会社更生法 第29条(更生手続開始前における商事留置権の消滅請求)
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- 開始前会社の財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が開始前会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)は、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、留置権者に対して、当該留置権の消滅を請求することができる。
- 2.前項の請求をするには、同項の財産の価額に相当する金銭を、同項の留置権者に弁済しなければならない。
- 3.第一項の請求及び前項の弁済をするには、裁判所の許可を得なければならない。
- 4.前項の規定による許可があった場合における第二項の弁済の額が第一項の財産の価額を満たすときは、当該弁済の時又は同項の請求の時のいずれか遅い時に、同項の留置権は消滅する。
- 5.前項の規定により第一項の留置権が消滅したことを原因とする同項の財産の返還を求める訴訟においては、第二項の弁済の額が当該財産の価額を満たさない場合においても、原告の申立てがあり、当該訴訟の受訴裁判所が相当と認めるときは、当該受訴裁判所は、相当の期間内に不足額を弁済することを条件として、第一項の留置権者に対して、当該財産を返還することを命ずることができる。
この条文の基本情報
更生手続開始前における商事留置権の消滅請求とは何ですか?
定義更生手続開始前における商事留置権の消滅請求とは、会社更生法第29条に定められた規定で、「開始前会社の財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が開始前会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、開始前会社(保全…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第29条(更生手続開始前における商事留置権の消滅請求)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第29条の条文原文は「開始前会社の財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が開始前会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、開始前会社(保全…」で始まります。
- 会社更生法第29条は第二款に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第29条の前の条は会社更生法第28条です。
- 会社更生法第29条の次の条は会社更生法第30条です。
- 会社更生法第29条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第29条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第29条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/29
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法29条は、更生手続開始の申立て後・開始決定前に、事業に不可欠な財産の商事留置権を、価額相当額の弁済と裁判所の許可により消滅請求できると定める。
Q · 取引先が会社更生を申し立てたら、預かっている金型の留置権は勝手に消されてしまうの?
条件付きで消されます。価額弁済と裁判所の許可が要件です
会社更生法29条により、更生手続開始の申立て後・開始決定前の期間に、開始前会社(または保全管理人)は、事業の継続に欠くことのできない財産にかかる商事留置権の消滅を請求できます。要件は、財産が事業に不可欠であること、価額相当額の金銭を弁済すること、裁判所の許可を得ること(1〜3項)の三つです。留置権者の同意は不要ですが、弁済額が財産の価額を満たさなければ留置権は消えません(4項)。価額が低すぎると考えるなら、裁判所の許可手続の中で争えます。
解説
あなたの取引先が経営危機に陥った。あなたは下請けとして相手の金型を預かっており、未払いの加工代金がある。商事留置権(商法521条)があるから「金は払え、払うまで金型は返さない」と強気でいた。ところが相手が会社更生を申し立てた直後、保全管理人から通知が届く。「金型の時価相当額を払うので、留置権を消滅させてほしい」。会社更生法29条は、更生手続開始の申立てから開始決定までの空白期間に、事業の継続に欠かせない財産にかかった留置権を、価額弁済と裁判所の許可で消すことを認める。あなたが握っていた人質は、時価という値札を付けて買い戻される。逆にあなたが資金繰りに苦しむ会社の側なら、この一条が事業の生命線を取り戻す数少ない合法手段になる。しかも弁済額が時価にわずかに足りなくても、裁判所が相当と認めれば、不足額を後で払う条件で財産の返還を命じられる(同条5項)。
法的な位置づけ
会社更生法29条にいう留置権消滅請求とは、更生手続開始の申立て後・開始決定前の期間において、開始前会社または保全管理人が、事業の継続に欠くことのできない財産に存する商事留置権につき、その価額相当額の弁済と裁判所の許可を得て当該留置権を消滅させる制度をいう。開始後の担保権消滅請求の前段階に位置づけられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.対象財産の「不可欠性」を確認 請求や保全管理人からの打診が来たら、まず対象財産が本当に「事業の継続に欠くことのできないもの」(29条1項)に当たるかを確認する。該当しなければ請求の前提を欠く
- 2.価額相当額を算定し評価資料を固める 留置権者なら鑑定書・直近の取引実績・再調達価格で価額を高く支える資料を、会社側なら合理的な時価見積りを、裁判所の許可手続の前に準備する。許可は当事者提出の価額資料で判断される
- 3.裁判所に消滅請求と弁済の許可を申し立てる 開始前会社または保全管理人が、消滅請求および価額相当額の弁済について裁判所の許可を申し立てる(29条3項)。事業継続上の不可欠性と価額の妥当性を疎明する
- 4.弁済額が不足するなら返還訴訟を検討 全額弁済が難しい場合、会社側は29条5項の返還訴訟を起こし、相当の期間内に不足額を弁済する条件で財産の返還命令を狙う。留置権者は不足額の主張と証拠を準備する
よくある質問 AI による整理
Q1会社更生法29条とは何ですか?
