会社更生法 第30条(保全管理命令)
クイックジャンプ
- 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、更生手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、開始前会社の業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
- 2.裁判所は、前項の処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。ただし、第六十七条第三項に規定する者は、保全管理人に選任することができない。
- 3.裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
- 4.保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
- 5.前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
この条文の基本情報
保全管理命令とは何ですか?
定義保全管理命令とは、会社更生法第30条に定められた規定で、「裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、更生手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第30条(保全管理命令)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第30条の条文原文は「裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、更生手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申…」で始まります。
- 会社更生法第30条は第三款に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第30条の前の条は会社更生法第29条です。
- 会社更生法第30条の次の条は会社更生法第31条です。
- 会社更生法第30条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第30条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第30条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/30
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法30条は、更生手続開始の申立てから決定までの間、裁判所が保全管理人による管理を命じ、会社の経営権を旧経営陣から移せると定める。即時抗告は執行を止めない。
Q · 会社が更生手続を申し立てたら、その間も今までの社長が会社を動かすの?
保全管理命令が出れば経営権は保全管理人に移ります
会社更生法30条により、裁判所は更生手続開始の申立てから開始決定までの間、必要と認めれば保全管理命令を発し、保全管理人を選任できます。この命令が出ると、業務執行権と財産の管理処分権は旧経営陣から保全管理人へ移転します(同法31条)。資産の散逸や特定債権者への抜け駆け弁済を防ぐのが目的です。命令には即時抗告ができますが(4項)、抗告しても執行は止まりません(5項)。つまり争っている間も保全管理人は会社を動かし続けます。
解説
ある大企業が更生手続の申立てをした、その瞬間から裁判所が「開始決定」を出すまでには、数日から数週間の空白がある。この空白こそ最も危険な時間帯だ。経営難に陥った会社の旧経営陣が、その間に資産を親会社へ逃がす、特定の取引先にだけ抜け駆けで弁済する、帳簿を整える、こういう動きを止められないと、更生の原資そのものが溶ける。会社更生法30条は、この空白を埋めるための非常ボタンである。裁判所は必要と認めれば、利害関係人の申立て、あるいは職権で、保全管理人を選任し、会社の業務と財産の管理権を旧経営陣から丸ごと取り上げて、その保全管理人に移すことができる。あなたが知っておくべきは、この一手で会社の「ハンドルを握る人間」が交代するという事実だ。昨日まで社長と話していた取引先も、給料の決裁を待つ従業員も、相手が変わる。しかもこの命令には即時抗告ができるが、抗告しても命令の効力は止まらない(5項)。決定が出た瞬間、現実は動き始めている。
法的な位置づけ
会社更生法30条の保全管理命令とは、更生手続開始の申立て後、開始決定までの間に、裁判所が開始前会社の業務及び財産の管理を保全管理人に委ねる処分をいう。財産のみを対象とする保全処分(同法28条)と異なり、経営権そのものを旧経営陣から保全管理人へ移転させる強力な措置であり、必要があると認めるときに限り発令される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.保全管理人の氏名を特定する 取引先に保全管理命令が出たと知ったら、まず官報・裁判所の掲示・送達された通知で保全管理人(通常は弁護士)の氏名と連絡先を特定する。今後の交渉相手は社長ではなくこの人物になる
- 2.旧経営陣との未決合意を凍結し交渉相手を切り替える 旧経営陣と交わした未決の合意・口約束は管理権のない相手との約束として宙に浮く。直ちに交渉窓口を保全管理人へ切り替え、早期に正しい相手へ正しい資料を出す
- 3.債権を裏付け資料付きで届け出る 債権の存在と金額を、契約書・納品書・請求書・入出金記録などの裏付け資料を添えて保全管理人へ届け出る。更生手続の中で公平に扱われるよう、無秩序な抜け駆けではなく正規ルートで動く
- 4.担保の有無・弁済時期を弁護士と確認し即時抗告要否を判断 担保があれば更生担保権として優先的地位を、申立て直前に弁済を受けていれば否認権行使のリスクを弁護士と確認する。命令に重大な不服があるなら通知から一週間以内に即時抗告するが、執行は止まらない前提で立場確保の意味で打つ
よくある質問 AI による整理
Q1保全管理命令とは何ですか?
更生手続開始の申立て後、決定までの間に裁判所が会社の業務・財産の管理を保全管理人に委ねる処分です。会社更生法30条が根拠で、資産散逸や抜け駆け弁済を防ぐ目的があります。
Q2保全管理命令と保全処分の違いは?
保全処分(28条)は財産を縛るだけですが、保全管理命令(30条)は経営権そのものを旧経営陣から保全管理人へ移します。後者の方が一段重い措置です。
Q3保全管理人は誰が選ばれますか?
