生へ。管財人は偏頗行為だと主張するが、担保設定は申立ての一年以上前。支払停止を根拠にした否認は90条で封じられ、担保は維持される
- 管財人から否認の通知が届いた。残された対応の時間はわずか。あなたが最初にすべきは法律論ではなく、行為日と申立て日をカレンダーで並べ、その差が一年を超えるかを数えること。一日の差が結論を反転させる
取るべき行動
被害を受けた側:1. あなたが他の債権者で、倒産直前の不公平な弁済・担保提供を巻き戻したいなら、まず管財人に否認権の行使を促す。否認権は債権者本人ではなく管財人が行使する2. 対象行為が申立て等の日から一年以内かを確認、一年を超えると支払停止を根拠にした否認は90条で封じられる3. ただし無償行為(第86条3項)や、詐害の意図を直接立証できる詐害行為なら一年超でも否認の余地がある4. 行為日と申立て日の正確な特定が勝負、登記簿・通帳・契約書で日付を固める
訴えられた側:1. 管財人から否認の通知が来たら、まず『行為の日』と『更生手続開始の申立て等の日』の差を計算する2. 一年を超えていて、否認の根拠が『支払停止後だった/支払停止を知っていた』だけなら、90条で全面的に争える3. 一年以内、または無償行為(第86条3項)の場合は90条の盾は使えないので、善意・相当な対価といった別の防御を検討4. 否認の請求や訴訟には対応の期間があるため、通知を放置せず速やかに弁護士へ
時効(請求できる期限):本条は時効ではなく、否認の可否を分ける『申立て等の日から遡って一年』という基準線である。否認権そのものの行使期間は別に定めがあり、更生手続開始の日から二年、行為の時から二十年で消滅する(会社更生法の否認権消滅規定、現行条番号を要確認)。相手方は否認の請求に対し速やかに対応する必要がある
学説
通説:90条の支払停止否認の制限は、不確実で主観的に流れやすい支払停止という否認原因について、申立てから一年という客観的な時間の線を引き、取引の安全を保護する趣旨と解される。無償行為が除外されるのは、相手方の保護に値する利益が乏しいためとされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:会社更生法の全部改正(旧法・昭和27年法律第172号を廃止し、新法・平成14年法律第154号を制定)。否認権の体系を整理し、支払停止を理由とする否認の一年制限を現行の条文構成に整えた。
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