会社更生法 第89条(執行行為の否認)
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否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げない。
この条文の基本情報
執行行為の否認とは何ですか?
定義執行行為の否認とは、会社更生法第89条に定められた規定で、「否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第89条(執行行為の否認)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第89条の条文原文は「否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げない。」で始まります。
- 会社更生法第89条は第四節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第89条の前の条は会社更生法第88条です。
- 会社更生法第89条の次の条は会社更生法第90条です。
- 会社更生法第89条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第89条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第89条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/89
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法89条は、執行力のある債務名義や執行行為に基づく場合でも否認権を行使できると定める。判決や差押えを経た回収でも管財人が更生財団へ取り戻しうる。
Q · 裁判で勝って差し押さえたお金、相手が会社更生したら取り戻されるの?
はい、管財人の否認権で取り戻される場合があります
会社更生法89条により、否認権は対象行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも行使できます。つまり確定判決と強制執行を経て回収した金銭でも、相手会社が更生手続に入れば、管財人が「他の債権者との公平を害する」として更生財団へ取り戻しうるのです。ただし否認には偏頗行為否認(88条)等の要件があり、回収時期や相手の危機状態の認識が問われます。執行手続を経たこと自体は否認に対する盾になりません。
解説
裁判で勝ち取った判決をもとに、相手会社の財産を差し押さえて回収した。法的手続を正面から踏んだのだから、もう誰にも文句は言わせない。そう構えているなら、あなたは会社更生法89条を知らない側に立っている。この条文はこう告げる。否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があっても、その行為が強制執行に基づくものであっても、行うことを妨げない。つまり、あなたが裁判所のお墨付きで回収したその金でさえ、相手会社が更生手続に入れば、管財人が「他の債権者との公平を害する」として更生財団に取り戻せる。判決があるから安全、差押えをしたから確定、という平時の常識は倒産局面では通用しない。逆にあなたが管財人や一般債権者の側なら、特定の債権者だけが執行で抜け駆けした財産を、この一行を根拠に財団へ引き戻せる。執行の強さが、否認の前で一段下がる。
法的な位置づけ
会社更生法89条は否認権と執行手続の関係を定める規定であり、否認の対象行為について執行力のある債務名義が存在する場合、又はその行為が執行行為に基づく場合であっても、管財人による否認権の行使を妨げないことを規定する。確定判決や強制執行の存在は否認に対する障害とならない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.回収行為の「時期」を特定する 管財人・一般債権者側でも回収した債権者側でも、まず問題の執行回収が相手会社のどの時点で行われたかを特定する。支払停止や更生手続開始申立てに近いほど否認リスクが高まるため、起算点となる事実を時系列で整理する
- 2.否認の類型(詐害行為・偏頗行為)を判定する 回収行為が詐害行為否認(86条)か偏頗行為否認(88条)のいずれに当たるかを検討する。執行を経ていても89条により否認の射程に入るため、執行の有無ではなく実体要件で判定する
- 3.主観要件(危機時期の認識)を検証する 偏頗行為否認では、債権者が相手会社の支払停止や危機状態を知っていたかが要件になる。回収側は善意を立証できるか、管財人側は悪意を立証できるかを、メールや督促記録などの客観証拠で固める
- 4.否認権の行使/対応を期間内に行う 管財人側は否認の請求・訴え・抗弁を行使期間内に行い、取り戻した財産を更生財団へ組み入れる。回収側は否認の通知到達後すぐに反論方針を立て、長期化コストと和解減額の比較を行う
よくある質問 AI による整理
Q1否認権とは何ですか?
倒産手続で管財人が、債権者平等を害する一定の行為(財産減少行為や抜け駆け弁済等)の効力を否定し、流出した財産を更生財団へ取り戻す権利です。会社更生法では86条以下が規定します。
Q2執行行為の否認とはどういう意味ですか?
差押えや競売など強制執行を経て行われた財産移転であっても、否認権の対象になることを指します。会社更生法89条が、執行を経たことは否認の障害にならないと明示しています。
Q3否認権の行使期間はいつまでですか?
会社更生法の規定により、更生手続開始決定の日から一定期間、また対象行為の時から一定期間を経過すると行使できなくなります(現行条文の年数は要確認)。期間徒過で取り戻しは不可能になります。
Q4偏頗行為の否認の要件は何ですか?