開始前会社が、事業に不可欠な財産の商事留置権を、価額弁済と裁判所の許可で消滅請求できる制度です。申立て後・開始決定前にのみ使えます。
Q2留置権消滅請求の手続の流れは?
対象財産の不可欠性を確認し、価額相当額を算定して弁済原資を確保、裁判所に消滅請求と弁済の許可を申し立てます(29条3項)。許可後の弁済で消滅します。
Q3会社更生で商事留置権はどうなりますか?
原則は存続しますが、事業継続に不可欠な財産なら29条で時価弁済と裁判所許可により消滅させられます。握り続ければ全額回収できるとは限りません。
Q4留置権消滅請求はいつまでにできますか?
更生手続開始の申立て後、開始決定があるまでの間に限られます(29条1項)。開始決定後は104条以下の担保権消滅請求の枠組みに移ります。
Q5留置権の価額はどう評価されますか?
鑑定書・直近の取引実績・再調達価格などの資料で算定します。許可を出す裁判所は当事者提出の価額資料で判断するため、評価資料の準備が攻防の要です。
Q6開始前会社の財産は返還してもらえますか?
価額相当額を弁済し裁判所の許可を得れば留置権が消え、財産は会社側に戻ります。弁済が不足でも5項の返還訴訟で後払い条件の返還命令が出ることがあります。
Q7保全管理人が選任されたら誰が請求しますか?
保全管理人が消滅請求の主体になります(29条1項括弧書き)。会社自身ではないため、交渉相手を取り違えないことが重要です。
Q8会社更生と破産で留置権の扱いは違いますか?
破産では商事留置権は特別の先取特権として扱われます(破産法66条)。会社更生では29条の消滅請求で事業のため解放できる点が異なります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1留置権があるのに、相手の都合で勝手に消されるなんてアリなんですか?
条件付きでアリです。会社更生法29条は、財産が事業継続に欠かせないこと、価額相当額を弁済すること、裁判所の許可を得ること、この三つを満たして初めて留置権を消せます(同条1項から3項)。あなたの同意は要りません。ただし価額が低すぎれば、裁判所の許可段階で争えます。実務のポイント:許可を出す裁判所は当事者が提出する価額資料で判断するので、留置権者が先に鑑定書や直近の取引価格を出しておくと、会社側の低い見積もりを押し返せる。黙っていると相手の数字が通る
Q2提示された金額が安すぎる気がします。受け取ったら終わりですか?
いいえ。29条4項は、弁済額が財産の価額を満たすときに初めて留置権が消えると定めます。時価に足りない弁済では、原則として留置権は消えません。ただし5項で、会社側が返還訴訟を起こし裁判所が相当と認めれば、不足額を後払いする条件で財産の返還が命じられることがあります。実務のポイント:満たすときの価額をめぐる攻防が実質的な勝負どころ。安易に金額を受領せず、自分の評価額との差額を文書で留保しておくと、後の不足額請求で立場を保てる
Q3うちみたいな小さな下請けでも、これを使われることってあるんですか?