裁判所が選任し、通常は倒産事件に強い弁護士が選ばれます。67条3項の欠格事由に当たる者は選任できません。後の更生管財人に横滑りすることも多いです。
Q4保全管理命令はいつまで続きますか?
更生手続開始の申立てについて決定があるまでの間です。開始決定が出れば更生管財人による管理に移行し、申立てが棄却されれば命令は効力を失います。
Q5会社更生法と民事再生法の保全管理命令の違いは?
会社更生法30条は株式会社の再建を対象に経営権を全面移転します。民事再生法79条にも保全管理命令はありますが、再生は原則 DIP 型で経営陣が残るため発令は例外的です。
Q6保全管理命令が出たら従業員の給料はどうなる?
支払の決裁権は保全管理人に移ります。日常業務は継続され給与も基本的に支払われますが、決裁する相手が社長から保全管理人へ変わる点に注意が必要です。
Q7保全管理命令の即時抗告期間は?
会社更生法9条により原則一週間以内です。公告があった場合は効力発生日から、それ以外は決定の告知を受けた日から起算します。抗告しても執行は止まりません。
Q8保全管理人に選ばれない人はいますか?
います。30条2項但書が67条3項を準用し、会社と利益相反のある者などを欠格者として排除します。再建を中立に進めるための仕組みです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保全管理人って、結局その会社の社長の代わりに全部やる人ってことですか?
ほぼその通りで、保全管理命令が出ると業務執行権と財産の管理処分権が旧経営陣から保全管理人へ移ります(会社更生法31条)。日常の業務は回しつつ、資産の散逸や偏った弁済を防ぐのが役割です。実務のポイント:保全管理人には通常、倒産事件に強い弁護士が選ばれ、しかもこの段階の管理人が後の正式な更生管財人にそのまま横滑りすることが多い。だから保全管理人が誰かを見れば、この再建を裁判所がどう進める気かが早い段階で読める。債権者はこの人物の経歴と過去案件を調べておくと、交渉の温度感がつかめる
Q2命令に納得いかないなら即時抗告すれば、その間は管理人の権限を止められるんですよね?
止められません。ここが最大の落とし穴で、即時抗告はできますが(30条4項)、抗告しても命令の執行停止の効力はありません(同5項)。つまり争っている間も保全管理人は会社を動かし続けます。実務のポイント:実務では『執行は止まらない』前提で、抗告は命令を覆すためというより、後の責任論や更生計画での立場を有利にする記録づくりとして打たれることが多い。本気で止めたいなら抗告とは別に執行停止の申立てを検討する必要があるが、認められるハードルは高い
Q3うちは会社に売掛金があるんですが、保全管理命令が出たらもう回収は諦めるしかないですか?
諦める必要はありません。保全管理は資産を守るための措置なので、むしろ無秩序な抜け駆け弁済を止め、債権者間の公平を確保する方向に働きます。届出をして更生手続の中で扱われるのが本筋です。実務のポイント:申立て直前に自分だけ弁済を受けた取引先は、後で否認権により取り戻される可能性がある一方、担保を持つ債権者は更生担保権として優先的地位を確保できる。『担保があるか、いつ弁済を受けたか』で立場が大きく分かれるので、回収を語る前にまず自分の債権の性質を弁護士と整理するのが先決
間違えやすい点 AI による整理
- 「会社が更生を申し立てたのだから、しばらくは今の社長が会社を回すのだろう」と思い込みがちだが、保全管理命令が出れば話は逆になる。業務執行権も財産処分権も旧経営陣から保全管理人へ完全に移る。あなたが今まで通り旧経営陣と話を進めていると、その合意は管理権のない相手と交わした空手形になりかねない
- 保全管理命令は「資産の凍結」程度のものだと軽く捉えられている。実際は凍結ではなく、経営権そのものの強制移転だ。倒産手続には資産を縛るだけの保全処分(会社更生法28条)もあるが、30条はそれより一段重く、会社の頭をすげ替える措置。両者を混同すると、事態の深刻度を読み違える
- 「裁判所が出した命令だから、文句があっても受け入れるしかない」と諦める人が多いが、4項は即時抗告という反論ルートを明示している。問題は、抗告しても命令の効力は止まらない(5項)という点。つまり『争う権利はあるが、争っている間も現実は進む』。この時間構造を理解しないと、抗告のタイミングを誤る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 30条:会社の業務及び財産(経営権そのもの) | 28条:会社の財産(処分等の制限のみ) 31条:保全管理人が取得する管理処分権の内容 |
| 旧経営陣の地位 | 業務執行権・財産管理処分権を全面的に喪失 | 経営権は残り、一定の処分が制限されるのみ 管理権は保全管理人に専属(31条) |
| 発令の重さ | 経営権の強制移転、より重い措置 | 財産保全にとどまる、より軽い措置 30条の効果を具体化する規定 |