弁済や担保供与などが、相手会社の支払停止や更生手続開始申立て後、又は危機時期に行われ、債権者がその状態を知っていたことなどが要件となります(会社更生法88条)。
Q5差押えで回収した後に取引先が倒産したら取り戻されますか?
支払停止や危機時期に近い時期の執行回収であれば、89条と偏頗行為否認の組み合わせで管財人に取り戻される可能性があります。執行を経ても安全地帯ではありません。
Q6管財人から否認の通知が来たらどう対応すべきですか?
まず自分の回収行為の時期を特定し、相手の支払停止や危機状態を知らなかった(善意)と立証できるかを検討します。執行を経たことは反論材料にならないため、要件論で争います。早期に弁護士へ相談を。
Q7破産・民事再生・会社更生で否認のルールは違いますか?
基本構造は共通で、破産法165条、民事再生法、会社更生法89条がそれぞれ執行行為の否認を定めます。手続の種類は違っても、執行を経た回収が否認されうる点は同じです。
Q8担保権を実行して回収した場合も否認されますか?
平時に設定した担保権の実行は原則保護されますが、倒産直前に駆け込みで設定した担保の実行は、偏頗担保として88条・89条で否認されうる場合があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1判決をもらって差し押さえた回収まで否認されるなんて、やりすぎじゃないですか?
倒産法は「債権者平等」を最優先します。一人だけ執行で抜け駆けすると残りの債権者の取り分が削られるため、89条は執行を経た回収も否認の対象にしました。ただし偏頗行為否認(88条)には、相手会社の支払停止や危機を知っていたなどの要件が必要です。実務のポイント:判決と差押えがあるだけでは否認されません。鍵は「いつ」回収したか。支払停止や更生申立てに近い時期の回収ほど否認リスクが跳ね上がる。倒産の兆候が見えた相手から慌てて執行で回収するのは、実は最も危ない動き方です
Q2うちは担保(抵当権)を実行して回収したので、否認とは無関係ですよね?
無関係とは限りません。担保権の実行も「執行行為に基づくもの」として89条の射程に入ります。平時に設定した担保権の実行自体は原則保護されますが、倒産直前に駆け込みで設定した担保(88条の偏頗担保)を実行した場合は否認されうる。実務のポイント:鍵は担保を「いつ設定したか」。平時に取った抵当権の実行は強いですが、相手の資金繰り悪化後に取った担保は、実行しても88条と89条の組み合わせで覆される。担保があるから安全という思考停止が一番危ない
Q3否認されたら、回収した金は全額返さないといけないんですか?
否認が認められれば、原則として取得した財産や金銭を更生財団へ返還します。ただし反対給付や現存利益の範囲で調整される場合があり、全額か一部かは行為の類型と事情によります(否認権行使の効果)。実務のポイント:否認をめぐる争いは時間がかかるため、管財人側も早期解決を望み、和解で減額に応じることがある。「全額返せ」の通知が来ても、主観要件の立証困難などの弱点を突けば、減額和解に持ち込める余地は十分にあります
間違えやすい点 AI による整理
- 「判決を取って差し押さえたのだから、その回収は絶対に守られる」と思っているなら、それは平時の常識だ。会社更生という非常時には89条が執行の強さを無効化する。法的手続を正規に踏んだことは、否認に対する盾にはならない
- 執行行為が否認されうると知っている人でも、その射程の広さを見落としている。担保権の実行、債権差押え、配当手続、これらすべてが「執行行為に基づくもの」として89条の対象になりうる。「自分の差押えだけは別格」という例外はない
- あなたから見れば「正当な権利行使でやっと回収した金」だが、更生手続の中では「他の債権者の取り分を先取りした不公平な財産移転」と評価される。この評価の落差こそが、あなたの回収を否認の対象に変える
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律対象 | 89条:執行力のある債務名義・執行行為を経た行為 | 86条:詐害行為(財産を減少させる行為) 88条:偏頗行為(担保供与・弁済等の抜け駆け) |
| 条文の機能 | 執行を経ても否認を妨げないと明示する補完規定 | 詐害行為否認の基本類型を定める 偏頗行為否認の要件を定める |
| 主観要件 | 基礎となる86条・88条の要件に従う | 害意・債権者を害することの認識 支払停止・危機時期の認識 |