むしろ典型です。自動車や電機の下請けが預かる金型、倉庫業者が握る在庫、運送業者の運送品、銀行の取立手形、いずれも事業の急所になりやすく、29条の標的になります。逆にあなたが発注側で倒産に向かうなら、急所の財産を取り戻す数少ない合法手段がこれです。実務のポイント:保全管理人が選ばれている局面では、請求の主体は会社ではなく保全管理人になる(29条1項括弧書き)。誰と交渉しているのかを取り違えると、合意の相手を間違える
間違えやすい点 AI による整理
- 「留置権があれば、全額払ってもらうまで絶対に渡さなくていい」と思っている下請けや銀行は多い。だが事業継続に不可欠な財産なら、会社更生法29条で時価相当額を払われて留置権を消される。手元の物を握り続ける権利は、倒産局面では時価で買い取られる対象に変わる
- 29条の存在は知っていても、それが開始決定後ではなく「申立てから開始決定までの空白期間」に使える点を見落としている人が多い。この空白こそが企業の生死を分ける。設備や在庫を一時間でも早く動かせるかどうかで事業価値が一気に毀損する。タイミングの深刻さを理解していないと、制度を知っていても使えない
- 「いくら払えば足りるのか」という問いの立て方自体が罠だ。条文上は財産の価額相当額だが、その価額をいくらと見るかで攻防が決まる。留置権者は高く、会社側は低く見積もる。さらに5項では足りなくても裁判所が後払い条件で返還を命じうる。問うべきは金額ではなく、価額評価の主導権を誰が握るかだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 使える時期 | 29条:申立て後・開始決定前の空白期間に限る | 104条:更生手続開始決定後(現行効力を要確認) 破産法66条:破産手続開始後 |
| 対象となる権利 | 29条:事業に不可欠な財産の商事留置権 | 104条:更生担保権等の担保権 破産法66条:商事留置権を特別の先取特権として扱う |
| 消滅・解放の仕組み | 29条:価額弁済+裁判所の許可で消滅、不足時は5項返還訴訟 | 104条:価額に相当する金銭の納付等による担保権消滅 破産法66条:先取特権として配当・別除権類似の処理 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は会社重整の枠組みで重整裁定前の保全処分により債権者の権利行使を制限する。留置権そのものは民法928条以下が規律する
韓国は会社更生・破産を統合した債務者回生法で会生手続を規律し、担保権・留置権の処理も同法による
ドイツは倒産法上、留置権類似の権利を Absonderungsrecht(別除権)として扱い、管財人による換価と精算の枠組みで処理する
米国 Chapter 11では、一定の要件下で担保権・リーエンから解放された資産売却(free and clear)が認められ、権利者は売却代金に権利が及ぶ
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは町工場で、取引先の部品メーカーから受注した金型を預かっている。代金が三か月分未払いのまま相手が会社更生を申し立てた。あなたは「金型は人質だ」と強気だったが、保全管理人から時価弁済と引き換えの留置権消滅請求が届く。握っていた切り札が、時価という値札を付けて買い戻される
- もし、あなたの会社が更生を申し立てた翌日に、主力工場の生産ラインが下請けの留置権で止まったとしたら? 開始決定までの数週間、ラインが動かなければ受注は逃げ、事業価値は日々溶ける。29条の消滅請求を、いつ、どの財産に打つかで再建の成否が変わる
- メインバンクが取立てのために預かっていた手形に商事留置権を主張してきた。会社側はその手形を取り戻さなければ運転資金が回らない。価額をいくらと見るかで、両者は最初の数字を投げ合う
- 経営難の取引先から「預けている設備を返してほしい、対価は払う」と言われた。直感で断りたくなるが、それが会社更生法29条の正式な消滅請求なら、裁判所の許可付きで拒めない。感情で突っぱねる前に、提示された時価が妥当かを検証する局面だ
取るべき行動
被害を受けた側:1. 消滅請求の通知や保全管理人からの打診が来たら、まず対象財産が本当に「事業継続に欠くことのできないもの」かを確認、該当しなければ請求の前提を欠く2. 該当するなら争点を価額に絞り、鑑定書・直近の取引実績・再調達価格など、価額を高く支える資料を裁判所の許可手続の前に固める3. 弁済額が時価を満たさないなら29条4項により留置権は消えない、安易に受領せず差額を文書で留保4. 返還訴訟(同条5項)に備え、不足額の主張と証拠を準備する
訴えられた側:1. 開始決定を待たず、事業の急所となる財産を特定し、止まると失われる事業価値を数値で示す資料を用意2. 対象財産の時価を合理的に見積もり、価額相当額の弁済原資を確保(資金がなければ請求は機能しない) 3. 裁判所に消滅請求と弁済の許可を申し立て(29条3項)、事業継続上の不可欠性を疎明4. 全額弁済が難しければ、5項の返還訴訟で不足額後払いの返還命令を狙う選択肢も検討する
時効(請求できる期限):請求できるのは、更生手続開始の申立てがあった後、開始決定があるまでの間に限られる(29条1項)。開始決定が出ると本条の適用は終わり、開始後は担保権消滅請求(会社更生法104条以下、現行効力を要確認)の枠組みに移る。留置権消滅の効果は、弁済の時または請求の時のいずれか遅い時に生じる(同条4項)
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和27年(1952年) 新設:会社更生法(昭和27年法律第172号)制定。米国連邦倒産法の再建型手続を母法として、株式会社の再建を目的とする更生手続が導入された
- 2.平成14年(2002年) 改正:会社更生法(平成14年法律第154号)全部改正。手続の迅速化・合理化を図り、開始前の財産保全に関する規律として本条(留置権消滅請求)が整備された
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