| 不服申立て | 即時抗告可(4項)、執行停止効なし(5項) | 保全処分に対する即時抗告(28条関係) 権限行使の適否は善管注意義務(33条)で統制 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は会社更生にあたる『公司重整』で、重整裁定前の緊急処分(287条)と重整人・重整監督人(290条)を置く。経営権を移す重整人の位置づけは保全管理人と機能的に近い
韓国は会社更生・破産・個人回生を統合した債務者回生法で、保全管理命令と保全管理人の制度を持つ。日本会社更生法の影響を強く受けている
ドイツは手続開始前に裁判所が vorläufiger Insolvenzverwalter(保全管財人)を選任できる。管理権を全面移転する『強い』保全管財人と、同意権にとどまる『弱い』類型がある点が特徴
米国 Chapter 11は原則 debtor in possession(占有債務者)で経営陣が残るが、不正や重大な経営不全があれば裁判所が trustee を選任する。経営権移転が例外である点が日本と逆
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが取引先の大企業に数千万円を売り掛けていて、ある朝その会社に保全管理人が選任されたと知ったら、どうなるか。旧経営陣に「払ってくれ」と詰め寄っても無駄だ。財産の管理権は保全管理人に移っている。今後の弁済の可否を握るのは、裁判所が選んだ弁護士。誰に何を交渉するか、相手を間違えれば回収はさらに遠のく
- あなたが更生申立てをした会社の取締役だとする。申立ては自分たちでしたのに、保全管理命令が出た途端、会社の通帳も契約締結権も自分の手を離れる。やましいことがなくても、管理権を失う側に回る。ここで即時抗告するか、保全管理人に全面協力して再建の道を残すか、その判断が会社の運命を分ける
- 経営難の会社が、申立て直前にメインバンクの借入だけを担保処分で先に返していた。保全管理人はこういう「偏った弁済」を洗い出し、後の否認権行使の材料にする。空白期間の一つ一つの取引が、後から引っくり返される
- あと一週間。保全管理命令の通知を受け取った利害関係人が即時抗告を考えるなら、時間はほとんどない。会社更生法の即時抗告期間は原則一週間(会社更生法9条)。しかも抗告しても命令の執行は止まらない。動くなら今夜、弁護士に電話する以外の選択肢はない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 取引先に保全管理命令が出たら、まず官報・裁判所掲示・通知で保全管理人の氏名(通常は弁護士)を特定する2. 旧経営陣との未決の合意・口約束は一旦凍結し、保全管理人へ債権の存在と金額を裏付け資料(契約書、納品書、請求書、入出金記録)付きで届け出る3. 申立て直前に自分だけ早く弁済を受けていた場合は、後の否認権行使で取り戻される可能性を念頭に置く4. 担保を持っているなら別除権・更生担保権としての扱いを早期に弁護士と確認し、無担保債権者より一歩先に動く
訴えられた側:1. あなたが会社側(取締役・経営者)で保全管理命令を受けたら、争うより先に保全管理人へ全面協力する方が再建にも自身の責任論にも有利に働く場面が多い2. 管理権が移った後の独断の財産処分は厳禁、後で善管注意義務(プロとして当然払うべき注意のレベル)違反や責任追及の火種になる3. 命令内容に重大な不服があるなら、通知から一週間以内に即時抗告(4項)。ただし執行は止まらない(5項)前提で、記録保全と立場確保の意味で打つ4. 帳簿・資産・契約関係を整理して保全管理人へ引き継ぎ、隠匿と疑われる動きを徹底的に避ける
時効(請求できる期限):保全管理命令および変更・取消決定に対する即時抗告は、会社更生法9条により原則として一週間以内(公告があった場合は公告の効力発生日から起算、それ以外は決定の告知を受けた日から起算)。即時抗告をしても命令の執行は停止しない(30条5項)。起算点の扱いは事案により異なるため、最新の改正状況と個別の通知方法をご確認ください
学説
通説:保全管理命令は開始決定前の空白期間における資産散逸防止のための強力な保全手段であり、経営権の剥奪という重い効果ゆえに『必要があると認めるとき』に限って発令されると解されている。財産のみを縛る保全処分との段階的な使い分けが想定されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)全部改正 昭和27年制定の旧会社更生法を全面的に改める形で現行会社更生法(平成14年法律第154号、平成15年〔2003年〕4月1日施行)が成立し、開始前会社の業務・財産を保全管理人の管理に委ねる保全管理命令の枠組みが現在の形に整理された。本条の細部の後続改正の有無は人的検証を要する
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:昭和27年制定の旧会社更生法を全部改正し、現行会社更生法(平成14年法律第154号、平成15年〔2003年〕施行)が成立。開始前会社の業務・財産を保全管理人の管理に委ねる保全管理命令の枠組みが現在の形に整理された。本条の細部の後続改正の有無は人的検証を要する
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める