| 効果 | 執行を経た回収財産も更生財団へ取り戻し可能 | 流出財産の原状回復 弁済・担保の効力否定と取戻し |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も破産・重整手続で否認(撤銷)制度を持ち、危機時期の偏頗弁済を取り戻す枠組みは日本と類似する
韓国は統合倒産法で否認権を規定。執行を経た行為も否認対象になりうる点は日本と同様
ドイツ倒産法は否認(Anfechtung)の母法。日本の否認権制度の源流であり、危機時期の偏頗行為を広く否認の対象とする
米国は倒産前90日内(内部者は1年内)の偏頗的弁済を Preference として取り戻す。会社更生の手続枠組み自体が米国 Chapter X 由来
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先が支払いを渋るので訴訟で勝訴判決を取り、預金を差し押さえてようやく800万円を回収した。半年後、その会社が会社更生手続を開始。管財人から「89条により執行行為を否認する」と通知が届く。判決も差押えも、抜け駆け回収を守ってはくれなかった
- もし、あなたの会社が回収した売掛金について、ある日管財人から否認の通知が届いたら? 反論できる時間は限られている。否認の請求や訴えへの対応を、通知到達の段階から組み立てないと、回収済みの金を財団へ返す結末に向かって日が過ぎていく
- 下請けへの支払いが滞った元請けが更生手続入り。先に強制執行で回収した同業者だけが助かったように見えた。だが管財人の否認で、その回収も白紙に戻った
- あなたが更生会社の管財人だとする。倒産直前、一部の債権者が抵当権の実行や差押えで資産を持ち去っていた。執行手続を経ているから手出しできないと諦める必要はない。89条が、その執行に基づく財産移転を否認の射程へ引き戻す
- あなたが更生会社の一般債権者で、配当を待つ立場だとする。倒産直前に裁判所の手続を使って抜け駆け回収した別の債権者がいると知ったとき、その回収を管財人が否認できるかどうかが、あなたの配当額を直接左右する
取るべき行動
被害を受けた側:(管財人・一般債権者として抜け駆け回収を取り戻す側) 1. 支払停止や更生手続開始申立ての前後に、特定の債権者が執行で回収した財産を洗い出す2. その回収が偏頗行為(88条)や詐害行為(86条)に当たるかを検討、執行を経ていても89条で否認可能3. 管財人が否認の請求・訴え・抗弁で行使、行使期間内に動く4. 取り戻した財産は更生財団へ組み入れ、債権者全員の公平な弁済原資にする
訴えられた側:(回収したが否認された債権者側) 1. 否認の通知が来たら、まず自分の回収行為の時期を特定し、相手会社の支払停止や危機状態を知っていたか(主観要件)を検証2. 善意で危機を知らなかったと立証できれば、偏頗行為否認を争える余地がある3. 執行手続を経ていること自体は防御にならない(89条)ので、要件論で反論を組む4. 全額返還か一部かで和解の余地を探り、否認訴訟の長期化コストと比較する
時効(請求できる期限):否認権は、更生手続開始の決定があった日から2年を経過したときは行使できない(会社更生法98条、現行効力を要確認)。否認の対象行為の時から20年を経過したときも同様。起算点は開始決定日
学説
通説:89条は独立の否認類型ではなく、86条・88条の否認が執行を経た行為にも及ぶことを確認する補完規定と解される。執行力のある債務名義や執行行為の存在は否認の障害とならず、否認の成否は基礎となる詐害行為・偏頗行為の要件で判断される。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)会社更生法全面改正 旧会社更生法(昭和27年)を全面改正した現行法(平成15年/2003年施行)で否認権規定が再編され、執行行為の否認が現行89条として整備された。破産法・民事再生法の否認規定とも平仄を合わせている
改正の年表
- 1.昭和27年(1952年) 新設:旧会社更生法制定。米国連邦倒産法 Chapter X を範とした再建型倒産手続を導入し、否認権規定を置いた
- 2.平成14年(2002年) 改正:会社更生法を全面改正(平成15年/2003年施行)。否認権規定を再編し、執行行為の否認を現行89条として整備。破産法・民事再生法の否認規定とも平仄を合わせた
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